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第14話 歪み
夜が明ける前に康太は起きた
愛されて疲れた体に服を纏い
榊原にキスを落として………康太は寝室を出た
一階まで降りて、駐車場まで向かうと
康太は清四郎に買って貰ったミニクーパーに乗り込みエンジンをかけた
康太は車を走らせると、弥勒の元へ向かった
弥勒の家の前の駐車場に車を停めると、弥勒が家から出て待ち受けていた
「来ると思ってた」
「弥勒、オレの果てが何故狂う?
何者かの妨害か?
それとも神の与えし試練か?
オレの見た果てと……
微妙に違うのは何故だ?
オレの見て来た真贋の瞳では不完全だったと言うのか?
正式な黄泉の眼と、産まれた時の黄泉の眼では……果てが狂うのか?」
康太は興奮していた
興奮して……弥勒に縋り……問い質した
「康太、落ち着け。道場の方へ行くぞ。」
弥勒は康太を脇に抱えると、道場の方へと向かった
道生のドアを開け、床に座布団を敷くと
その上に康太を乗せ、ストーブを着けた
弥勒は康太の向かい側に座った
「産まれた時の黄泉の眼と、今では見え方は違うが、果ては変わりはせん
しかもお前は稀代の真贋、その眼を封印せねば見え過ぎて女神に畏怖を抱かせる程の瞳を持っておった
そんなお前の眼はアナログが3Dになっただけで果ては同じの筈!
変わる筈などはないのだが……
お前の眼は源右衛門など足下にも及ばぬ眼……だ
狂うはずなどないのだ……」
「一生の子供か産まれるぞ……
1ヶ月も早い
しかも……伊織の母親の所は………
一卵性双生児だ
隼人の所は……菜々子の体力次第……
オレの果てとは違う
オレの視た果てと、悉く違いすぎる‥‥
真矢さんは……双子を生む
双子を切り離し育ては出来ぬ
隼人の所は……菜々子の体力が持たねば……
8ヶ月で出すと言う……。
何なんだ?これは‥‥こんなに果てが狂ってて、危機を抱かねぇ真贋はいねぇ!」
弥勒も…悩んだ
飛鳥井の真贋の瞳の詠みは確かだから……
何者が妨害せぬ限りは果ては約束されたモノになる筈だ
「何か……微妙に……ズラされてる?」
弥勒は一人ごちた
康太も同じ想いだったらしく
「何かが微妙に介入してる
これ程果てが狂うなら、オレは真贋など続けは出来ぬ……」と決意を口にした
「それが狙いか……」
「オレの子供は全部で四人
そう言ってたが、翔と一生の子供でもう……諦めた
後はもう良い。
隼人の息子も、真矢さんとこの双子も、オレは諦めた。
もう貰わない
隼人を苦しめて子供など、もらい受けれる筈などない
双児を引き離してまで、もらい受けて良い筈などない
オレは諦めた。
世継ぎの真贋と一生の子供
オレの子供は二人で終える
……それで良い。」
「一生の血を入れれば、飛鳥井に新しい血は入るわな。」
「横槍が入らなきゃ……だがな。
横槍が入るなら、一生の子も諦める。」
「康太……」
「人の子供を貰って続けるものでもない
いざと言う時は、オレが子種を残す」
「お前は……現世に子種は残せぬ定め。」
「伴侶に子供を作って来いとは……言いたくない!
伊織が他人を抱くのなら……オレは命を断つ方が良い……」
「康太……」
「弥勒、年が明ける前に……黄泉の泉に行き、閻魔に逢いに行く……」
「ならば、俺も供をする」
「行くか…弥勒
オレと魂を共にするか?」
「元よりお前と魂を共にしている……」
「生きて帰れる保証はないぞ
オレは伊織に魂を結び付けられてる……死せる時は共に逝く。」
「あぁ、俺は血は遺した
俺の子供は翔を助け……生きて行く
未練はねぇよ。」
「オレもこの世に未練はねぇ
愛する伊織がいれば……オレは死なんて怖くねぇ
飛鳥井には翔がいる
それか……いっそ終るか?それも良い……
誰も苦しまなくなるから……それも良い。」
康太は弥勒と拳を合わせ……笑った
「どうあっても飛鳥井の終焉を望む輩がいるか…」
弥勒は見えないだけに手の打ちようがないと……現状を語った
「見えなかろうが見えてようが、オレは負けねぇ
オレが負ける時は飛鳥井は終わる
長きの世を生き抜いた一族が終わりを迎える……それだけだ。」
「行く時は、此処へ来い」
「解った
新年まで後1週間
近いうちに来る。」
「待っていよう
気をつけて帰れよ?
