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第30話 結晶

康太は源右衛門の側に行くと…耳元で…慎一の事を…話した 源右衛門は、静かに頷いた 「ならは、じぃちゃん、大人しく入院してろよ 今月中には退院出来る 明後日は…流生を、連れて来る 解ったな?」 「解っておる。」 源右衛門は、子供みたいな言われて…へそを曲げていた 慎一は「俺が見てるから、安心してくれ。」と言い、心強い言葉をかけた 康太と榊原、一生と聡一郎は、病室を後にした 駐車場へ行くと、榊原の車に乗り込み…飛鳥井の家へと帰って行った 3階の自室に戻ると康太は髪の毛を一本抜いて…式神を飛ばした ソファーに座り…目を閉じると、榊原は、その横に座った 『康太…源右衛門に紡いで参った…』 紫雲の声が聞こえると…康太の手に…一本の透明の糸が握られていた 「助かる。」 康太はその糸に髪の毛を結び…式神にして飛ばした 榊原は何も言わず…康太の側にいた 康太は式神を飛ばすと、榊原に 「今、何したか知りてぇか?」と尋ねた 「はい。言えるなら聞きたいです」 「今、龍騎に源右衛門の魂を紡いで貰った その紡いだ魂を龍騎に頼んで黄泉へ送って貰った 黄泉には源右衛門の妻がいる。 妻に治療の途中で抜け出せば、迎えには行かないからな! ……と夢枕に立たせて釘を刺す。 紡いだ源右衛門の魂は、夢枕に立った妻が持って返してくれる 源右衛門は夢を見る事となる 愛する妻の夢をな。」 「釘を刺さねば帰って来ますか?」 「病室嫌いだかんな 可能性は捨てきれねぇしな さてと、出掛けるとするか。」 「えっ?何処へですか?」 康太は源右衛門の側に行くと…耳元で…慎一の事を…話した 源右衛門は、静かに頷いた 「ならは、じぃちゃん、大人しく入院してろよ 今月中には退院出来る 明後日は…流生を、連れて来る 解ったな?」 「解っておる。」 源右衛門は、子供みたいな言われて…へそを曲げていた 慎一は「俺が見てるから、安心してくれ。」と言い、心強い言葉をかけた 康太と榊原、一生と聡一郎は、病室を後にした 駐車場へ行くと、榊原の車に乗り込み…飛鳥井の家へと帰って行った 3階の自室に戻ると康太は髪の毛を一本抜いて…式神を飛ばした ソファーに座り…目を閉じると、榊原は、その横に座った 『康太…源右衛門に紡いで参った…』 紫雲の声が聞こえると…康太の手に…一本の透明の糸が握られていた 「助かる。」 康太はその糸に髪の毛を結び…式神にして飛ばした 榊原は何も言わず…康太の側にいた 康太は式神を飛ばすと、榊原に 「今、何したか知りてぇか?」と尋ねた 「はい。言えるなら聞きたいです」 「今、龍騎に源右衛門の魂を紡いで貰った その紡いだ魂を龍騎に頼んで黄泉へ送って貰った 黄泉には源右衛門の妻がいる。 妻に治療の途中で抜け出せば、迎えには行かないからな! ……と夢枕に立たせて釘を刺す。 紡いだ源右衛門の魂は、夢枕に立った妻が持って返してくれる 源右衛門は夢を見る事となる 愛する妻の夢をな。」 「釘を刺さねば帰って来ますか?」 「病室嫌いだかんな 可能性は捨てきれねぇしな さてと、出掛けるとするか。」 康太はそう言い立ち上がった 「えっ?何処へですか?」 「崇城家の当主 崇城霞の所だ。 帰って来てスーツも脱がねぇのはおかしいと思わなかったか?」 「………確かに…。場所は教えて下さいよ。」 「あぁ。車に送っとく。」 「何しに行くのですか?」 「幻獸 獏を呼び寄せ…慎一の悪夢を…食べさせようかと…想ってる… 無理かな…悪夢じゃねぇから… でも現実に魘されるから、悪夢だよな…食べさせたら… 少しは…慎一が楽になれねぇかな…と、想うんだが…無理かな…。」 康太は思案した… 『康太…止めとけ…幻獸は…下手したら…精神も心も食い尽くす…』 「弥勒…?」 