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「そんでおまえ、今何人とヤってんの?」
向かいに座っている吉田(よしだ)がビールを呷りながらオレに聞いた。
「はあ?」
その問いに、オレは眉間に皺を寄せて睨み返す。
あー、週末の居酒屋は客が多くて、うるさくて仕方ねぇ。
着古した黒いジャージの上下に坊主頭という出で立ちの吉田は中学時代の同級生だ。
オレは中学の頃にはもう、学校にはほとんど顔を出していなかったが、吉田とはなぜかウマが合い、今でも付き合いがある。
長距離トラックの運転手をしているせいでほとんど地元にはいないが、帰って来るたび連絡を寄越してくるという、でかい図体の割には律儀で几帳面な奴だった。
今日も青森からの積み荷を降ろしてきたばかりだという。
「なんだよ、おまえ、いっつも五、六人は女が、あ、もしくは男もいたじゃねーか。ひとりくらいオレに回してくれ、って思ってよ」
「んなの、いねーわ」
「はああ?」
吉田はビールのジョッキをテーブルに勢いよく置くと、身体を乗り出してきて、オレの顔をシゲシゲと見つめてくる。
「もしかしておまえ、まだあの、子犬みたいな目した黒髪の男ひとり?」
「ああ」
そっけなく返事をして、ビールを飲み干す。
「マジかよ? もうどれくらい経つ? 二年くらいか?」
「いや、三年って言ってたわ」
「うへ―、三年? じゃ、もしかして三年間、他の奴とはヤってねーの?」
「うっせえなあ、吉田。てめぇ、人のことそんな詮索すんじゃねーよ」
オレはイラつきながら、焼き鳥を歯で串から引き抜いた。
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