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第55話 邂逅

食事を終えると、康太は笙の方を見た 「榊原笙、体調はどうだ?」 康太は、笙に声をかけた 笙は、康太の姿をまじっと見詰めた 「記憶があります。 あれは君ですよね?」 「そうだ。オレは、記憶を残しておくと言わなかったか?」 「言いました…僕の命は…君が握っていると…」 「そうだ。だから、もう好き勝手すんじゃねぇぞ! マンションは引き払え! 榊原の家に帰って来い!」 「はい。君の側で…僕は生きたいと想います。」 笙が言うと、康太は、 「笙、今日、転生の義を唱える儀式を行う お前の子供を1つにして、お前に還す。 オレは、早目に還って来る。 午後は若旦那と話が有る。 帰りに一緒に寄るとして、力哉、菩提寺に儀式の準備をしとく様に伝えろ!」 「はい。解りました!」 力哉は慌てて連絡に行った 「笙、帰らずに此処にいろ! 迎えに来るから、そしたら、お前の子供を転生させてやる! そして帰りにトナミ海運に行く。 ついでに着いて来い。 オレは、飛鳥井の家の為に動かなきゃなんねぇ事が山積みにあんだよ! 軌道に乗せるまでは忙しいんだ! ついでに、榊原笙、お前も軌道に乗せてやるかんな! もう死にたくならねぇ位に…使ってやる 手始めに事務所を変わるか。 今の事務所は、お前には合ってねぇ! 隼人、夜、7時に神野を呼べ! そして、清四郎さん、相賀に話し合いがこじれたら…出る様に頼んでくれ。 オレは、須賀に頼んでおく。 笙は、事務所の社長を夜7時に来る様に呼べ。良いな?」 清四郎は…はい。と返事をして、相賀に連絡を取りに行った 笙も、はい。と、返事をして、事務所の社長に連絡を入れに行った 隼人は神野に電話に走った そして、康太は、須賀直人に連絡を入れ、もしもの時に出てくれる様に頼むと、須賀は喜んで出ると約束してくれた その時、飛鳥井の玄関の呼び鈴が鳴らされた 慎一がカメラを作動すると、兵藤だった 「康太、貴史です。呼びますか?」 「おう!チョコを持たせねぇとな!」 康太が言うと慎一は解錠し 「入って下さい!」と告げた 兵藤はドアを開けて入ると、慎一がどうぞ!とスリッパを出した 応接間のドアを開けると康太が笑って手を上げた 「貴史、飯食って来たのか?」 「俺は朝は珈琲だけな。」 「んなんじゃ昼まで持たねぇよ!」 「…………それはお前だけだろ?」 兵藤は、慎一に促されてソファーに座ると… 軽いランチが前に置かれた 「俺は要らねぇよ?」 「食え!リムジンで学校に行こうなんて思ってねぇよな?」 兵藤は、たらーんとなった 「………違うのかよ?」 「一袋200入ってる! それが、5袋 それに役員用に用意したのが1袋。 計6袋をお前を入れて6人で持ってく。 オレは持たねぇかんな!頑張れよ!貴史!」 「くそ!なら、食わねぇと持たねぇじゃねぇかよ!」 「だから、食え! 慎一が用意してくれたんだぜ! 食わねぇと、襲ってやる!」 「……それは、嬉しいかも…」 「……やっぱ止めとく…。」 康太は笑った 兵藤も笑って、食事を始めた 出された朝食を食べて、珈琲を飲んだ そして、応接間にいる、豪華な人間に苦笑した 「何か……朝から見るには豪華すぎやしねぇか?」 「オレの伊織の家族だ! 大切にしねぇとな!」 「……九条笙…も伊織の家族なのかよ?」 「…言わなかったか?」 「……聞いてねぇぞ…」 「オレの伊織の兄だよ! オレの伊織の方が男前だけどな! オレの伊織は、男前過ぎて、惚れまくりだ!」 「……眼科に行くか?」 兵藤がそう言うと…一生が慌てて止めた! 「貴史!止めとけ!」 康太は、兵藤をくすぐった 「止め…康太…すまん!助けろ!一生!」 康太のコチョコチョ攻撃から、兵藤を助けた一生は 「余計な事を言うな!」