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第53話 絶望

その夜、行われた記者会見は終わった 力哉が奔走して、今回も秘書としての手腕を奮っていた 席を立つ康太の前に、東亜日報の今枝浩二が頭を下げた 康太は横目で見て、微かに笑い、会見会場を後にした 控え室には榊原が待っていた 一生も、聡一郎も隼人も慎一も、康太を待っていた 榊原は「康太、戸浪の若旦那が心配して何度も電話を入れて来ています。 後、兵藤貴史と三木繁夫からも、有りました。 我が父からも、何度も有りました」と現状を話した 榊原に預けた携帯を貰おうと手を差し出すと 戸浪と通話可能にしたスマホを渡してくれた 「あっ、若旦那、何度も電話を貰ったみたいで、申し訳ねぇ。」 『記者会見を見ました。』 「飛鳥井は変革期に在りました 多少強引な事をしてでも推し進める必要が在ったのです‥‥」 推し進める必要が在ったとしても、人はその中心に立つのを恐れ‥‥ 先送りにしたがる それが破滅への決定打となると解っていても‥‥着手する人間は少ないだろう‥‥ 『君と‥‥話がしたかったのです』 「ならば明日は午前中は学校に行くんで、午後からでもどうですか?」 『ならば、午後はスケジュールを入れずに待ってます』と言い電話を切った そして、次に兵藤に電話を入れた 「貴史?帰りに寄るわ!」 と、電話を入れた そして清四郎の所へは、これから行くと、榊原に電話を入れさせた その間に三木の所へ電話を入れた 外の駐車場へ向かい、力哉の運転する車に乗り込むと、瑛太と天宮は…自分の車に乗り込み帰っていった 電話を切ると、「貴史んちの前で下ろしてくれ」と頼んだ 兵藤の家の呼び鈴を鳴らすと 兵藤が飛び出して…康太を抱き締めた 「おめぇはよぉ! 俺に話せば動いてやったのによぉ!」 と悔しがった 「会社の事は会社の人間で片付ける。 済まねぇな……」 「解ってる!そんな事はよぉ! でもおめぇはまた、苦しみの中に飛び込みやがって!」 康太は笑って兵藤の背中を撫でてやった 「貴史、明日の朝、飛鳥井の家に来い! チョコを持っていくのを手伝え!」 「手伝ってやるよ!って言うか俺が持ってってやる! おめぇは持たなくて良い! 絶対に食いそうだ!危ねぇからな!」 康太は笑って「なら、明日な。」と兵藤に告げると兵藤は、康太を離した 康太は兵藤に片手をあげ、背を向けると車に乗り込んだ その足で、清四郎の家に行き、顔をみせに行く 清四郎は、駐車場で待っていて…康太の姿を見ると…飛び付いて…抱き締めた 「君の姿が…TVで映っていると、相賀が教えてくれました。 慌てて見ると…君が映ってました…。 会社の為……とは言え…辛い事をせねばならなかったのですね…」 「清四郎さん…オレは、その為に飛鳥井の家にいる。飛鳥井の家で生きるには避けては通れぬ道です…。」 「康太……君はまだ高校生なのに…」 「仕方ないですよ…オレは、飛鳥井の家真贋…。 オレが出ねば…示しが付かねぇ…。 オレの存在理由は…飛鳥井の家の為…だからな。」 飛鳥井の家にいる存在理由…… あまりにも重い…その言葉を…清四郎は…聞いていられなかった その存在理由の為だけに生きていると…言われた見たいで… 堪らなかった… 榊原は、清四郎の体を支えて、家の中に連れていった 家の中に連れて行くと、真矢が出迎えに出てくれた 「康太…。」 真矢は康太を抱き締め…優しく包み込んだ 「明後日には、貴方に渡します。 手続きも終わり、週末に開かれる貴方の誕生パーティーで貴方の子供になった子を渡せます。」 「真矢さん…無理させました。」 「貴方にはしてあげたいの。母として…貴方には与えたいの。 こうして側に住むようになったんだから、もっと遊びに来てね。 