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すると奏ちゃんがふいに動きを止めた。奏ちゃんはオレの肩口に顔を埋めていて、その表情は見えない。
「奏、ちゃん……?」
怖々と名前を呼んでみる。
もしかして、また、怒らせちゃったのかな……?
「ご、ごめ……」
言いかけたオレの耳に密やかな声が注がれた。
「オレもだ、航、好きだ」
「……っ」
一瞬、息が止まった。
そしてすぐに目頭が熱くなってきて、胸の奥がじんじんじんじんと、痺れてきた。
こんなふうに直接想いを伝えられたのも、こんなに奏ちゃんの甘い声を聞いたのも、初めてだった。
奏ちゃんが顔を上げて、オレを見下ろす。その瞳には何の迷いもなくて、真っ直ぐにオレだけを見ていた。
「そ、奏ちゃんっ!」
溢れてくる涙で、せっかくの奏ちゃんの顔がぼやけてしまう。
「も、もう、その言葉だけで、オレ、イっちゃうよぉ……っ」
「くくっ、アホ。じゃあオレのちんこは要らねぇのか?」
奏ちゃんは肩を揺らしながらニヤリと笑うと、茎を引き抜こうとする。
「い、いや! だめっ」
「ばーか、オレだってもう止めらんねぇよ」
奏ちゃんはオレの零れた涙をペロリと一舐めする。
「しょっぺぇな」
そう言ったかと思うと、最奥まで一気にオレを貫いた。
「ああっ!」
全身に熱が回る。 胸の痛みも、堪えきれない想いも、何もかもが奏ちゃんの中に溶けていく。
世界が、奏ちゃんだけになる。
「航、出すぞ」
「あっ、あ、オレも、奏ちゃんっ、出るっ!」
オレは抜けるような震えを起こすと、奏ちゃんの広い背中にしがみついた。 同時に奏ちゃんの熱い飛沫を深いところで感じる。
「航……」
オレを呼ぶ奏ちゃんの声が、幸せに浸るオレの耳の奥を、いつまでもいつまでも、くすぐり続けていたんだ。
***「おまけ・翌朝のできごと」終わり
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