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第54話 還る

榊原は、蒼い龍のまま黄泉の泉を…突き抜けた! 泉を抜け、姿を現すと、目の前に黒龍が笑って立っていた 「数万年振りの青龍本体じゃねぇか! で、そちらの方は?何方ですか?」 黒龍が問うと、弥勒は 「人間だ!構うな!」と怒鳴った 榊原は泉の岸辺に頭を下ろすと…弥勒は榊原の頭から降りた 榊原は、姿を人に変え、弥勒の横に立った 「黒龍、康太は!還ってませんか?」 「還ってんぜ! 閻魔自ら助けに行って屋敷に連れ帰った。 案内するぜ!」 「ならば!僕と弥勒を連れて行きなさい!」 黒龍は、仕方ねぇな…と、漆黒の龍の形に姿を変えた その背に榊原と弥勒は乗った 「兄さん、赤龍は……康太のあんな側に居るとは想いもしませんでした。 飛鳥井の家の裏にいる方が赤龍かと思いましたが…まさか、朱雀とはね…。」 黒龍は、笑った 「宝珠を捨てて行くからだろ? もしかして…その方は…名前のまま…弥勒?」 「さぁ?僕には正体は解りません。 でも言えるのは、康太命です!」 「………。」 まぢかよ…と黒龍は、呆れながら…閻魔の側へと、一目散に飛んで行った 閻魔の屋敷の中庭に、弥勒と榊原を、下ろすと 黒龍は、人に姿を変えた 閻魔の中庭に…不審者が来たと…護衛が出て来ると… そこには青龍が立っていて、護衛は青褪めた 「青龍殿…何時…魔界に?」 「僕は追放された訳ではない! なのに槍を向けますか? 良いでしょう。 次に還って来る時は覚えておきなさい!」 榊原が冷酷に嗤うと、護衛が逃げて行った 榊原は、弥勒を引き連れ、ずんずんと歩く そして、閻魔の部屋に着くと、ノックをした 閻魔がドアを開けると、榊原は頭を下げた 「我が妻が此処へ来ていると想い馳せ参じました。」 「お前の妻?妻と呼ぶのか…アレを?」 「僕の愛する妻です!返して下さい! 僕の妻は未来永劫…炎帝、唯一人」 「良かろう!還してやる。 還さねば、勝手に帰ってしまうであろうて」 「では、返して下さい!」 「弥勒付では還さぬ訳にはいかぬからな。」 「お知り合いなのですか?」 「お知り合いも…何も…菩薩をお知り合いだなんて畏れ多い…。 転輪聖王……。であられる。」 閻魔がそう言うと、弥勒は、ケッと嗤った 「俺は人だ! 父と間違えてんじゃねぇか?」 「………ならば!そう言う事にしておきます 炎帝…いえ…飛鳥井康太は……」 「康太は?」 榊原と弥勒は……… 身を乗り出して、閻魔に迫った 「隣の部屋で…御馳走をたらふく食べてます 何でも腹が減って… 力が出なくなったそうだ…。 まぁ、黄泉に来て間もないのに、また来れば体力が続く筈などない。 と、言う訳だ。 しかし…青龍…本当に変わられましたね…」 榊原は、嫌な顔をした 「僕は相当堅物の石頭だったんですね…」 「違うのですか?」 「炎帝と堕ちて……苦しみも哀しみも…… 幸せも……味わいました。 そして何より炎帝を、愛する想いが…僕を変えたのかも知れませんね。 僕は…炎帝なしでは、生きられません。」 閻魔は笑って隣の部屋のドアを開けた そこには…御馳走をたらふく食べてる康太の姿があった 「康太…」 榊原が呼ぶと…康太は立ち上がり…榊原に飛び付いた 「伊織!伊織…オレの蒼い龍…。 愛してる!」 「康太…愛してます!」 二人は抱き合い…激しい接吻を…交わした 閻魔は…たらーんとなった なにも…此処で…せんでも… 榊原は康太を抱き締め…その体を抱いた 榊原の腕にスッポリ収まり…康太は幸せそうに笑っていた 「ならば!帰るとするか。」 康太は榊原を急かした 「弥勒、済まなかったな…… 封印を解いたのか? 人として生きるに不要な…力を閉じ込めた封印を… 解いてしまったのか…? 済まなかったな…オレの所為か…」 「気にしなくて良い。 戻ればまた封印すれば良いだけだ。 俺は人だ。 それ以外になる気はねぇからな。」 弥勒はそう言い笑った 「我が兄、閻魔…世話になったな。」 「またな、炎帝。良き亭主を持ったな。」 康太は笑った 閻魔の屋敷を出ると、黒龍が待っていた 「泉まで送ってやる。背中に乗れ!」 康太は龍に姿を変えた黒龍の背に、榊原と弥勒と共に乗り込んだ 「黒龍、悪かったな!」 