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第7話 怒り

週末…。 康太は朝からスーツを着ていた 康太達の寝室の隣の部屋にベビーベッドを入れた 当初から寝室の隣の部屋にベビーベッドを入れる予定でソファーの横にスペースがあった 榊原も、朝から康太と共にスーツに身を包んでいた 京香の退院の日だった 京香を飛鳥井の家に連れ帰ってくる 二階の客間は、京香が何時帰っても良い様に支度されていた 昨夜のうちに玲香が、入院費の精算に行き、今日は退院前に検査したら帰れる様になっていた 「康太、行きますか?」 榊原が、康太に手を差し出した 康太はその手を取って、手の甲に接吻を落とした 「伊織…子持ちにさせる…すまねぇ。」 「君の子供なら、僕の子供でしょ? 僕は良いパパになりますよ。」 「伊織は……優しいパパになる。」 「さぁ迎えに行きましょう。 僕達の子供を。」 康太は榊原と共に一階まで降りて行くと、家族揃って……応接間にいた 父、清隆は康太を見ると抱き締めた 「康太、絶対に落とすなよ…お前は雑いからな……父は心配だ……」 榊原が「僕が見てるんで……大丈夫です。」とフォローした が……飛鳥井の人間は……康太に買ったばかりの茶碗に始まり…… 陶器は家宝まで割られた……。 父親のゴルフクラブを曲げたり…… 触るもの総て破壊の限りを繰り返した、雑い息子に苦言を呈するのは仕方がなかった…… 瑛太はそっと康太を抱き締めた 「総てはお前の想いのままに……」 瑛太はそう言い……康太を送り出した 玄関を出て、榊原の車に乗り込む 康太を助手席に座らせると、榊原は車を走らせた 「オレに子育てなんて出来るのかよ… 本当に落とさねぇ様に気を付けねぇとな……」 康太は……何か心配になった 「大丈夫ですよ。僕がいる。 一生がいる、聡一郎がいる 隼人も慎一もいる 飛鳥井の家族がいて、源右衛門もいる 恵まれた環境ですよ? 頑張りましょうね。」 康太は目を閉じ… 「あぁ…そうだな。 でも……飛鳥井は特殊だ…一歳になれば……毒を食らう…… それは避けられねぇお前に反対されてもな……」 「真贋……でしたね……仕方ありません 僕はそれには口を挟みませんよ?」 「真贋として……生きさせねばならぬ… じぃちゃんも……こんな想いをしてオレを育てたのかな……定めでも……重すぎる……」 「受け継がれし事には……重き想いがある。 君が変えて良いものではありません。 源右衛門も悩んだんでしょうね…… 今の君のように……況してや……君の産まれた頃には伴侶も亡くしてた…… もっと大変で……辛かったでしょうね…… 君には僕がいます。 だから……悩まないで…」 榊原は、康太を頬に手を伸ばした 病院の駐車場に車を停め、京香の病室まで迎えに行く 京香の、今までの服は、総て処分した 入院してる時のパジャマは総て玲香が揃えた だが、康太が連れて帰る以上は、康太が揃えねばならなかった。 真壁での京香の服は総て処分した これから、生活を始める以上は…総て揃えねば…… 色々と思案したが、いかんせん……康太も榊原も男だし 康太に至っては……自分で服すら買った事がなかった。 康太が運気を呼ぶために花菱デパートに出向いた時に、副社長の道明寺に相談したら 「私で良ければ、お力にならさせて下さい。」 と、言ってくれ、京香のスリーサイズを女性店員に取りに行かせ 下着から洋服、化粧品まで、サイズを取りに行った店員と道明寺が吟味して選んでくれた商品だった 大量の購入って事で、康太は赤ちゃんの退院のドレスやら、ベビー服をプレゼントしてもらった 「割に合わないぞ…」と、康太が言うと、 「貴方が運気を詠んで下されば、我が社は痛くも痒くもなくなりますから。」 と、道明寺が悪戯っ子の様な顔で笑った 11月の最終日の定休日の日に本格的なリフォームの打ち合わせに行く事になっていた。 飛鳥井の家に京香の服は届けられ、直ぐにでも生活出来るようになっていた そして退院の日、道明寺が派遣してくれたスタッフが、京香に化粧をして、着飾ってくれている筈だった。 