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第18話 歪みの果てへ

黄泉の泉に、一旦舞い降りた康太は 首をポキポキ鳴らしていた えらい男前の黄泉の泉の女神が、康太を足留めしていた 「閻魔に逢いたい!」 と黄泉の泉に着くなり女神に言うと、 「それは聞けん願いだわ!」と言い捨てた 「あんでだよ! オレはその為に黄泉まで来たもんよー!」 康太は食ってかかった 男前の女神は 「夫婦になってくれたら、融通を聞いてやっても良いんだがな?」 と康太に婚姻を迫った 康太はグッと押し黙り……でも女神に訴えた 「嫌だ!オレの伴侶は未来永劫一人だけ」 許してくれ!と言うと女神は 「さてと、冗談は置いといて。」と言い放った 冗談!!! ブチッと切れ、康太は拳を振り上げ怒り狂った 弥勒と紫雲が康太を押さえ付けて、擦り傷だらけになっていた 女神はそんな康太は捨てて言葉を続けた 「今、魔界は近来稀に見る災害の被害者を昇華しきれずにパンク状態だ。 お前が来ると……何でもかんでも撃破で昇華しまくり、綺麗にしちまうからな、閻魔が来させるな!と言ってんだわさ。 綺麗サッパリ昇華されたら、来世に転生出来ぬからな、お前がこの時期に来られると迷惑千万とぬかしておったわ。 だから、お前を地獄へは通せぬ。 行くなら我の夫になりやがれ。」 女神は一歩も引かない姿勢で康太の前で腕組をして、康太を見た 榊原位の身長の女神はチャイナ服を着て、スリットからスラッとした脚を惜しみもなく出していた 『 夫 』…それは嫌だと康太は、弥勒の背中に隠れた 康太の夫は未来永劫、唯1人だから…… 思い出したらベソベソ泣けて来た 康太は弥勒の背中に…縋り…泣いた 弥勒は康太を背中に感じ……女神に訴えた 「女神……康太を苛めないでくれ…」 弥勒が言うと女神は「嫌だ!」と答えた ……殴りたい位の…頑固者…で弥勒は堪えた 仕方なく紫雲が「ならば、閻魔から言付けはないのか?」と、尋ねた すると女神は豊満なバストから手紙を出し、康太の前に散らつかせた 「これなら預かっておる。」 と、康太の目の前で、書き付けをチラチラ振り回す 康太は受け取ろうとした瞬間!!! 女神に抱き付かれた 豊満なバストが康太に押し付けられる 康太が「ぎゃぁぁ~」と叫んだ 康太の顔にバストが挟まれてムギュムギュされていた 仕方なく、弥勒は康太を、その胸から救出した 「我を押し倒しても良いぞ康太。」 女神は本気で康太に迫った 仕方なく紫雲が「康太は伴侶しか勃たぬ……諦めろ。」と女神に言った 弥勒は女神の手から書き付けを奪うと、開いて読み出した 弥勒が読み始めると女神は康太に 「御厨の呪いだ 自分の死から百年後に発動する為に細工してあった滅びの呪術……だ。」 「御厨????誰?オレ知らんもん。」 女神はズリっとずっこけた 「我に聞くな! 我はお前の様にジジィではない 飛鳥井に根を下ろして1018歳のお前しか知らんて。」 女神に言われて康太は思案する 「それってオレに向けて呪われてるのか? それとも…飛鳥井に向けて呪いをかけてるのか…… 滅びを望む輩にオレの果てが歪まされてるのか? ならば、今も受け継がれし後継者がいるのか?」 康太が言うと、弥勒は閻魔からの書き付けを読み耽っていた 「おい、康太……これはちと厄介かもな……」 弥勒が閻魔からの書き付けを見て言う 康太は書き付けを覗き込み………… 寝た 弥勒は康太の頭を殴った 「てめぇ寝るんじゃねぇ!」 「だって、こんなミミズが這いずった字なんて読めんだろが!」 康太がブチブチ言う 「飛鳥井に根を下ろしてて1018なんだろ? 俺よりも年寄りなのは確かじゃねぇか」 「オレをジジィ扱いしやがって!」 「ジジィやろ?」 「オレはピチピチの高校生だかんな。」 康太は頬を膨らました 頬を膨らませた康太を見て弥勒は 「そんな可愛い顔したら抱きたくなるって言ったろ?」 