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第56話 激変

トナミ海運に行かねばならない榊原は一生に 「君達はどうしますか?」と尋ねた 一生は「俺等は飛鳥井の家に帰る。 明日は、土曜で康太の誕生会をやる日だからな。 遅れに遅れたからな! プレゼント探しに行くよ!」と榊原に告げた 榊原は両親と兄に尋ねた 「父さん、母さん、兄さんはどうするんですか?」 と問い掛けると…清四郎は、 「トナミに行きます。 康太が行くようにと…言っていました。」 「ならば、後ろに三人乗って下さい。 では、一生、聡一郎、隼人、慎一に力哉、後で、ファミレスでも行きましょうか?」 「そうだな。待ってんよ!」 「トナミから還る時に連絡を入れます!」 榊原はそう言うと菩提寺から出て、外の駐車場に康太を抱き上げたまま向かった 慎一が手伝い助手席のドアを開けると、康太を助手席に座らせ、後部座席に両親と笙を乗せた 「では行きます!」 榊原の車が走り去るのを見届けて一生達は、力哉の車に乗って帰途に着いた 康太は気絶していた… 無理をし過ぎた体が意識を保ってられず、榊原の顔を見るなり…意識を手放した トナミ海運に近付くと…康太は目を開いた そして……果てを見て…… 「弥勒…どうしたものかな?」と問い掛けた 『仕方あるまいて…リスクをまともに食らえば…息もつかないだろうて…』 「まぁ、顔を見るしかねぇか…」 『だな。何かあれば伴侶殿を寄越せ。 俺が出てやろう。』 「無理だろ?チャイニーズリスクだぜ…」 『そうか…そっちは無理だわな…』 「何かあれば…頼む…」 『解っておる。体は…大丈夫か?』 「おう!飯を食えば何とかなる!」 弥勒は笑って『伴侶殿にねだるが良い』と気配を消した 榊原は、「弥勒?」と問い掛けた 「あぁ。」 康太はそう言うと…黙り込んだ トナミ海運の駐車場に車を停め、社内に入って行くと、康太の姿を見た社員は頭を下げた 榊原は、受付嬢に「飛鳥井康太が来たと伝えてください」と言うと受付嬢は 「承ってます。お通りください」と頭下げた 康太は堂々とした足取りで、エレベーターに乗り込み最上階まで向かった そして、エレベーターを、降りると、社長室から戸浪海里が顔を出して待っていた 「康太、久し振りです」 戸浪は康太を軽く抱き締め…挨拶をした そして、社長室に全員通した 康太は社長室のソファーに座ると足を組んだ 「若旦那、心配かけたな。」 「飛鳥井建設のニュースを田代が逸速く掴んだので、お電話差し上げたのですが…」 「飛鳥井は中が腐ってたんだよ。 昔の様にゼネコンが幅を効かせて生きて行ける時代じゃねぇのにな…解りたくねぇ奴ばかりだから解らせて入れ替えねぇとな」 「そうでしたか…。今日は伴侶のご家族と?」 「転生の義を唱える儀式をして来た。 オレは儀式の帰りだ。 しかも疲れてる さっきは、気絶していた…。」 康太が言うと戸浪はギョッとなり 「大丈夫なのですか?」 と康太の心配した 康太は「んな事より本題にはいるか!」と告げた 戸浪は居を正し「何か御用ですか?」と尋ねた 「用があるのは、若旦那だろ?」 「え?‥‥」 「解らねぇなら、解る様に聞いてやんよ! トナミ海運を中国市場に導いたのは誰だ?」 康太が問うと…その顔は驚愕に変わる… 「先代…の宗玄です。 その時は…市場が格安で発展が著しい… 流通が生きる国でした…」 「チャイニーズリスクにやられたな。 標的にされたな…しかも、王家とは…… もはや因縁か…王家…とは、関わりたくねぇのにな…」 「そこまで…見えましたか…」 「トナミがトドメを刺される前に動かねぇとな…。 暁慶の命も…危ねぇか…。 形振り構わず…弔い合戦かよ…」 戸浪は…訳が解らなかった… 「若旦那、オレの側にいる慎一の事を覚えてるか?」 「はい。この前お見舞いに伺わせて戴きました……拷問を受けたのですよね?」 「あぁ。その相手が王 春燕、《ワンチューヤン》と言う、王家の後継者だ! 春燕は飛鳥井に住んでる慎一に目を付け、拉致して、拷問を与え情報だけ聞き出したら殺すつもりだった オレは治外法権の場所に出向き、慎一を救った その時…出逢ったのが、李暁慶《リー・シャオチン》だ 暁慶は、闇の世界の支配者…死神と威名を持つ人間だ。 