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生徒会長の特別なお仕事の説明 11
書記先輩がくれたのはマドレーヌだった。彼自身が作ったらしい。
胸のあたりまである長い黒髪は枝毛一つなく、スッと通った鼻筋と切れ長の瞳はミステリアスさがある。男性的な魅力というよりは中性美を極めている。
紅茶を出して一限目をサボる気満々の先輩は俺にマドレーヌを食べるように勧めてくる。
事前にデウスから食べ物を口にするように勧められたら食品内に薬物の可能性大だと教えられているので受け取るだけで食べない。
飲み物も多分アウト。
以前に書記先輩に痺れ薬とか媚薬を盛られて拘束プレイで一方的に食べられたことがある。
SMプレイも書記先輩も嫌いじゃないけど、俺の同意を求めてないのはムカつく。まずは許可を得てからだろ。しかも興味本位だっていうんだから最低だ。復讐として綺麗な髪を一房切らせてもらった。
デウスはハゲにしないなんて優しすぎると褒めて慰めてくれた。ちなみに俺を襲ってからの一週間、書記先輩には小さな不幸が立て続けだったらしい。鳥の糞が頭に落ちたり食堂で注文を立て続けに間違えられたり提出したはずのプリントがなかったり持っていたはずの服が消えたり。絶対に俺は関係ないと思うけど俺に軽く謝った書記先輩。地味な不幸はなくなったらしい。
わざわざデウスが「自分なにもしてないっすよ、自分関係ねえっすから」とあからさまに怪しいところを見せていたので私兵を動かしていたのかもしれない。デウスはときどき勝ち逃げ撲滅の鉢巻きを頭にして「ハンムラビーハンムラビー」と言っていたりする。きっとワラビーとかの親戚の着ぐるみを着てたんだろう。
茶色でもこもこしていたかわいかった。
「食べてくれないの?」
「副会長にあげていいですか?」
「えー、もっと面白いことしようよ。……あ、風紀委員も入れてロシアンルーレット?」
「あたりは?」
「三時間発情しっぱなしの媚薬。中毒性はございません」
「それは絶対に嘘だ」
「用法用量を守ればね。中毒にはならないよ」
「守ってない量をマドレーヌに入れてるんですね」
書記先輩はニコニコ笑って答えない。が、これは肯定ってことだ。三時間どころか一日潰される。そして定期的にクスリかセックスが必要になる。
無理やり食べさせてくることはないが期待するように俺を見てくる書記先輩。これはダメ人間だ。
俺のことを嫌っているというよりむしろ気に入られていると思う。
それなのに書記先輩は堂々と俺にセックスの誘いをしてくるんじゃなくてこうやって変化球に攻めてくる。
別に書記先輩の綺麗な顔は嫌いじゃないから誘われたら乗ったっていいけどクスリに頼ってなし崩しは好きじゃない。
流されたりするのは本当じゃない。
その場の空気で決めてしまっているだけで本当の答えじゃない。
冷静になって落ち着いたら後悔したりするから自分の意思で物事を決定しない人は好きじゃない。媚薬で快感がトロトロになった俺が誘ったとか責任を押し付けてくるようなズルさがある。
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