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佐伯さんの指は細くて長くて、奏ちゃんのごつごつした太い指とはまるで違った。
その愛撫は優しくて繊細で、奏ちゃんの荒々しい触り方とはまるで違った。
正直、佐伯さんの愛撫は奏ちゃんの乱暴な扱いに慣れていたオレには少し物足りなかった。って、結局オレ、最中も奏ちゃんのことばっか考えてた。ずっと、奏ちゃんと佐伯さんとを比べてた。奏ちゃんのこと忘れたくて抱かれたのに、奏ちゃんのことばっか思い出してた……。
オレ、バカみたいだ。
着替えを済ませて振り返ると、佐伯さんがオレの目を見て微笑みながら言った。
「航くん、よかったよ」
オレはその笑みから逃げるように顔を伏せた。
……奏ちゃん以外の男に抱かれたんだ! 奏ちゃんとは決別したんだ!
心の中で叫んだ。
これが、オレの求めていたもの――。
そしてオレは、なぜか泣きたくなった。
佐伯さんに肩を抱かれ、一緒にホテルの自動ドアを出た。夜風が冷たくて、モッズコートのジッパーを首元まで上げる。
バス、まだあるかな……。
「!」
しかし次の瞬間、オレの目に飛び込んできた姿があった。どこに居ても、どれだけひとが居ても、その中からすぐさまその人物をオレの目は見つけ出す。
「そ、奏ちゃん!?」
ホテルから出てきたオレを、煙草を吸いながら待ち構えるように立っていたのは、奏ちゃんだった。
「終わったの? んじゃ、これ、もらっていくんで」
奏ちゃんは苛立たしげな声でそう言うと、口に咥えていた煙草を足元に投げ捨て、踏み躙る。
「あっ、奏ちゃんっ」
そして痛いほどの力でオレの腕を掴むと、佐伯さんの隣から引き剥がした。
「え、ちょ……っ」
戸惑うオレを無視して、奏ちゃんはスタスタと歩き始める。
振り返ると、佐伯さんが唖然とした表情で立ち尽くしていた。
「す、すみませんっ!」
オレは後ろを振り返りながら佐伯さんに向かって必死に声を上げる。奏ちゃんに腕をきつく握られているせいで立ち止まることはできず、脚を縺れさせるようにしてそのあとを付いていくことしかできない。
「な、なんでここにいんの?」
驚きと戸惑いで声を上ずらせながら、奏ちゃんの顔を見ようと前に回り込むが、その顔はあからさまに背けられる。
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