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第51話 紡ぎ出す明日‥

一生がリビングに顔を出すと、怠そうな康太がソファーにいた 「おっ!怠そうだな!愛され疲れかよ?」 一生は笑って康太の隣に座った 「夜明けと共に…さっきまで…だかんな。 疲れねぇ訳がねぇもんよー…」 一生は絶句した… 「元気だなぁ…」 「なんか…今も…挿し込まれてるみてぇだ…」 「だろうな…でも愛してんだろ?」 「愛してんよ!あの魂しか愛せねぇかんな」 康太は笑って一生の首に腕を回した 一生は、康太の頭を撫でた そこへ榊原が、掃除と洗濯を終えてやって来た 「一生、今朝は一人ですか?」 何時もと変わりのない榊原だった 「おう。オレが康太を呼びに来た」 一生も何時もと変わりなく接していた 「そうですか。 一生、康太をキッチンに連れていって下さい」 榊原は康太を抱き上げ、一生に渡した 「隼人は?」 「慎一がキッチンに連れてったぜ」 「ならば、行きますか。聡一郎は?」 「慎一と隼人とキッチンに行ったぜ!」 「そうですか。」 榊原はキッチンに行くと康太の椅子を引いた 一生は、その椅子に康太をドスンと座らせた 「一生…もっと優しく椅子に置きやがれ!」 お尻が痛いのだ… 「その原因は旦那だろうが!」 一生は文句を言った 榊原は苦笑して「すみませんね。」と謝った 一生は、ヤバッとそっぽを向いた 康太は、気を取り直して、清隆と玲香、そして瑛太に頭を下げた 「父ちゃん、母ちゃん、瑛兄、今日、学校の帰りに、会社に寄る。 その時に話がある。良いかな?」 清隆と玲香は「待っておるから、呼びに来い。」と告げた 瑛太は…「君が改まるなんて…何か有りましたか?」と心配そうに…康太に話しかけた 「瑛兄は、昨日、神野が何で来たか、知ってるか?」 「知りません…」 「本当の話はな、奈々子の遺志で…音弥をオレの戸籍に入れた… その事後承諾に来た訳だ。 東青を使って、認知させたんだ。 奈々子が引かなかったからな…。 オレに言いそびれて…慌ててやって来たんだよ。 しかも飛鳥井との一年契約でCMが一本しか出てねぇだろ? 違約金もんだからな…。 でも、会社に行って話す話はそんなんじゃねぇ!行ってからだ。」 康太はそう言い、立ち上がった 「ならな、今日は、半日で終わるから昼は瑛兄ん所で食うから。 瑛兄、弁当用意しといてくれよ。 オレ等の分と父ちゃん達の分だぜ」 「解りました。用意しときます。」 「なら、学校に行くとするか! 裏に呼びに行くから、歩いていくから力哉は出社しろよ。」 力哉は「解りました。」と返事した 康太は立ち上がり、キッチンを後にした 応接間に行くと、康太は携帯を取り出し、三木繁雄に電話を入れた 『よぉ康太、朝からどうしたよ?』 「先日頼んどいた件はどうなった?」 『あぁ、バッチしだぜ! 認可も補助金も申請通り通ったぜ! お前んとこの弁護士が書類持ってる。』 「そうか。悪かったな。」 『良いって事よ。 俺はお前の為にいる議員だぜ? お前の手助けをしねぇでどうするよ!』 「また顔を出す。 出さねぇと選挙が回らねぇからな。」 『そうそう。 お前の戦略を使っても苦しい逆風の真っ只中だからな…。次は…俺も腹を決めてる。』 「三木、弱気になるな! また近いうちにな。」 三木は、あぁ、またな!と言い電話を切った 康太は、天宮の所へ電話を入れ、午後イチで来るように頼んだ。 天宮は、了承して、康太は電話を切った 康太が電話を切るのを待って、家を出る 今朝も歩いて、兵藤の家に行くと、兵藤は家の外にいた 「遅せぇよ。寒みぃじゃねぇかよ!」 「許せ。出掛けに三木に電話を入れてたんだよ!」 「三木ん所には毎日行ってんぜ! んとにアイツは人使いが荒い!」 兵藤がボヤくと、康太が兵藤の尻を鞄で叩いた 「ほれ。行くぜ! 今夜チョコが届くからな! そしたらどうするかも話さねぇとな!」 「500ちょいだろ? クラス毎に分けるにしても、直ぐだろ?」 「嫌、1000ちょいな。」 「チョコ、頼んだ時点で中等部が乗るのを見越してたのかよ!」 康太は曖昧に笑った 「中等部は、中等部に遣らせろよ! 金も貰わねぇとな!」 「当然だ!オレは月々の小遣いしかもらってねぇかんな! 財布は伊織が握ってる! 使える金は知れてんだよ!」 「おめぇは金に無頓着だからだろ?」 