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生徒会長の特別なお仕事の説明 7
朝起きると身体は綺麗でちゃんとベッドの上。
しかも、朝ご飯のいい香り。
簡易キッチンもまで走っていって「おはよ」と挨拶。
エプロン姿の翠皇が四人分の朝食をテーブルに並べていた。
そんな翠皇に後ろから抱きつく。
「翠皇のこいうとこ、愛してるっ」
起きた時に朝食があるというか朝食の音や香りで目覚めるとか最高。
汗や精液でベタベタじゃないっていうのもポイントが高い。
翠皇はちゃんと俺が途中で寝てしまっても処理してくれる。
俺よりも遅く寝て俺よりも早く起きてくれる、まさに良妻。
デウスが「若君は替えの利かない貴重な人材の確保がお上手」と日夜スキルアップし続ける翠皇を評価した。
翠皇の評価は俺への評価。
親衛隊の個人が地位を高めると同時に俺自身も「あの有名な方が親衛隊に入っている生徒会長はもっとすごい」となる。
これもこれで生徒会長になるための地盤作りとしてデウスからのアドバイスを実行した結果。
かわいいネコとして有名な先輩は見た目がかわいいだけじゃない。何かしら他の部分も秀でている。
でも、大体が評価されない。
かわいい顔だけを褒められて行動を見てもらえない。
そこが流されネコになる根本的な理由だ。
誰かに必要とされたいという気持ちは俺も分かる。
だが、彼らの欲求は本当は肉欲的に求められることじゃない。
認められることだ。
肉体美、容姿を褒められることじゃなく自分の言動を、存在を周囲に正しく見てもらいたがっている。
それは難しいことでついつい手軽に満たせる快楽に浸る。
男なら妥協するなと呼びかければ火がつく奴は多かったので百パーセント納得づくで男に抱かれていたわけでもないんだろう。人によっては家を盾にされたとか友達を人質に取られているなんていうのもあった。もちろん、事実無根。脅しをかけている側にそんな権限はない。騙されていたのだ。
一年の生徒会長未満だった俺でもなんとかなることは多かった。ただ生徒会長の肩書きを持っていた方がより権力を使いやすくて悩める子羊を救える。
デウスの助言の通りに発言力のある先輩たちを先に籠絡したからか会長就任まではスムーズだった。
「翠皇は偉大だな!」
もちろん、生徒会長就任は翠皇の力添えも大きい。
最初に生徒会長になると話した時にあまり良い顔はしなかったのに俺が本気だと分かると全力で支援してくれた。
翠皇はオジサマたちと同じで俺のわがままを実現させることに快感を見出している。
家事なんか全然できなかった翠皇が俺の何気ない一言で呼び出した日の翌朝にこうして朝食の用意してくれるようになったのもその一つ。
お金持ちで調理実習なんてほとんどない授業のせいか包丁をまともに使えなかった翠皇。それが今では純和風な朝食をきちんと作り上げて提供してくれる。やったことがないとはいっても翠皇は器用だから料理も出来ないってことはないらしい。
「若様、小松菜和えたの俺です!!」
「会長様、グリーンスムージー作りました!!」
褒めてと言いたげに自分の成果物を見せる、ちみっこ二人に「愛してるぞ」と言っておでこにキスしておく。俺が一番起きるのが遅かったらしい。まあいつものことだ。俺をご飯が出来上がるまで起こしたりしないところに愛を感じる。
顔を洗いに行って戻ってくると三人は席についていた。なんだか、俺を待っていてくれているというのがむずがゆい。
翠皇がいるせいかべたべたと引っ付くことはなく普通にしている。いいや、そわそわして触れられたがっている。
今までのネコ的意識があるのでぐいぐい前に出てくる男らしさじゃなく控えめ謙虚な顔でいるのが童貞を捨てた後の彼らの独特な反応。一度抱いたからといって「藤森わかなは俺のオンナだ」みたいな主張は誰もしない。
会長様に触れさせていただきありがとうございます、みたいな空気。
嫌いじゃないので微妙に緊張している二人のほっぺたにキスをする。翠皇にはディープキス。これで「ずるい」と思えたら雄の目覚め。
今日は美容と健康でも重視しているのか緑の食卓だ。
どうにもこうにも草っぽい。鮭が薄いピンクで緑の中のアクセント。
味噌汁とご飯があればわがままを言わない俺は「ありがとう」と三人に礼を言う。
顔を真っ赤にする親衛隊の小柄な二人と噛みしめるように幸せを味わっている翠皇。
よくある朝のこの風景を俺は気に入っている。この学園に来てよかった。
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