翔、流生、大空、太陽、音弥、この五人の子供を私達も、手伝って育てます。 どの子も分け隔てなく、愛して育てます。」 「ありがとう…真矢さん…」 真矢は微笑み、榊原も胸に抱いた 「伊織、貴方……オムツも変えるんですってね? 貴方が子育てする姿は想像出来なかった… 貴方が…誰かを愛するなんて…想像も出来なかったわ…」 真矢が言うと清四郎は 「伊織は、上手かったですよ。 ミルクもオムツも変えて、笙より上手いかも知れません 愛して止まない子供ですからね…。 私も…伊織が…誰かを愛して…って姿だけは、想像出来ませんでした…。 人の心が…この子には在るのか…と悩んだ時もあります…。 でも康太を抱き締める伊織は…何処にでもいる…普通の男でした。 康太を愛して止まないと…苦悩を打ち明けてくれる伊織は…誰よりも頼りなく…誰よりも愛しく思えました。 康太がいてくれたからこその、想いです。」 康太は、清四郎さん…と呟いた 榊原はにこやかに微笑み 「父さん、母さん…僕は普通の男ですよ… 焼きもち妬きますし…独占欲も執着も…酷い こんなにも余裕なく…人を愛すなんて… 普通の男より情けないかも…時々…落ち込みます。そして、今朝落ち込みました…。 止まらなくなって…康太を抱き潰す…のを見ると…落ち込みまくりです…。」 少しだけ情けなく呟くと、真矢も清四郎も笑った こんな耳も尻尾も垂らして、怒られて萎れて反省している犬の様な情けない姿を見ようとは…… 真矢は榊原を抱き締めた 「康太は許してますよ。 愛してるお前を許してくれますよ。」 「母さん…すみません。ダメな息子で…」 「ダメな子ほど可愛いって言うでしょ。 今の貴方は可愛いわ。 そんな情けない顔しないの。」 真矢は榊原の頬にキスを落とした 「母さん、大空と太陽を抱き締めて良いですか?」 「良いわよ。ついでにオムツとミルクもお願いね。」 真矢はそう言い、ベビーベッドを指差した そこには目を開けている…赤ちゃんが二人…いた 「どっちが…大空ですか?」 思わず…榊原は聞いた すると康太が「こっちの白い服が太陽、青い服が大空だ。」と答えた 真矢は「流石!康太は間違えないわね!」と感激した そして真矢の目の前で、榊原はオムツを変えて、ミルクを飲ませた その手つきは日々子供と接していればこそ身に付く手際の良さだった 真矢はその手際の良さに感心し微笑んだ 「伊織が…子供を…育ててますよ…あなた。」 「手慣れてるでしょ? 私も最初は…驚きました。 本当に良いパパになってるでしょ?」 「凄いわ…何だか…涙が…」 真矢が瞼を拭うと…清四郎は優しく妻を抱き締めた 一頻り…優しさに触れ、真矢は顔を上げた 「太陽の器も容姿は笙さんに近い。 オレの年になればその容姿は一目瞭然になる。 そして、大空の器も容姿も…伊織に酷似して、伊織の年になれば、その容姿は一目瞭然になる。」 康太が呟くと、清四郎が 「器は違う双子ですか?」と笑った 康太はそんな、清四郎を見詰め…優しく笑い …その顔を翳らせた 康太は……見えた…と呟いた 「清四郎さん…最近、全然、笙さんに連絡を取ってないでしょ?」 「康太?………何かありましたか?」 「離婚してますよ…笙さん。 笙さんの所の…双子は…亡くなりました それで亀裂が走り…離婚したみたいです…」 清四郎は、えっ!と驚いて…康太を見た 清四郎は「笙の所の双子は…何故…亡くなったんですか…」と、問い質した 「………オレに聞きますか?」 「君に聞きたい…。 笙は言わないだろ? 私に本音など…見せはしない…それが、笙だ」 「育児放棄…ですよ。 笙さんは仕事で… 育児ノイローゼの妻は…子供を子供に預けて遊び三昧…。 