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第35話 決着

やはり……康太はこの日も…空腹で目が醒めた 時計を見ると…朝の6時半。 「伊織、伊織、腹減ったぁ」 榊原を譲って起こした 「なら、起きます 食事が終わったら慎一の所へ迎えに行き、戸浪へ行きましょう。 腰は大丈夫ですか?」 「………立てねぇかも…すげぇ怠い…」 「君が僕を誘うからでしょ? 欲しいなんて言われたら…僕は止まれませんよ?」 「オレに服を着せて…飯を食わせろ!」 「なら、隣のカップルをお越しなさい。」 榊原に言われ、康太は聡一郎と悠太を起こした 「おれ!起きやがれ! オレは腹減ってんだ!」 聡一郎と悠太が目を醒ました 寝惚けて…そして、顔を真っ赤にしていた 榊原は、康太に普段着を着せていた そして、榊原も服を着ていた 聡一郎と悠太は…慌てて服を着た そして榊原と康太にペコペコ頭を下げて… 自室に戻って行った 榊原は、康太をリビングのソファーに座らせると…掃除と洗濯を始めた 康太が寝てると一生が、やって来た 手には…翔を抱き締めていた 「流生は?」 「今はオムツ変えて、ミルク飲んでる。」 「力哉が?」 「あぁ。世話してる。」 「そうか。」 「お疲れだな?」 「悠太のバカの所為でな!」 「俺よりひでぇのか?」 「酷い!聡一郎は感じてもいねぇのに悠太を受け入れて流血だ 快感より拷問だろ?あれは。」 「ひでぇな…。 で、イケる体になったのか?」 「解らねぇ…途中で伊織が暴走して…オレは見てねぇ 後…伊織は、悠太に敵意が有りすぎ…瑛兄に、似てるからか?」 康太は…多分…解らないだろう… 悠太の…康太を愛する…気持ちは… 榊原は、それを警戒し…近付けたくはなかったのだろう… 一生は、何も言わず…康太を撫でた 榊原は、一生には康太を譲る… それは一生は何があっても、康太を優先にする…愛以上の関係があるから…割り込まない 一生は、康太の為にしか動かない… それを知ってる人間だから…側に置いておく 「康太、翔はもう見えるのか? 綺麗な目が…俺を見てるからさ、ついつい見ちまう。」 「どうだろ?まだ見なくても良いと…オレは想う…。」 視える者の苦悩は…また知らなくて良い… 康太は…儚く笑い…話題を変えた 「どうだろ?所で…あれから力哉とは?」 「色々話をしたな…。 亜沙美と出逢った時の話から…昨日の話。 そして康太や、聡一郎と出逢った日の話やら……X'masに康太に万引きを強要して…… 泣きながら瑛太さんに謝って…康太と共に生きる決意をした話を、した。 そしたら、力哉も話してくれたよ…。 誰もいない部屋で…黙々と勉強して…勉強するしかなかった…日々を…。 何も持たない…自分の話を…してくれたよ 初めてだった…こんなに話したのは…。」 康太は…そうか……と、笑って…一生を翔ごと抱き締めた 「一生…辛い想いをさせるな……オレを憎んで良いから…」 「バカ言え お前を憎める筈などないだろ 俺は…お前や旦那、聡一郎、隼人もいる、慎一もいてくれる そして、力哉もいる 一人じゃねぇって心強いな。」 「お前を一人になんてしねぇよ!」 「俺は…一番お前を愛してる…誰よりもお前を愛してる お前は…旦那と幸せに笑ってろ。」 「オレは幸せだから良い…伊織がいて…お前達がいれば…オレは生きていける…。」 一生は、優しく康太を抱き締めた 榊原が、その光景を微笑ましく見ていた 一生と、悠太とは違った… 差を着けてる気はないが…やはり重さが違った… 榊原は、康太を抱き上げると、一生に 「今日は、どうします? 学校へ行きますか? 翔と流生は午前中は京香、午後は義母さんが見てくれます 僕と康太は今日はトナミ海運へ慎一を連れて行かねばなりません。」 「なら、俺は行く 慎一は俺の兄だ。 支えてやらねぇとな。」 「なら、聡一郎は?」 「留守番だろ?」 「……なら、行きますか?」 