そして、赤ん坊に退院のドレスを着せてくれる……と、道明寺は言い、約束してくれた 道明寺から「支度は出来ました スタッフが引き揚げましたので、お逢いください」 と、電話を貰い、病院へ来た康太と榊原だった ドアをノックして開けると、そこには綺麗に化粧を施され 女優顔負けの美しい京香が、レースのドレスに包まれた赤ん坊を抱っこして座っていた 「京香、迎えに来たぞ 綺麗にしてもらったな とても美しいぞ。」 康太は赤ん坊を榊原に渡すと、京香を抱き締めた そして榊原から赤ん坊を貰うと、榊原も京香を抱き締めた 「とても美しいですよ。」 と、頬にキスをした 榊原は、京香の荷物も持つと 「先に荷物を車に持って行きます 待ってて下さい。」 と告げ、荷物を持って病室を後にした 「康太……私が飛鳥井に帰って良いのか?」 と、京香が心配そうに話し掛ける 「瑛兄と、沢山話したか?」 京香は、首をふった 康太が帰ると、翔を抱っこすると……帰ったと言った 「キス位しなかったのか?」 「元々キスは滅多にしてはくれぬ エッチも……気が向けば……する……。 瑛太は康太に似た、あの子しかダメなのかもな…」 「瑛兄と、オレに似た男は別れさせた。 永久に逢わぬと約束させた。 今度逢ってるのを見たら……オレは瑛兄を切ると…脅した オレのいない世界で生きろ……と言った だから、もう逢わねぇよ 心配するな…もう男には行かねぇよ。」 康太は京香にそう宣言した 「京香、オレがお前を女にしてやる。 今まで味わえなかった…快感を与えてやる だから……オレに任せろ オレは遣れぬが、お前達に絶対のものを与えてやる。」 康太は京香の顔に手を遣り、顔を上げさせた 「オレがお前に瑛太を与えてやる…。」 康太の瞳を京香が見る…… キスしそうな近くまで、康太と京香の顔は迫っていた とても官能的な光景だった 榊原が病室に入って……声をかけるのを躊躇う程に…… 「さてと、京香、帰るぞ。」 康太は京香の手に子供を返した 「退院するまで、お前が抱き締めて退院しろ。」 京香は頷いた 康太はナースコールを押すと 「飛鳥井京香、退院します。」 と、呼び掛けた 「正面玄関に車を着けて下さい お見送り致します。」 と、声が返り、康太は解りました、と言い支度をした 「伊織、車を正面玄関に着けてくれ。」 康太が言うと、榊原は、解りました……と、言い、病室を出て行った 榊原が正面玄関に車を停めたと、康太に電話を入れた 康太は病室を出て、京香と歩き出した 正面玄関に行くと、ナースと医者が総勢でお見送りをしてくれる事となった 康太と京香が通ると、頭を下げて見送り、通りすぎると拍手を送った 康太は揺ったりとした足取りで玄関前に立つ院長に挨拶した 康太は車の前で待つ榊原を呼ぶと、院長に 「世話になった。 飛鳥井家の真贋として、礼を言おうぞ。 我が姉、京香を無事出産させてくれて、本当に助かった。 何かあれば、お前の融通を聞いてやろう。 そして、此処にいるが、我が伴侶だ。 オレ共々宜しく頼む。」 康太は院長に榊原を紹介した 「院長の村瀬です。お見知り置きを。」 「榊原伊織です。」 榊原は軽く会釈をした 「榊原……榊清四郎様と御縁の方とか……」 院長は……康太を見て問い質した 「榊清四郎の次男になる。」 「そうでしたか。 今後も宜しくお願い致します。 退院、本当におめでとう御座います。」 院長が頭を下げると、全員が一礼した 康太は院長に頭を下げると、車の方へ行って、後部座席のドアを開けた 京香を乗せると、康太は一礼して車に乗り込んだ 車を走り出させてから、榊原は 「何か……凄い大層なお見送りでしたね…」 と溢した 「あぁ。院長は母ちゃんの弟だ 彼処は玲香の実家だ 院長の身内だからオレは。 見送らねぇと、母ちゃんに顔が立たんだろ?」 と、康太はさらっと言った 「義母さんは……あんな大病院の娘なんですか!」 「うちの母ちゃんは、名家の出だぞ。 親戚は学者に医者に博士……TVに出てる学者とかいるかんな。 