アレが闇の世界の支配者なのは、王家は目の上のたん瘤だった 同じ闇の世界に生きる者として、小さなに諍いは日常茶飯事だった だがな、今回‥‥春燕を闇から闇へ葬った事に王家が激怒しての総力戦となった そんな中国市場に置いて、安定した利益を出すトナミは中国市場を脅かす驚異の存在… 海運は王家のお家芸だ!脅かされたくはねぇわな! 邪魔な…暁慶と、トナミを抱き合わせて潰す それが王家の目論見だろ…。 オレは、暁慶を隠した。 血眼になっても見つからねぇ場所に隠した 次はトナミが標的だ! 反撃に出ねぇと潰されるぞ!」 戸浪はそこまで的確に状況を見て言い当てられて 「……これが、見えてる果ては変えられないと…言う事ですか…」と呟いた 「…そうだ! 全く違うモノに塗り替えれば…… オレは黄泉の眼も…命も失う… それが、見える者の定めだ。 動ける時期と言うのが有る。 見えるからと言って、総てを変えてはいけない…それが定めだ。 だからと言って…勝機を呼び込めれない程に…ダメージを受けては…死も同然。 その境界線を見分けるのが真贋の務めであり、力量だ。 オレはトナミを潰す気はねぇよ! 万里に継がせし会社を潰したりはしねぇ!」 「…康太…。 トナミは…も少しチャイニーズリスクを受ければ…再生など出来ない… 貴方が…来てくれて…救いを感じました…」 「中国を捨てる気はあるのか?」 「…投資した…総てを取れずに…棄てろ…と?」 「そうだ。引き際を見ないと、総て吸い取られ…トナミは…乗っ取られる…。 飛鳥井も…下手したら乗っ取りの対象だった…。 気を付けねぇと、知らねぇうちに頭だけすげ替えられちまうぜ…」 「決断を下す時だと?」 「決断を下すのはオレじゃねぇ! 飛鳥井なら決断を下すのはオレだ! トナミは若旦那、おめぇの会社だ! オレは助言と現実を知らせるしか出来ねぇよ」 引くか‥‥ 残るか‥‥ どちらも逝くは地獄の選択だった 先行投資を何処まで回収出来るか‥‥ 「大国からの撤退は…痛い…。 だけど…裸同然になる気はない。 見極めないと…総てを失いますね…。」 戸浪は‥‥覚悟を決めねばと腹を括った 「今、企業は捨てるか?残るか?の決断を余儀なくされている。 捨てにしては…投資が回収出来ていない…。 だがな、そこで迷ったら…吸収合併と言う名の…乗っ取りが行われる…。 ある日突然…頭だけすげ変えられて…なんてのが、まかり通る国だからな…。」 「苦渋の決断ですね…。 政治が安定しないと…国同士の対立でリスクを背負う…。」 「まぁ、あの国は安定してねぇからな…。 しかも、チャイニーズマフィアと呼ばれる奴等も勢力争いの真っ只中だ。 王家が残るか…李家が残るか…。 熾烈な潰し合いの最中だ…。 その煽りもある。 もっと強大な力を誇示するには、日本の企業の乗っ取り! 飛鳥井は標的にされていたよ! 接待費に…月々数百万円も使うバカがいたからな…。 チョロイと思われ、ヤクザからもチャイニーズマフィアからも目を着けられた 物見は、王家のお家芸だってのもあってな、飛鳥井の真贋は邪魔にされ…殺そうと暗殺も計画された 慎一が拷問を受けたのも…飛鳥井の家の間取りを教えろと…言われたのを断った所為だ…」 戸浪は唖然として…言葉をなくした 「若旦那、中国を捨てて台湾に行けば良い 中国よりも安全で関税もない…。 後フィリピンやタイ、日本に好意的な国に移る企業も増えている。 退き時だとオレは思う」 「そうですか。 切るにしても…倉庫の荷物は少しでも回収したいのですが…」 「ならば、李暁慶を使うしかねぇな! 若旦那と暁慶との利害は一致している 手を組め。」 「解りました。何処にいますか?暁慶は?」 「‥‥今、日本にいねぇ‥‥な。」 「えっ!何処へ…」 「アイツの拠点は中国本土じゃなく香港なんだよ! 香港は中国が総て管理できない地域が未だに残ってる 九龍城砦、言わばスラム街の生まれなんだよ、暁慶は。 人を殺す殺人兵器として育てられ…李の総統に拾われ育てられ養子になり、後継者になった 動くなら…九龍城砦に潜り…人知れず…だろ? 未だに…九龍城砦では…子供は殺しを教わり…殺し合い…生き残った…奴が…また殺し合う…殺戮の街だ…兵隊を求めるなら…格好の街だろ?」 現実離れした話が…戸浪に恐怖を抱かせる… 「若旦那、トロイの木馬って知ってるか?」 