榊原は、康太を抱き上げまま歩き出す 一生は、翔を腕に抱き歩いた キッチンにもベビーベッドを入れた 食事中は、寝かせておくしかなかった 階段の途中で力哉が流生を腕にかかえ部屋から出て来た 榊原は、そのままキッチンに向かい、康太を何時もの席に座らせた 玲香の変わりに最近は京香がキッチンに立っていた 二人は話し合い、上手く調整して、朝食の分担や夕飯の支度をする様にしていた 仕事をしながら…子育てをする 充実した毎日を送っていた 一生が康太の食事を用意する…。 榊原が珈琲を入れ、一生の前に置いた 瑛太と清隆もキッチンに来ると、榊原は優雅にバリュスタの機械を使い、珈琲を入れてやった 瑛太は「今日は、学校ですか?」と尋ねた 榊原は「今日は、トナミ海運へ行きます。」と告げた 「トナミ海運?何かありましたか?」 康太を心配そうに見た 康太は家族に状況を少しだけ話した 「双子の母親は…資産家で、財産狙いの親族に襲われて殺されかけた…。 だから、若旦那に中に入ってもらった でないと双子を殺されてもおかしくない状態だった。飛鳥井の家にも偵察が来てた」 家族は…言葉を失った 「それも、直ぐカタがつく 今日は、慎一を病院まで迎えに行き、一緒にトナミへ行く。 双子の相続する資産の一部の土地を若旦那に貸して賃貸料を取る。その契約に行く。」 瑛太は「戸浪さんに宜しく伝えて下さい。」と伝えた 康太は頷いて、沢庵をポリポリ食べた 食事を終えると、康太は立ち上がった 榊原は、食洗機に食器を入れ、康太と共に立ち上がった 「一生、お前も支度しろ。」 康太が言うと、一生も立ち上がった 階段を上がって行くと、聡一郎と悠太に出会した 康太は何も言わず階段を上がって行く 聡一郎は、一生の腕を取った 「康太は……怒ってるの?」 「今日は、トナミへ行くからな…それでだろ? お前は…今日は留守番な。」 「解ってます……。」 「悠太と話しろよ。」 聡一郎は頷いた 康太は寝室に行くと着替えた 康太ににスーツを着せた後、榊原は自分の支度をする 「康太、聡一郎の事…怒ってるんですか?」 「何で?」 「声かけてあげませんでしたね?何故?」 「今声かけたら泣くだろ?アイツは? そしたら、時間がねぇのに…いい加減な慰めしか出来ねぇかんな ならば、最初っから声をかけねぇんだよ…オレは。」 時間がないからって言って……おざなりに慰めて…行くのなら… 最初から…声をかけない…康太らしかった 榊原の支度が済むと、康太は立ち上がった 「さぁ、行きますか?」 「あぁ。」 康太と榊原は、寝室を出ると鍵をかけた そして一階へ降りて行くと一生が待っていた 「なぁ、康太、慎一の服はどうすんだよ?」 「服…スーツか…。慎一の部屋って入れたか?」 康太が聞くと、一生が首を傾げた 「そう言えば…どうなってんだ?」 一生はそう言い…慎一の部屋を見に行った ドアを開けると…開いた 一生は、部屋に入ると…そこは殺風景な…… 何もない部屋だった 家具と言う家具は無く…誰も住んでいなかった… みたいな空き部屋に一生は、唖然とした 几帳面に掃除された部屋のクローゼットを開くと、服が1枚…掛かっているだけだった… クローゼットの中に…スーツが1枚…掛かっていた 中を見ると…Yシャツや靴下も用意してあり… 一生は、そのスーツのケースを持って…部屋を出た 一生は、康太に言おうとしたが…言葉が…見当たらなかった… すると、康太は 「一生、慎一が帰って来る前に、服とか伊織と買いに行ってくれ。 慎一は家を出る時に総て処分した…。 生きて…飛鳥井へ帰る気は…なかった…からな。 元々…荷物も服も少なかった… オレが買おうかと想ったが…断られた。 でも退院する前に…揃えてやる、つもりだ。 慎一は飛鳥井康太と共に生きると約束したからな。用意してやってくれ」 「………承知した あんな何もない部屋も…模様替えする こんな淋しい部屋に居させたくない…。」 「なら、慎一を二階に入れるか?」 慎一の部屋は六畳二間とバス、トイレ付きの部屋だった。 源右衛門の心配りだったが…… 荷物も持たない慎一には…逆に肌寒い部屋に感じていた 「それ良いな。」 「なら、もう、用意しねぇとな……」 「だな。」 康太は……一生の手の中のスーツを見て… 「そのスーツは、オレが買ってやったヤツだ 処分出来なかったんだな…。」 