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第41話 朝礼

康太も、榊原が食器を食洗機に入れて片付くのを待って、自室に戻り、鞄を持って一階へ降りた 応接間に行くと、一生達が待っていた 康太は「行くぞ!」と声をかけ、玄関で靴を履く 一生達も、玄関で靴を履くと外へ出た 今日は車でなく…歩きだった 康太は慎一に「歩きがキツいなら…力哉に頼むが…どうするよ?」と尋ねた 「歩けるので心配無用です。」 慎一は、大丈夫だと言うから、歩いて兵藤の家へ向かった 兵藤の家のインターフォンを鳴らすと… 兵藤貴史が「今、行く。」と返答があった 康太は待っていると、突然…ドアが開き… 美緒が抱き着いてきた!! 「みっ…美緒…!」 「我に挨拶もなしに行く気か?康太?」 「挨拶もなしに美緒の横を通りすぎてくかよ。 今日も美しいぞ美緒。髪型を変えたのか?」 「流石は康太。 我が家の男共は、気づきもしねぇでやんの!」 美緒は髪型に気付いて欲しかったのに、誰も気付かないから… 康太が来るから飛んで来たのだ 兵藤は……自分が出るより先に美緒に出られ…焦っていた 「美緒!康太を離せ!」 強引に引き離すと、美緒が「妬きもちか?心配するな…貴史、お前が一番だ!」と揶揄した 「もう良いから…あっちに行けよ! 康太、行くぞ!」 兵藤は康太を急かして外に出した 「相変わらず…亭主より愛されてるやん貴史…。」 康太が言うと、兵藤は嫌な顔をした 「止めてくれ…美緒みてぇな女は御免だ。」 康太は笑っていた 「おっ!お前の番犬が揃ったやん。」 兵藤が慎一の姿を見て胸を撫で下ろした 「でも一生より、落ち着いて見えるよな?慎一は。」 「当たり前じゃん。 慎一は双子の親だ。 まぁ一生も子持ちだがな。」 「嘘!慎一も一生も子持ちかよ。」 「慎一は…な。 一生は…親とは名乗れぬ。」 「康太!てめぇ……そう言う話はすんじゃねぇよ!」 「真実を知ってる人間も作っといてやらねぇとな。 一生の子供は…オレの子供として…認知して戸籍に入ってる。 名実共に…一生は、父親とは名乗れねぇ…。瑛兄と一緒だ。 オレは翔を、瑛兄から取り上げたからな。 そして、認知した。 ひでぇ奴の懺悔だ聞きやがれ!」 「康太…。 聞いてやる!覚えといてやる!でもな! お前が…一番辛そうじゃねぇかよ!」 康太は…曖昧に笑った 「それより貴史、中等部が一緒に加えろ…と、言ってきてんぜ! 悠太が乗り気だった。」 「……悠太…。あの瑛太の出来損ないか…。」 「貴史…オレの弟だぞ!」 「悠太の想いは何時もお前に向かって行く。 一番愛してるのはお前だろ? 兄貴のフンしてるお子様だ」 「貴史!それ以上は聞きたくもねぇ!」 「言わねぇよ!不愉快になるからな!」 兵藤は、不貞腐れた 「生徒に聞けと言ったからな、朝礼で来るぜ。」 「好きにしろ! 生徒の総意なら俺は何も言う気はねぇ! しかも、俺はお前の言葉じゃなきゃ動かねぇしな。」 「昼奢るから機嫌直せ!」 「なら、プリンも着けてくれ!」 「着けてやんよ。」 「なら、直してやるよ。」 兵藤は笑ってた 一生は、榊原に「見てる男だな…恐るべし…兵藤貴史…」と話し掛けた 「彼は、細かい事まで…観察しますからね。 彼には解るでしょ…悠太の想いが誰に向いてるか…。」 「康太は、弟としてしか見てねぇからな。」 「……悠太は…康太が命ですからね…」 「そんなに兵藤と一緒に毛嫌いせんでも…あれは弟にしかなれねぇよ…旦那。」 「解ってます。 聡一郎の愛する男を…毛嫌いしたくありませんし…ね。」 榊原は、聡一郎の肩を優しく抱いてやった 康太が後ろを振り返り「早く来いよ!」と皆を呼んだ 「寒みぃかんな…早く行くもんよー」 康太は…冷えきった手を兵藤のポケットに入れた 「冷めてぇな!」 「お前が遅せぇから冷えきっちまったじゃねぇかよ!」 「てめぇ!そう言うのを言いがかりって言うんだぜ!」 康太は逃げた… 笑いながら…逃げると…兵藤が追い掛けて… 捕まった時に…抱き締められた… そして……直ぐ様…離して…冷たい手攻撃をしてやった 康太の首筋に冷たい手を入れると飛び上がった 「てめぇ!待ちやがれ!」 「べー!」 逃げる兵藤を康太は追った 一生が…刹那過ぎる…と呟いた 榊原は至極マトモに受けて 「………アレは誰にも譲れません…。」と謂った 「当たり前だ!さてと、サクサク行くか!」 