お前は雑いからな。」
弥勒は笑った
康太は頬を膨らませ怒った
そして片手をあげて、道場を出ると車に乗り込んだ
飛鳥井の家の駐車場に車を停めると、榊原が立って康太を待っていた
弥勒の所へ行ったのは…午前4時前位で……
話をして帰ってきてもまだ、午前6時前だった
何時から立ってたんだよ………!!!
康太は車を停めると車から降りた
「伊織!風邪を引く!」
康太は車をロックすると、榊原を抱き締めた
榊原の体は……冷え切っていた
「バカだな伊織は……こんなに冷えて…」
榊原の腕が康太を持ち上げ抱き締めた
「君が僕にキスして出て行くのを止めなかっただけでも誉めて下さい!」
「やはり起きてたか……お前ならオレを止める権利はあるぞ。」
「でもそれは君の本意ではない……止めませんよ、僕は。
僕の命は君と共に。
僕には何の能力もないけど……それ位は解ります。」
「伊織……冷えてる。部屋に入ろう。」
榊原は何も言わず康太の肩を抱いて、飛鳥井の家の中へと入っていった
康太は寝室に入ると服を脱いで全裸になった
「来いよ伊織
その冷えた体を暖めてやる。」
康太がベッドの上で……昨夜の続きの様な妖艶な瞳をして榊原を、誘う
「来ないなら……一人で始める。」
康太は自分の乳首に指を這わせた
「伊織、昨夜は洗っていない……奥にはまだ伊織の子種が残っている……」
ぐちゃ……ぬちゃ…と音を立てて、康太は自分の秘孔に指を入れた
奥の腸壁は……榊原の精子で濡れていた
榊原は、自分の指で気持ち良さそうに腰を捩る康太の腕を掴んだ
「そんな指で…満足しないで……」
「なら、来い!
オレが全身で暖めてやる。」
康太に誘われ、榊原は服を脱いだ
冷えきった体を重ねると……康太は寒さのあまり身震いした
「冷えすぎ……伊織。」
「暖めて……康太。」
榊原は冷えきった手にローショーンを垂らすと、康太の秘孔の中へ指を差し込んだ
「ひゃっ……冷たい……」
冷えきった指に……康太の熱い腸壁が絡み付く
濡らして滑りを良くすると、榊原は自分の性器を康太の中へと挿入した
冷えきった肉棒が……暖かい腸壁につつまれると……榊原の体が熱を持って来た
昨夜の行為で余裕がある榊原は、一頻り康太の中を楽しむと……熱い飛沫を上げて……
康太の中で射精した
榊原は、康太の中から抜くと、康太を体の上に乗せた
「康太……」
「ん?あんだよ?」
「ドアを開けっ放しで……見られました」
「えっ!誰が見た?」
「殆んど……。康太が帰って来たから、覗きに来たら……挿入中でした。」
「殆んどって?」
「一生、聡一郎と悠太、慎一、瑛太と京香……そして我が父 清四郎にも……」
「えっ!何でそんなに朝早くから起きてんだよ?」
「四時頃、車で出て行った君を全員が知っているんですよ
階段を降りたら……全員がいました……弥勒の所へ?」
「そう。オレは近いうちに黄泉へ渡る。」
康太は榊原に総てを話した
総てを話して……止めるな……と、言った
「止めませんよ
君の魂が消える時、僕も共に逝きます
ちゃんと呼びに来るんですよ。」
「伊織…ちゃんと呼びに行く!
約束する!
だけど……エッチを見せる趣味はねぇもんよー
恥ずかしいだろ!」
康太は文句を言った
でもドアを閉める前に服を脱いで誘ったのは康太でしょ?
