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「あぅ、そ……」
「くそっ、あいつと何遍ヤったんだよ!?」
奏ちゃんの右手が前に回り、オレの茎を掴む。
「んんっ……、ほ、う……ひゃ」
「ほら、勃ってんじゃねーかっ! どうせ気持ちいいんだろ? この淫売!」
「や……!」
目をつぶるとその端から涙が零れ落ちた。
なんでオレこんなことされてんの? なんでオレ気持ちいいって感じてんの? 奏ちゃんに乱暴に突っ込まれてどうして嬉しいって思ってんの?
自分で自分の気持ちもわからなくなり、後から後から涙が込み上げる。
「泣くほどいいんだろ? このド変態!」
「ひ、ひがぅ……」
「くそっ、んっ!」
「ひゃ、んっ」
奏ちゃんは乱暴に腰を打ち付けて熱い精を吐き出すと、すぐにオレの中から自身を引き抜き、ベルトを締め直した。そして、オレを置き去りにして路地から歩き出す。
「ま、待って! オレまだイってない!」
「馬鹿か、てめぇ! おまえを気持ちよくするためにヤったんじゃねーわ! 独りでそこで抜いてこいっ!」
振り返りもしない奏ちゃんの怒鳴り声が、狭い路地に反響する。
「や、待って! 奏ちゃんっ! 置いてかないで!」
オレも慌ててジーンズをずり上げると、まだ勃ったままの股間をコートで隠すようにして走り出す。
『ドガッッッ』
奏ちゃんが路地の入口にあった水色のペールバケツを力任せに蹴り上げた。
「ふぎゃ―!」
生ごみが辺り一面に散り、野良猫が逃げ惑う。
「待って! 奏ちゃんっ!」
オレは手を伸ばす。
その背中に向かって必死に手を伸ばす。
オレはわかってる。
こうして追いかけて、求めて、でもまたすぐに信じられなくなって奏ちゃんから離れようとする。
それなのにすぐに寂しくなって、耐えられなくなって、自分から奏ちゃんを求めて会いに行って、乱暴なあの腕に抱かれてまた悦ぶんだ。
「オレ、もう会わない! 奏ちゃんとはもうこれっきりにするっ!」
そしてオレは、何度目かわからないそのセリフを、奏ちゃんに、また吐くんだ。
前編終わり
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