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第44話 空虚

白い…煙が… 天へと…登って逝く… 奈々子を焼いた煙が… 空へと上がって逝く…… 奈々子は身内もいなく…… 密葬となった…… 飛鳥井の家族と…… 一生…聡一郎…慎一、力哉…… 神野と…小鳥遊だけが参列して…… しめやかなに葬儀は行われ… 見送りをした 隼人は…茫然自失…となり 葬儀の後……… 康太の目の前から…姿を消した 隼人が…葬儀の後…姿を消して 飛鳥井の家族も…仲間も…心配した 特に……慎一は…康太に探して下さいと頼んだ 「貴方には見えてるのでしょ? …ならば!探しに行って下さい!」 と頼むが…康太は動かなかった そして、淡々と……追い出されてやる宣言祭を進めていた そんな康太に……慎一は…詰め寄り… 「何故!行かないのですか!」 …と泣きながら…問い質した 「貴方の長男でしょ! 何故!探しに行かれないのですか!」 「慎一…今の隼人の瞳に…… オレは映らない…。 現実を…受け入れた時…… 初めて…隼人は…オレを欲する…。 それまでは…一人で…奈々子を弔わせてやりたい…。 思う存分…弔ったら…隼人は…オレに逢いたいと…泣く…。 そしたら…会いに行く。 連れ帰ったら…側にいてやってくれ…」 康太の……想いは…深すぎる… 別れを…言わせねば… 引き摺って…死人に囚われる… そうなる前に… 隼人の心を…現実を受け止めさせ… 弔わせる…と言うのか… あまりにも…惨く…優しい…貴方の想いですね… 「それが…一条隼人の歩まねばならぬ… ……道なのですか?」 「そうだ…自分で…見届けて…弔わねば…人は…引き摺る…。 何処かで…解らせねば…いけない線引き…なんだ 隼人の心が…オレを求めねぇうちに連れ帰れば…アイツは奈々子の所へ行こうと…何度もするぜ…。 お前の様にな…。」 康太は…そう言い…慎一の腕を時計を外し…… 古い傷を…撫でた 隠してはいない… だけど…無意識に…腕時計で隠していたのかも知れない‥‥ 過去の傷を…想いを‥‥ 「待っていてくれ…慎一…。」 「はい。」 慎一は…康太を抱き締め泣いた… 「待つ方が…数十倍も…長くて…苦しい…… 貴方が…待てと言うなら…千年でも…俺は待ちます…」 康太は…何も言わず…慎一を抱き締めた… 「そんなには待たせない 慎一、オレのminiに乗って良いから、音弥を見舞ってやってくれ。」 「はい。」 慎一が康太の胸から顔を上げると…康太から離れた… 康太は榊原に 「伊織…音弥は…隼人の戸籍に入れた 神野に手続きに行かせた。」と告げた 奈々子との約束通り…康太は音弥を隼人の戸籍に入れた 「伊織…もうじき…真矢さんは退院だな…。 そしたら…真矢さんは…オレに子供を渡してくれる……。 一旦…子供は清四郎さんの戸籍にいれ…落ち着いたら…養子縁組をする。」 「はい。」 「名前は…太陽と書いて(ひなた) 大空と書いて(かなた)にする。 清四郎さんに…届け出を御願いした」 「良い名ですね。 太陽と大空で、ひなたとかなた…ですか。 大空には太陽が…在る 太陽のいる場所は大空ですものね 二つは互いに無くては成らない存在になる。」 「飛鳥井の明日を照らす…存在になる。」 榊原は、静かに…瞳を閉じた 「そうですか…」 飛鳥井康太は…飛鳥井の明日を紡ぐ… それだけの為に……在る…存在だった 「慎一、翔も流生も大空と太陽、そして…音弥も愛してくれ 和希と和馬と同様に…愛してやってくれ オレも愛す……誰よりも…子供を愛して育てる…。」 それが、命を預けられた…者の…定めなのだから! 「一生、聡一郎…お前達も…頼む… 皆変わりなく…愛してやってくれ…。」 康太が言うと…一生と聡一郎は…涙を流して…頷いた 一生は「音弥も‥‥お前の子も…慎一の所の双子も…愛す。誰よりも…愛してやる…から…」と言葉を…絞り出した 聡一郎は…嗚咽を漏らし…泣いていた 榊原は「僕の子供も、慎一の子供も、大切な命を預けられた…者の…使命です…大切に…育てます…。」と…言った 康太は…果てを見て……… 隼人… と、言葉にせず… 唇を動かした 隼人は…奈々子を亡くして…… 自分だけ…幸せになってはいけないと…… 康太の側を離れた… 何処へ行く……と言う宛もなく… 電車に乗った… 髪を振り乱し……無精髭をはやし… 汚れた服を着て…フラフラ歩く姿は… 誰も…一条隼人とは…解らなかった… 死のうと…想った… 遊びで…寝て…棄てた…女だった… それでも…何もかも無くした隼人の側に…いてくれて… お腹が目立つ前に…消えた… 迷惑をかけたくないと…消えた… 奈々子の想いが…辛くて… 幸せにしてやりたかった 産まれて初めて…愛した女性だった… 隼人は…青森の竜飛岬まで……流れて…来ていた 目の前には…雪が…降り… 一面の銀世界だった 吹雪いた…雪に…息が凍り…身も…凍る… 隼人は…大声で…奈々子を呼んだ… 「奈々子!………オレ様も連れて行くのだ!」 泣き崩れる…体に冷たい…吹雪が打ち付ける… このまま…眠りたい… このまま…身も心も…凍えて… 凍り付け… 手の感覚も…無くなった… 死ぬのは怖くはない……… それでも…自分が死んだら… 悲しんで…後を追う…康太の姿が… 目から離れない… 死んだら……悲しむか……康太… オレ様が…死んだら… 泣いてくれるか… 康太…康太…… 「こーたぁぁぁぁー」 隼人は…海に向かって…叫んだ… 「康太…オレ様は…お前の場所に…還りたい…」 言葉にして…隼人は…地面を叩いた… 「奈々子…オレ様は……康太の側にいたい… 康太に…逢いたくて…仕方がないのだ…」 「康太………………!!」 力の限り……隼人は叫んだ

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