母ちゃんは、医大に入った年に父ちゃんと出逢って……惚れて、総てを捨てた 父ちゃんに惚れて押し掛け婚しちまったかんな 惚れて惚れて……死んでも良いと泣いて結婚してもらった……と、母ちゃんは良く言ってた。 それ位…母ちゃんは父ちゃん愛してるんだよ 未だにあの二人は熱々だ。」 榊原は、言葉がなかった…… 「オレも伊織が好きで好きで……死んでも良い程……好きだ。」 「康太……」 康太は榊原を見て笑った 後部座席の京香の表情は堅かった 飛鳥井の家へは、昼前には着いた。 駐車場に車を停めると、康太は車を降り、後部座席のドアを開けた 赤ん坊を預かると、京香を車から下ろした 「大丈夫か?」 康太に聞かれ京香は頷いた 京香に赤ん坊を抱かせ、康太は飛鳥井の家の玄関を開けた 「只今帰りました。」 と、言うと応接間に、全員顔を出した 「父ちゃん、翔だ 飛翔の翔の字を取って翔だ。」 清隆は、京香から子供を貰い、その腕に抱いた 「京香、上がれ まずは挨拶してから部屋を案内する。」 康太の腕が京香を抱く…。 優しくエスコートする腕に……榊原は嫉妬した 康太は京香を連れて応接間に入ると、何時もの席ではなく、空いた席に京香と共に座った 「京香だ。 飛鳥井の家族は周知だろうが、オレの大切な存在は知らねぇだろ? 紹介しとく 名前を呼んだら、京香に挨拶しに来てくれ。」 そう言い、康太は一人ずつ名前を呼んだ 京香は、必死で康太の大切な存在を覚えようとした 一生、聡一郎、隼人、慎一、力哉を紹介して、最後に榊原を紹介した 康太が「そして、最後に、オレの伴侶の榊原伊織だ。」と紹介した 榊原は、京香の側に来ると、宜しくお願いします。と挨拶をした 榊原が側に来ると、康太は腕を伸ばした。 榊原は康太を抱き上げると、そのまま何時ものソファーに戻り、康太を膝の上に乗せたまま座った 康太が榊原に甘える 「母ちゃん、院長が丁重な見送りをしてくれた 何かあったら融通を聞くと話して帰って来たぞ。」 榊原の膝に乗ったまま、玲香に話すと 「そうか。何かあったら、聞いてやってくれ。」と頼んだ 康太は榊原の膝から降りると、立ち上がった 「12月に、入ったら、京香を飛鳥井の正式な嫁にする 婚姻届も、X'masに出す。 子供は、1ヶ月、京香と共に暮らすが、一ヶ月後は、一階の総代の部屋で瑛太と夫婦として暮らす。承知をしてくれ。」 玲香は「飛鳥井家の真贋が決めた事。 我は異存などありはせん。 家族も同じ考えじゃ。 京香、産後だ。無理をするでないぞ。」 と言い、微笑んだ 「母ちゃん、今日の京香は綺麗だろ? 花菱デパートの専門職の人間が来てやってくれた。 服も、副社長の道明寺の見立ててくれた! 似合ってるだろ?」 康太が言うと玲香が「花菱?……懇意にしておるのか?」と尋ねた 「買い物に行って、知り合って運気を見てやった 伊織のこのネクタイは道明寺の見立てだ 似合ってるだろ?」 康太はそう言い、榊原のネクタイを見せた 家族は……成る程。と、納得した 「オレの伊織は良い男だからな モテるから、オレは心配だ。」 康太が榊原に腕を伸ばし抱き着いた 一生が、無理矢理剥がし、康太を座らせ 「産後の女性を放って、今心配せんでも、旦那は康太にベタ惚れだって さっさと、部屋へ案内してやれ!」 と、怒鳴った 「慎一、翔を抱っこして二階まで連れて来てくれ。 一生、荷物を持ってくれ。それから、伊織!」 康太は役割をテキパキ振り分けた 名前を呼ばれ榊原は「何ですか?」と康太へ問い掛けた 「オレを抱き上げて連れて行け。」 榊原は、笑って康太を抱き上げた 康太の腕が榊原の首に回される…… 「京香、行くそ。 父ちゃん、翔を慎一に渡してくれ。」 清隆は慎一に翔を渡した 一生が応接間を飛び出して行く 榊原に抱き上げられた康太は「京香、行くぞ。」と告げた 京香は、家族に一礼すると、応接間を後にした 康太は榊原に、抱き上げられ二階へ向かう 京香は、その後に着いて歩いた 二階の部屋の前に着いたら、康太は榊原の腕から降りた 「京香、X'mas頃まで、此処で暮らせ。」 