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第36話 果ての夢

その夜…康太は、榊原と激しく愛し合い… 眠りに着いた榊原にキスして囁いた 「愛してる…目醒めろ…オレの……蒼い…龍…」 康太に…囁かれた榊原は、物凄い…勢いで 記憶の渦に飲み込まれ…息も出来なくて… 気絶した そして深い眠りにと堕ちた 法律と規律と秩序で織り成した鎧を着て 四神の一人、青龍は法の番人をしていた 青龍の今の頭痛の種は……炎帝 閻魔大魔王の弟で…破壊の限りを尽くして…焼き払う…破壊神 炎帝 魔界の超問題児に頭を痛めていた 顔は可愛いが……朱雀の様に妖艶で美しい訳でもない スタイルは良いが……黒龍の様に…男前な訳でもない だが…人を惹き付けて止まない…人気は絶大だった その日も…炎帝の苦情に…辟易して…帰る、帰り道に…炎帝が立っていた 青龍は、炎帝に近寄ると 「此処は私有地だぞ! 何故に此処にいる!」と叱咤した すると炎帝は…驚いた顔で…青龍を見た 「湖に行くんだ…ごめん…良いって言われたから…」 炎帝は素直に謝った 青龍は、湖?と訝しんだ そして…炎帝の隣にいる白鳥に目をやった ペット?まさかな… 「湖に入るのは許可がいる… お前は誰に許可を貰ったんだ?」 「黒龍に……好きな時に行って良い……って。」 炎帝は、青龍の兄…黒龍と、弟で地龍とも仲が良かった 「ならば、行けば良い…」 湖の向こうには…青龍の私邸が見える…… 炎帝は白鳥を水浴びさせて…青龍の家を見るのが日課だった 炎帝は、青龍に恋していた 密かに…遠くから…見詰めるだけの恋を… 何故なら…青龍には妻がいた……から… 青龍は、湖に行く炎帝に着いて歩いた 何をしでかすか…解らないから… 炎帝は、ペットの白鳥を湖に浮かべて楽しんでいた 白鳥の翼が…水を飛ばすと…… 炎帝がキラキラ光って…輝いていた 夢中に子供の様に遊ぶ…炎帝を見ていた そして、炎帝は走り…青龍の前で…転けた 青龍は、慌てて炎帝を支えてやった 見詰める瞳と瞳が…互いだけを映す 青龍は、炎帝に接吻した 舌を絡める…粘っこい接吻を。 それで火が着き…青龍は、炎帝の体を求めて…抱いた 破天荒な炎帝だから……誰かと経験位…あると想っていた 想えば…青龍の胸がチリチリ妬け着く… 青龍は…最近稀に見る性欲で…炎帝を抱き…貫いた… 炎帝は痛みのあまり……気絶した 無垢な体だと解ったのは…抱いた後からだった… それ以来…炎帝が湖に来るたびに会瀬を重ね …関係を続けた… 何時しか…炎帝の体も…快感を覚え…青龍のカタチを覚えた… でも……二人の会瀬は何時も…湖の前で… 冷たい…草村に…下だけ…脱いで…繋がる …そんな…刹那の時間だった 柔らかいベッドの上で…なんて…一度も…なかった それでも炎帝は…気紛れを感謝していた 気紛れに…体だけ気に入られた それで…良い… その関係は…4年の月日が流れていた そんな時…青龍の妻の妊娠を耳にした 炎帝は……湖に行くのを…止めた 青龍は、湖に行っては炎帝の姿を探したが… 見当たらず…帰る そんな毎日を繰り返していた 家に帰っても…誰もいない 何年も…抱かずに見向きもしなかった妻は… とうに、家を出て…最近……誰かの子供を妊娠したと聞いた… 炎帝は……電気の消えた…青龍の部屋を…湖から…見ていた… 何をする訳ではないが…じっと…見ていた 黒龍が炎帝に近寄る 「俺の家へ来い!こんなに冷えて…」 「悪いな…」 「構わないさ…。」 炎帝の数少ない友人は…総てを承知で…優しかった… 朝…役務に着こうと家を出ると…目の前に 炎帝と黒龍の姿があった 二人は仲良く…歩いていた 青龍は、鼻を鳴らして…ふん。