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*** 「奏一、今いいか?」 現場で弁当を食ってるオレの元に近藤さんがやってきた。 秋も終わりに近づき、外で飯を食うのも段々辛くなる。 「ういっす、どうしたんすか? なんか変更っすか?」 「いやいや、違う話だ」 近藤さんはペットボトルを片手にオレの隣に腰かけた。 「実は、昨日師匠から電話があってな。奏一、おまえを預かってみたいって言うんだよ」 「へ?」 オレは割り箸を持ったまま間抜けな返事をする。 「この前加勢に行ったときのおまえの仕事ぶりを見て、師匠が自分んところに修行に出さねえかってオレに言ってきてよ。師匠んとこだったらあんだけでかい仕事もちょくちょくできるし、将来独立することを考えたら、いろんな経験しといたがいいしな。だからおまえさえその気なら、行ってこないか、と思ってよ」 突然の近藤さんの申し出にオレは頭がついていかない。 確かに師匠の元でした仕事は楽しかった。 「でもオレ、抜けてもいいんすか……?」 「ははっ、おまえの抜けた穴なんてまだまだオレで埋められるぜ。心配すんな!」 近藤さんはいつもの豪快な笑みを見せる。 「その修行ってどれくらいの期間なんすか? また一ヶ月とか?」 「いや? 三、四年ってとこだろ」 軽い調子で近藤さんが言った。 三、四年……。 オレの頭にはすぐに航の顔が思い浮かんでいた。 *** オレはラブホのベッドでひとりテレビを見ながら煙草を吸っていた。 だけどテレビ番組の内容なんて全然頭に入ってきやしねぇ。 航は夏に一ヶ月間会えなかっただけであの不貞腐れ具合だ。 今度はどんだけごねるんだろう。 だけどまあ、三、四年っつってもその間、丸っきり会えないわけじゃねえし。 師匠の会社はこっから電車で二時間くらいだったか。 毎週末会いに帰って来てやってもいいくらいだな。ま、それで上等だろ。 それに師匠んとこで修行したら職人としても人としても、絶対、今よりでかくなれるはずだ。 そしたら、オレでも航に……。 そんなことを考えていると扉が開いて航がやって来た。 「奏ちゃん、早かったんだね」 「おう」

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