と呟いた 康太は榊原の車の助手席に座ると、一生は後部座席に座った 飛鳥井の主治医の病院へ向かい、病室をノックすると、慎一がドアを開けた 一生は、慎一にスーツを見せ着替えを促し、 玄関から持って来た、靴を慎一の前に置いた 一生が慎一の着替えを手伝って行く ネクタイを絞めて、上着を着せると、慎一の支度は終った 「歩けるか?車椅子に乗るか?」 一生の心配を他所に…慎一は立ち上がって…歩き出した 足を引き摺るが…歩けない訳ではなく…慎一は、ゆっくり歩いて行く事にした 榊原が肩を貸し、一生が体を支えてやり、康太は、その後に着いて歩いて行った 駐車場まで行き、榊原の車の後部座席に乗せると、康太は車に乗り込んだ トナミ海運へ向かって走る トナミ海運の駐車場に車を停めた 榊原は車から降りると後部座席のドアを開けた そして慎一に手を貸すと、車から降りた 慎一は車から降りると…榊原に支えなくて良いと…言った ゆっくりと、自分の足で歩いて行く… 康太はトナミ海運へ入って行くと、榊原が受付へ行き 「飛鳥井康太が来たと、戸浪社長へアポをお願いします。」と、告げた 受付嬢は、直ぐ様、戸浪社長へ電話を入れた すると「御通しして…」と返答が返ってきた 受付嬢は『お通り下さい。』と頭を下げた 康太はエレベーターの前に立つと、慎一が来るのを待った 慎一は自分の足で…歩いてエレベーターに乗った 康太は慎一に「辛くねぇか?無理するなよ…」と気を使った 「大丈夫ですよ 貴方は心配しなくていい。 戸浪社長に逢うのにみっともない姿は晒したくない…。 飛鳥井康太の側にいる者が…そんな姿を晒して良い筈などないのです。」 「お前が無理するより、良い。 お前に無理させて…良い顔などしたくもねぇよ!」 「康太…」 「だから、辛い時は辛いと言え。良いな。」 慎一は頷いた 最上階へ行き、社長室をノックすると、戸浪自らドアを開けてくれた 社長室の中へ…慎一が自ら歩いて来るから…戸浪は驚いていた 「大丈夫なんですか!」と思わず聞いてしまった程だった 慎一はソファーに座らせてもらい、深く息を着いた 「慎一は……拷問の限りでいたぶられた! まだ起きれねぇのに…無理するかんな。」 「拷問……ですか…」 康太は、慎一の背中の傷を…スーツを捲って見せた 戸浪は…言葉を無くした…!! 背中には…真一文字の刀傷に…火傷が… そして慎一の腕を取り…指を見せた 手袋を外すと……赤く肉に薄皮が張ったような…爪があった 「殺される一歩手前で…オレが治外法権の場所に入り…連れ出した。 若旦那が先日連れていってくれた中華料理の店のオーナーとは…その治外法権の場所で出逢った そして……暁慶が、慎一の仇を討って…慎一を傷付け…殺そうとした奴を…この世から消してくれた。」 李 暁慶…は、死神の威名を持つ…… 闇から闇に葬り去るのは…お手の物だろう… 「その様な話を…私は…お聞きして…宜しいのですか?」 康太は、不敵に笑って… 「構わねぇ…。聞くだけならな。 若旦那は、詮索しねぇだろ?」 と言葉を投げた 「詮索は致しません 私も命が惜しい……。」 「ならば、心に留めておけば良い。」 ………? 戸浪には意味が解らなかった… だが…無駄な話をわざわざする人間ではないのは、誰よりも解っていた 「解りました。思い留めておきます。」と返した 榊原が慎一の服を直してやる 康太の左右に…番犬がやっと揃っていた 戸浪はその姿を見て 「飛鳥井康太の番犬が揃いましたね? 初めまして、緑川慎一さん。 私はトナミ海運社長の戸浪海里です。」 戸浪は慎一に頭を下げた 「緑川慎一です。 飛鳥井康太を主と定め根を下ろした、人間です。お見知り置きを。」 慎一も頭を下げた 「双児と言っても過言ではない…ですね。 母親違いなら、似て非ずの容姿になってもおかしくないのに…。」 戸浪は、一生と、慎一を見比べた。 そして、慎一の前に書類を置いた 「トナミ海運は、緑川和希、和馬、両名の相続した土地を借り上げる書類を作成しました。 期限は…10年間。以後は買い取ります。 賃貸料と支払いは、天宮に慎一さん名義の通帳を作って戴いたので、そこへ、振り込みます。 