一生は、走り出した 「聡一郎、慎一とゆっくり来いよ」 慎一と聡一郎の鞄を掴むと、一生は走り出した 榊原も走り出し…康太へと追い付いた 「康太!急ぐぜ!兵藤も走れ! さっき清家の車が横を通っていった! 雷が落ちるってば!」 一生が急かすと…兵藤は走り出した 校門に着く頃は、息が上がって、運動不足を痛感させられた 「くそー鈍った!」 康太が喚くと…息すら乱してない榊原がいた 「伊織、疲れた…教室まで持ってけ!」 康太が言うと、榊原は屈んで背中を差し出した 康太はその背中に抱き着き…おんぶをされた 榊原は笑って、康太を背中におんぶした 修学館 桜林学園 高等部 全校生徒を一堂に集め、朝会が開かれた 朝礼台の上には…前期生徒会の役員と、前期執行部の役員がいた その真ん中に…四悪童、飛鳥井康太が腕を組んで立っていた 存在感は半端なく…そこに居るだけで…惹き付けられる…飛鳥井康太が前髪を靡かせ…立っていた 全校生徒は…その姿に息を飲んだ 髪を短く切り、優等生っぽくなり、キチンと制服を着ているけど…飛鳥井康太に変わりはなかった 康太は全校生徒を見ると…不敵に嗤った 康太は前に出るとマイクを握った 「皆!話がある!聞いてくれ!良いか!」 康太が聞くと、校庭が【良いぞぉー!!】と地響きを立ててうねった 康太はスーッと息を吸い込むと 「宣誓!オレ等は、送られるのは性に合ってねぇ! 追い出される前にオレは出ていってやる! 此処にそれを宣言する! だから!出ていってやる宣言祭を開く!」 大声で宣誓し、マイクを榊原に放った 「2月24日!出ていってやる宣言祭を開きます! 題目は…ダンスパーティー! クラス対抗で、踊り明かします! 今から練習しなさい!」 榊原は、そう言い、マイクを兵藤に放った 「と、言う事だ! 俺等は追い出されるのは性には合わねぇ! だから出ていってやるんだよ! この学舎から送られてたまるか! こっちから、出ていってやるんだよ! これは、俺等が最後に残す…お前等への置き土産だ!受け取りやがれ! 手ぇ抜くんじゃねぇぞ!良いな!」 兵藤は、清家にマイクを放った 「我等の最後の集大成だ! 僕は…彼等と共にこの時間を共有が出来たのを!嬉しく想います!」 清家は…深々と頭を下げ…マイクを康太に渡した 「2月24日はバレンタインデーだからな、お前等全員に…俺等からチョコを送ってやる! 頑張ってダンスを見せてくれ! 楽しもうぜ!」 康太は深々と頭を下げた 顔を上げた…康太は…清々しい顔をしていた そんな姿を…中等部…前期生徒会、前期執行部の面々が見ていた 兵藤は康太からマイクを奪うと 「高等部の野郎ども! 中等部の奴等が、出ていってやる宣言祭に参加したいと言ってきてる! 聞いてやれ!良いか!」 全校生徒に問い掛けた そしてマイクを…葛西に放った マイクを貰った葛西は、 「高等部の方々に、総意を問にやって来ました! どうか、出ていってやる宣言祭に、中等部の生徒も加えて下さい!お願いします!」 そう言い、深々と頭を下げた そしてマイクを悠太に放った 「どうか!俺達に!卒業される先輩方と…少しでも一緒に居させて下さい! 想い出を作らせて下さい! もう二度と…奇跡の世代と言われた…方々とは…共に過ごせません! 最後ですから…ほんの一瞬だけでも…共に居させて下さい!お願いします!」 悠太も頭を下げた 康太は……ため息を着いた 悠太の想いは…何時も康太目掛けて…やって来る… 「お前が…そんなんだから……オレは…逃げるしかねぇんだろうが…」 康太が呟くと…榊原は、ギョッとした表情で康太を見た 康太は…悠太の想いを知っていた… 知っていて…応えられないから…逃げて… 見ないフリをしているのか? 康太は……仕方なく悠太の横に出てやった そして、悠太のマイクを奪うと… 「中等部の奴はこう言ってるぞ! どうすんだよ? 年上の意地を見せてやるなら…賛成しろ! 生徒の総意だ! 一人一人が決めて答えろ!良いかぁー」 助けを出してやった 兵藤も康太のマイクを奪うと 「そこにいるのは、飛鳥井康太の弟だが! ダメならダメって遠慮せずに言えよ! 康太が暴れても…俺が止めて見せるからな! 前期生徒会長をナメるなよ!」 全校生徒を、挑発した 康太は…兵藤の背中によじ登り…首を締めた 「ううっ!康太の逆襲だ! 伊織!お前の妻を引き取りやがれ!」 全校生徒が大爆笑した 榊原は、兵藤の背中にいる康太を剥がすと、抱き上げた 榊原の首に腕を回し、甘える姿は…可愛かった 榊原は康太を抱き上げたまま、マイクを取ると、 「反対の者は左に←に  賛成の者は右に→に  並びなさい!