子供が子供を見るには限界があり… 高熱で肺炎…そして…亡くなった 子供の心にも…深い傷を残し… 笙さんの心にも…絶望を…植え付け…結婚生活は…破綻した…。 それが、先週…辺りだな…。 笙さんは…絶望の縁にいる。困ったな… 清四郎さん、これから、弥勒の所へ行って笙さんを連れに行ってくれ! オレは…行かねぇ方が良い…。 真矢さんも行って笙さんを連れ戻して下さい! 双子は飛鳥井の家に連れて行く。 笙さんを見付けたら飛鳥井の家に来てくれ!」 真矢は顔を引き締め…「解りました。」と、呟いた 康太は天空目掛けて…叫んだ 「弥勒!お願いだ! 笙を助ける手助けをしてやってくれ!」 『承知した!早く参れ! 龍騎を動かし、その命…留めておこうぞ!』 「行ってくれ!早く!伊織、行ってくれ! 弥勒の所へ行って、笙を助けてやってくれ だが、オレは、行けねぇ… 何故ならば、オレが行けば、着く前に死ぬからだ!」 「何故!何故ですか?」 「オレは、歪みを正してしまうからだ! 人は…死を前にすると言う事は…… 歪んだ想いの中にいる。 それを正せば…人は…その命を断たれてしまう。 子供の産まれる時に…その場に居られねぇのと一緒だ! 産まれる子供は…歪みの中を通ってこの世に落とされる。 オレは、それに関われば…歪みは直され…終わってしまう だから、オレは、行けねぇんだ!」 榊原は…唖然となった… 榊原は、一生に「康太を頼めますか?」と聞いた 一生は「任せとけ!康太の子守りは慣れてる。」と言い、大空を慎一に渡し、太陽を隼人に渡した そして康太を聡一郎に渡し、帰り支度をした 「俺等は、力哉の車で飛鳥井へ帰る。」 「僕は父さんと母さんを弥勒の所まで送っていき、兄を助けに行きます!」 榊原は、そう言い、両親を促した 「父さん、車のキーを寄越しなさい!」 「伊織が運転しますか…。ぶつけないで下さいね!」 「僕は…康太では有りません!」 榊原は苦笑して、清四郎の車のキーを握り、外へと出た 康太は力哉の車に乗り…榊原に片手をあけだ そして、力哉の車は…走り過ぎた… 榊原は、両親を車に押し込め、弥勒の所へと…走った 弥勒の家の前に行くと、既に弥勒は待っていた 榊原は弥勒を助手席に招き入れた 「弥勒…お世話になります…」 弥勒は焦っていた… 車に乗り込むと榊原に、現状を話した 「無駄な話はしてる余裕も時間もねぇぜ! 笙は黄泉を渡った! 一足遅かった 今、康太が黄泉に渡って連れに向かった 俺等は体を回収して、飛鳥井の家に行く 体が遅れたら康太は死ぬ! それ位に切羽詰まってんだよ!」 弥勒の言葉に…榊原は言葉を失った 「何処へ走ったら良いですか?」 「笙のマンションは知ってるか?」 「知りません…父さんは?」 榊原は清四郎に聞いた…だが、清四郎も知らなかった 弥勒は「龍騎、ナビに入れ!」と声をかけると『では、案内しよう』と、声が聞こえた 「ナビ通りに走りやがれ! 清四郎、お前はマンションの鍵を開ける算段に入ってろ!」 「えっ…どうやって?」 清四郎はオロオロになっていた 真矢は「マネージャーに連絡を入れます!」と、笙のマネージャーに連絡を入れ、鍵を開けさせる算段をした 榊原は、走った 笙は…兄だ…死なせたくはない そして……康太が死ぬのは、もっと嫌だったから… 笙の、マンションに、到着すると榊原は、真矢には来るな、と言って、弥勒と清四郎と車を降りた マンションの入り口にはマネージャーが待機していた 「早く!部屋の鍵を開けなさい!」 