「…………あってるだけに…腹立つ!」 腹が立つから康太は兵藤に蹴りを入れようと追い回した 兵藤は…康太から逃げて走った 更にパワーをあげて康太は、それを追いかけた ここ最近の朝の光景だった その光景見たさに、桜林の校門付近は…  かなりの人だかりが出来ていた おはよう! と言われると手をあけて、応えながら進む姿を、皆が目にしたくて…道になっていた 校門を潜ると、清家が前期生徒会の役員を引き連れ待っていた 「待たせたな静流!」 康太が言うと少し怒り気味の清家が笑った 「待ちましたとも!今度奢って下さいね」 「解ってんよ。 なら、中等部の橋を渡るとするか!」 康太と兵藤が、先頭を歩くと、その後ろに一生達や榊原が並んで歩き…生徒は騒いだ その騒ぎのまま、康太達は中等部の橋を渡った 中等部の校舎に入ると、生徒が奇声を上げて騒いだ 一寸したアイドル並みの騒ぎとなった 葛西が騒ぎを聞き付けて来ると、悠太もやって来た 「葛西、オレ達を話が出来る部屋に案内しろ!」 康太が不敵に笑って言うと、葛西は康太達を生徒会室へと案内した 康太は、部屋に入って中央の席に座わると、足を組んだ 「中等部のチョコも用意しといたから、一個200円 ×500=100000円になるから、生徒会役員 20人で割ると、一人 5000円換算になる 明日までに用意しとけ、と言う話と、当日の打ち合わせだ! これが、プログラムだ、全校生徒に配っとけ! お金は飛鳥井悠太、お前が受け取り、今夜家に持って来い。解ったな。」 悠太は、「はい。必ず。」と頭を下げた 「伊織、オレ等四悪童こ分も回収しておいてくれ。 オレの分は、お前が払っといてくれ。 オレは財布を持ち歩かねぇかんな!」 「解りました。後で払っておきますおきます。」 「で、それを、クラスごとに分けて、配れる様にしておかなきゃなんねぇからな 明日持って来るから、取りに来る様にな!」 葛西は「解りました。明日の朝一番で生徒会室に取りに伺います。」と頭を下げた 「ならな、帰るとするか!」 康太が立ち上がると兵藤達も立ち上がった 康太は午前中、打ち合わせをして 昼前には力哉に迎えに来させて、飛鳥井建設に向かった 飛鳥井建設に行くと、地下駐車場に瑛太が待ち構えていた 力哉の車が停まると嬉しそうに、瑛太は後部座席のスライドドアを開けた 「康太、松花堂の弁当を頼んどきました。 沢庵も追加で頼みました。 さぁ行きましょう。」 うきうきと瑛太は康太を抱き上げ、エレベーターのボタンを押した 「母ちゃん達は?」 「もう、社長室にいます。」 「なら、行くかんな、下ろせ、瑛兄。 社員に見られたら嫌だかんな!」 「ならば、直通ボタンを押せば、最上階にしか止まりません。」 瑛太は直通ボタンを押した どうあっても、社長室に抱っこして持っていくつもりなのだ… 社長室のドアをノックすると、父 清隆がドアを開けた 瑛太は康太をソファーに下ろすと、その前に松花堂の弁当を置いた。 そして、秘書の佐伯が一生達の前に弁当を置いた 母、玲香が全員のお茶を淹れて、前に置いた 康太はガツガツと弁当を食うと、食後のお茶を飲んだ そして「後で東青が頼んでおいた書類を持って来る。その前に話しとくな。」と康太は用件を話した 「飛鳥井建設のビルの中を、大幅にリフォームする。 物置になってる部屋とか、大幅に見直してリフォームする。 そして、社員食堂と託児所を設置する。 それに従って部署の統合や配置替えをする。」 康太の言葉に…玲香は…… 「託児所って……簡単には…無理であろう。」 「三木を動かして認可は取った。 その書類を東青が持って来る。 ついでに社員食堂の認可もな。」 家族は…唖然となった 「結婚して、仕事を辞めてく女性社員を確保しときたい、ってのが狙いだ 後、幼稚園にいれるまで、オレの子も託児所を使わねぇと、家族に行く負担は大きくなる。」 玲香は…康太…と名を呼んだ 「飛鳥井建設の一階部分を社員食堂にする ヘルシー料理でメニューを管理して、一般の人間も入れるようにする。 二階の部分を託児所にする。 これも、一般の人も入れるようにする。 地域に貢献する。飛鳥井の信念を貫く。 これらをオレがTVに出て宣伝したり、隼人や小百合を使って戦略を立てる。 どうせ、一階は展示場で、二階は物置に人事課が使ってるだけだ。 人事課を三階の経理と一緒のワンフロアーに入れて壁を取っ払う。 