と釘を刺した 康太は榊原に抱き着き、ベーッとした 「オレの伊織は、誰よりも男前なんだよ!」 そんな、康太を見て一生は 「貴史…康太はどんなイケメン見たって、オレの伊織の方が男前だけどな!って言う奴なんだよ…諦めろ!」 と兵藤をたしなめた 飛鳥井の家族は苦笑して、榊原の家族も苦笑した 当の本人はの笙は 「康太、眼科に行きなさい! 伊織より、僕の方が男前ですよ!」 と言いきった 榊原は「兄さん!それを言いますか!僕の方が男前です!」と反撃をし…… 兄弟喧嘩になって行った 康太は榊原から離れて、兵藤に 「行くか?」と尋ね、立ち上がった 「笙、オレが帰るまでいろ! 清四郎さん達も時間が有りましたら、いて下さい 用事を済ませたら今日は帰宅するんで、待ってて下さい!じゃぁ行くぞ!」 康太が言うと、一斉に皆は立ち上がった 兵藤は「ご馳走さまでした。失礼します。」と礼を言い、頭を下げた そして、応接間に、昨夜一生達が作っておいてくれたチョコの入った袋を…兵藤に渡した 「重っ!嘘! 何でチョコの癖にこんなに重いんだよ!」 「知らなかったが、宙夢は桜林の卒業生なんだよ…んで、桜林の同級生のシェフに頼んだ所…桜林のイベントか懐かしいな…って、気前よくコストを下げて豪華なモノを作ってくれたからな!だから重いんだよ!」 「クソッ!やられた! これを持って歩け…と?」 「鈍るのは早ぇぜ!」 康太は親指を立てて笑った 「持ってくよ!持ってけば良いんだろ!」 兵藤は喚きながら、紙袋を持った 康太は応接間を出る前に清四郎に 「清四郎さん、オレが帰るまでに、オレに下さった様な長めのチェーンの十字架のネックレスを用意しといて下さい!」 と頼み事をしておいた すると…真矢が首からネックレスを取り出して康太に見せた 「こんな感じで良いのかしら?」 長めのチェーンはキラキラと光り細工を施され綺麗に輝いていた そして……銀の十字架が着いた綺麗なネックレスだった 「そんな感じで良いです。 そのネックレスの中に笙の子供の魂を入れます。 笙が愛する人と出逢い、子を授かった時に、そのチェーンは切れます。 その後はその子にそのネックレスは与えて身に付けとくと良い。 そのネックレスか、それに酷似したのを笙に持たせておいて下さい! 転生の義を唱える儀式を行う最中には、それを握っていてもらうのでお願いします。 では、学校に行きます。」 康太は頭を下げて、応接間を出ていった それに続いて榊原も兵藤も一生、聡一郎、隼人も続いた 重いチョコを持ちながら学校まで歩いて行く。 慎一は隼人の荷物を持ってやり…気配りに余念がなかった 「慎一、オレ様は持てるのだ…」 「ならば、半分持ちなさい!」 慎一が300持って、隼人は100個持てと…言う 「俺は土方で慣れてっから、気にしなくて良いですよ。」 「なら、慎一、オレも持ってけ」 康太が甘えると、慎一は困った顔をした 「康太…それは限界です…」とボヤいた 「嘘だってば。オレも持ってやんよ」 「良いです…絶対に…貴方食べますから…」 慎一がそう言うと、兵藤は爆笑した 康太は頭に来て、兵藤の背中に乗っておぶさろうとした… 「重っ!止めろ!伊織!助けろ!」 榊原は仕方なく… 「康太、此処でキスされたくなくば、大人しく歩きなさい」と康太をたしなめた 康太は仕方なく兵藤から離れて…歩いた 一生は、康太を慰め…肩を抱いた 「拗ねるな。昼、奢ってやっから。」 「沢庵も着けてくれる?」 「あぁ。着けてやるから、機嫌を直せ」 康太は一生に懐いた 康太達は、生徒会室に直接向かい、チョコを机に置いた 兵藤が、「チョコの中に寄せ書きを入れる、これをコピーするから、書きやがれ!」と紙を渡した 康太はマジックを掴むと 「悔いのない日々を送れ!飛鳥井!」と書いた 榊原は「希望を諦めてはいけない…榊原。」と、書き 兵藤は、「明日は自分の手で作れ!兵藤!」