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第23話 忠誠②

外に出ると…急に頭が冷えて…何故あんなに怒っていたのか…解らなくなった… アウディに乗って頭を冷やそうとしてたら、一生と聡一郎もやって来て…… 康太と喧嘩したと言った 三人は顔を見合わせ‥少し整頓をしましょう!と言いファミレスへとやって来たのだった やはり三人は何かの意図を感じずにはいられなかったとの結論を出し、どうしょうかと話していた所だった 何故! 康太の側を離れたのか! 納得がいかなかった…から…… 弥勒に総てを話させた 弥勒は総て話した 慎一の事も… 康太は慎一の敵を討つつもりだと言う事も… 拷問を受けても…慎一は……飛鳥井の家の間取りを話さなかった… 慎一は康太を命を懸けて守り抜いた 康太は…その想いに応えてやるつもりだと…言った 「康太は……自分の力が暴走したら…お前達にも危害が加えられてしまう…と、俺に怒りの妖術をかけてくれと言って来た。 俺は…その願いをかなえてやった…。 康太は……死ぬつもりで…お前達を外に出した。 まさか…康太が俺からの覇道を断ち切るとは想像も付かなかった…。 康太は…蜘蛛の糸を出して…自分の部屋へと誘き出す手筈を整えていた……。 伴侶殿…康太を止めてくだされ…。 俺から康太を……無くさせないで下さい……」 榊原は静かに怒っていた 「僕が行きます! 弥勒は帰りなさい! 一生、聡一郎、君達は、タクシーでホテルに泊まるか、此処で朝まで過ごしなさい。 僕は康太の所へ行きます。では。」 蒼白い焔を撒き散らし……榊原は歩いて行った 弥勒は榊原のそんな姿を見送っていた 伴侶殿……康太を…死なせないで…下さい… 榊原が飛鳥井の家へ帰ると、静まり返っていた 3階の自室に向かうと………康太は… 蒼白い顔をして目を閉じていた 榊原がその頬に手を触れると… 康太は…驚愕の瞳で榊原を見ていた 「何故戻る………何故?」 榊原は、蒼白い怒りの焔を上げていた 「何故?妖術なんて使ったんですか? 君一人で逝くつもりだったんですか? だったら…許せません…。」 榊原の指が…康太に触れる… 康太の瞳から…涙が溢れた 「この家にいるのは危ないのに…」 「自分だけ死ぬつもりだった?」 「違う………オレは、慎一を傷付けた奴を許せねぇ…。 多分…執念深い奴だったから…仕返しに来る筈だ もし押し入られたら…お前達に被害が出たら…怖い……だから出した…」 「飛鳥井の家族は良いんですか?」 「家族の方には行かねぇ様に細工した…」 「なら……君は、そんな危険な場所にいたら…危ないでしょ?」 康太は…首をふった 「オレはいなきゃいけねぇんだよ! 慎一の敵を討たなきゃなんねぇんだ! オレに仕えてくれた慎一の為に……オレは迎え撃たねばならねぇんだ…」 「ならば、僕も共にいます! もう、君が何を言っても、僕には効きませんよ?」 康太は…諦めの瞳をした こうなると…榊原は、殴りたい程の頑固だから…… 榊原は康太の唇の端の傷を舐めた 「僕に君を殴らせて……」 榊原が康太を抱き締めた 「オレは……許せねぇ…。 多分…アイツ等を目にしたら止まらねぇ… そしたら…力が暴走したら…どうなるか解らねぇ…。 お前等に…何かあったら困る…」 それこそが……康太の想いだった… 「君を危険な目に合わせて… 助かりたくない!」 「伊織……」 「そこいる、一生や聡一郎もその気持ちです。やはり君達も来ましたか…。」 ドアの前には一生も聡一郎もいた 一生は榊原の手の中の康太に抱き着いた 「俺達は切れねぇ絆で結ばれてんのによぉ!」 一生が愚痴る 聡一郎も康太に抱き着いた 「僕は君の側でしか生きられないと言ったでしょ!」 聡一郎も愚痴った 康太は………一生や聡一郎を抱き締めた そして、榊原を見た 榊原は、優しい瞳をしていた 「………ごめん…。」 康太が謝ると…榊原は優しく康太の傷を撫でた 一生は、立ち上がると、ドアの向こうの廊下の奥から……引き摺って来て、康太の前に出した… 「こんなデカいナリしてファミレスで泣いてる奴を捨てて置ける程、俺は薄情じゃねぇからな!連れて来てやった!」 