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ポッキーの日SS
オレはドキドキしながら、ポッキーの端っこを咥える。そして、ベッドに寝そべって、ついた肘を枕にしてテレビを見ている奏ちゃんの背中を、指先でつんつんと突(つつ)いた。
「ぁあ?」
奏ちゃんはテレビから視線も離さず不機嫌そうな返事をする。
「あ、あの、そう、ちゃん……?」
「今、テレビ見てんだろうが」
「ご、ごめん……」
オレの甘い計画はあっけなく崩れた。
まさか、オレが咥えたポッキーの端を奏ちゃんが齧ってくれて、そして、そして……、出合った唇同士が、ちゅ、ちゅーをする、なんてそんなこと、ない、よね……?
「はあああああ」
オレは深い溜息を吐きながら、ひとりでポリポリとポッキーを食べ始めた。
「あ? なんだったんだよ?」
コマーシャルになったからなのか、奏ちゃんがめんどくさそうに振り向いた。
「あ、あのね、ポッキー食べる?」
オレは手に持っていた箱をおずおずと差し出す。
「今日ね、十一月十一日はポッキーの日なんだって。だから……」
「ふーん、じゃあ食う」
そう言ったが早いか、奏ちゃんはオレの肩に手をかけるとベッドに押し倒した。
「え、わっ……! んん、んあっ」
そして、いきなりキスをしてきかと思うと、無理やりオレの唇を肉厚な舌でこじ開けた。
「んんんっ、ふあ」
突っ込まれた舌先に口内を掻き乱される。蠢く熱はオレの舌を絡めとり、口の中に残っていたポッキーの甘い余韻を舐め回し、吸い上げる。
「うん、甘(あめ)ぇな……」
やっと唇を離した奏ちゃんが眉根を寄せてぼそりと呟いた。
「はぁ……、そ、奏……ちゃん……! そっちじゃなくて……、ポ、ポッキー……」
奏ちゃんからの突然の深いキスに、オレの息はとうに上がってしまっていた。心臓がドクドクと音を立てて鳴っている。
「だけどよ」
そう言うと、奏ちゃんはオレのセーターとシャツを一気に捲り上げた。
「え……!」
驚くオレの胸元に顔を近づけ、乳首をぺろりと舐める。
「あんっ」
「こっちのほうがもっと甘ぇし……」
「ああっ!」
もう片方の乳首も指先にキュッと摘まれ、全身に快感の電流が走る。
「オレはおめぇのほうが食いたいけど?」
掠れた低い声に耳元でそう告げられ、ぞくりとした期待がオレの背筋を這いのぼってきた。
そ、奏ちゃんが……、ポッキーよりオレのことを……!
全身がこれでもかと熱くなる。
「う、うん、食って! オレのこと、全部食べてっ!」
「りょーかい」
上ずる声で懇願するオレを見下ろして、奏ちゃんはふっと眉間を緩ませると、手探りでリモコンを掴み、腕だけを後ろに向けて、プツリと騒がしかったテレビを消した。
「あ……、んんっ」
そしてすぐにまた、貪るようなキスが再開される。
11月11日、オレと奏ちゃんは、ポッキーよりも甘い時間を過ごしました、とさ☆
***「ポッキーの日SS」終わり
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