と榊原に言われれば……黙るしかなかった
浴室で中も外も洗ってもらい、綺麗に磨かれ風呂を出ると
何時もの様に、榊原は髪を乾かし服を着せてくれた
そして康太をリビングに追いやると、自分の支度に掃除洗濯と手を抜かず……こなして行く
総て終えてキッチンに行くと……玲香と清隆と源右衛門しかいなかった
「あれ?皆はまだ寝てるんかよ?」
康太は呑気に言った
榊原は康太との情交を見てベッドへ行ったのだろうと察した
康太は玲香と清隆と源右衛門に、榊原に話したと同じ事を……話した
「飛鳥井の終焉は仕組まれたものだとしたら……オレは犯人を探しに行かねばならぬ
閻魔に百年ぶりに会いに行き聞いてくる
まぁ閻魔が知らぬなら、天界に上がらねば解らねぇけどな……
また弥勒と相談して考える。」
家族は…… 言葉を無くした
「じぃちゃん、オレの子は、翔一人になる可能性もある
誰かの犠牲の上に成り立って良い筈などねぇかんな
オレは諦めた。
元々、母親と子供を引き離し……貰う事……事態間違っていたのかもな。」
「真贋がいれば……飛鳥井は明日へと続けれる……」
「黄泉へ渡る以上は命を懸ける
帰って来られなくても……後を追うのは許さない!と、遺書は用意してある
オレの後を追えるのは伊織のみ
魂を結び合った日から…オレの道ずれは伊織のみ。
後は来るなと!東青に預けてある。」
源右衛門は
「それは無理だろ?お前を亡くして誰一人生きられはせん。それが定め」と、ボヤいた
榊原は父親を呼びに3階に、上がると気まずそうな父親と出逢った
清四郎は息子の名前を情けなく呼んだ
「伊織……まさか父は……お前達のを見ようとは思ってもいませんでしたよ……」
「父さん……すみません
ドアを閉める前に……康太に誘われたので……ドアを閉める前に服を脱いで挿入してしまいました。」
「昨夜も…してたんでしょ?
言ってましたよね?
だから朝から始まるとは思わず……覗いたんですが……後悔しました。」
「昨夜も愛し合いましたよ
五回はイキましたが……僕は…相手が康太なら……朝から出来てしまえるんです。」
清四郎は下半身に衝撃を食らって……困った
まさか……息子と康太の姿を見て……そうなるとは想いもしなかった
翔を抱き締め……欲望を落ち着かせた
「父さん、朝食を食べに行きましょ。
食べ終えたら母さんの所へ行きましょう。」
榊原は翔を受け取り、腕の中に納めると
父を促しキッチンへと行った
キッチンには康太が食後の玉露を慎一に入れてもらい飲んでいた
「清四郎さん。おはようございます
食べたら、病院へ行きましょう」
康太が言うと清四郎は、朝から面会は無理でしょ?と康太に言った
「あの病院は母 玲香の実家になります
少しの融通位は聞いてくれます」
康太に言われ……清四郎は玲香を見た
玲香は「我はあの一族の娘になります
ですが我が夫に惚れて総てを棄てた
なれど、我が弟は懇意にしてくれている。
多少の融通なら聞いてくれる。」と清四郎に答えた
清四郎は、あの院長が玲香の弟とは…と、驚いた
食事を終えると、康太は玲香に翔を預け、自室に向かった
榊原もその後を追い、寝室で着替えをした
Yシャツに袖を通し、ネクタイを絞め、スーツを着せる
康太を着せると榊原は自らのスーツを着て、康太にネクタイを結んでもらった
曲がってないか直してもらい、榊原は康太にキスをした
「ありがとう奥さん。」
康太は笑って伊織の写真を撮った
「男前過ぎる……好き過ぎて……困る」
「僕は困らないので、もっと愛して下さい。」
榊原は、康太を抱き締めて……康太の額に額を合わせ見詰めた
康太は榊原を一頻り抱き締め、寝室を出た
寝室を出ると、清四郎は二人を待っていた
「行きますか。」
榊原が言うと、清四郎と共に部屋を出た
一階に降りると、瑛太が出勤間際だった
康太は何も言わず横を通り過ぎると、外に出た
そして榊原の車の助手席に座った
後部座席に清四郎を乗せると、榊原は車を出して走り出した
飛鳥井の家から、30分をしないうちに病院の敷地に到着し、康太は車を降りた
受け付けに行くと、玲香から連絡が入っていて、面会を許してもらえた
康太は病室を聞いてないのに誰よりも確実に病室に近付いた
ドアをノックすると、中から「どうぞ。」と声が聞こえた
康太はドアを開けると笑顔で真矢の側へと行った。
「真矢さん。お久し振りです。」
康太が言うと真矢は嬉しそうに康太に腕を伸ばした
「康太、良く来てくれました。」
「双子は、体に負担が大変でしょ?」
「清四郎から聞いたのですか?」と、康太に問い掛けた
「オレは果てが見える
聞かなくてもオレには解る……」
康太が言うと真矢は、康太の頬に手を当てた
「そうでしたね
康太は少しだけ凄い目をしてるんだったわね。」
「真矢さん。オレは子供を諦めます。」
康太は真矢に……そう言った
真矢は驚いた顔をして康太を見た
「何故?伊織の血を引く子は……もう要らないの?」
「違う……違う!真矢さん。
愛する伊織の血を引く子供ならオレは………欲しいに決まってる。
でも………そのお腹の中の子は双子。
双子は一緒にいないと……細胞を呼び合い……求め合う……離せは出来ない…そう言う定め」
「なら、康太が育てれば?