『崇城霞なら幻獸は呼び出せるが… 幻獸が食らえば…人に非ず…モノになる。 それが幻獸に食べられし者の末路だ。』 康太は……そうか…。と言い、ネクタイを外した 「弥勒、ありがとな 行っていたら大変な事になっていた…。」 『お前の想いは…解る…。だが…堪えろ…』 「延々と続く…悪夢の中に…慎一を置いておきたくねぇ…ってのが…本心だ…。 幸せにしてやりてぇと…思ったんだがな…。」 『妖術も…幻獸も…妖しの上に立つものに…真実を認めて…乗り越えねばならぬ…歩まねば…ならぬのだ…。』 「それでもな…弥勒…人は弱いものなのだ…越えられぬ…壁も…あるのだ…」 康太はソファーに深々と座り…目を閉じた 『一人じゃ…越えられないなら…お前達が越えさせてやれば良い…。 お前達がいるなら…慎一は一人じゃなくなる…』 「そうだな…そうだ…」 『慎一の深淵を…一度…覗いて参る… どれだけのダメージを受け…誰を想って…生きてるのか… 慎一に入って…心の奥底を…覗いて参る…。 少し…時間をくれぬか?』 「頼む…」 康太はそう呟くと弥勒は気配を消した 榊原は、康太を優しく抱き締めた 「康太…どんなカウンセリングや治療をしたって… どんな妖術を使っても…慎一には効きませんよ…。 何故なら…慎一は、君の言葉しか聞かない… 君の言葉しか…受け入れないからですよ。」 「伊織…?」 「君は…一緒にいる慎一しか知らないでしょう? いない時の慎一は……知らないでしょう?」 「裏表が有るのか?アイツには?」 「そう言うのとは違いますよ。 慎一は、僕は康太の一部として見ているので失礼な態度は取りませんし、裏表はないです。 ですが、君を主と定めた日から…慎一は、君に仕えて…君の側で生きる覚悟を決めた…。 何をするにも、君が優先で、端から見てる方は…慎一の主に対する想いが…解ります 悠太が君を家の中で…誰よりも大切に扱い、玉露を入れる様に、慎一もまたそうなんですよ。君が命ですから…。」 「伊織…」 「そんな顔しないの。」 榊原は、康太の唇の端の傷を撫で… 「何を言ったら、噛まれましたか?」 「『もし…幸せになれないとしたら…それはオレの側にいるからだろ? オレの側にいる人間は…皆…不幸になって行く…違うか? オレの…側から…離れた方が…幸せに…なれるのかも…知れねぇな。』 みたいな事を言ったら…黙らせるのに…アイツ…噛みやがった…」 榊原は、康太の絆創膏を剥がし……舐めた 「そりゃあ、噛まれて当然ですね…。 君は…一生に死ね…と、言ったも同然ですよ? 君の側にいて…君と共に生きる覚悟をした人間に… 君の為なら…共に逝こうとする人間に… 側にいない方が幸せになれるなんて言えば…噛まれるだけじゃ済みませんよ…。 僕なら…そんな事を言われたら…殺しますよ…。 離れる位なら…共に逝った方が良い…」 「伊織…それでも…オレは、アイツ等を幸せにしてやりてぇと想うんだ…」 「君が…しなくても…人は…幸せを見付ける生き物ですよ? 与えてやりたいと想うのは…神か…目上の目線の人間の考える事… 君は…神ですか…?人間でしょ? ならば、与えるなんて一方的な選択肢は捨てなさい。」 「そうだな…。」 「でも、君は…彼等を幸せにしたいんでしょ? ならば、一緒に生きて行けば良いんですよ 一緒に生きて行けば…彼等も僕も幸せなんですから。」 榊原は、そう言い…康太に接吻をした 甘やかし…蕩けさす…優しい接吻を…。 「ん…ぁ…」 激しい接吻に…康太の吐息が漏れる 榊原の指は…器用に康太のスーツの隙間に差し込まれ…素肌を弄っていた 夢中でキスしている二人の頭上から… 「お取り込み中悪いけど…飯だぜ!」 一生の声が…二人に投げ掛けられた 榊原は康太から唇を離すと…一生に顔を向けた 「スーツを着替えて来るので待ってて下さい。