康太はそう言い部屋へ案内した 部屋の中にはベビーベッドもあり、直ぐにでも生活出きる状態になっていた 軽い調理なら出来るように流しもあり、IHの調理器機も備え付けてあった 京香は康太に「ありがとう。」と、告げた 康太は京香の頬にキスをした 「今日はゆっくり休め。 翔は側にいた方が良いか? 疲れてるなら、見てくれる奴は沢山いる。」 「康太がくれた1ヶ月を……大切に過ごしたい……」 「そうか。来月になったら、瑛太と結婚しろ。」 京香は頷いた 「瑛太が…オレのくれてやった1ヶ月を無駄にするなら、オレの子を産むか?京香?」 京香は、驚愕の瞳で康太を見た 「オレは今世に子種を残せぬ運命。 でも、瑛太に捨てられたままのお前なら……オレの子を産め、京香。」 康太の指が京香を撫でる 淫靡な空気を醸し出し……康太は笑った 「康太は今も小さいが……もっとちぃさぃ頃から、榊原伊織に片想いをしていた筈だが?」 「もっとちぃさぃは失礼だもんよー! ずっとオレは伊織に片想いしてたかんな 京香の知っての通り…だ しかもオレは所有権を決めたなら、その人にしか身体は反応しねぇ。 でも、お前を抱いてやるくらいの努力はする……と、言う訳だ。」 「康太……」 「お前は人形じゃねぇ! オレの側にいたいなら、闘え。解ったな」 京香は頷いた 「昼食までゆっくり休め。」 康太はそう言い、京香の部屋を後にした 康太は3階の自室に帰って行った 寝室に入ると、榊原にスーツを脱がしてもらった 康太を脱がすと、榊原もスーツを脱ぎ、ハンガーに吊るした 「伊織……妬くな……オレはお前のだ。」 榊原は、康太を裸にすると、ベッドに押し倒した 「君が女性に優しいのは嫌かも…」 「オレはお前のだ。確かめろ。」 康太は榊原を誘惑した 妖艶な瞳で誘い……脚を開いた 康太に……その瞳で誘われて……断れる人間なんて……多分いない 康太は愛する男の望むまま体を開き…… 1つに繋がり貪り合った 体を洗って、ラフな服に袖を通す頃には昼なんて、とっくに過ぎていた 「伊織……腹減った。沢庵食いたい お茶漬けで良い、キッチンに行くもんよー」 康太は冬でも家ではカーゴのショートパンツを履いていた 脚の鎖をシャランと鳴らし、康太は歩く 「じゃあキッチンに行きますか? 何も無かったら、ファミレスに連れて行ってあげます。」 康太は嬉しそうに笑い……榊原の手を取った 仲良く手を繋ぎ、一階まで降りて行った キッチンを覗くと、清隆と玲香が珈琲を飲んでいた 「母ちゃん、お茶漬けでも食わせてくれ。」 康太が言うと、玲香は 「今日の夕飯は寿司を取る 今食べると食えなくなるぞ。」と、言われ我慢することにした 「伊織……寿司も食いたいけど……腹減った。」 榊原は、康太に「お寿司まで気絶する程愛してあげましょうか?」と、言われ……首をふった 康太の前にココアを入れてやり、自分には珈琲を入れて飲む 康太は玲香に「なぁ、母ちゃん達って、月に何回、エッチする?」と、聞いた 玲香も清隆も………吹き出した 「何でそんな事を聞くのだ?」玲香は口を拭きながら康太に聞く 「瑛兄は、気が向かなきゃ京香にキスもしねぇし、抱きもしねぇ この前逢わせてもキスすらしねぇ! 瑛太の性欲は尽きたのか?」 康太がボヤく 玲香は仕方なく応えてやる 「我は清隆を愛して止まぬ そんなに捨てて置かれたら……耐えられぬ! 我は51だが、毎週、清隆に愛してもらうぞ!」 「そうか。母ちゃんは父ちゃんを愛して止まねぇかんな。 毎週か…。瑛太も見習えば良いのによぉ!」 「瑛太は……性欲がないのかのぉ…… それともら男しかダメだとか……?」 「瑛兄は……男でも……ダメだろ? だから浮気されて終わったんだしな。」 「尽きてしまってるのか? 嫌…尽きる程やってはおらぬではないか……」 玲香は、唸った 京香が来てしまった今……男として頑張るしかないから… 玲香は康太を見る 今までベッドで愛し合って来した…… と、言う気怠さを、康太は纏っていたから…… 「お前等の様な激しさが有ればなぁ……」  玲香がボヤく 「オレは伊織を愛してるかんな。 惚れて惚れて惚れまくりの愛しい亭主だかんな。」 