そう言うことか…と、湖に来ない理由を…勝手に決めた 炎帝の気持ちも…知らずに… そんな時…人間界で…大量に人が死ぬ天変地異があった 炎帝は地上に…降り立ち… 魂の選別をして…浄化しなければならない… だけど…炎帝は…選別を出来ず…総てを焔で焼き尽くし…『 無 』にしてしまった バランスを司る女神は怒り…閻魔に炎帝の制裁を求めた 他の神も…日頃の炎帝の行いに…処分を求められ… 閻魔は我が弟を…抹殺出来ず…人間界に堕とす………事を決めた 閻魔は弟の炎帝を呼んだ 「我が弟、炎帝よ お前は傍若無人な振る舞いをし過ぎた… 幾ら弟と言えど…これ以上の…庇いだては出来ぬ お前を人間界に堕とす…。良いか?」 「異存はねぇよ。」 「思い残す事のないように…… 明日まで好きな事をして過ごせ…」 炎帝は、艶然と笑った 「兄者は、甘い…。 オレを抹殺すれば良いのに…… 人へと堕とすか…。」 「それが……兄の情けだと想え…」 炎帝は、閻魔に背を向け…歩き出した 好きな事を…するのなら… せめて…最後くらいは… ベッドの上で…抱いて欲しかった 炎帝は…湖に続く道を歩いていた いないかも知れない…げど… 想いは募った… すると…最後の…偶然か…奇跡を…炎帝に与えてくれた 湖に青龍が立っていた 「久し振りだな…」 青龍は、声をかけた 青龍の耳にも…炎帝の事は耳に入っていた… 処分の話までは知らないが…閻魔の弟だから …今回も…甘い処分だろうと…言われていた 炎帝は指が白くなる程に握り締めて……思い詰めた顔をして…… 「青龍…1つだけ…お願いがある…聞いて欲しい…」 と吐き出した 炎帝は……想いの総てを懸けて…言葉にした 青龍は「聞いてやるから…言ってみろ…」と言った 「オレの家へ来て…… そして……一度で良いんだ…… ベッドの上で…オレを抱いて…」 最後に1つだけのお願いだから…と、懇願した 炎帝の想いの総てだった 青龍は、飲んでやった… 炎帝の部屋で…青龍は、始めて…柔らかいベッドの上で炎帝を抱いた もっと早く……こうしてやれば良かった… 青龍は、この時…心底後悔した ずっと兄の友の炎帝が気になっていた‥‥ 何時も何時も兄の傍にいた炎帝に目が行った その想いを‥‥断ち切り親の期待を背負って生きて逝く決意をした だが手にした炎帝はあまりにも愛しくて‥‥ 青龍を苦しめていた 何時か止められなくなる… 誰にも止められない位‥‥‥愛していたのは自分だった… 炎帝の体に溺れ…愛していくのが怖かった… 行為は…朝方まで続き… 眠りに着いた… 寝息を立てる青龍に……… 炎帝は接吻した 「愛してる…」 一度も言えない…言葉を送った… 青龍は、眠りの中で…その台詞を聞いた 都合の良い…想いが魅せた夢だと想った そして……目が醒めると…炎帝は居なかった ベッドの上は冷たく…冷えていた… 青龍は服を着て…炎帝を探しに向かった… もう…手離せなくなっていた 炎帝を探す青龍の耳に…人間界に追放される炎帝の話が飛び込んで来た… 「とうとう閻魔も… 弟の不祥事の尻拭いが出来なくなったらしい… 炎帝が人間界に追放されるんだってよ!」 と噂話で持ちきりだった 青龍は、噂話をしている奴を締め上げ…話を聞くと…走った だから……最後なのか! 最後に1つだけ…の願いなのか… だとしたら…余りにも…私は酷い奴ではないか!炎帝! お前を何年も抱いて…始めて…ベッドで抱いた朝に…お前がいないなんて… たった一度…柔らかいベッドで繋がって…その足で…お前は…人の世に堕ちると言うのか… どんな気持ちで…抱かれた…? どんな気持ちで…最後のお願いをしたんだ? 最後に聞いた…あの「愛してる」は…お前の本心なんだな 炎帝! ずっと抱いていて…やる 愛してると…言ってやる だから…もう泣くな… お前が誰よりも弱いのは知っている… 青龍は、龍に姿を変えて…黄泉の湖まで急いだ 待ってろ!炎帝! 炎帝は…女神に 「もう二度と再び、神としては…閻魔の許しなく…この地は踏めません…。 良いですね…。」