と康太に言った その瞬間……弥勒の頭を紫雲が殴った 「お前のは冗談にもなりはしないでしょ!」 「嫌、冗談にする気ないし………」 「み~ろ~く~呪い殺しましょうか?」 紫雲は微笑んだ 弥勒は背筋を凍らせた そんな弥勒と紫雲は捨てておいて、康太は考えに耽っていた 解らん……… 御厨……何で……滅びの呪術なんぞ…… 弥勒は閻魔からの書き付けを読んでいた 紫雲もそれを見て呪いの覇道を手繰り寄せようとする……… 康太は立ち上がり 「訳解んねぇし、閻魔の所へ行くしかねぇな! どうせ、最初から来るのを解ってて娘を使って足留めしてるだけだんな!」と言い放った 弥勒も紫雲も立ち上がり、それもそうだな。と行く準備に取り掛かった 「オレは大晦日か正月には戻りてぇんだ! 伊織がオレを待ってんだからよー! 遅くなれば……思い詰めて……怖いんだもんよー もう3日も此処で足留め食ってるし、強行突破だかんな!」 康太が言うと弥勒も 「正月は父、厳正に逢いに行かねばな」と現世に想いを馳せる 紫雲も「菩提寺で新年の祈願際がある。 戻らねばな。」と祭事を思い出していた 康太が「ならば!突破あるのみ!」と言うと、強硬な姿勢に出た 女神は予測してたのか「仕方がない。もう良いぞ行っても!」とあっさり、了承した 康太は女神を睨んだ 「あんで、足留めしたんだよ!」 「祭事があったのだ。 その間は誰も通せぬ。 お前は突破して行くだろ? 転生を待ってる魂まで昇華するではないか……それはならぬのだ。 我等は人の世の均衡を司る為におるのだ。解るな?康太?」 女神が康太をたしなめる 康太は、やっぱジジィはジジィ並の対応をせねばな……… と、女神に向き直り、その手を取り、手の甲に接吻した 「解っております女神様。」 妖艶な瞳で女神を見……そして笑った 弥勒は顔を背けた………まともに食らうと康太を抱いた日を思い出してしまうから…… 紫雲は……天を仰いだ………全くこの子は……と、嘆いた 女神が康太に婚姻を迫ったのは、心底…本心……からだった…… 女神は頬を赤らめた まるで乙女の様な可憐な顔して康太を見詰めた そんな女神に康太は 「転生を待つ魂は美しい 貴女の様に綺麗な筈だ そんな美しいものまでオレは破壊はしませんよ。」 と、騎士の様に傅ずく そんな事をされたら、メロメロになってしまう…… 女神は康太を抱き締めようと…した 危ないと察知した弥勒が、康太を背中に隠した 紫雲が慌てて「では、参ります!」と言い、歩き出した 女神は、そんな康太の姿を見送る その姿を見送り思う心は1つ……誠……欲しい男よのぉ……と、名残を惜しんだ だが………あの子は……既に魂を結んである 黄泉に堕ちても………誰も手には出来やしない…… あの魂の行く先は………結んだ相手にしか還らない 魂を結ばれて………許した相手にしか…… 女神は瞳を閉じた どうか………閻魔よ あの子を………無事に還してやってくれ…… あの子の行く末を邪魔するのなら……… 我も黙ってはおらぬからな…… 道なき岩を登り、河原を歩き山を昇る 険しい道を1日以上歩いて閻魔の所へ向かう 「弥勒、乗り物は出ねぇのか?」 疲れた康太が………愚痴を溢す 「簡単に行けん事もねぇがな、楽して行けば逢わねぇのが閻魔だろ?」 と、これしかないと弥勒が言う 「閻魔の所へは、黄泉に来て4日目位になるか……30日か…下手したら31日か……」 「行くしかあるまいて!」紫雲が渇!を入れる やるしかねぇ…… やらなきゃ帰れねぇ! 伊織!待っててくれ!伊織! 康太は魂を同化させ、榊原に思念を送る… 心配させてるのは、解ってるから…… 思念を送る…… 弥勒も紫雲も無駄な体力を使うな………とは、言わなかった 思念を使えば体力は消耗するが…… それが康太の、生きる活力源だから…… 榊原は、康太の声が聞こえ……手を止めて天を仰いだ 「どうしたよ?旦那」 一生が、榊原に声をかける 「康太が………待っててくれ!