それとも二人だと要らないの?」
「真矢さん……愛する妻が……腹を痛めて出産する子供を………幾らオレにだって言えども渡したくはないですよ。
清四郎さんの気持ちを考えましたか?
オレは引きます
オレなんかが貰って良い命じゃない。」
「康太……、私は女優よ
子供を産んだ後は、女優として生きる
だけど、貴方の為に……伊織の子供を生んであげたかったの
康太は伊織の子供を欲しても…伊織が誰かを抱くなんて許せないでしょ?
だから、私が……産んであげたかったの
貴方の為に……育ててるのよ」
真矢は康太の手を取ると……お腹を触らせた
「伊織の血を引く子供が………此処にいるのよ
伊織を産んだ母が……伊織の血を引く子を産むのよ……貴方が育てなければ……
このお腹の子はどうするの?」
「清四郎さんが愛するよ……」
「貴方が愛するのよ!
貴方の子供なんだから。」
康太は真矢のお腹に顔を埋め……泣いた
真矢は、清四郎の方を見て怒っていた
「あなた!康太に何を言ったんですか!」
真矢に怒られ清四郎は、昨夜の康太との会話を話した
「あなたが子供を愛しいと思うのは当たり前ですが……
約束しておいて……惜しいから止めたってあなたは言うのですか!」
妻に怒られ……清四郎はオロオロになっていた
「このお腹の子供は飛鳥井を名乗らせる
康太の子供になる
私が命を懸けて康太に与えられる最大のプレゼントなんですからね。」
「真矢……双子だから…康太の果てが狂わないかと……
後、やはり子供の側にいられないのは淋しい。」
と清四郎は胸のうちを吐露した
「だから私達は飛鳥井の家の側へ行くんでしょ?
康太は飛鳥井のドアは開かれてる……と、言ったでしょ?」
「真矢……」
「康太は伊織の子供が欲しい。
愛する男の子供なら……
欲しいのは当たり前
康太の体は男でも、愛する男を前にして思う気持ちは私と同じだと思った
だから、康太に与えてあげたかったの
康太は誰よりも伊織を愛している
こんなに愛されて伊織は幸せです
飛鳥井の家で伊織は大切にされて過ごしている
私は…初めて康太を見た日に心に決めたのです。
あのロボットの様な伊織を人間にしてくれた康太の為に……
何時か欲するなら子供を産もうって。
後少しです
後少しで、康太、貴方に伊織の血を引く子供をあげられる。」
真矢は康太を撫で、言い聞かせるかの様に話をした
「伊織の子供が欲しかった……。
産めない体を呪った……
だけど…伊織が誰かを抱くのは許せないんだ!