「あの中世の? 木馬の腹に人が隠れて…って話ですよね?」 「あれをやるんだよ! 若旦那、来週、始めに香港の九龍城砦から、荷物を日本へ運ぶ その荷物の中に暁慶や兵隊が潜り込み…日本国内の王家の所へ向かう…。そして、闇に紛れて…動く。 その時点で…王家は、半分消える… 反撃に出るのは、その後からだな。」 緻密に練られた話を…聞かされ…康太の恐ろしさを味わった… この男は…敵に回したら…総てが無くなるのを笑って見ているだろう… 「そして、来週頭に、オレは榊原の家族と中国に逝く 時を同じくして若旦那も中国に行き、その目でどちらが勝ったか確認しに逝く 部屋は前日から取っておく。 飛鳥井康太と戸浪海里が共に中国の地に下り立つ! それを良く想わない組織が知ったら、多分妨害するだろう オレ等を消そうと動くだろうかも知れねぇ 動いたヤツを暁慶が消したとしても それはもうオレらの範疇を越えてるって事で後は…知らないと通すしかねぇわな 闇に紛れて死神が…命を狩ったとしても、それはオレらの知らぬ所での出来事って事で! そして総てが片付いたら、若旦那、暁慶と手を組むと良い 中国の会社は暁慶にくれてやる変わりに、荷物は返還してもらえる様に手は打つと良い 暁慶は、トナミを土産に王家を牛耳り、トップに躍り出る 中国に留まってる荷物を総て回収出来れば、痛手は投資の分だけだろ? 会社の命を買ったと想えば安いだろ?」 「康太、何時中国へ飛べは宜しいですか?」 「オレが飛べば目立つ…からな若旦那と共には逝けねぇ 別々に逝って向こうで落ち合いましょう オレは家族旅行として中国に逝きます オレらより早く三木繁雄が飛んでくれます 議員はVIP待遇だからな、外交上危害は加えられねぇ! オレの特使として、三木は飛ぶ手筈を整えた。 そして、オレの懐刀、緑川一生を飛ばす! オレは伴侶の両親と中国観光しつつ合流します 中国で、榊清四郎、北城真矢は絶大な人気があんだよ! 今、二人が出た映画が中国で放映されてて人気を得てるんですよ。 オレが行く時は、総てが軌道に乗った頃合いを見て来週には飛びます」 総てが…緻密に計算された計画の上に乗っていたと言うのか… 「オレが何も無いのに、榊清四郎、北城真矢を同席すると思いました? 総てが、オレの絵図に敷かれた戦略だ!」 康太はそう言い、不敵に嗤った 戸浪は…康太に深々と頭を下げた 「若旦那、命懸けだからな、弥勒と龍騎のガードを着けてやる 例え地球の裏にいても…側にいるように守ってくれる…そうだろ?弥勒」 『あぁ。康太の頼みならな、俺は命に代えてでも、そなたを守ろう!約束しよう!』 弥勒は断言した 『我もこの命尽きようとも、康太との約束は守る…。約束しようぞ!』 と紫雲も約束した 康太は立ち上がり…天に手を翳し…星を詠んだ そして勝機を呼び込むと……… 無風の部屋に一陣の風が吹き上がり… 康太の髪が…風に靡いた 「弥勒!勝機を呼び込んだ! オレの絵図が、軌道に乗った!」 『ならば!動くしかねぇな!』 清四郎や真矢の前で…康太が嗤う その姿は…榊原に甘えている…康太ではなかった… これが、飛鳥井康太の…背負うべき世界なのだ! 清四郎は「康太、私で力になれるのなら君の力になります!」と想いを伝えた 真矢も「貴方の力になれるのなら、私も何としてでも動きます!」と決意を秘めた言葉を康太に送った 康太は戸浪に向き直った 「若旦那、今回の件が片付いて、元が取れたなら、頼みがある」 「私で聞ける事でしたら、貴方の頼みでしたら、何としてでも聞いてあげます!」 戸浪は康太に報いる言葉を贈った 「オレの伴侶が脚本を書く。 伴侶の父、榊清四郎を主演に、妻の真矢も起用して、榊清四郎の代表作…と言える時代劇を作る。 脚本家、倖田飛鳥が書き下ろす本格派の時代劇だ! その映画は当たる 損はねぇからな、スポンサーに名を連ねて欲しい。 飛鳥井建設もスポンサーとして名を上げる 名を上げた以上は失敗は出来ねぇ作品を、我が伴侶に書かせる。 悔いの残らぬ仕事をする。榊清四郎を絶対の役者にする作品を書きたいと、伊織は構想を膨らませてる。 オレはこの世の総てを敵に回してでも、成功させる。 このオレが命を懸けて、作らせる愛だ! 乗って欲しい。」 「貴方が動くなら…損はないでしょ! トナミ海運はどんな協力も惜しみません! 