一生は、ベソベソ泣く弥勒を引き摺って来たのだ… 康太は立ち上がると…高徳…と名を呼んだ 「高徳…泣くな…そんなデカいナリで泣くな…」 「お前が…覇道を断ち切るから…」 ベソベソと泣いていた… 康太は弥勒を抱き締めてやった 「泣くな…結んでおくから…もう泣くな…」 背中を撫でてやると、弥勒は…落ち着きを取り戻し……泣き止んだ 榊原は、大きな子供と化した弥勒をソファーに座らせた 「泣くな…高徳…悪かったから…」 頭を撫でてやる 「お前はこんな怪我して…」 「慎一を助けるのに夢中で注意力が散漫だった………多分ハゲてるから、お前に毛生えの妖術でもかけてもらうか…」 康太は笑った その時!!!弥勒の体が強張った!! 康太も…顔色を変えた… 「弥勒…伊織と一生、聡一郎を守ってくれ!」 「あぁ。俺の命に懸けても守る!」 弥勒は…地面を踏みしめ…構えた 康太も、構えて…その時を待った! だが………幾ら待っても…仕掛けて来ないから…出向く事にした 一階に降りると………黒ずくめの男が立っていた 長い髪を靡かせ……闇に紛れて…そこに在った 康太は暁慶?と名前を呼んだ 榊原は電気を着けようとすると… 電気は着けないで!と、制止した 「康太様、貴方の命を狙う輩を、永遠に排除致します 王家は李より、絶大な権力があるので、皆を黙らせる為に泳がせました。 今後一切…貴方に害成す輩は、排除してあげましょう。」 「暁慶!助かった…。」 「貴方は敵に回すより、取り込む方が懸命 それでは、また。」 暁慶は、闇に紛れて…姿を消した 死神と威名を持つ『 李 暁慶 』 彼は普段は腰までの髪を長い髪を後ろに3つ編みで結わえていた。 だが、闇に紛れて動く時は…3つ編みを解き、漆黒の長い髪を靡かせていた 黒い服を着て…長い髪を靡かせ…闇に紛れて …邪魔な相手を消し去る姿は…… まるで『 死神 』そのままだった 次の瞬間には…暁慶は消えていた… 弥勒はその手腕に…息を飲んで…見ていた 弥勒も…『李 暁慶 』の名前だけなら聞き知っていたから…… 目の前で繰り広げられた鮮やかな殺戮に………言葉を無くした 暫くすると…何の音もしなくなり…気配も無くなった 康太は、電気のスイッチを入れた 明るくなった玄関には…誰もいなかった 弥勒は康太が張り巡らした蜘蛛の糸を巻き取り…全部剥がしてから…一生と、聡一郎が送って行った 康太は…3階の自室に戻って行くと、ソファーに座った 榊原が康太の横に座る 「康太…大丈夫?何針塗ったの?」 そっと康太の包帯に触れる…その指は優しかった 「何針だろ? …慎一の事が気になって…解らねぇ…」 「明日は慎一の御見舞いに行きましょうか?」 榊原が言うと……康太は表情を曇らせた 「逢えるか解らねぇ… 慎一は……拷問を受けて…精神状態も解らねぇ… 本来なら狂う様な拷問を受けていた…」 康太は悔しそうに…唇を噛んだ 「康太…自分を責めないで…」 「慎一は…最初…王家の敷地にいて…オレは動けなかった…。 中国系マフィアは、オレも範疇外で戸惑った…。 覚悟を決めるしかなかった。 しかも……王 春燕のターゲットはオレだった。 慎一は…飛鳥井の間取りと家の鍵を必死で守り…拷問を受けていた……」 榊原は、言葉がなかった 「さっきの…方は…誰ですか?」 「中国系マフィアの裏の世界を取り締まる男…李 暁慶…だ。」 中国系……それを聞いただけでも…康太は何処へ行っていたか…伺い知れる 闇の世界に行き………慎一を奪還すべく…動いていた 榊原が、優しく康太を抱き締めていた… 弥勒を送って帰って来た、一生と聡一郎が、3階の康太の部屋を尋ねて来た 一生は、康太の前に座った その横に…聡一郎も座った 「康太…話してくれねぇか…頼む…」 一生が、康太に頭を下げた 聡一郎も康太に 「教えて…康太…僕達は知る必要が有ります…」と、康太に頼んだ 康太は深い溜め息を着くと……「解った…」と答えた 「オレが慎一を初めて見付けた時、慎一は…闇の世界に生きていた。 法律をギリギリの所で…すり抜け…犯罪の世界に生きている住人だった。 オレは遼一を使い……慎一を抜けさせた 遼一は……多分…慎一を抜けさせるには…色んな手を使ったんだと思う そして、オレに渡してくれた。 オレが貰って…飛鳥井で住まわせた 慎一は…生きていく為に……裏社会で生きていくしかなかった…。 それが………今回の…原因にもなった…。」 