四階を設計と、建設、施工をワンフロアーに入れて、話をしやすくする 五階は広報と企画、営業、そして、秘書の部屋にする そして六階は、役員室にする 社長と副社長とオレの馬関係の部屋と応接室を作る。 そして来客が来た時に商談が出きるスペースを作る 落ち着ける雰囲気を醸し出す為木々も花も増やそうと想う」 康太が謂うと清隆は眉を顰めた 「三階に人事課と経理と管理を一緒のワンフロアーに入れて壁を取っ払う… って仰られるけど… 人事課と経理課とは、犬猿の仲ですよ? しかも管理を入れたら収集つきませんよ! 四階に設計と施工をワンフロアーに入れて、話をしやすくする…… って…彼等も…犬猿の仲です! 五階に、広報と企画、営業、そして、秘書の部屋にするって言いますが… 広報と企画は、また仲の悪い……課ですよ。 ましてや営業なんて論外です 六階は、役員室にするって言いますが… 社長と副社長と接客スペースを作るとしても…接客は…外でやりますから…使いません無駄です」 清隆が謂うと康太は清隆を睨み付け 「だから?仲が悪いなら辞めれば良い 同じ会社にいて仲が悪いとか… ガキの世界かよ? 飛鳥井は今後一切! 接待費に経費は出さねぇようにする! 飛鳥井はすげぇ豪遊をするらしいな 会社の金で、クラブやキャバレーの女と遊びまくりだ! 接待と言う名目で好き放題だ! 経費を見直して建て直さねぇとな! その経費を使ったって仕事に繋がってねぇのが多過ぎる!違うか? 接待に似合う仕事を取れれば良い。 だが、接待と言う名の横領だろ?違うか?」 康太は一歩も引かない姿勢だった 「聡一郎、書類を父に見せろ!」 康太が言うと、聡一郎は鞄から書類を取り出し、清隆の前に出した 清隆は…それに目を通し…絶句した 「飛鳥井建設は営業部の接待費用に毎月、数百万を越える金を使っている。 だが、営業部の仕事で接待に似合う仕事は、入ってねぇのが現状だ! 今動いてる仕事の半分が、オレが取って来た仕事だろ? なら、何処へ使われてるか、考えた事は有るのか? 接待してクラブの女に経費で鞄とか買ってんだぜ!証拠は上げてある。 解雇対象だからな! 何故、そんな事になるか考えた事はあるか? チェック体制が甘いんだよ! クラブの女に貢ぐ金を、くれてやる気はねぇんだよ! しかも、ヤクザに目を付けられて因縁つけられたのも、豪遊接待に目を付けられたからだぜ! 変えねぇと、また目を付ける奴は出てくるぜ! 本当に接待するなら百歩譲っても料亭で クラブやキャバクラに行きたいなら、自腹を払えって事で! この経費の、300万円は、会社では払わないように東青に動かせた。 今後一切、クラブとかキャバクラでの接待は禁止する! するなら自腹だ!と、言うことで横領で立件してやる。 それが飛鳥井家の真贋の仕事と違うか?」 康太は背筋が凍える程の冷徹な瞳で嗤った その時、社長室のドアがノックされた 瑛太がドアを開けに行くと、天宮東青が立っていた 康太は待ってました…と、待ち構えていた 天宮は、康太に頭を下げると、目の前に書類を並べた 「貴方に依頼されし件は、総て片付けて参りました。 これが託児所認可の書類。 そして、これが、社員食堂の認可の書類。 そして、此方が横領の立件の書類です。 五年間で一億近いの経費がクラブの女に貢がれてます。 全額返済と横領の立件で、裁判所の職員が家宅捜査に着手します。」 天宮が並べた書類を、清隆は目を通した 玲香も瑛太も目を通し…手際の良さに… 改めて…飛鳥井家の真贋の恐ろしさを実感した 子供の様な顔をしているが…甘く見れば側から…喉仏をかっ裂かれる… 甘くはないのだ… 誰よりも…冷酷で…残忍になれるのは… 飛鳥井康太…なのだ 「社員にナメられてんだよ! 飛鳥井清隆、玲香、瑛太、お前等が知らねぇと思って…社員はこれ幸いに経費と謂う名目で騙してんだよ! 社員を見ねぇで管理職とは言わねぇぞ! 甘く見られてんじゃねぇ! 屋台骨の中心を虫が食えば、中から食われて崩れんぞ! そんな事は、オレがさせねぇ! 伊織!お前が動け!お前は副社長になるんだろ? ならば、おめぇ等の好きにはさせねぇ!と釘を打たねぇとな!」 榊原は立ち上がると、ぞーっとする瞳を康太に向けた 「本気で言ってますか?」 「オレは何時も本気だぜ!」 「ならば、君も来なさい!」 「良いぜ!一生、お前等も来い。」 