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第38話 帰還

飛鳥井の家に帰ると、榊原は、先に源右衛門を部屋に連れて行く事した 慎一は応接間で待って貰いて源右衛門を一生と共に支えて連れて行った 部屋に連れて行って、着替えさせ、部屋を暖めてから 「ちやんと、休んでいて下さいね。 無茶は許しませんよ!」と言い聞かせた 榊原は……怖さが増していた 圧倒的な威圧感が増していた 源右衛門は黄泉の眼を無くしていたが、榊原を見れば…その姿の変化に気が付いた 雰囲気…と言うか、オーラが自体が変わっていた… 蒼い妖炎を巻き上げ…絶対的な存在が…そこに在った そこへ康太が顔を出した 「じぃちゃん、無理するんじゃねぇぞ!」 源右衛門は康太を呼び寄せ… 「お前…伊織に何かやったのか?」と視線を榊原に留め…聞いた 康太は、封印してあった記憶を総て解いた…と告げた 源右衛門は……封印してあったのか…と驚いた… 威圧感が…半端ない 存在自体が……息苦しくなると程に…堅苦しい… 下手したら…総理や…高貴な方々と並んでも …榊原の方が…威厳も尊厳もある…… そんな……気を許せない…雰囲気を醸し出していた 源右衛門は…これ程までとなわ…と苦笑した まるで…法の番人が…そこにいるかのような …緊張感と…重圧感が…人に恐怖を覚えさせていた 「ならば、あれが素…か?」 「そう、あれが伊織の素だな。」 「なんともまぁ…堅苦しい…重圧感が…増しおった…」 康太は笑った 「オレの愛しい男だ。」 「……お前には愛しくても…回りは…怖いぞ…あれは…」 「危害は加えねぇかんな。大丈夫だ」 そう言われれば黙るしかなかった 榊原は、康太を見詰め…優しい顔して笑った まぁ…本人が幸せなら…それで良い……か。 「さてと、じぃちゃんは、寝てろ。 オレは慎一を寝室に連れて行くかんな。」 「解っておる 無理しても…怒られるだけではないか…。」 康太は笑って…息苦しい堅物を連れて行った 源右衛門を寝かせると、応接間へ戻って待たせてある慎一を迎えに行った 慎一を二階の部屋へと連れて行き休ませるつもりだったが、階段を上がらせる事に 「伊織、階段の上り下りは辛くねぇか?」と問い掛けた 「ですね‥‥客間で少し生活して貰いますか?」 「だな‥‥」 榊原は慎一を客間に連れて逝くと 「無理は禁物!飛鳥井には沢山の手があります!なので本調子になるまでは、その手に甘えなさい!良いですね!」と念を押した 慎一は「解ってます、無理はしません」と約束し、ベッドに入った 一生が「俺も見ておくから大丈夫だ!」と約束し、榊原は康太と共に慎一の部屋を後にした 飛鳥井の家に源右衛門と慎一が還って来た 家族は喜び二人のサポートを心がけていた 慎一も家に還り、何時もの日常が戻って来た 学校から還って来て、応接間で夕飯を待っていると康太は榊原に 「伊織、美容室に連れて行って欲しいんだけど」と頼んだ 榊原は、康太の髪に手を遣り… 「少し伸びましたね…切りますか?」と聞いた 前髪が伸びて…無造作にそれを掻き上げ… 何処と無く不良じみて見えた 「少し真面目な髪型にして、制服をキチンと着る それが、オレの卒業のケジメだ。」 「そうですか。ならば、行きましょう。 僕も切ってもらいます。」 「伊織も切るのか、男前になるな」と康太は嬉しそうに笑った 榊原は「聡一郎、一生、君達も一緒に切りに行きませんか?」と問い掛けた 一生は「俺も卒業の前にちゃんとしたかったから丁度良い!」と切りに行くのに賛同した 聡一郎も「僕も切ります。王子みたいに輝いて卒業してやります!」と主張して、皆を苦笑させた 聡一郎ならば王子みたいに、の言葉通りキラキラになるのは間違いないからだ 榊原は「慎一も連れて行きますか?