って思念を飛ばしてくれました……」 榊原は……横たわる康太を抱き締め……泣いた 久し振りの………康太の声だった 本物の康太の声だった 榊原のPCに入ってる録画した康太の声じゃなく………生きている康太の声だった 一生は良かったな……と、榊原を抱き締めた 夜中………3階の自室のリビングのTVで、榊原はPCとリンクして康太の映像を泣きながら見ているのを何度も目撃していた 『康太、笑って』 榊原が呼ぶと康太は物凄い笑顔を榊原のカメラに向けて笑っていた 『愛してっからな。伊織。』 『伊織!愛してんぞ!』 画面の中の康太が……榊原に愛を囁いていた 榊原は……泣きながら……それを見ていた…… 一生も聡一郎も慎一も力哉も……… 瑛太も玲香も清隆も……そして京香も…… そんな榊原を見てきていたのだ やるせない哀しみを……慰める術はなく…… その姿にかける言葉すらなかった 一生は「康太の声は元気そうだったか?」と問い掛けた 「凄い元気でした……康太の声でした。 物事を片付ける前の生命力の溢れた声でした。」 榊原は、康太の声を思い浮かべ……話した 聡一郎は「康太は燃えてるんですね……伊織の所へ還る為に……」と涙した 慎一は「きっと還るさ。飛鳥井康太だからな。」と言い榊原を抱き締めた 一生は「旦那、続きやんねぇと、こっちも終わらねぇぜ!」と榊原に声かけた 榊原は「御節」作成中だった 玲香に「御節」の材料費をねだり、買わせた 瑛太に「三段重」を三個買わせた 清隆に「お年玉」を用意させた 京香に「初詣の服」を買わさせた 康太が何時帰って来ても良いように、榊原は準備に余念がない 玲香は「御節など買えばよいのに…」と言ったが、 「目醒めた康太の食欲を考慮したら……割高になりますよ!康太ですからね!僕が作ります。妻の為に僕は頑張って作ります!」 と返されたら何も言えなくなる 榊原は、料理も……飛鳥井の人間より上手かった 頭は良い。綺麗好きで、掃除が趣味 そして料理も妻の為なら作る…… 玲香は「夫の鏡だわ!」と言った程で…… 清隆と瑛太は形見が狭かった 瑛太が「本当に君は器用ですね。」と、言う程 ナイフや包丁を巧みに操り細工を施し、御節を作って行く 榊原は蕩ける様な笑顔で 「僕の妻は、食い意地だけは張ってるので……食べさせてあげたいんです。」 と言われ……家族は胸が詰まった 榊原の想いは……総て康太の為に…… 榊原は、康太の薬指に指輪がはめてあった ネックレスから外して嵌めたのだった 「義母さん、キッチンは御節作りが占拠してますから、何か昼を出前を取って下さい!」 榊原が言うと、慎一がメニューを持って行く 一生がメモを渡し、聡一郎が電話のスタンバイをする 役割分担が出来ていた 彼等は飛鳥井康太の為だけにいる……仲間だった 康太が閻魔の所へ辿り着いたのは30日に日付が変わる頃だった 転んで擦り傷が出来、血だらけの康太は 辿り着いて直ぐに、閻魔の寝所を襲った 止める役人を薙ぎ倒し 放った猛獣を妖刀マサムネで斬り裂き 康太は歩を止める事なく進んだ 「我を止めるなら命を懸けろ! オレの刃に斬られれば転生は出来ぬぞ! それでも良いなら、かかって来い!」 紅蓮の焔を撒き散らし、康太は歩を止めない 康太はそのまま進み、閻魔の寝所へ向かった 閻魔の寝所のドアを開けると、閻魔は嗤って康太を待っていた 寝そべり肘を着き「遅かったな?」と笑っていた 康太は「最中でなかったか?」と返した 「炎帝が来るのに繋がってたら焼き殺されるだろ?」 閻魔は康太の事を『 炎帝 』と言ったから、紫雲はギョッとした 「そんな神だった時の名で呼ばれてもな、オレは今、人間だからな、そんな力ねぇよ」 康太は言い捨てた 閻魔は不敵な笑みを浮かべ 「今も昔も、その内に秘めた力は変わらんて。 神に戻られよ!炎帝!お前の座は誰も継げれる者はいぬ。」 と述べた 「オレは飛鳥井康太! 飛鳥井の明日を阻む者を聞きに来た! 神の時代のカビの生えた話をしにきたんじゃねぇ! 炎帝のオレが戻れば一面は焼け野原! 塵1つなく浄化する。 