一生達は…そこまでは聞いていなかった… 慎一の生きて来た…過酷な環境を…解っているようで…解っていなかった… 「慎一は…元働いていた中国系マフィアの人間に目を付けられて…着き纏われ、拉致られた 慎一を拉致った人間が今、一番消したかった人間が飛鳥井康太…飛鳥井家真贋だった そして、慎一は、そこに住んでいた 慎一は拷問の限りを尽くされ…傷つけられても…飛鳥井の間取りと鍵は渡さなかった… 慎一は連日の拷問で瀕死の重症だった 何時死んでもおかしくない状態となった そりゃぁ‥殴る蹴るの暴行で、顔は腫れ上がり…爪は剥がされ…背中にはナイフで切り着けられたり、火かき棒の様なモノで打たれた後もあった! 何日も‥‥んな暴行を受けてれば正気じゃなくなってあたりめぇだ! 慎一を拉致った家は日本にあって日本ではない治外法権の場所だった だが遺体を処分するのは、その家ではやらねぇだろうと張っていた 運び出された時しかチャンスはなかった そのチャンスに乗じてオレは慎一を探しに逝った 救出した時には…慎一はボロ雑巾の様に、ボロボロだった 救急車なんて、呼べない、怪我だった 呼べば警察が出て来る… オレは瑛兄に頼んで…飛鳥井の主治医の所へ行った。 本当は慎一に着いていてやりたかった… でも……ICUに入ってて…面会謝絶だ 家に帰るしかねぇ だったら、オレは慎一の敵を討たねばならねぇ! でも今のオレは力の制御が出来ねぇ! 怒りで…総てを焼き尽くす…破壊の限りをつくして…焼き殺してやるつもりだった そしたらオレは…………人の世にはいられなくなるかも知れねぇが!! でもオレが遣らなきゃ!誰が慎一の敵を討つんだよ!」 聞いているだけでも壮絶な話だった 慎一の生きてきた過程が‥‥あまりにも過酷すぎて‥‥ 皆は言葉をなくしていた 「今回は本当に賭けだった しかも、オレが動くのに…時間を要したのは… 慎一は足さえ踏み込めれない…場所にいたからだ その敷地は…日本で在って…日本でねぇ。 オレも範疇外だった……。 そこから…移動するのを待つしかなかった 何たって相手は…死体さえ…見つけ出せない…治外法権だ 下手に動けなかった… 慎一が動くのを待つしかなかった  どの道…動いても治外法権…には、変わりねぇ。 足を踏み入れれば…死体さえ…闇に消し去られる場所に……お前等は連れては行けねぇ… そして、そのチャンスを逃せば! 慎一は二度と助けられなかった…。 慎一を移動させたのは…死体を処理するのに…自宅は使わない………からだ。 ほんの数時間のカケだった 言えば…お前等は、反対するだろ? その反対さえ…聞いてたら…慎一は消されて …二度と帰れはしない……状態だった そして……今夜…慎一を拉致した奴は… 華僑を抜け出し……オレを殺しに来る…予定だった。 だから、オレは……お前達を出した… それが総てだ。 何か質問はあるか?」 康太は疲れた顔で…深い息を着いた 皆は何も言わなかった 嫌、何も言えなかった 「さっきの男の事は聞くな…総て忘れろ! 命が惜しいなら…記憶から消し去れ… あの人間は…そう言う類いに在る」 榊原は「ええ‥‥忘れます」と答え康太を抱き締めた 「康太…寝ましょうか… 一生、聡一郎、これ以上は……康太は疲れてるので…。」 「あぁ。解ってる。」 一生も、聡一郎も、言葉がなかった… 康太の深い愛を…知って…… 言葉なんて…続く筈などなかった! 一生は康太を抱き締め………泣いていた 聡一郎も一生の背中に凭れて…泣いていた 榊原は溜め息を着いた 幾らダブルベッドでも…四人で寝るのはキツいかも… 引き離そうか…どうしょうか…悩んでいた 榊原は「解ってる。」と言いつつ離れない二人に…リビングに布団を持って来ることにした リビングに布団を敷き、そこに雑魚寝した 榊原は、康太を抱き締め…一生、聡一郎は……康太に縋る様にして…瞳を閉じた 康太は………気絶するように…榊原の胸に顔を埋め………眠っていた 愛しい…腕の中の生き物は…本当に過酷な場所にでも出向いて…仲間を助ける 誇らしいけど……憎らしい… 愛してるけど………許せない… 言って欲しいのに…言ってくれない… 榊原や仲間を思いやってるのは解るが… 自分の命を餌にするのは… 止めて欲しい… そんな無謀な恋人を…妻を… 手にしたら…やはり…… 恋人は…夫は… 折れるしかないのか……… 榊原は、康太の旋毛に…接吻して 「愛してます。」と落とした やはり、愛してる…榊原伊織の妻だから…

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