始め!」 榊原が号令をかけると、生徒は一斉に動いた 明らかに…賛成の右が多く、康太は榊原の腕から降りると、マイクを踏んだ食った 「おいおい!良いのかよ? 賛成が多いじゃんか!」 康太が言うと、榊原は康太を背後から抱き寄せマイクに口を近付けた 「賛成多数になってしまいますよ! 文句は言わせませんよ! 動くなら今しか有りませんよ!」 兵藤は康太のマイクを奪うと 「ストップ!」と号令をかけた 「おい!中等部! 高等部の総意だ!受け取れ!」 と兵藤は声をかけた 反対者は…0人だった 葛西と悠太を始めとする中等部前期生徒会、前期執行部役員は頭を下げた 葛西は、兵藤にマイクを貰い 「有難う御座いました。」と頭を下げた 何処からとなく拍手が送られ… 康太はマイクを奪うと 「お前等最高じゃんかぁぁ! 忘れねぇぜ!お前等の事は! 楽しもうぜ!」 と言葉を発し、マイクを朝礼台の中央に置くと… 朝礼台から降りた 榊原も兵藤も……一生達も…康太を追う 康太は全校生徒に片手をあげて…校舎の中へ入っていった 見送る1、2年は涙を流し…その姿を目に焼き付けた 卒業する3年は…共に…過ごせた日々を…胸に刻み…卒業を噛み締めた 悠太は……兄を見ていた また可愛くなって…その存在は…絶対になった… 何処まで追い掛けても… 貴方は… 俺の前を行く… その存在は…誰よりも大きく 絶対だった… 貴方を愛している… 貴方しか愛せない… 俺は…貴方の弟で… 良かったと想う… そして……弟で…あるが故に… 苦しかった… 貴方の…姿を…目に焼き付け…… 貴方を見送る…… 兄さん……貴方を… 誰よりも…愛してます… 康太は昼になる前に、兵藤に昼を奢っていた 無論…プリンも着けて 榊原や一生達は…遠慮して…来てはいなかった 兵藤は、目の前でガツガツ、鯵フライ定食を食っていた 「康太、おめぇ、あの弟の気持ち、知ってたんかよ?」 「アイツはあからさまだからな…」 「俺もお前を愛してるって言ったのにな… 上手くはぐらかして…時間と想い出しかくれなかった」 「想い出だけじゃねぇぜ? 今後の協力も約束してやった! 悪友として側にいてやんよ。」 「悪友か……何よりだな どんなカタチでも、切れないでいるなら、それで良い。」 康太はニカッと笑った 気を取り直して兵藤は、其処にいない一人の事を口にした 「ところで、隼人はどうしたんだよ?」 「アイツは…今…側にいてやりてぇ恋人がいる。 もうじき…子供を産む…そして…永久に別れが来る…その日まで…せめて側にいさせてやりたい。」 永久に…別れが来る… なんと言う……辛い現実… 「俺で出来る事なら動いてやるんだけどな…」 兵藤は辛そうに言った 兵藤貴史と言う人間は…人の痛みの解る男だった 「ありがと…な。」 康太は榊原が迎えに来るまで…話をして…そして立ち上がった 「じゃあな、貴史。また明日な。」 「あぁ。また明日な。」 康太は振り返る事なく歩き出し、食堂を出ていった 食堂を出ると榊原が待ち受けていた 「力哉が待ってます。 家に戻って着替えなければ義兄さんとの待ち合わせに間に合いませんよ?」 「悪かった…」 「良いですよ。 兵藤は弁えた男ですから心配はしてません」 榊原は康太を促し、力哉の車に乗り込んだ 飛鳥井の家へ戻ると、自室に向かい、各々着替える事にした 榊原は、康太を着替えさせながら、兵藤に聞かれた事と同じ事を聞かれた 「悠太の想いを知っていたんですね…」 「ん?あぁ、アイツはあからさまだからな。 オレは気付かねぇフリして逃げるしかねぇからな。」 「悠太にとって…君は絶対的な存在なんですね…。 今日、悠太を見ていて…改めて想いました。」 「オレは絶対的な存在なんかじゃねぇ! それをアイツは見ねぇかんな…。 オレは逃げるしかねぇじゃんか!」 「応えてやれないから…見ないフリするの?」 「そうだ。見たら…期待する…だから、オレは見ねぇ…。  それしかねぇかんな。」 「君は僕のですからね。」 「そうだ。オレはお前のだからな。」 榊原は、康太にスーツを着せると、自分もスーツに着替えた クローゼットからコートを取ると、康太に着せた そしてお揃いのマフラーを首に巻いた 「さぁ、行きましょうか?」 「おう。」 康太と榊原は、一階まで降りて行くと、皆玄関で待っていた

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