康太が言うと、榊原は康太の頬にキスをした 「僕も康太を愛してますからね。 僕の妻はモテるので心配です。」 玲香も清隆も……微笑ましく二人を見る そこへ一生がやって来て「探したじゃねぇかよ」と康太の横に座った 榊原が、立ち上がり一生に珈琲を入れてやる 「オレは伊織と昼抜きで愛し合ってたんだ! 腹減って何か食いに来たら、夜は寿司だって言うかんな。我慢してんだよ。」 「昼から犯ってんのかよ……濃いなお前等は。」 「伊織を愛してるかんな。 仕方がねぇもんよー。」 「はいはい。お前の片想いから、俺等はお前の側で見て来た。 お前がどんだけ旦那を好きか……語ったら1ヶ月はかかる。」 「解ってんじゃん。で、何か用か?」 「京香は、昼は食ったのか?と、聞こうとした……聞こうとしたオレが間違ってた。」 一生は、深く後悔した 玲香は「康太、京香を覗いて参れ!」と、康太に言った 「疲れたのかな?」 康太が言うと榊原が「気を張ってましたからね……」と、様子を心配した 康太は立ち上がると、京香の部屋に行く事にした 榊原の腕が康太に絡む 「僕も行きます。 階段は……体辛いでしょ?」 康太は頬を赤くして榊原を睨んだ 「そんな可愛い顔は逆効果ですよ。 ベッドに戻りたいですか?」 榊原は、笑って康太を抱き上げた そして、キッチンを、後にして仲良く京香を見に行った 一生は「濃いなぁ……」と、ごちた 玲香は「仕方あるまいて、愛する伊織だからな。 無くしたら…死んでしまう……濃いの位我慢しようぞ。」と、一生を慰めた 清隆も、「伊織は康太を誰よりも、何よりも大切にする。 感謝しても尽くせばしない。彼は康太の生命線だからな……」と、呟いた 「五年片想いして……やっと掴んだ旦那だからな……」 一生が言うと……玲香も清隆も、五年か……長いな…と呟いた 長い片想いの果てに掴んだ……亭主ならば、仕方がない そう言い、玲香も清隆も笑った 京香の部屋をノックすると………返答がなかった 康太がドアノブを捻ると……ドアは開いた 「京香…?京香……?」 康太は名前を呼んで、部屋の中へ入ると、京香は寝ていた ラフな服に着替えて、化粧も落としていた 康太は京香の髪を掻き上げた 「瑛太に誉めて欲しかったのにな…… 何も言わねぇなんて酷すぎる……!」 榊原も京香が可哀想で仕方がなかった こんな扱いされていたのか? 京香……。 康太は京香の、涙の跡を指でなぞった 「お前を……連れて来るべきではなかったのか?」 康太は静かに怒っていた 榊原は、康太を抱き締めた 「伊織……オレは許さねぇ……」 「康太……。」 康太の瞳は果てを見ていた 「龍騎……京香を導け! このままでは、京香は、闇に堕ちる………!!」 『深淵まで行って連れて参る……』 「京香に残ったのは……絶望だけだった… 深い闇に……京香は、堕ちた…」 康太は後悔した…… 康太は榊原に京香を、見ていてくれ……と、頼み、部屋を出た キッチンに行くと母、玲香がまだいてくれた 「康太、京香は?」 「京香は、闇に堕ちた…… 今、龍騎に深淵まで連れに行かせてる オレは家を出る。 来月になるまで、此処へは帰らねぇ!」 「康太…」 「オレの果ては京香の犠牲の上に有って良いものではない! オレは許さねぇ!」 玲香は、康太を抱き締めた 「康太……堪えてくれぬか? お前を家から出す訳にはいかぬ……」 「母ちゃん……」 「飛鳥井家の真贋を外に住まわせては、やっと纏まった一族に顔が立たぬ…… どうか……落ち着いて下され…」 玲香に……言われれば堪えるしかなかった 「母ちゃん……解った……堪える だが、オレは当分瑛兄の前には顔は出さねぇ 当分………顔も見たくねぇ!」 康太はそう吐き捨てると背を向けた そして京香の部屋に行くと、鍵をかけた 『連れて参った……哀しみが深すぎて深淵に堕ちた…… 癒してやってくれ……我妻の姉を…頼む……康太!』 紫雲は京香の魂を連れて帰ってくれた 康太は……京香を抱き締めて……泣いた

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