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第8話 避ける

その日から康太は……瑛太を避けた 前に悠太にやった様に、瑛太の気配を詠んで、逢わない様に避ける 一生を見掛けて、近寄っても……そこには康太は存在せず 瑛太が飛鳥井の家で康太と逢う事は……無くなった 康太の姿を見なくなって……1週間 暦の上では……もう、12月になっていた 瑛太は母、玲香に何故!康太と逢えないのか!と訴えた 玲香は、無視して何も言わなかった 一生や聡一郎、隼人、慎一、力哉に至るまで……康太の事は言わず… 榊原も微妙に瑛太を避けて……捕まらなかった 瑛太は…………気が狂いそうだった 康太のいる気配がするのに……康太だけいない 限界だった 瑛太は…………家へ帰らず、ホテル暮らしを始めた 玲香が康太に、そろそろ許してやってくれ……。と頼み込む程に…… 仕事上は難なくこなしてはいるが‥‥ 瑛太は無表情で……人間ばなれして行った 総ての感情を放棄してしまったかのような息子を‥‥目にしたくないと玲香は訴えた 仕方なく康太は折れるしかなかった 「伊織、明日の朝早くオレは会社に行く。」 「解ってます……待ってますから。 義兄さんを許してあげて下さい…」 康太は何も言わなかった 翌朝……朝まで愛され……気怠い体にスーツを身に纏った 昨夜は……手加減抜きで責められ…行為は…朝まで続いた 「伊織…行ってくるな…」 榊原は、康太を抱き締めた 「僕の腕の中へ帰ってらっしゃい。 愛する君の帰る場所はこの腕の中しかないでしょ?」 康太は頷き……榊原に抱き着いた そして、体を離すと、背を向け……歩き出した 肌寒い外の空気を一杯に吸い込み……康太は歩き出した 家から出ると、大通りまで出てタクシーを拾う。 タクシーに乗り込むと、飛鳥井建設まで向かった 守衛のドアをノックして、会社の中へ通してもらう 康太は最上階まで行くと、副社長室のドアを開けた 凄い煙草の臭いに、康太は換気を付けた ソファーに座り、瑛太を待つ 瑛太は……朝早くホテルを出た 寝ても覚めても……康太の事ばかり気になって……仕事をしていた方が楽だった 何故……康太が怒ったのか……瑛太には解っていた 京香に声すら掛けず悲しませた 瑛太はかける言葉を探しているあまり…… 何を言って良いか解らなくなり……黙ってしまった 女心は解らない かといって男が好きな訳ではない 康太に良く似た恋人がいた…… でも……飛鳥井の家へ帰って来た康太を目にすれば……抱く気すら失せた 男は後にも先にも………その男だけだった 女は京香だけ。 京香を愛していた でも……康太程は愛せばしない それが康太を怒らせた…… 飛鳥井の家にいるのに……康太に逢えない 狂いそうな日々に……瑛太は逃げた いっそ……いない場所に行けば……と思った でも……いない場所に行っても……満たされはしなかった 瑛太は……守衛に手をあげ、最上階のエレベーターに乗った そして副社長室のドアを開けた 副社長室のソファーには……… 康太が座っていた!!!!!! 瑛太は………幻覚でも見えてしまったのか……と、動けなかった…… 動かない瑛太に康太は笑った 「夢じゃねぇぜ!触ってみろよ!」 康太が言うと、瑛太は康太に近寄った 頬に手をやると……………暖かかった!!! 瑛太は……康太を抱き締め……ソファーに押し倒した 何も言わず……瑛太は……康太の胸に顔を埋め……泣いた 「お前をなくす位なら………   ……息の根を止める……」 瑛太の指が康太の首に当てられる 力を入れれば……康太の首なと呆気なくへし折れる 康太は瑛太から目を離さず……見詰めてた 「殺せよ瑛兄…その手で息の根を止めたいなら………止めれば良い……」 瑛太の指が離れて……康太を掻き抱いた…… 「…………兄を……捨てる気か…」 瑛太は狂った様に……康太を求めた…… 「瑛兄……京香を愛せないのか? 