って言うか、来なさい。」 寝室のドアを開けて、榊原は中に入って行く 「一生、康太のスーツを脱がせたら、僕に渡してください。」 榊原はそう言い、さっさとスーツを脱いで行く 一生は、康太のスーツを脱がしては榊原に、渡し、服を貰い着せて行く 「一生、君が抱っこしてキッチンまで連れて行きなさい。」 榊原に言われ…仕方なく康太を抱き上げ…キッチンに向かう 榊原の誠意だった その誠意を一生は受け取り…康太を抱き上げた 階段の途中、力哉に逢い、力哉は焼きもちを妬くかと想っていたら 「康太、僕が抱っこしてあげます 一生は雑いですからね 落とされたら大変です。」 と言い、一生から康太を奪い、抱き上げ連れて行く 「力哉!てめぇ、恋人に言う言葉かよ!」 康太は笑っていた 「恋人の体に勃起もしねぇ奴は黙ってな!」 力哉は言い捨てた わーわーぎゃーぎゃー言いながらキッチンに入って行くと キッチンには瑛太がいて、康太を受け取り椅子に座らせた 玲香は「源右衛門はどうであった?」と尋ねた 「飛鳥井家の真贋は毒を食らう その毒は…体の中で蓄積され…源右衛門位の歳になると、かなり浸食して…体内に影響が出て当たり前っちゃ当たり前だわな 体から毒を抜かねば…何時か自分の食らった毒で死ぬ…。 昔の真贋は…それが定め…。 長生きは出来ぬ。」 家族も仲間も…言葉を無くした 「オレは、翔には毒を飲ませねぇ… 今の時代……毒で死ぬのは…希だ 秘密裏に殺すなら…毒より…銃だろ? 毒を食らう価値も意味も無くなって来てるのに…誰も警鐘を鳴らさねぇ…それが異常だと気付かねぇ…。」 瑛太は「お前の想いのままに それと、誰も警鐘を鳴らさないのではなく… 歴代の真贋と言う存在の大きさに…誰も何も言えずに来たと言う事です 康太が止めるのならば…総代として…異議を唱えはしません。 私は源右衛門に、康太に毒を飲ませるな!と異議を唱え…殴られ…叶いませんでした… 悪習は変えるべきでしょ… 変えねばなりません。」と、辛い胸うちを吐露した 「瑛兄…源右衛門は、そうして育ったから…仕方がねぇ経緯も有った。 体が弱く…飛鳥井の鼻摘み者が、真贋だと解り… 大切に扱われ…真贋と総代を遣らねばならなくなった 規律と秩序を乱せば…飛鳥井は崩壊する… そんな想いで生きて来たんだ源右衛門は 仕方がねぇよ 妻も先に逝ってしまうしな オレは、じぃちゃんの言う事は聞きゃぁしねぇし。」 康太は笑って…源右衛門の胸のうちを話してやった 「じぃちゃんはやっと、真贋でもなく総代でもなく、飛鳥井源右衛門として 孫や家族と接して…毎日を楽しんでいた じぃちゃんの時間はこれからだ 大切にしてやってくれ 《せーか》も頼んでたしな。」 玲香が「せーか…って清香…?お義母様?」と呟いた 「清香は、転生出来るのに…輪廻の輪に入るのを拒んでいる… 源右衛門がこの世を全うして来るのを…日々祈り紡いで見守っている。 女神は最強の強者だと…困ってたな…。」 康太は思い出して笑った そして、立ち上がると…一生の背中に…こなきじじぃと化して…抱き着いた 「オレを部屋まで連れて行け! 忠犬になりやがれ!一生!」 「はいはい。貴方様の忠犬になりまんがな」 「じゃぁな。お休み…父ちゃん、母ちゃん、瑛兄、京香、悠太、聡一郎。力哉はオレに着いて来るもんよー」 榊原が片付けをすると聡一郎も悠太も手伝い、片付ける 榊原が片付くのを待って、一生は3階の康太の自室に連れて行った 今夜は翔は…瑛太が見る当番だった 翔は…3歳になるまでは普通の愛情の元で育てるつもりだった… その果ての修行を…愛を知ってからでも…良いだろうと……康太は考えていた

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