オレの前を邪魔する者は斬り倒す! オレが通った道には草木1つ、塵1つなく、雑草すら生えねぇぜ! そしたら、またオレを人間世界に堕とすか? 情けを掛ければオレは転生するぜ! 伴侶と共にな! オレが戻ればアレも戻る! 諦めろ!」 閻魔は………渋い顔をした 青龍……四龍の一人に名を連ねる龍神 頑固で堅物で………鬼 規律と秩序で固めた鎧を着て……雁字搦めにする法の番人 規律と秩序を司る番人 青龍の継ぎも…… 不在だった 炎帝は……紅蓮の焔で…全てを焼き尽くす…容赦のない……神だった 青龍は、そんな炎帝に手を焼いていた筈だった…… 閻魔は………傍若無人に暴れる、炎帝を人間界に墜とした でないと魔界の秩序を破り、そのうち全てを『 無 』にしてしまうから…… その時……青龍も共に………墜ちて行った 以来……炎帝と、青龍の地位は誰にも引き継がれる事なく空席だった 何時か……戻すつもりで……人間界に落とした 墜としたのは………閻魔だった 閻魔は…………昔話を諦めた 閻魔は「何が聞きたいのだ?人の子よ?」と尋ねた 「飛鳥井の終焉を唱えた輩について話が聞きたい!」 康太は言い放った 閻魔はベッドから降り、隣の部屋のドアを開けた 「こちらに来い。座って話そう。」 康太は遠慮もなく進むとソファーに座った 相変わらずな態度に閻魔は苦笑した 「始祖の一族は御存知か?」 閻魔は康太に問い掛けた 「シソ…? 紫蘇…? 始祖…? う~ん……あ!……始祖の一族か! 飛鳥井と共に黄泉の眼を持つ滅びの一族………そうか。 御厨忠和……始祖の一族の代表か…… 前世のオレが滅ばせた一族だ。」 弥勒と紫雲は………やはりお前か……と、頭を抱えた 「120年も前に滅んだ一族が、飛鳥井を終焉に向かわせているのか?」 「飛鳥井の運命に組み込まれている……。」 「だから、オレの果てが歪んだのか?」 「そうだ。お前が見る果てと必ず狂うように……組み込まれている」 「どうやったら………断ち切れる?」 「飛鳥井を一度解体する……。」 「それなら、もうやった。」 「飛鳥井をなくす?」 「それは無理だ。」 「ならば黄泉の泉に入り、輪廻の輪を潜り抜け、過去へ戻られよ そして、御厨の呪いを吐き出す前に……… 昇華させろ!それしか道はない。」 閻魔にそう言われると康太は立ち上がった 「世話になったな。 何時の日か………また逢おうぞ。」 「達者でな。………と、言うか、お前は達者過ぎか………。何時の日か…還って参れ…」 康太は閻魔に背を向けると……振り返ることもなく、部屋を出て行った 部屋を出ると、閻魔の配下の者が逃げ出して行った 炎帝と聞いて、立ち向かえる奴は……魔界にはいなかった 閻魔は…………康太の姿を見送った…… 達者でな………我が……… …… おまえの行く末は………  何時の世も波乱に満ちて…… 辛いのに されども…………その道を行く……… おまえの行く末が……… 安らかであれ……… 黄泉の泉に戻った康太は、いきなり泉に飛び込もうとして、弥勒と紫雲に止められた 「待て!幾らお前が元…神でも死ぬって!」 弥勒の言葉に康太は嫌な顔をした 「オレは人間だ! 飛鳥井康太 18歳だ! カビの生えたような昔話は忘れろ!」 「ならば、尚更、闇雲に飛び込むな! 女神に時代設定してもらえ。」 弥勒は康太に、言い聞かせた 康太は弥勒の服の裾を掴んだ 「弥勒が頼んでくれよ オレはあの乳が怖い……」 弥勒は…… 康太………と呟いた 「オレの回りの女は、皆男前で、巨乳だ。 しかも、その巨乳でオレを窒息させようとする………。御免だ……」 康太は身震いして、弥勒と紫雲に訴えた 弥勒は仕方なく女神の元に行き、過去へ渡してくれ……と、頼んだ 「120年前に……渡してはくれぬか?」 弥勒が聞くと、女神は「嫌だ!」と断った 弥勒が康太の背中を突っ突く 「うぅぅ~」 「唸るな!お前しか言うことを聞かねぇ! 巨乳に怯えるな! 男なら嬉しい乳だろうが!」 