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生徒会長の特別なお仕事の説明 3
通称、デウスの私兵と呼ばれる学園側が生徒の中に紛れ込ませた情報網がある。
このおかげで俺は高校二年から生徒会長の席に座った。
高校からの外部生が生徒会長になるのは稀なことで反発も少なからずあったが、親衛隊の数が日に日に増えているので何とかなっている。数の暴力だ。
誰がデウスの私兵にあたるのかは知らないけれど学園の情報源だ。
デウスの言い分を頼りに俺は肉体的に、精神的に、雌になっている生徒を自分の親衛隊に入れて雄の本能を目覚めさせていった。
【今月、ネコからタチに完全に軌道修正が認められた人数は十名です。おめでとうございます。十賢者からご褒美アイテムが得られます。お金、宝石、書物、何にしますか?】
携帯端末から明るい声が聞こえた。画面には犬の着ぐるみを着たジト目の少年。これがデウスであるらしい。声は明るいがあまり表情が動かない。手抜きなのかと思ったが犬の着ぐるみは犬の種類が毎日変わっていたりする。
髪型も前髪が目を隠すようなときから、ヘアピンでまとめている時やおでこを完全に出してる時など様々だ。ただ表情はいつも変わらず無表情。そういうキャラ付けなんだろう。
俺は詳しくないけれど常駐アプリというらしく音声認識をしてくれるので疑問を口にすると勝手に検索かけてネットから必要な情報を揃えてくれる。
俺のセックス記録もこのデウスが管理してオジサマたちに伝えているらしい。
それを分かりやすく今月の達成目標や今週の成果なんて形で教えてくれる。
ポイントを溜めたりアイテムゲットなんてゲームみたいだ。
デウスの私兵が集めた情報もネットを介していつの間にか情報を受け取っているらしくて更新されると教えてくれる。
オジサマたちの孫やひ孫以外の雌化男子たちも俺はきちんと雄に戻して卒業させるようにしている。
亡き理事長や現理事長の密かな願いというやつだ。
学園を卒業して後ろの快感を求めてアウトローな道に入られたら折角のエリート教育が台無し。
卒業した後きちんと各業界で華々しく活動してもらってこそ学園の意味がある。
そんなわけで俺は微妙に恋人たちの邪魔をしたり淡い恋慕を潰したりもした。
恨まれるかもしれないが学園を出て別れてしまいそうな絆しかないやつらはここで終わっていてもらう。
「デウスは俺に何が必要だと思う?」
【若君は知識量が不足しています。でも物事を深く考えずに受け入れてあげるあなたの懐の広さは今回のミッションに必要な資質です。我々が行っているネコタチプロジェクトは社会不適合レベルに学園に染まった生徒への救済案です。彼らに必要なのは言葉による説得ではないのです】
デウスの言う、若君というのは俺だ。
ちょっと偉そうでうれしい。デウスは俺を褒めて伸ばしてくれながらちゃんとダメな部分を指摘してくれるから好きだ。
【来週から接触を図る予定の図書委員には十賢者が揃えることが可能な絶版になった書物が有効です】
「ならそれでいいよ」
【若君が目を通しそうにないのが残念です】
「図書委員の子にあげればいんだろ」
【はい、間違いなく相手の警戒心が緩まり好感度が上がります】
「ならそれでいいよ。俺は……そうだね、デウスが褒めてくれたらそれがご褒美かな」
【いつも若君はとても素晴らしいです。無欲により十賢者からの好感度は急上昇です。勝手ながらデウス・エクス・マキナのバージョンアップ申請をしておきました。バージョンが上がりますと更に若君のお力になれると思います】
本当に勝手というかちゃっかりしている。無表情でピースしているのがかわいいので画面を指で撫でるように触れる。
ジャンプして喜んでくれたのでコマンドでお菓子を与えておく。
【緊急を要する案件はありません】
「図書室に行くのは来週からでいいの」
【そうですね。話題合わせの為にも多少は読書をされるといいかもしれません】
「えー、無理だな。寝ちゃうもん」
【若君はアニメーションになっているものを見るといいかもしれません。小説との違いは解説します】
「それならいいかも」
デウス、マジで神である。
使えすぎて手放せない相棒。
俺の仕事のことも何もかも知っている。
アバターを作ってコミュニティに入って色んな人とおしゃべりみたいなことが出来るらしいけど、俺はデウスとだけでいい。オジサマたちに呼ばれることがあるからアバターは作ってはいるけれど自分のネット上の姿よりもホーム画面でデウスの動きを見ている。勝手にお菓子を食べようとしたり着ぐるみを脱ごうとしてチャックが引っかかったというちょっとしたイベントが起きていたりする。見ていて飽きない。
【食堂で季節のババロアが新メニューとして発表されました!! シェフ自慢の一品らしいです】
こういう何てことない情報を教えてくれるデウスがいるから友達がいないけど今のところ孤独じゃない。
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