愛せないなら言え…… あのままじゃ生殺しだ 京香が……憐れだ……」 「私は………お前程には愛せばしないが…… 京香は愛している だが、何か話そうと思っても……話す事が……出て来ない……許してくれ… …私は不器用な男だ…… 綺麗だね‥‥その一言が出ては来なかった するの‥‥もう何を話していいか‥‥解らなくなってしまう‥‥」 瑛太は………榊原と一緒で、あれこれ同時にやれる器用な男ではない 気のきいた言葉は……言えない不器用な男 康太は……瑛太の唇に唇を合わせた 「瑛兄……重い……まともに体重かけられたら……オレは潰れる……」 瑛太は起き上がると、康太を膝の上に抱き締めた 「飛鳥井の家へ帰ろ…少しずつ京香に逢ってやれ 哀しみすぎて、京香は闇に堕ちてしまった 幾ら不器用でも、綺麗だねとか、言ってやれば良かったのに……」 「お前が側にいてくれるなら……努力する だから………消えたりしないでくれ…… 私からお前を取り上げないでくれ……頼む…」 「もう消えたりしねぇもんよー 瑛兄の側にいる。だから、泣くな瑛兄…」 瑛太は康太の肩に顔を埋め……泣いた 康太は涙を拭いて、キスを落として行った 「瑛兄…ごめん。」 「康太……私は…狂うかと思った…」 「オレは側にいるだろ?」 「………消えた 私を避けて…逢わない様に避けた……」 案外……榊原と、同じで執念深いかも… 似ているのは……性格も?不器用さも? 「瑛兄…今日から側にいて消えない…」 「……康太は意地悪だ……兄を苛める…」 「瑛兄が京香に愛してるよ…とか、その服似合ってるよ…とか、綺麗だね…とか 言わないから京香が苦しむんだろ?」 「康太……そんなの思い付かない…… だから……フラれるんでしょ?私は……」 「瑛兄だからな……なら、言葉に詰まったらキスしてやれよ チュッって、してやれば喜ぶ」 「……それして、誤魔化すんじゃねぇ!って殴られました……」 康太は頭を抱えた 「瑛兄、京香が言ってた たまにしか、エッチはしねぇ、キスなんか……気が向いたらしかしねぇ…… やっぱ男しかダメなのかな……って悩んでた 瑛兄は、男しかダメなのか?」 「嫌……男でも女でも……駄目みたいです。 上手くは行きません…… 私は…一生康太の側にいられればそれで良い」 「オレに良く似たのは別れたんだよな?」 「もう二度と逢いはしません 彼にも……エッチでは満足出来なかったと……捨てられたんですけど……。」 「瑛兄……。」 「でも、今度は……絶対に男の子を作ります……。京香と……。」 「瑛兄…少しずつ歩み寄ろ? 毎日京香にオレと一緒に逢って話をしょう?」 「康太が助け船を出してくれるんですか? でも私は気のきいた話の1つも出来ませんよ?伊織とは違う……」 「………瑛兄……伊織は堅物だ……瑛兄と一緒だ でも、瑛兄と違うのは、愛してると言い続けてくれる事だ 会話なんてそれだけで良いんだもんよー」 「愛してるか……ならば、良い続けよう。」 「愛してる……って言葉は魔法だかんな。 何にでも聞く、呪文だ 瑛兄に伝授してやる。」 「愛してる康太。」 「オレにじゃねぇもんよー!」 「京香にも言う でも一番愛してるのはお前だ……康太 私からお前を奪わないでくれ……」 「だから、朝一番に逢いに来たんじゃねぇか。家に帰ろ?飛鳥井の家へ。」 「今夜は帰ります。」 「なら、良い オレはもう消えねぇ。 瑛兄を迎えに玄関まで現れるから許して……ね。」 