康太は立ち上がった 唇の端を吊り上げて嗤うその姿には…恐怖さえ覚えた そして、その横に立つ…榊原も、誰にも文句を言わせない… 重圧を背負い、圧倒的な存在感で…立っていた その後ろに立つ…一生も聡一郎も…隼人も慎一も…有無を言わせぬ…威圧感を背負っていた 「さてと、仕事するかんな。 東青、母ちゃん達に説明しといてくれよ!」 康太達はそう言い…社長室を後にした 康太達は三階の経理課に釘を刺し、営業へ向かう事にした 経理課に突然…副社長代理…嫌…もう副社長と言っても良い男が…… 飛鳥井家の真贋を連れてやって来れば… 部長…以下社員は唖然となった 康太は部屋の中に入り 「お前等に話があるから、わざわざ出向いてやった! その耳かっぽじって良く聞きやがれ!」 と言った 榊原は前に出て 「飛鳥井建設は、今後一切、接待経費の計上は受け付けません! 経理の人間は接待の伝票は、総て弾きなさい!」 と、社員を見据えて…告げた 部長は「社長は!同意なさっているのですか!」と問い質した 「社長より、偉いのが飛鳥井家の真贋。 飛鳥井康太、オレだ! 例え社長だとしても飛鳥井家の真贋には逆らえは出来ねぇぜ! それでも、社長でなくば謂う事は聞けぬと申すか? なら良いぜ!社長も同席させようか?」 一歩も引かぬ言い方に部長は…いえ…と押し黙った 「営業の接待経費を落とした奴、後で警察の事情聴取があるから、心しておけ! これは横領として会社は告発した! 今後一切、飛鳥井建設は不透明は接待は、経費として計上は許さねぇ! 覚えとけ!びた一文支払う気はねぇからな! 当然、取立てしてやる! そして、この会話はマイクで社内に全館放送してある! 不透明な接待は経理で落とす事は許さねぇ! 覚えとけ! 覚えられねぇなら会社を辞めろ! 辞めねぇなら、オレが追い込む! 例え地獄に行こうとも、オレは許しはしねぇぜ! 会社はお前ら社員の便利な財布じゃねぇって事を覚えておけ!」 社員は…何も言えなかった 「近いうちにな、三階には、経理と人事課と営業を一緒のワンフロアーに入れる! 壁を取っ払って、不正は出来ねぇように、管理課ってのを新たに作って監視させる! より透明な経費をあげろ! 会社の経費は会社の為にある! 社員の為にある! 以上!次は営業だ!」 康太はマイクで話す前に、一生達に営業の出入り口を封鎖させていた 榊原が睨みを効かし、康太の横に聳え立つと…効果は絶大だった そして、社内を練り歩き、営業部へ辿り着くと 一生が前の扉に慎一が後ろの扉に立ち、封鎖していた 康太は堂々と部屋の中に入っていくと クラブ通いの部長と課長…社員を見付け、嗤った 「逃げ損なったか? 何処へ逃げても、飛鳥井家の真贋の瞳からは逃げられねぇぜ!」 康太はニャッと笑った 康太は聡一郎に作らせた書類をもう一部持ってて、そいつ等の前に投げ出した 「今、社長室に弁護士が来てる。 お前等の資産を差し止めした! そして、足らねぇ分は支払ってもらう! 接待と言う名目でクラブの女に貢いだ金は接待とは言わねぇだろ? 今後一切、飛鳥井建設は不透明な接待は禁止する! クラブやキャバクラの接待は自腹だ! 当然、今月の接待の金は、お前等の自腹だ! 請求書が行ってるだろ? そして、これは横領だ! 弁護士が立件して起訴する。 これから、この部署は家宅操作が入る。 当然お前等は、解雇だ!」 康太は胸ポケットから携帯を取り出すと 「お願いします!」と電話を入れた 「今、捜査が入る。 この部屋の荷物に触れば、逮捕される! 触んじゃねぇぞ!」 康太が言うと、大人数の私服の検察官が段ボールを持って部屋に入って来た 「これは見せしめや、スケープゴートじゃねぇ! 現実として受け止めてくれ! 飛鳥井家の真贋が、いる限り、飛鳥井建設は今までの様には甘くは行かない! 不正は絶対に許さねぇ! 不正を見付ければ、突き出す! そんな社員は飛鳥井には不要だ! 不要な社員など守るに価はしねぇ! 会社の方針だ!今後覚えておくように!」 館内放送で、全部が…白日の元に曝されて行く 「飛鳥井の為にならぬ奴は去れ! 飛鳥井は働いてくれる奴の為の会社だ! 胡座をかいてるグズの為にはねぇ!」 営業部の書類を殆ど回収して、検察は帰って行った

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