それは嫌なんだ。
だから諦めた
どの子も愛しいオレの子だから……愛そう……って。」
「だから……伊織の血を引く子を、貴方が愛して育てなさい
伊織と二人で、愛して行きなさい。」
榊原は、静かに泣いていた
父親が嫌いで家を出て寮に入った
家にも寄り付かず………避けてきた
その当時は……母親なんて……煩いだけの存在と思っていた
親を避け、兄と疎遠になり……煩わしい事から離れて安心した時もある
バラバラになった家族を………1つに繋ぎ合わせたのは康太だった
榊原の為に……バラバラだったピースを繋ぎ合わせ、1つにしてくれ、榊原に与えてくれた
親の有り難さや……優しさや………温もりを
与えてくれたのは康太だった
康太が…………母の深い愛を教えてくれた
康太といなければ気付かなかった……想い
総て………康太が与えてくれた愛だった
清四郎は息子を抱き締めた
清四郎は、康太の気持ちが解っていたが……
双子と聞いた時に戸惑い……喜んだ
双子なら康太の果てが狂うから………
妻が苦しんで育てている子供を……手放したくない想いもあった
だが………妻の想いを知れば浅はかだった
妻の……深い愛に………清四郎は、降参した
そして……妻の深い愛を誇らしく思った
「伊織……君が涙を流す姿なんて……3年前には想像もつきませんでしたよ?」
「父さん……僕も……まさかこんなに貴方達を愛してると……気付きませんでした 」
「伊織……お前が愛しい
お前は誰よりも私の子供だ
母さんのお腹の中の子も、翔も、私はお前達の子供を愛して止まない。
守ってみせる……お前達を……伊織……
私の命が続く限り、お前達を守ってあげます。」
「父さん……」
父親が逞しく見えた……
母親が聖母の様に見えた……
この人達の子供で本当に良かった………
榊原は、心から……思った
榊原は康太を持ち上げると泣きじゃくる体を抱き締めた
「僕の君はこんなに泣き虫でしたか?」
涙が溢れた瞳に榊原は口付けた
「伊織が……オレを泣き虫にした……
伊織のせいだ!
伊織が優しくオレを泣かせるからいけねぇんだ!」
「泣かないの……目が溶けますよ。」
榊原の腕は康太を抱き締めて……離さない
清四郎は妻に
「真矢、聞いてください
伊織は…ドアを開けっぱなしで、康太とエッチに突入してたんですよ?
昨夜はイブで、私が翔の面倒を見ました
伊織ったら愛し合うのに忙しいから見てて下さい…って言うんですよ。」
と、愚痴を溢した
榊原は、困った顔で「父さん……」と呼び掛けた
真矢は「まぁ。」と驚き、そして笑った
「あなた、伊織は康太を手にしたら……止まらないんですから、そこは解ってあげなさい。」
「そうですか?
………でも、私だけじゃないですよ、見たのは?
一生なんて『またかよ!!』って怒ってました
一度や二度ではないんですよ……きっと……」
グチグチ言う父親に……榊原は苦笑した
「父さん……抜かずの6発と言って、一生や聡一郎を引かせた僕ですから……諦めてますよ?」
榊原が言うと清四郎は言葉を失った
真矢は笑った
「伊織………康太が壊れてしまいますよ?」
「母さん……。」
「真矢さん、オレは壊れねぇ
安心して良いかんな。」
康太が子供の様な顔して笑った
康太はスマホを取り出すと、フォルダーから翔の写真を真矢に見せた
真矢は写真を見て「可愛い……」と言い目を細めた
「オレの子供だ
名実共に実子のオレの子供の翔
この子は………真贋。
オレの後を継ぐ者だ
誰よりも厳しく鬼にならぬばならぬ定め。
伊織がその分愛してくれる
オレはそう思っている。」
飛鳥井と言う特殊な家庭で育つのは難しい……
だが、その分……榊原が愛してくれる……
「私も愛しますよ。
康太の子供を愛します。」
康太は真矢と清四郎に深々と頭を下げた
榊原も康太の横に立つと、父と母に深々と頭を下げた
「あまり長居は体に良くないので帰ります
榊原の家の引っ越しも、大晦日前にはもう終わります。
また来ます。では。」
康太は一礼して病室を出る事にした
その横に榊原が歩き、康太は見上げ微笑んだ
駐車場へ行くと、康太は車に乗った
榊原は運転席に乗り込むと車を走らせた
榊原は、サングラスをかけると、康太に外で食べに出ますか?と聞いた
康太は一生に電話を入れた
「一生、飯食いに行かねぇ?
迎えに行くかんな
駐車場で待っててくれ。」
康太は電話を切ると、帰るもんよーと榊原に告げた
「伊織、夜には…弥勒の家に行く
オレの体は……お前が持って帰れ。」
「当たり前です
例え意識は無くとも君の体を……置いてなんて帰れません。」
「伊織、浮気してやる……は止めろよ。
冗談でも聞きたいもんじゃねぇ……。」
「なら早く目覚めなさい……。
僕が君以外………愛せる筈などないでしょ?」
「……伊織……お前には修羅の道を行かせる。
すまない……でもオレにはこんな生き方しか出来ねぇ……」
「君は、君の道を行けば良い。
僕は…君の側にいますから……」
「伊織……」
愛する男は優しかった
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