彼も復学するなれば髪は整えた方が良いですからね」 と提案した 康太は慎一の客間に行き「美容室に行き、髪を切りに行かねぇか?」と、声を掛けた 慎一は『そうですね。明日から学校なら身綺麗にして、卒業へ向かいたいですね』と、言った 全員で美容室に行く事になった 夕飯を早めに食べて家を出掛ける 力哉の車に全員乗せて貰い行きつけの美容室に向かう 榊原が「美容室に来たのですから、力哉も切って整えて貰ったらどうですか?」と問い掛けた 力哉は喜んで「そうですね!サッパリ切って貰います!」と謂った 康太は美容師に「今回はどんな髪にするの?」と聞かれた 「すげぇ可愛く見える髪型にしてくれ。」と注文した 「雰囲気は?」 「優等生っぽく。卒業だかんな!」 美容師は「了解。すんげぇ可愛くしてやります。」と唇の端を吊り上げ嗤った 美容室は閉店間際と言う事もあって丁度空いていて、榊原と、慎一も先に切って貰う事にした 美容師は目にも止まらぬ早業で髪を切り…ブローをし、仕上げる エプロンを外し、満足げに美容師は微笑むと 「出来上がりましたよ。」と告げた 目の前の鏡を見ると… 大人しめの…アイドルみたいな顔をした康太が鏡に映っていた 康太が終わると聡一郎が切ってもらい うっ!!皆がキラキラ光線にやられて目を顰めた 榊原が終わると力哉が切ってもらった 榊原は、康太の頬に手をやり 「髪型だけで…こんなに変わるんですか…」と呟いた 康太は何も言わず笑っていた そしてやはり康太は「伊織、めちゃくそカッコいいいやんか!」と感激しまくりイチャイチャしていた 慎一もサッパリ切って貰い、一生もサッパリ切ったから何処か似た雰囲気になっていた 全員が髪を切り、各々料金を払い美容室の外に出ると、車に乗り込んだ 早目に夕飯を取って出たから、家に帰ると小腹が減って大変だろうな‥‥と思案した榊原は 「ファミレスに行きますか?」と問い掛けた 康太が榊原に「奢ってやれ!」と自分の財布を出した 「解りました。」 榊原は、財布を受け取り、胸ポケットにしまい 「力哉、何時ものファミレスへ行きなさい。」と告げた 力哉は「解りました。」と言い何時ものファミレスへ車を向けた ファミレスに到着し、席に案内してもらい注文すると、慎一は康太の為にドリンクを取りに行った 甲斐甲斐しく世話を焼く姿は、入院前と変わりはなかった 料理をセットで注文し、ポテトとソーセージを真ん中にドテンと2つ注文し、皆で突っついた 聡一郎が「伊織は踊れるの?」と問い掛けた 一番……ダンスパーティーに縁のない人間に見えた 榊原は、眉を顰め……「僕にダンスなんて求められても…困ります…」と返した 康太は「伊織、オレとフォークダンス踊ろうぜ!」と、笑って言って、微笑んだ 「でもフォークダンスなら、相手が変わってしまうじゃないですか…それは嫌です!」 「大丈夫だ!伊織 オレ等のクラスはフォークダンスだ 全員参加のフォークダンスをやる 校庭にぐるぐる巻きになって手を繋いで…フォークダンスを踊る そんなフォークダンス…そうそう味わえねぇぜ。」 「楽しそうですね。」 榊原は嬉しそうに、康太と話していた 一生も聡一郎も慎一も力哉も会話に加わり、話に花が咲く 慎一は……味わった事のない感覚だった 学校なんて…行きたいと…想った事すらなかった 友達なんて……仲間なんて……欲しいと…想っても…無理だと諦めた 楽しく笑って…過ごす…時間の楽しさを… 産まれて初めて……知った 康太は、榊原のポケットからハンカチを取ると…… 慎一の瞳から涙が溢れる瞬間に…ハンカチで瞳を覆った そして……優しく肩を擦り… 「明日から、すげぇ忙しいぞ。」と言葉をかけた 慎一は、頷き……目を拭った

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