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気恥ずかしさを隠すようにオレもビールを呷る。 「おまえがうちで働きだしてもう四年かぁ。警察沙汰は朝飯前だったあの頃とは大違いだな」 近藤さんが豪快に笑う。 「親父の仕事仲間だったってだけで、オレをあの街から引き上げてくれた近藤さんのお陰っす」 煙草の灰を灰皿に落としながら呟くように言ったオレに、近藤さんが優しい笑みを返した。 「いや、奏一が頑張ってるからだ。今日も師匠がおまえの仕事ぶりに感心してたぞ? おまえのその姿、早く親父さんにも見せてやりたいよ。そのためにも少しでもよくなってくれるといいんだが……。なかなか依存症ってのは難しいもんだな」 「そうっすね……。でも親父をちゃんとした病院に入れられたのも近藤さんのお陰っすから。ありがとうございます」 オレは手元のビールの缶に視線を落としながら頭を下げた。 「そういったことにオレは協力は惜しまんが……、だが本当に奏一を変えた人間にもちゃんと礼を言っとけよ?」 「え?」 「その携帯電話の相手だよ」 「!」 近藤さんはにやりと笑ってそう言い置くと、ビールの空き缶をゴミ箱に投げ入れた。 「じゃ、明日は朝飯食ったらすぐここを発つからな。荷物まとめとけよ?」 「ういっす」 オレの返事に近藤さんは軽く頷いて部屋に戻って行く。オレは短くなった煙草の火を灰皿に押しつけながら航の顔を思い出していた。 けれどまた、あの声が耳の奥から聞こえてくる。 『奏一、大好きよ』 そう言ってオレを抱き締めた母親は、一年も経たずに他の男と家を出て行った。母親が出て行くと、親父は酒に溺れた。そして酒が切れるとオレをボコボコにした。働かなくなった親父の酒の金を工面するため、オレは中学にもろくに行かず、いろんな仕事をやった。そのうち流れ着くように夜の仕事へと足を踏み入れ、泥に突っ込んだ足が抜けなくなるように、その世界に染まっていった。 「言葉になんか、何の意味もねぇ」 残っていたビールを呷って飲み干すと、オレはその缶を握り潰した。

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