「もう少し………こうしていて…… 伊織には悪いが……お前が不足していた」 「伊織は解ってくれてる 瑛兄の所へ行きなさいって言ったの伊織だし……」 「康太……私はお前の兄でいたい どんな時でも……お前の兄であり続けたい」 「オレの兄は飛鳥井瑛太 オレは飛鳥井瑛太に育てられ、此処まで大きくなれた。 瑛兄の、手が無かったら……オレは死んでいた……それ位……瑛兄が総てだった」 「康太……」 「オレにとって瑛兄は、次元が違う大切な人間だ 伊織も一生も聡一郎も、隼人も慎一も力哉も大切だが、瑛兄は、次元が違うんだよ。欠かせねぇ大切な兄だ。」 瑛太は康太を抱き締めた 一頻り抱き締めて、佐伯に引き剥がされ……仕事をさせられた 康太は苦笑して 「ならな。瑛兄。今日は早目に帰れ!」と言い、副社長室を出て行った 会社の外に出て、飛鳥井の家へ帰ると、榊原は、康太を待っていた 応接間で、康太の帰りをひたすら待っていた 康太は榊原に 「ただいま。伊織。愛してる。」と、言い、抱き着いた 「お帰り、康太 僕も愛してますよ奥さん。」 二人は見詰めあい……口吻けを交わした 康太を抱き締め榊原は 「義兄さんはどうでした?」と問い掛けた 「潰されるかと思った…泣かれて……罪な事した……」 「義兄さんは、不器用なんですよ……。 気のきいた言葉の1つもサラサラ言える男じゃない 言葉に詰まると黙る…すると…何も言えなくなる……解ってあげて下さい。」 「伊織は……瑛兄の事が良く解るな。」 「似てるでしょ?僕と瑛太さんは? 義母さんなんて、同質……と言いましたよ?」 「そうか?まぁ伊織は器用に見えて…… 堅物だからな……そう言う事を言ってるのか?」 「堅物……ですか? こんなに君を愛してる僕を堅物呼ばわりしますか?」 康太は笑って榊原に抱き着いた 「一生達は?」 「二階にいますよ 隼人は仕事ですが…。」 「京香は?」 「翔がさっき泣いてたので授乳中かと…」 「もう、哺乳瓶に切り替えたんだよな?」 「そう言ってましたね? X'masには……康太へ還さなければならないので。」 「伊織、疲れた、眠りたい。」 「なら、寝室に連れて行ってあげます。」 「歩けるもんよー」 「甘えなさい。」 康太は甘え榊原に抱き着いた 榊原は康太を抱き上げると、応接間を出て3階の自室に向かった 寝室に入ると康太のスーツを脱がすと、康太はベッドに入り、目を閉じた だが、やはり大人しくは寝かせてくれる男ではなかった 「瑛太さんに……何もされなかった?」 「オレの体に、お前の触った以外の形跡があるか?」 「ないですが……妬きもちです。」 「あれは兄。」 「ですが、君達は仲が良すぎなんですよ」 「………そうか?オレにはあの兄しかいなかったからな……解らねぇや」 「時々妬けます。」 「妬かなくても、オレはお前のものだ。」 「愛する男の妬きもち位許しなさい。」 「許してんよ! オレは何時も、伊織にされる事なら許してる。」 康太は榊原にキスした 「僕は…大人げない男ですから、きっと翔にだって妬きます。」 「伊織……そう言えば沢庵にも妬ける男だもんな……」 康太は苦笑した 「僕のモノです…君は…。」 「ずっとお前のモノだろ?オレは。 遥か‥‥‥昔から‥‥‥‥‥」 お前だけを愛して来た‥‥‥康太はそう言い瞳を瞑った 「眠いなら眠りなさい。 抱き締めててあげますから…これ以上君を抱くと…… 気絶してしまうだけで終われませんからね」 「伊織も寝よ?」 「ならば君と……自堕落に惰眠を貪ってみましょうか。」 榊原は、康太の横に寝そべり、康太を抱き締めた 康太も榊原の胸に顔を埋め……抱き締めた そして、二人は……深い眠りに落ちて行った

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