榊原が叫ぶと、マネージャーは部屋まで案内し、鍵を開けた 部屋の中は…真っ暗で…家具もなく…床に…笙は倒れていた 榊原は、その体を背負い、車に戻った 悠長な事をしている時間はなかったから… そして、真矢に笙を渡すと車に乗り込み…飛鳥井の家に走った 飛鳥井の家に着くと… 康太は……サンルームの床の上で死んだように…眠っていた 弥勒は二人の体を並べて寝かすと、戻る時を待った 真矢と清四郎は、笙の体を抱き締め…康太の体を抱き締め…泣いた 下手したら…康太は死ぬ… そんなリスクを承知で…真矢と清四郎の子供を黄泉へ迎えに行った 榊原の兄を…迎えに行った 榊原は静かに…康太の体を抱き締め… 接吻した 康太は、黄泉にいた 黒龍が「また来たのかよ?」と揶揄する 「捕まえといてくれたか?」 と、康太が聞くと黒龍は 「あぁ。頼まれし魂は、あそこにいる。 あんな綺麗なのが落ちて来たら困るんだわさ! 送り返そうかと思ってたらお前が来た 光輝く魂は…落ちたらいかんでしょうが!」 ボヤいた 「オレが連れ帰る。 その前に説教しとかねぇとな! 姿を出せれるか?」 「説教好きは相変わらずかよ!」 黒龍は楽しそうに呟き、その魂を天に上げた すると、榊原笙の姿が…現れた 「よぉ!笙、久し振りだな!」 笙は、唖然としていた… 何故…目の前に…康太がいるか解らなかったから………… 「榊原笙、お前は自ら命を断ったんだよ! 自殺はよぉ大罪なのを知ってるか? 自ら命を断てば、その命は輪廻の輪から外れて、未来永劫、孤独にさ迷わねばならねぇ! それが定め! だがな、おめぇには、まだ死ねれねぇ定めも、あんだよ! だから、オレは、自分の命をなげうって、迎えに来てやった。 下手したらオレは、死ぬぜ 此処は死者の行く世界、黄泉の世界だ。 此処へ来るのは何時も…命懸けだ…。 でも迎えに来たのは何故か知ってるか?」 笙は何がおこってるのか解らなかった 解らなかったけど、唯一つ 「康太、君が死んだら…弟まで死んでしまう!早く帰ってくれ!」 笙は、叫んだ 飛鳥井康太は………弟の 榊原伊織の………命だから 康太は…右手に…思念を籠めた そして、その手を振り上げ…笙を殴った 魂の存在は…殴れない… だが…その手に…榊原の家族の思いを込めて…笙を、殴った 「人は、産まれるのも一人なら…死ぬのも一人だ! だがな、勝手に死んで良い筈がねぇんだ! 何故ならばお前は人の子だからな! 親の想いや悲しみを無視して良い筈はねぇ!」 笙の、前に…泣き叫ぶ真矢の姿が… 何時も毅然としている…清四郎の泣き叫ぶ姿が… 涙なんて…あるのかよ!……と、想った 弟が…笙の躯を持って…泣いていた… 「お前は罪を犯した!自殺は大罪! オレが神ならば、お前の魂など昇華してしまう! オレはな、身勝手に命を断つ奴が!大嫌いなんだよ!」 「おいおい!炎帝、勝手に昇華すんなよ!」 黒龍が、慌てて止めに入る程の迫力だった 「黒龍、しねぇよ! この男は我が伴侶の今世の兄だぜ! 死なすかよ!」 康太は叫んだ! 叫んで…現実を…解らせた! 「笙!お前は一人だと錯覚して死を選んだ! だが、お前には親も弟もいなかったのか? お前の為に涙する…存在を無視して…… その命を断つのは身勝手や過ぎねぇか?」 笙は、康太の前に…ひれ伏した 「すまない…康太…。 何も見えてはいなかった…。 孤独に…絶望に…飲まれて…見えなかった…。 今更帰りたいと願っても無理なのは解ってる! でも僕は…帰りたい! 帰りたい! やり直したい…。 母さん…父さん…済みませんでした! 伊織…ごめん…ごめん伊織!」 笙は、叫んだ 後悔しても遅い…事実に…涙して… 笙は叫んだ 「笙、お前の双子は…… 1つの魂にして、お前の元に還してやる。 飛鳥井の家に還ったら転生の義を唱えてやろう。 何時か、お前の子供として、亡くした双児は還って来る。 その時に出来なかった事を沢山して愛してやれ。良いな?」 「はい。お願いします」 康太の手の中に…小さな二つの珠が握られていた 康太はその、魂を1つにして、空へ飛ばした 「お前の輪廻の輪に組み込ませるまで、あそこで眠らせておく。 