と書いた 清家は「今を生きろ!…清家」と書いた そして、一生達も書き込み、役員も各々書いて、寄せ書きを作った 「明日はこれをコピーしてチョコに着けるとするか。」 と兵藤が言うと、中等部の前期の役員がチョコを取りに来た 重いチョコを500個、数を数え、中等部へ持っていった 康太はチョコをクラス毎に分けて、メッセージを着けれる準備をすると、帰るわ!と、告げた 「オレは昼前に菩提寺で儀式をやって、昼から若旦那に逢いに行かないと行けねぇんだ 帰るな貴史。良いか?」 「あぁ。良いぞ。俺等も帰るからな。」 兵藤は手をふってやると、康太は笑って生徒会室を出ていった 学校の、駐車場に行くと力哉が待っていた 康太は車に乗り込むと…瞳を瞑った 精神を集中させているのが、解った 飛鳥井の家に着くと、康太は車を降りた 「康太、何を着ていきますか?」 榊原は、玄関を開けて、康太に問う 「スーツで良い。 オレは自分で着る。触るな。」 「解ってますよ。 触らないけど、服を渡す位は良いでしょ?」 「ん。すまねぇ伊織。」 「儀式の前は、触らせないのは解ってますよ。さぁ着替えに行きますよ!」 榊原は康太を促し、寝室へ向かった そして、正装の方のスーツを取ると、康太に渡した 康太が制服を脱ぐと、ハンガーにかけて行き ネクタイを結ぶ時は、鏡を見易くしてやったり 世話を焼き、自分の着替えも済ませて、自室を出ると鍵をかけた そして、一階の応接間まで行くと、清四郎も真矢も笙もいた そして…源右衛門が、康太達を待っていた 「京香と共に子供は見ておる。 行って参れ」と送り出してくれた 「伊織、お前の車で清四郎さん達を菩提寺に連れて行け。 オレは力哉の車で皆と行く。 トナミに行く時には、一生達は帰る。」 「解りました。」 榊原は、自分の親と兄を連れて駐車場に行くと、康太達も車に乗り込んだ 榊原のアウディの助手席に清四郎は乗り込み、真矢と笙は、後部座席に乗った 清四郎は、「康太と喧嘩したんですか?」と尋ねた 榊原は、車を運転しながら 「何でですか?」と聞いた 「君が康太に触れないのは珍しかったから…」 「喧嘩はしてません‥‥」 榊原は、そう言い…淋しそうに笑った 「儀式の前の康太には、触れてはいけないんです… 不浄に触れてはいけないんです。 物凄い集中力を要して、儀式を完遂させる その為に一切の不浄には触れてはいけないんです そうして康太は…魂を…転生させるんです… そして、儀式の後に倒れて…血を吐いても…康太は…やり遂げるんです…」 「康太の行く道は…険しいな…」 清四郎は、呟いた 笙は…黄泉での康太を想い出していた まるで…神の如く…力を使い…そこに在った その姿を…忘れてはいけないと心に刻んだ 飛鳥井の菩提寺に着くと、力哉の車は既に到着していた 榊原は車から降りると一生が待っていた 「康太は?」 「着替えに入った。 本殿儀式の間に、通れ…との事だ」 「解りました。では、行きましょうか」 榊原は、両親と笙を促した 本殿儀式の間に、純白の狩衣の格好をした康太は、手には…妖刀マサムネを握り締め、立っていた 本殿…儀式の間の、板の間から一旦退け!と 康太が言うと、康太は呪文を唱えた すると…そこには五芒星のペンタグラムが出来て…紅蓮の焔を上げて…燃えていた 「炎に触れるなよ! 触れればその傷は治りはしねぇ」 康太は嗤っていた 榊原は、まるで弥勒が寝室に出した五芒星の様だと…息を飲んだ 榊原や清四郎、真矢は焔の外側に座る様に指示があり座った 一生達は少し離れた場所に座り見守った 「榊原 笙!俺の側に来い!」 康太は刃を振り払うと道が出来…焔が自在に動いた 笙は、康太の側に行くと、焔が笙を取り巻く様に回りを取り囲み…燃え上がった 康太は刀を慎一に渡すと…槍を出した 榊原はその槍に見覚えがあり‥‥康太を視た 槍は蒼い妖炎を立ち上げてピキッピキッと辺りを凍らせていた 笙が五芒星の中央に座ると康太は 「十字架は持って来たか?」