この書類に目を通して、異存がないのであれば、サインとして下さい。 康太から指示された通りに、天宮が伝えに来たのを、此方は飲まさせて戴いた。 宜しいですか?康太」 「ありがとう。若旦那。」 「久宝側の弁護士は、引くことに同意しました。 双子を狙っていた親類は、警察に捕まりました。 これで、緑川慎一の子供に害成す輩は、総て排除致しました。」 「世話になったな、若旦那。」 「いいえ。私の出来る範囲の仕事をしたまでです。」 「若旦那、本当に助かった。」 「今日は、流生は?」 「翔と留守番だ。義姉が見てくれている。」 「そうですか。」 「飛鳥井には、流生より一ヶ月早く生まれた翔と言う、オレを継ぐ者がいる そして来月……双子が来る 淋しい想いはする事はないだろ…。 安心してくれ。 今度見に来ると良い 千里と万里と宗玄を連れてな 慎一の双子の子供もその時は越させよう。」 「はい。近いうちに 訪ねて参ります。」 「若旦那、想いは重なり…紡がれ…何時か強固な絆に受け継がれて行く 人は縁《えにし》を紡いで…縁を結わえる。 オレは…明日へと紡いでやろう。 命に変えてもな。」 「康太…。」 「若旦那…オレは果てが見えるがな、それを言う訳にはいかねぇんだよ 未来が狂うからな…。 だから、オレの言葉を忘れねぇでいてくれ。」 「解りました。決して、忘れません。」 「ならな。若旦那。」 「はい。今回は本当にありがとうございました。」 戸浪は頭を下げた 康太も立ち上がり…戸浪に頭を下げた 康太が立ち上がると、榊原も立ち上がり… そして慎一を支えて一生も立ち上がった そして、ゆっくりとした足取りで慎一は歩き出した 康太は、戸浪に片手を上げると、背を向け、歩き出した そして、エレベーターに乗り、外に行くと、榊原の車に乗り込んだ 榊原の車は…病院へ直ぐに向かわず…何時ものファミレスへと向かった 駐車場に車を停めると、康太は「行くもんよー!」と車を下りた 榊原も車を降り、一生や慎一も車を降りた 榊原は、店内に近い場所に…車を停めていた 下りて…そんなに歩かなくても店内に入り、テーブルに着いた 榊原は、適当にランチを頼み、飲み物を頼んだ 一生がドリンクバーへと行き、飲み物を運んでくる 榊原も手伝い、二人で運んでいた 康太は「慎一、お前はオレへと還って来たんだよな?」と聞いた 「はい。貴方の場所からは動く気は有りません。」 「ならな、飛鳥井に腰を下ろして住むんだろ?」 「はい。」 「退院したら、二階に移れ慎一 お前の部屋は客間にする 近いうちに家具を入れて、双子も遊びに来れる様に子供のベッドも入れて、服も全部揃える。異存はねぇな?」 「貴方に…また、お金を使わせるのは嫌です…。 俺を…自由にするのにも…大金を使った そして学校まで行かせてくれ…入院費だってあるのに…」 「心配すんな オレはそんなんで潰れる柔な懐はしてねぇよ。 先行投資だ。 オレの詠みは狂わねぇ そのうち慎一が名馬を育てれば…オレの懐は豊かになるって事だ! 損はしねぇように、なってんだよ。」 康太は、笑った そんな風に言われたら…もう何も言えなくなる… 「何時か…貴方に還します。」 「当たり前ぇだ! 使えねぇ奴にオレは金は使わねぇよ。」 「貴方って人は…」 康太は笑っていた 凄く…楽しい顔で…笑っていた 食事が終わると、慎一を病院に送り届けて、康太達は源右衛門に挨拶して…帰っていった 飛鳥井の家に着くと、康太は遼一を呼び出し、リフォームと家具の発注を依頼した 慎一のいた部屋を客間にする 床には絨毯を敷き、応接間に有るようなソファーを入れ、客が泊まっても良いように、キングサイズのダブルベッドを入れる様に頼んだ そして二階の京香の使った部屋を、慎一の部屋にする様に頼んだ。 子供と生活するのを前提に、子供のベッドと机の一緒になった家具を入れて、床は絨毯を敷く 遼一は、直ぐに手筈を整えると言い、帰っていった 一生と、榊原は、慎一の服を買いに…出掛けて行った

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