お前の子供には、罪の証を入れた。 次に産まれ来る子は、手の甲に十字の痣を入れた。お前が忘れぬ為にな。」 笙の前に仁王立ちになると康太は 「二度と再び! その命は断たぬと約束しろ!」 とひれ伏す笙を、そのままに…問い質した 「もう二度と…自ら‥‥命は…断ちは致しません」 「その命、今度断てば、二度と輪廻には入れねぇ! この記憶は残しておいてやる。 オレとの約束を二度と違えるな!」 康太が言うと黒龍が 「炎帝、その命、今度黄泉に来たならば、俺が貰おう。 家の照明にでもしてぇ輝きだからな。」 「おう!黒龍にやんよ!好きに使え!って言いてぇが、オレが昇華して煙りにしてやんよ。 オレはな《 無 》にするのだけは上手めぇんだぜ! それで、人の世に堕とされたんだけどな。」 「おめぇの所為でよぉ! 我が弟、青龍も落ちてしまったやん」 康太は笑って許せ…と、告げた 康太は姿勢を正すと 「我が兄、閻魔に今回の事の礼を伝えておいてくれ。 本当に有り難うと、言っていたと、伝えておいてくれ。」 「あぁ。お安いご用だ。炎帝、またな!」 「黒龍、またな」 康太はそう言うと、笙を捕まえた 「忘れるなよ! その命はオレが握っていると! お前の好き勝手には生きれしねぇ!」 康太がそう言うと…笙の意識は…無くなって …小さな珠になった 康太はその珠を握ると、胸ポケットに入れた 「ではな、黒龍。」 「あぁ。潰すなよ!」 「解ってる!茗、飛び込んで良いか?」 「良いぞ!またな炎帝!」 茗は、康太に手をふった 康太は笑って湖に…身を投げた 康太は…笙の魂を持って…輪廻の輪を潜った… 果てしなく続く…苦しさを抜けると… 康太は…紫雲に…笙の魂を渡した 「龍騎…導いてやってくれ…。 頼む…オレは……今回は…自分の体に…辿り着けねぇかも知れねぇ…」 黄泉に行くには果てしなく体力が要る… 隼人を迎えに行って魂が弱って黄泉に落ちて… 体力を回復させて、まだ、何日も経ってない… 本来なら辿り着く前に…本当に黄泉の住人になりそうな事を…やったのだ 紫雲は…康太から…笙の魂を受け取ると… 康太は…弱って…闇へと…堕ちた… 榊原は、弥勒に… 「迎えに行きます!」 と告げ、康太を抱き上げ寝室へと向かった 遣り方は解らない… だが…死なせたくはなかった 康太をベッドに寝かせると、キスをした その背に…弥勒は声をかけた 「伴侶殿、康太を迎えに行かれますか? ならば、俺もお供をいたそう。 貴方を案内出来て光栄です」 弥勒は呪文を唱えると… 一瞬にして…足元に五芒星…の、ペンタグラムが現れた… 「四神をお連れするので、我も本気を出しましょう!」 弥勒はそう言うと封印を解いた 自らの封印を解いた弥勒からは、物凄い霊力を撒き散らしていた。 そして、榊原を導こうと…黄泉への門を開いた 黄泉へと続く門を潜ると…… そこは光すら通さない闇の中だった 榊原は、蒼白い妖炎を上げて…その空間に…足を踏み入れた 「弥勒、龍に姿を変えたら、背中に乗りなさい!」 榊原はその体を…蒼い龍へと変えた 弥勒は青龍の背中に乗り…角に掴まった 榊原が時空に乗って…動き出すと… 辺りは蒼白い光に照らされた 弥勒は邪眼を開眼させ… 辺りを満面なく見渡した 榊原は「貴方…何者なんですか…?」と呟いた 弥勒は「俺か?俺は人だぜ!」と榊原に告げた 榊原は聞くのを諦めた 「輪廻の輪の中に…いませんか?」 榊原が問い掛けると 「堕ちていったなら…黄泉の泉か?」 と弥勒は思案した 「では、このまま!黄泉の泉まで、ぶっちぎって行きます!」 「それしかねぇな!」 榊原は弥勒と共に何処までも続く闇の中を飛んで逝った

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