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生徒会長の特別なお仕事の説明 9
「エレベーターがなかなか降りてこないと思ったら貴様はまたっ」
エレベーターは一基じゃないのでエレベーターを使いたいだけなら別のものが下に来ただろう。観察されていたらしい。
百九十センチを超える長身でがっしりとした肉体派風紀委員長。制服はきちんと着用せずにTシャツ。白いTシャツには筆文字で「愛」の文字。何それ。「怒」の間違いじゃないの。
「朝から怒るなよ。男らしくねえな」
「俺を男らしくないなんて……」
「言われたことがなかったら男らしいとでも思ってんのか? くだらない。小さいことにこだわらずに受け入れるのが男の度量だろ」
皮肉気に笑うと怒りのボルテージを上げていく風紀委員長。この学園で格好いいという扱いらしい風紀委員長は俺の親衛隊以外にキャーキャー言われている。俺の親衛隊はもちろん俺だけに夢中だ。
楽しかった感覚に水を差されてムカッとするが俺は風紀委員長が嫌いじゃない。この風紀委員長の童貞は俺が貰ってやっている。だから「坊や、大人になったな」みたいな気持ちでいる。
俺はバッチリメイクでゴスロリ衣装だったので風紀委員長自体は自分が童貞を捧げた男の娘が俺だと気づいていない。昔は美少女さながらだったから今のデカい俺に気づかないのも無理はない。教えてやったらどんな顔をするだろう。
昔から今まで変わらぬエロさが俺にあると思うが童貞を失う記憶とは曖昧になるものだ。オジサマいわく俺ともう一度会わせて欲しいとうるさかったらしい。初恋も童貞と一緒に貰ったのかもしれない。そんな相手をお前は日常的に怒鳴りつけて、あとで気づいて後悔するぞ。
オジサマの孫の一人なので俺は風紀委員長に気安い。周りは家柄を考えて引き気味で俺様何様の態度を許しているらしいけど家の力でどうこうするなんていうのは俺には通用しない。風紀委員長に対して堂々とした態度もまた俺の人気をプラスにしているという。
風紀委員長、遠巻きに見られて勝手に決めつけられて決められるとは哀れ。
俺のようにかわいい親衛隊に囲まれて朝からキャッキャッと出来るわけでもない憎まれ役、お疲れ様です。
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