と尋ねました 笙は掌に銀色の十字架を乗せて康太に見せた 「笙、その十字架にお前の子の魂が入る 胸の位置に手を開き十字架を、見せる様に置いて、祈れ! 自分の所へ還れと…祈れ 清四郎さんも真矢さんも祈ってやってくれ では、参る!」 康太はそう言うと、槍を振り回し…空を斬った そして、唄う様な 呪文を唱え、踊った槍が風を斬り…空を斬り、体の一部の様に、舞い踊る ピキッ ピキッ 空気が鳴いて 覇道が渦を巻いていた 力のない者でも何かが其処に在るのは感じていた 「さぁ、来い! お前は榊原笙の子に産まれるが定め! 還る時まで眠れ。 そして目覚めたら誰よりも幸せになれ!」 康太は槍を天高く飛ばした その槍が笙の掌の十字架を貫き刺さっていた だが痛みはなかった 傷も着いてはなかった 康太が呪文を唱えると槍はスーッと消えてなくなった 「お前の十字架と輪廻の輪を繋げた」 康太の手には光り輝く…水晶玉が在った 康太は笙の手の中の十字架に…その水晶玉を乗せた… 祈り続ける笙は顔を上げた 掌に…暖かい存在を感じたから… 「お前の子だ。お前に還るまで眠らせる」 笙は…泣いた… 掌の暖かい存在に…泣いた… 「暖かい…」 笙は…掌の…温もりと存在感に…掌を胸に抱き締めた 「良いか?その十字架の中に入れても?」 「はい…お願いします…」 康太が手を翳すと…水晶玉は、十字架の中へ吸い込まれて…消えた 「転生の儀を唱える儀式は、終わった 笙、お前の子供は1つになり 転生の輪に乗った。 お前の子供として産まれて来る時まで、そのネックレスの中で眠り… お前が愛する人と愛し合った時、その子はお前の子に還る。 ネックレスが切れし時、子は転生の道を通った証しになる。 産まれし子には、オレが印を付けた。 黄泉でお前に言った様にな。 切れたネックレスは、子供のお守りとして持たせろ!」 「有り難う…康太…本当にありがとう あの日…命を断って…君に助けて貰った 君に恥じない日々を送るよ! 君の側で…暮らすよ。 もう榊原の家を出る気はない。」 「幸せになれ。 親の願いはそれしかねぇ!」 笙は、深々と康太に頭を下げた 康太は「覇っ!!」と槍を振り翳すと、結界は…一瞬にして消えた 副住職が「お見事で御座いました。 この目で見れば見る程に素晴らしい…」 と誉めちぎった 康太は称賛する副住職は無視して 「伊織…」と榊原を呼ぶと、手を伸ばした そして、榊原が康太に腕を伸ばすと…康太は倒れた 黄泉から帰った翌日に…転生の儀を唱える儀式をやる事事態…… 体に負担を掛けすぎているのだ… 榊原は康太を抱き上げると、控え室に向かった 清四郎は、榊原に走り寄ると「康太は!」と問い掛けた 「気絶してます…。 黄泉から帰って翌日に…なんて無茶なんですよ! 慎一、康太の着替えを手伝って下さい」 榊原はそう言い控え室へと向かう そして、狩衣を脱ぐと、力哉に渡した 力哉は直ぐ様、畳み、和紙に包んだ そして、下着一枚にすると、惜しげもなく… キスマークの着いた肌を晒した 慎一が康太のスーツを榊原に渡すと、榊原は康太にYシャツを着せて、カフスで袖を止め ズボンを履かせ、靴下を履かせ、ネクタイを絞め、上着を着せた そして、寒いからとカシミヤのコートとマフラーを巻いてやり、抱き上げた 「一生、康太はトナミ海運に行くので、車のドアを開けて下さい。」 「大丈夫かよ?気絶してるぞ…」 「約束が入ってます。 今日は何がなんでも行かねばならないと言ってました…からね」 榊原は予定がなくば連れ帰る事も出来ようが‥ 予定があるならば、其処へ連れて逝く義務があった それが真贋の伴侶としての役目なのだから‥‥

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