「弥勒は巨乳が好きか 澄香も巨乳だもんな あの乳に埋もれて吸ってんだもんな!」 弥勒はプルプル首をふった……… 「そもそも……結婚しろと言ったのは、お前やん……!! 俺はお前しか愛せんって言ったのに、嫁にしろ!と持って来たのは、お前だろ? 俺は巨乳なんてどうでも良かった…… お前だけしか要らなかったのに……」 弥勒はボヤいた 康太は……ヤベっ…と顔を背けた そして仕方なく自分から……女神の所へ向かった 「茗《メイ》オレを120年前に飛ばしてくれ。頼む。」 康太は《 真名 》を呼んで女神に頼んだ 「解ったわ。その変わり、キスして。」 康太は女神を見上げた…… そして弥勒を振り返った 「デカくね?」 弥勒は「お前が、ちぃさぃんだろ?」とは言えなかった 仕方なく康太を持ち上げて……女神の高さに合わせた 弥勒に持ち上げてもらうと、康太は女神にキスをした 失礼にならないように……舌を挿し込み…… 貪るような………接吻に女神の膝が……崩れた 康太は………キスだけは!上手かった 「解ったわ。飛ばしてあげます。 湖の中央まで歩いて………そしたら目を瞑りなさい。御厨の姿を思い浮かべ……念じなさい」 康太は…………当時に想いを馳せた 一族滅びの時に………想いを定めた 湖底が渦巻き……… 康太達は飲み込まれた 時空を越えて……… 時空を遡って…… 康太と弥勒と紫雲は押し潰される 転生の時に潜る………輪廻の輪の中は物凄い 圧力がかかる 康太はその輪廻の空間を………潜った…… 魂を結び付け……… 潜った………あの時を想い出していた 空間の裂け目が見えたと思ったら……… 湖の底へと沈みそうになった 弥勒は康太を掴まえ………泳いだ 紫雲は優雅に泳いで………湖面に辿り着いた 岸へと泳いで行くと 『御厨を昇華したら、その体は現世へ飛ばされる事となります 昇華せねば、現世には代えれぬと想って下さい」 女神の声が聞こえた 康太はずぶ濡れの服を乾かしたかった 火を着けるにしても結構大変……ライターみたいな便利な物もないし… 使い物にならない康太と紫雲を捨てて、弥勒は枯れ木を集め、焚き火を着けた 康太と紫雲は、火の前で震っていた 「康太、夜明けまで少しある…。 御厨の家には朝になったら行くとする。 今日は大晦日か……。 丁度頃合いも良いな。だから今は眠れ。 俺達がお前を見守っててやる。だから、眠れ。」 弥勒に言われ康太は弥勒の膝の上で丸くなった 弥勒の指が康太の髪を撫でる…… 康太は………120年前の空間の中で……眠りに堕ちた 120年前は、この時代に生きていた… この時代で……伴侶と堂々と呼べぬ秘密の恋人がいた… 仲の良い友人を演じ切って…生きるしかない時代だった… 朝陽に照らされ…康太は目を醒ました この時代の朝陽も………あの日ハワイで見た朝陽の様に美しかった そして康太は弥勒に 「この時代に合う服に見える様に……してくれねぇか。目立ちたくねぇ。」と頼んだ この時代の人間は…余所者を嫌う… 変わったものを受け入れはしない閉鎖的な世界にあった 康太に言われ弥勒は妖術をかけた 時代にマッチして見える様に……術をかけた そして弥勒は康太に問う 「康太、場所は解るのか?」と。 「解る。オレは、この時代に生きてたからな…」 康太はスタスタ歩いて行った 時代劇に出て来るような町並みがそこに在った 康太はその町並みを歩いていった 少し歩いて……康太は足を止めた 昔で言えば大工、今で言えば建築屋みたいな、建物がそこに在った 建物の前に……蒼太位の大きさの康太に良く似た顔の男が出て来た 康太は走って、その場を抜けて行った 弥勒と紫雲が康太の後を追う… 「あれ?康太?」 