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第2話 捕り物
「康太は勝手に動く時もある。
真贋として動く場合は、俺等には何も言わねぇ
そう言う時もある。
問い詰めたりすんじゃねぇぞ!
康太の動きを邪魔すんな!」
一生は、榊原でも康太の動きを邪魔させる気はなかった
「僕は邪魔などしませんよ。」
「解ってんよ!
お前は康太の伴侶だかんな。」
後は、一生は何も言わず飯を食っていた
教室に帰ると、康太は帰ってはいなかった
鞄は、そのままあるのに……
一生は、異変を感じていた
「慎一、伊織には話すな!
そして隼人を見ててくれ!」
と、慎一に頼むと一生は聡一郎の手を掴んで飛び出した
「聡一郎、康太を捜す」
聡一郎は、頷き、A組は通らずに遠回りして探しに行く
康太は果てを見て嗤っていた
………と、言う事は、自分の意思で消えたと言うのか?
一生と聡一郎は、1年から空き教室を片っ端から探した
1年の空き教室には、康太はいなかった
2年の空き教室にも、康太はいなくて……
3年の空き教室にさっきまでいたけど、
もう一度探しに行き、いなかった
「兵藤が絡んでるなら教室にいないよな?」
一生は、それしか思い付かなかった
聡一郎は、こっそり、A組のクラスを覗いた
すると……兵藤はいた
榊原にバレないように、隠れる
「一生、兵藤は教室にいる…」
なら……何処にいるんだ?
一生達は、体育館の方へ行き、体勢を整える為に隠れた
「校舎にはいないのか?」と一生は、呟いた
「空き教室じゃない所にいるんでしょうね?」
と、聡一郎は可能性を吐き出した
3年A組の授業中、兵藤は、立ち上がり
「気分が悪いので……保健室に行きます。」
と、クラスを出て行った
榊原は、訝しんだが、授業に集中した
最近……成績が下がった
進路指導の教師からは康太と付き合ってるから成績が下がるんだ……と、言われ……
親を呼び出された。
意地でも次のテストでは良い成績を取るつもりでいた
暇があると、仕事して勉強して……
前の様に、康太にベッタリの生活は自然と出来なくなっていた
康太は真贋の仕事も増えて来た
力哉と出掛けるその場に、伴侶と言えど同伴出来ない時もあった
それに同伴ばかりしてたら、勉強が疎かになるし、仕事も……影響が出る
脚本を書かねばならない……時もあり……
脚本の打ち合わせに出る日も多くなり、最近は別行動が多かった
榊原は、その日、打ち合わせが入っていて、打ち合わせ場所に行かねばならなかった
授業が終わると、C組のクラスに行くと…
康太達は帰ったみたいで、榊原はそのまま打ち合わせ場所に向かった
隼人を神野に預けて仕事に出した慎一は、一生と聡一郎に合流した
「一生、康太の居場所は?」
「解らねぇ…何か考えがあって消えたのか?」
「兵藤は?」
「午後一の授業で消えた。」
一生と聡一郎は、唸った……
慎一は「ならば、康太は兵藤と何かをやる気なんでしょうね?」と、呟いた
やはり……それしか思い当たらなかった
「最近、伊織は仕事と勉強で必死ですからね。康太の相手すらしてないみたいですし…康太が可哀想です…」
聡一郎が怒りを露に言う
「聡一郎!伊織は成績が下がった。
それら総て、康太と付き合っているからだ!と、言わたらしく……
何も言わせない為に必死なんだ!
康太は納得している!お前が言うな!」
一生に怒られ、聡一郎は黙った
慎一は「伊織は完璧主義ですからね。
手を抜かない分、皺寄せが来るとキツいな…」と、呟いた
一番冷静に、状況や心情を判断するのは、慎一だったりする
その時、一生の携帯の電話が鳴った
電話に出ると、兵藤からだった
『帰れ!お前達が残ってると、邪魔だ。帰れ!』
「何をしてるんだ?」
『康太が帰ってから聞け。
お前等がいると警戒して出てこねぇ!
早く片付けねぇと、康太は家に帰るのが遅くなる。
そしたら、榊原が出て来るだろ?
榊原が出て来たら、康太の苦労が水の泡だ
絶対にアイツを出させるな!』
「康太は伊織の為に動いてるのか?」
『アイツが動くのは何時も!家の為、伴侶の為!お前等の為じゃねぇのかよ!