「我が友、炎帝、気にするな。 しかも、今回は弟にも逢えたしな」 「青龍は変わったろ? オレの愛する男だ。 未来永劫…オレは、青龍しか愛せねぇ」 「ノロケかよ…。ほら、着いたぞ!」 黒龍は、背中から、康太達を下ろした 榊原は、康太を抱き締めたまま、輪廻の輪を潜るつもりで、泉に入った 弥勒も…泉に入り、現世へと向かった 康太が意識を取り戻すと…榊原と弥勒はもう目覚めていた 「笙さんは?戻ってんのか?」 「ええ。君のお陰で…助かりました。 今、薬を飲んでいたって事で病院へ連れて行ってるそうです。」 「そうか。」 「弥勒、ありがとな。」 「お前が生きていてくれるなら、何としてでも助ける。 ならば、帰るとするか。」 「伊織、送ってくれ。 オレは、少し寝る」 「解りました。 では、寝ていて下さい」 榊原は、弥勒を連れて部屋を出ていった 眠りに落ちる前に…一生の心配そうな顔に出会した 榊原が、出る前に、一生達に頼んで弥勒を送りに行ったのだ 隼人も聡一郎も慎一も…心配して…康太の顔を見ていた 「心配すんな。 明日にはチョコを持っていって、戸浪に行かねぇと行けねぇ。 くたばってる暇はねぇんだよ…」 一生が康太の頭を撫でた 「俺が見ててやるから眠れ」 康太は笑い、瞳を閉じた 深い眠りに…康太は堕ちた 一頻り眠って…目を醒ますと… 人が増えていた 康太は…驚いて…榊原に抱き着いた 「どおしたんだよ?ビックリした…」 目の前には…瑛太を始めとして… 玲香、清隆、悠太、一生、聡一郎、隼人、慎一、力哉、京香に加わって 榊 清四郎、真矢、そして……笙が康太を見詰めていた 瑛太は「体は…大丈夫ですか?」と、心配そうに尋ねてきた 「伊織と弥勒が助けに来てくれたからな」 「そうですか…良かったです!」 と涙ながらに…言われると…康太は…辛くなった 「今は何時なんだよ?」 榊原は時計を見て「朝の…6時です。」と答えた 「なんで、こんな朝早くから…オレの顔を見てんだよ!」 「一晩中は見てませんよ…気になって…目を醒ましたら…皆…居たんですよ…」 瑛太は…気まずそうに…康太に話した 「伊織、腹減った…。 何か食いたい! オレは、チョコを持っていって、昼には若旦那に、逢わねぇといけねぇんだ…。」 「チョコのお金は、受け取りましたよ。 中等部、高等部、生徒会の料金、合わせてピッタリ20万円回収しときました。」 「そうか。ならオレに何か食わせろ! オレは、昨夜記者会見で夕飯を食ってねぇんだよ! しかも、オレは、全裸で寝てんだよ! 今起きたら、見えちまうじゃねぇか! オレは、皆に見せる趣味はねぇんだよ!」 康太は叫んだ! 「僕も康太を見せる気は全く有りません! 僕の愛する康太の全裸を見せたりするもんですか!」 榊原は、そう言い康太を抱き締めキスをした 皆…わらわらと散らばって、食事の支度に出てった 皆、出ていった後に、康太は榊原に何があったのか聞いた 「何で朝からオレは、皆に顔を見られて寝てんだよ!」 「朝…5時頃、人の気配を感じて…ドアを開けたら… リビングに皆さん座ってらっしゃいました 僕はズボンだけ履いて、覗きに行くと… 皆さんが心配して…君を見たいって言うから…寝室に入れました。」 「伊織はオレを全裸で寝かせるからな…焦った…。今回も服着てねぇだろ?」 「はい。僕が帰って来たら、君は一生に眠らされてました。 だから、僕は君ともう寝ます…と言い一生達を帰らせました。 そして、僕は服を脱ぎ、君の服を脱がせ…全裸の君を抱き締めてました。 君を体温を感じないと…僕は眠れません…」 「伊織…起きねぇと…皆…待ってる」 「解ってますよ。 エッチには突入しませんよ。 でも、君を確かめさせて。」 榊原はそう言い…康太を抱き締めた そして、優しくキスすると、起き上がり、制服に袖を通した 支度を整えると、康太と榊原は一階の応接間まで行った すると、全員が康太達を待っていた 康太が何時もの席に座ると、慎一が康太の前に朝食を置いた 相当、腹が減ってたのか…… 康太はガツガツ食べ始め… 沢庵をポリポリ食べては、ガツガツ食べた あっという間に平らげて、慎一に淹れて貰った玉露を飲んだ

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