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第16話 黄泉へ②

榊原は、夕食を終えると、康太を弥勒の所へ送って行くことになった 康太の瞳は覚悟を決めていた 家族も……覚悟を決めていた 仲間も……覚悟を決めた 何も言わず、康太を送り出す…… 康太は微笑み……皆に背を向けた その背中は……負うのを拒絶していた 康太は榊原の車に乗り込むと 「12月25日だからな、大晦日迄には帰りてぇな 伊織が欲求不満になって浮気したら困るかんな。」 「それは、ないですよ……堪らなくなったら………君を想って……一人で…します。」 「オレの身体は有るのに?」 「人形とエッチする趣味はないです。 君の魂が入ってこそ飛鳥井康太は成立する ならば、一人で君を思ってやった方が良いです。」 康太は笑った 「お前らしいな。」 「僕は君を失う以上に怖いものなどないんですよ? その君の魂に僕の魂を結び付けた…… 逝く時は一緒だと思うと……怖いものなど何もない。 愛してます。君は君の想うまま動きなさい!」 「あぁ。伊織……ありがとう。」 榊原はもう……何も言わず弥勒の家まで運転していった 弥勒の家の前の駐車場に車を停めると、弥勒と紫雲が康太を待ち受けていた その後ろには東矢と、城之内が……。 城之内は顔付きが変わった 二人は………立派な弥勒高徳の弟子だった 東矢と城之内が榊原に近寄った 「榊原、見てみろよ。あの三人が寄ると半端ねぇな 妖炎メラメラ撒き散らしてる 飛鳥井が入ると調和が取れる……紅い焔の弥勒と、蒼い焔の紫雲 飛鳥井がそれを吸収して……紅蓮の焔を撒き散らしてる すげぇな!中々お目にかかれねぇ 覚悟を決めた男が三人………黄泉を渡る 飛鳥井の背中には……家族や仲間の想いも重なって……愛されてるなアイツは……。 俺は父親を使ってでも!アイツを戻す! 菩提寺では住職始めとする僧侶が祈念している 飛鳥井康太の無事を祈ってる だがら榊原、アイツの体を持って行ったら……祈ってくれ アイツの身体はお前以外触れぬ様にしろと師匠が言った。俺等二人で術を施す そしたら、持っていけ!」 榊原は、城之内の話を聞きながらも……康太に瞳が釘付けだった 康太は弥勒と紫雲に抱き締められ、確認されていた 弥勒は子供の様な顔で笑っていた 「康太、未来永劫、お前と共に。 お前の魂の宿る時代に俺等は行く。」 そして康太を抱き締め……円陣の中へ入って行った 紫雲も子供の様な顔で康太に笑いかけていた 「君の子守りは僕等の役目。 わんぱく坊主の世話は未来永劫僕等がする!」 康太を抱き締め、円陣の中へ入っていった 康太は榊原に手を差し出した 榊原は康太の側へ駆け寄った 康太はキスをねだった 榊原は康太の唇に唇を重ねた……接吻した 「愛してる伊織!」 康太は榊原に抱き着いた 榊原も康太を抱き締めた そして、体を離すと不敵に笑い、榊原に背を向け、円陣の中央へ入っていった 円陣中央の康太を弥勒と紫雲が取り囲む そして、呪文を唱えると、康太の体が……… 歪み…………ノイズが入ったかのように…… 散らつき……意識を失うかの様に……その場に倒れた 弥勒も紫雲も……その場に重なる様に倒れ…… 意識は………黄泉の世界へ渡った 東矢と、城之内は、弥勒を道場に敷いた布団に入れた 紫雲も……二人かがりで布団に運び……寝かせた そして、それ等の作業を終えると、一息着いて……康太の側に来た 東矢が康太に呪術をかけると城之内が榊原の気を康太の中へ入れた これで榊原しか康太は触れなくなる 他の人間は………見る事は出来ても…… 触れる事は……出来ない 榊原は術の施された康太の体を抱き締めると………接吻した そして、康太を抱き上げ……東矢と城之内に頭を下げ……飛鳥井の家へと帰って行った 東矢と城之内は、それを見送っていた 東矢は城之内に 「康太の魂と榊原の魂が結ばれていた……見ました?」と、問い掛けた 城之内は「あぁ。今世でも榊原は……魂を結ぶんだな………。 未来永劫……あの二人は……互いを縛り合うんだな……。」と呟いた 城之内の父親……飛鳥井の菩提寺 の住職は……… 榊原伊織を『久遠《くおん》の伴侶』呼んでいた 「俺の父親が榊原伊織の事を久遠の伴侶と呼んでいた…… あの二人は……永久に一緒なんだろうな……… だとしたら………榊原はあまりにも辛い………」 後はもう………言葉にならなかった……… 東矢は「信じましょう!そして祈りましょう……」と、城之内の肩を叩いた 城之内は「そうだな。……。」と呟き祈った 榊原は、康太の体を自分の車に乗せるとシートを倒した 運転席に乗り込み飛鳥井へと向かう 飛鳥井の駐車場に車を停め、家の中へ入ると………全員が榊原を待っていた 家族と………仲間は………… 榊原に抱き締められた………康太を見ていた 瑛太が「黄泉に渡られましたか……」と、呟き、頭を下げた 榊原は「はい。渡って行きました。」と、告げ、瑛太に頭を下げた そして家族や仲間の横を通り過ぎ、3階の自室に向かい、寝室のドアを開けた 康太をベットに寝かせると、服を脱がせた 全裸にした康太の上に、掛け布団を被せ、榊原は康太の手を取った 「康太………君が帰って来るまでに、僕は大掃除に精を出します。 そして、初詣に着る君の服を買ってきてあげます。」 榊原は康太に語りかけた

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