と確認されていた 炎帝は頷いた 「オレは魔界の半分に呪いをかけた オレのいなくなった後…草木は枯れて… その地には…雑草一本生えはしねぇ……… 呪いをな…。」 青龍と繋がった場所に…呪いをかけた あの地は…この先…誰も住めない…地になれ オレがいないのに…あの湖を……見るな… 青龍……愛しい…蒼い…オレの龍…… 炎帝は、目を閉じた… 「女神…良いぞ… オレを人の世界に堕とせ…」 炎帝が覚悟を決めると…大雨が降って…辺りは暗くなった… 炎帝が目を開けると…蒼い龍が立っていた 「青龍……見送りか? 魔界一の問題児が…ちゃんと堕ちるか、確認か?」 炎帝は、儚く笑った 青龍は炎帝を、抱き締めた 「愛してる!私も…一緒に堕ちてやる。 だから…未来永劫…私を愛しなさい…」 「青龍…」 みるみるうちに…炎帝の瞳が…涙で揺れた 「炎帝!愛してるは、起きてるうちに言わないと…解りませんよ! さぁ言いなさい。 一緒に堕ちて欲しいなら…ちゃんと、その口で言いなさい!」 炎帝は、青龍に抱き着き… 「愛してる…愛してる青龍!」 縋り着き…泣く姿は…誰よりも弱く…愛らしかった 青龍は炎帝を胸に抱いて…女神を見据えた 「女神、私も同じ時代に落としなさい。 この先…幾度…生まれ変わろうとも…私は炎帝と共にある 未来永劫…愛するのは、炎帝、唯一人 さぁ、人間の世界に…堕としなさい。」 青龍は、胸に炎帝を抱き締めて…離さなかった 「愛してます。炎帝。」 「愛してる。オレの蒼い龍…。」 「さぁ。行きますか。」 炎帝と青龍は手を繋ぎ…魂を結び…人間の世界に堕ちた それから…幾度も生まれ変わり… 愛し合った… 永遠の…愛を近い合った…恋人だった 神である記憶も… 人である記憶も‥‥ 幾度…生まれ変わろうとも …無くならない…記憶が有った 前回の…転生で…… 「お前の記憶が…無くなっても…お前は…… 未来永劫の愛を誓えるのか?」 永らくの転生で…愛を疑う訳ではないが… その記憶が在るから…愛されてるのだと…何処かで…思い始めてた 「貴方を見つけ出し…愛しますよ。絶対に!」 「ならば、来世は…お前の記憶を…封印する…。 そしたら…お前は…オレを見つけ出し愛するのか?」 「愛します…未来永劫…君を…愛します。」 「ならば、その記憶を…封印しよう…… 何も解らない…お前は…オレを愛するのか? オレは知りたい…」 「僕は…君と…ずっと共に在ります。 君が転生するなら、僕は君の魂に自分を結びます。 来世でも解るように魂を結びます」 「魂を結べば…お前も…死ぬぞ… オレの命の火が尽きる時…お前の命の炎も…尽きるんだぞ…?」 「君を無くして…生きたいとは思わないので…構いません…」 「……愛してる…来世も…永遠に…」 魂を結び…息堪えた瞬間…共に逝った 輪廻の輪を…魂を結び…抱き合って…潜り抜けた 抱き合って…通り抜けるのは…長い転生の中で…始めてだった…… 二人で通るのには…狭くて…潰されそうだった 実際…魂が潰れて…小さくなった… でも…意識が無くなるまで…抱き締めてくれた…その腕は…忘れない… そして……今世に産まれ…榊原伊織となった 小さい頃から…魂の半分が…削ぎ落とされて足りない部分を…感じていた… そして…日々…夢を見た でも…胸がトキメいたのは……飛鳥井康太… 夢の中の人とは…正反対の…人だった 始めて…体を繋げた日… 夢の中の…前世の自分が… 「やっと…見付けた…」と安堵していた 見付けた…やっと…愛しい君に… 榊原は、3日間…眠り続けた… 一生が、康太に… 「何故!旦那は目覚めない!」と、強く説明を聞こうとしても! 康太は何も言わなかった… 康太は…怖かった… 目が醒めた時に…榊原がどんな目で…自分を見るか… それでも…康太は…封印を解いた 本当は…恋人同士になった日に…封印を解くつもりだった… だが…怖くて…出来なかった… 総てを…受け入れる覚悟は…出来ていた… だから、封印を解いた 榊原は3日間眠り続け…た 康太は…眠り続ける榊原に……愛してる…と、言い続けた 4日目の夜……目醒めた… 康太は…榊原の側を…離れなかった そして…今……榊原が目を醒ました 榊原は、康太を見ると…微笑んだ 「長い夢を見てました…昔の自分を… 封印を解きましたね?」 