その康太が動いているなら、お前達に心当たりがねぇなら伴侶の為だろうが!
解ったら帰れ!』
「必ず康太を無傷で返せ!
約束するなら帰る!」
『俺の命に変えて無傷に決まってるだろ?』
「解った……帰る。」
『元は榊原の所為だからな、絶対にアイツを学校に越させるな!解ったな!』
「解った!絶対に阻止する!」
一生がそう言うと、電話は切れた
「帰るぞ!此処に俺等がいたら、康太は帰れないらしいからな…」
一生が言うと、聡一郎は「聞こえてました。帰りましょう!」と答えた
慎一は康太の荷物を持って、帰宅の徒に着いた
宿直室にいた康太に兵藤は「アイツ等、帰ったぞ!」と告げた
「なら、動き出すな 」
と、言い、康太はお茶を啜った
中等部の科学教師、佐野春彦に玉露を入れてもらい、康太はお茶を啜っていた
物凄く豪華な重箱の夕飯を、学園の理事長である、神楽四季に差し入れてもらった
流石は康太の胃袋を計算した差し入れで、三人の胃袋を満足に満たしてくれた
平らげた後に、玉露入れてもらい満足していた
康太のスマホの電源は切ってあった
「なぁ貴史、今夜出なかったら、明日も行方不明だなオレ……」
「我慢しろ!
解決するまで、行方不明しかあるまいて。」
兵藤に言われ、康太はPC佐野から借りる
康太は瑛太に『瑛兄、オレが家に帰らなくても騒がずにいてくれ
そして、知らん顔していてくれ。」とメールを送った
瑛太から『了解。』と言う返事を貰った
兵藤は頭の痛い問題を直視して文句を謂った
「榊原が、完璧に引き継ぎしねぇから、こう言う問題が起きるんだろうが!
横領されても、前期の執行部 部長の所為に細工すれば、榊原が横領した事になるしかねぇもんな!」
「かなりの金額、横領されてんだよな?」
「前期が残した200万円は、軽く横領されてるな。」
「伊織に好きです…付き合って下さいと、ウザい位に着き纏って、執行部に近寄らなくして
その間に前期が残した金額を盗む……セコすぎ。」
「文句は亭主に言え!
出たか?横領の証拠?」
康太はPCで、横領の履歴を弾き出していた
「貴史、出たぞ!
これで逃げられねぇな。」
康太は嗤った
宿直室のモニターが作動しだした
佐野が康太に「康太、証拠隠滅に来たぜ!」声をかけた
モニターには石田琉生ら5人の生徒の姿が写し出されていた
「貴史、配置はしてあるのか?」
「バッチリ配置してある。」
兵藤が謂うと康太はこれで決まりだと嗤った
「証拠隠滅しようにも、ロックかけてあるから作動すらしねぇかんな!」
康太は不敵に笑った
佐野の携帯が鳴った
佐野が出ると、捕物終了を告げる電話だった
「康太!捕物終了だ。
執行部の部室に行くぜ。」
佐野が立ち上がると、康太と兵藤も立ち上がった
執行部 部室に行くと、石田や現執行部の役員が数人、捕まえられていた
「証拠隠滅に来たのか?愚かな…」
康太が呟くと、石田は康太を蹴り上げた
蹴り上げた石田の足が……康太の唇の端を掠めて行った……
康太の唇から紅い血が流れ落ちた
兵藤が頭に血が昇って、殴ろうとするのを……
康太が止めた
「貴史、止めろ!」
「殴り殺してやろうか?
俺はアイツ等に無傷で返すって約束したのに……命に変えてって言ったのに…」
と、兵藤はブチブチ文句を言って、押し留まった
「貴史、アイツ等に手は出させねぇかんな。安心しろ。」
康太は、兵藤を落ち着かせてから、石田を見据えた
「傷害罪も成立だ。さぁどうする?」
康太が言うと、石田はフンと、そっぽを向いた
石田ら執行部の役員は、現行犯で捕まった
夜中までかかった捕り物は、終わりを告げた
夜中と言う事で、その日は帰る事になった
話し合いは翌日、親を呼び出し説明してから、進退を告げる…と、理事長からの指示が出て、その日は帰る事なった
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