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「なんだ、これ……赤……?」 航からもらった包み紙を開けると、中から出てきたのは真っ赤な毛糸の腹巻だった。 まあ、現場の仕事は寒いけどよ。 でも真っ赤ってどうなの……。 あいつの趣味はいまだに読めねぇ。 オレはぶつぶつ言いながらもそれを腹に巻いてみる。 「あ、すげえあったけぇ」 サイズも丁度いいし。 師匠んとこに持ってくか。 そう思って一度脱ごうとしたとき、腹になにかゴソゴソとした感触が当たった。 捲って見てみると内ポケットが付いている。 ああ、カイロとか入れるんだな。 試しに手を差し入れると、何故かそこには畳まれたピンク色の紙切れが入っていた。 「……なんだ?」 開いてみるとそれは便せんで、中にはたくさんの文字が書き連ねてある。 「航の字……?」 あまり上手くはないが、丁寧になにか書かれていた。 「奏ちゃんへ……? って、なんだ、これ手紙か?」 オレは畳に座り込むと電灯の下で航の手紙を読み始めた。

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