紫雲が…康太に良く似た男を見つけ…問い掛ける 康太は何も言わなかった この時代の康太の側には……… 見たくはなかった 見たら……帰りたくなるから……… 伊織………お前に逢いたい…… お前の姿を見てしまったら… 愛してると言ってしまう… 伊織…伊織…伊織…伊織…伊織… 逢いたい… 逢いたい… 愛してる伊織… 康太は立ち止まると…深呼吸をした そして、始祖一族の住まう館へ、着実に歩いて行き、その家を見付けると、足を踏み込んだ 始祖一族は、飛鳥井と共に黄泉の眼を持つ一族だった だが、その黄泉の眼を、一族の繁栄の為ではなく…… 己の利害の為に使う様になり、黄泉の女神から討伐の命令が下り……前世の康太が討った そして………一族は破滅の道を辿り……終焉を迎えた 繁栄の跡を残し…終焉を迎えた邸宅がそこに在った 康太が玄関のノブに手をかけると……その扉は……開いた 人の住む気配のない部屋はカビ臭く……湿っていた 天井の至る所に……蜘蛛の巣が在り手入れはされてない風だった 康太は部屋の中へ入って行く そして一番奥の突き当たりの……和室の襖を開けると…… 御厨忠和が白装束に身を包み……呪文をとなえていた 御厨は、薄ら笑いを浮かべると 「やはり来たね……飛鳥井の悪魔…… 我れを滅ぼしに着たか? 殺しに来たか?」 そう問いかけ呪文を唱えた 「だが、もう遅い……呪いは飛鳥井を100年掛けて歪み崩壊させる序章を組み込んだ!総てがもう遅いわ!」 御厨忠和は、言い放った 哀れな男だった 欲に目がくらみ………本来の道を違えた 優秀な男なのに利用されて……滅んだ 主になるのでなく……使えていれば……人生は違ったのに…… 康太はその手に……妖刀マサムネを握り締めていた 「悪いがお前が放った破滅の序章を消し去らせて貰う!」と言い放った 御厨は、…後がない自分を呪うかの様に呪文を唱え続け天へ放った 康太は……刃先に意識を集中した 「我を殺せ‥‥飛鳥井の悪魔‥‥」 「お前は淋しい人生を送ったんだな‥ お前を支える指針さえあれば曲がる事はなかったのに‥‥」 「我の人生は常に利用され踊らされ‥‥虚飾の中にいた‥‥ 我には‥‥お前のような存在はいなかった‥」 「ならば次は‥‥主を持て‥‥‥‥共に生きてくれる仲間を持て‥‥」 「‥‥それはよいな‥‥我の人生になかった日々だ‥‥」 「御厨…何故間違いだと解ってて‥破滅に溺れた?」 「その道しか我には用意されてはいなかった‥ ならば、私はお前に還ろうか? お前なら私を使えたろうに………」 御厨は皮肉に嗤った 紅蓮の焔を撒き散らし……康太は天空を斬った 発動したばかりの破滅の序章が……バラバラと零れて……消える 「お前の行く道が照らされている様に‥‥祈ろう」 康太は刃先に力を籠めると……「昇華!」と天空に飛ばした 御厨が放った破滅の呪文が‥‥消されて逝く‥‥ 御厨の魂が………天に上り……昇華された すると………康太の目の前が歪んだ… 康太の体が…歪み……時空に吸い込まれて行く… 康太は…榊原に呼び掛けた 伊織… 伊織… オレの伊織… お前の所へ帰るから……… 伊織… オレはお前のいる所へ帰るから… 永遠とも言える空間を康太は…渡って行く… 時空の裂け目が見えると… 目映い光に照らされ… 目が開けられなかった 康太は薄れる意識の中で…… 榊原の温もりを感じていた 「 伊織…ただいま…。待たせたな。」 康太は榊原に呼び掛けた 榊原は、大晦日を飛鳥井の家で過ごしてい た 清四郎から呼ばれても… 康太の事情を話して……出掛けるのは中止した 隼人に康太の事を言える筈もなく…  風邪を引いて寝てると言って…… 用心の為彼女は連れて来ない方が良いと……寄り付かせなくさせた 榊原は、一階の応接間で、一生達や飛鳥井の家族とで紅白を見ていた 康太はベットに寝かせておいた 康太がソファーに座っていると…家族が康太しか見ないから… その時…榊原を呼ぶ声がして、榊原は立ち上がった !!!! 『 伊織…ただいま…。待たせたな。』 と言う声が聞こえた 榊原は立ち上がると、3階の自室に走った 康太… 康太… 康太… 帰って来たんですね! 榊原は、寝室のドアを開けると、ベットの康太に近寄った

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