康太は…頷いた 「解りましたか? 君しか愛せないと…。 どんなに姿を変えても…僕は…君しか愛せません…。」 榊原の腕が…康太を抱いた 康太は…榊原の胸に顔を埋めて…泣いた 「康太…」 「……ん?」 「愛してる…は、起きてる時に言いなさいって…あれ程言ったでしょ?」 「伊織…愛してる…」 「僕も愛してます。 何度生まれ変わろうとも…僕は君を探して…君を愛します。」 ……康太は…泣きじゃくり…頷くしか出来なかった 「僕のカタチしか覚えてない筈ですね 何度生まれ変わろうとも…君は、僕のモノなんですから…ね。」 「伊織…だけのモノだから… 伊織の為にある……体だからな…」 その意味が…今、やっと解った… 「僕以外の人間なんて…愛せないでしょ? 遥か…昔から…僕しか愛してないんだから…」 「お前しか…愛せねぇ… 他は…要らねぇ…お前しか…要らねぇ…」 「君の魂は…昔から…変わりませんね… 記憶を…無くしてみると…本当に…解ります… 僕は…君を愛してるから…共に…人に堕ちた… そして…幾度…転生しようとも…君を愛します 後悔なんて…してませんよ?」 「それでも…不安に…なるんだよ……」 「何処が不安? 僕は君を不安にさせてたんですか? 遥か…昔から…君だけを愛してきた僕の…何処が不安なんですか?」 「……青龍には妻がいた…オレなんて愛されねぇ… 存在なのに…共に人に堕ちてくれた… オレは気紛れでも嬉しかった…離れなくて…側に居て言いと言うなら…いたかった…」 「妻…そんなん…いましたか? 記憶にすら残ってない…そんなのいたんですね…。 元々…愛なんてないし…一緒に住んですら居なかった…。 それを妻とは…言わないでしょ? 抱いた事すらないのに…。」 「えっ…?」 「湖で…僕の家を見てたのに…解らないとは…君らしい…。」 「伊織…」 「気紛れで…抱いて…気紛れで…一緒に堕ちたのですか?僕は? ならば最低な奴じゃないですか…。 愛してたからに決まってるでしょ? 君だけを愛してるからに…!」 何故…不安になる? 不安など感じさせない程…抱いてきたのに… 「君を……床の上とか…草むらで抱きたくないのは…青龍の記憶でしたか…… 青龍は後悔してましたからね… もっと早く……ベッドの上で抱いてやれば良かった…と、後悔してました ベッドで始めて愛し合った日が…最後だなんて…哀しすぎる… 君をそんな扱いしてしまった…事を後悔して…君が人に堕ちるならば…堕ちてやると決意した 気紛れなんかじゃないですよ! 青龍の覚悟と愛です 君を…愛していたんですよ。 だから、もう、不安になんて思わなくて良いです。解りましたね」 康太は…頷いた 「僕は今、人間ですし、榊原伊織です。 記憶が無くとも、僕は君を愛し、君の伴侶になった。 多分、君が記憶を無くしたとしても一緒ですよ? 君は必ず僕を愛すでしょう? 自信も有ります。 僕達は、魂で惹かれ合い…結ばれた恋人同士なんですから、紛い物には…行けないんですよ。 さてと、奥さん、お帰りなさいのキスを下さい 一気に記憶が流れて来て…死ぬかと想ったんですからね、僕だけの体で…労りなさい。」 康太は…榊原に接吻した 舌を挿し込み…貪り合う…激しい接吻を… 求め合い…絡まり合い…縺れ…1つに繋がり… 互いを掻き抱いた 想いの分だけ… 求める…愛が溢れ…… 気絶するまで…求め合った… そして………優しい夜に包まれ… 眠りに堕ちた… 互いの温もりを感じ……腕を伸ばすと… 側に在る…確かな存在 互いの為にだけに在る… 存在だった

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