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オレは手紙をほっぽり出すと、畳の上に大の字に寝そべった。
「はあ? 意味わかんねぇ」
そして声に出してぼやいた。開けっぱなしだった窓から冷えた風が入り込んできて、思わず小さな身震いをする。
最後って何だ?
愛してるのにさようならって何だ?
これじゃまるで別れの手……
『ガタっ』
勢いよく起き上がったせいで机の角に腰をぶつける。
「痛ってー! くそっ」
腰を押さえながらもオレは階段を二段飛ばしに駆け下りた。
「あ、奏一くん、もうご飯よ?」
台所から奥さんの慌てた声が聞こえる。
「あ、すんません、あとで食いますっ!」
オレは声を上げながら事務所のガラス引き戸を勢いよく開け、外へ飛び出した。
意味がわからねぇ。
全くわからねぇ。
何で勝手にこんなこと書くんだ?
師匠んとこに行くからってあいつを手放す気なんかこれっぽっちもねぇのに!
『奏ちゃんがオレを好きじゃないことは分かってたのに、本当にごめん』
オレは手紙の文面を思い出しながらイライラした顔付きで表通りに走り出る。
航の携帯を鳴らしながら走っているが、出る気配はねぇ。
もう家に着いた頃か?
「くっそ。航ん家って小塚公園の近くだったよな!?」
公園方面に行くため、通りを渡ろうと車が途切れるのをジリジリとしながら待つ。
焦ったオレの顔の周りを白い息が覆う。
だが、四車線のこの大通りは往来が激しくてなかなか渡れない。
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