約束しましょう!」 康太はニカッと笑った 「ありがとう。若旦那。 オレはな、榊清四郎は、やはり時代劇でアカデミー賞を取るべきだと想うんだ でも今は時代劇は、見ない… だから、見る時代劇を作る。 まぁ、その前に、これを片付けねぇとな」 「はい。私は貴方がいる限り、諦めはしません! 私が敗北を感じる時は、貴方が背を向けし時! 貴方が私の力を求めるのであれば! 戸浪海里は、この命を擲ってでも! 貴方の力になりましょう!約束します!」 清四郎の目の前で…戸浪は康太と固い握手を交わした 康太は戸浪と握手を交わした後に、清四郎の方を向いた 「清四郎さん、中国に行きましょう! 貴方達に危害は加えさせません!安心して下さい。」 「ええ。君の行く時に、私達も行こう。」 「ありがとうございます。」 「本当に…君は…自分の事は…後回しで…」 清四郎は、康太を抱き締め…涙した 康太は清四郎の背中を撫でた 落ち着いて体を離すと、戸浪に向き直った 「若旦那、詳しい打ち合わせは時間を作りますので、中国に逝く前に月曜にホテル・ニューグランドへお越し下さい」 「予定に入れておきます」 「千里と万里は、田代に言って保護させときましたから。 片付くまで探さないように。」 「解りました。」 「では、月曜にな!」 戸浪は康太に深々と頭を下げた 「ならば、オレは帰るな。またな若旦那。」 「はい。ランチでも…と、言っても忙しそうですね…」 「予定があんだよ! 落ち着かねぇのに若旦那に悪い。」 「では、月曜に。お待ちしております。」 康太は立ち上がると、片手を上げた 榊原も康太と共に立ち上がると、清四郎と真矢、笙も立ち上がった そして、社長室の外に出るとエレベーターに乗った トナミ海運を出て車に乗り込むと、康太は榊原の膝に頭を置いて…丸くなって寝た 「康太、ファミレス行くんじゃないんですか?」 「ん?行く。伊織、電話しておいて」 榊原は、笑って路側帯に車を停めた そして、一生にこれから迎えに行きます…と告げ電話を切った 「父さん達はどうしますか?」 榊原が聞くと清四郎は 「私が奢ろう。」と楽しげに言った 「でも、夜には予定が入ってます。 遠出は無理ですよ?」 「そうか…なら、お前達が良く行くファミレスで良い。私が奢ろう。」 「皆、喜びます」 「康太は…大丈夫ですか?」 「康太は寝ていても人を動かしますからね こうしている間にも物凄い量の情報が操作され…動いてる…。 夜までに…情報が康太の目に入り…戦略を練る。 だから、休める時は、こうして寝かせてやるんです」 榊原の言葉に…清四郎も真矢も笙も……言葉を失った そして、飛鳥井の家の前に着くと、力哉の運転する車に既に乗り込み、一生達が待っていた 「何時ものファミレスです」 榊原が、言うと力哉はエンジンをかけ走り出した ファミレスに着くと康太を起こし店内に入っていく テーブルを二つくっ付け、座った 慎一が寝惚けた康太の顔を、御絞りで拭いた そして、目が醒めた所で、聡一郎がノートPCを康太に渡した 康太は胸ポケットから無線LANを取り出すと、物凄い速さでPCを、操り、キーボードを叩いて行った そして、榊原に手を差し出すと、榊原は鞄からタブレットを取り出し渡した PCとタブレットを操り、キーボードを叩く そして、目当てのものを見付けると一生に、タブレットを渡した 一生は受け取り見ると康太に 「俺に行けと?」と、問い質した 「そう。三木と一緒に飛んでくれ。 お前ば三木繁雄の秘書と言う事にしといた」 「で、俺に何をしろと?」 「デマ拡散。日本の聡一郎と、中国のお前とで繋がり遠隔操作で…情報を操る。 聡一郎の容姿は目立つからな、あの国にいれば目立ち過ぎる。 だから、お前が渡れ。 力哉も連れてって新婚旅行でも良いぞ」 「力哉は良い。俺は三木と共に動く 三木もお前の指令で動くんだろ?」 「そうだ。お前は、危ないからな日本大使館から出るな。 日本大使館の中に宿泊出来るように話は着けた。 それが軌道に乗ったら、オレは中国に渡る 清四郎さん達とな。 それで、ダメージを食った王家にトドメを刺しに行く! それを時間的にねぇかんな、来週末の土曜と日曜の2日で終わらせる そうしねぇと、出ていってやる宣言祭が危うくなる。」 「だわな…。よし! 水曜に飛べば良いんだろ?」 「そうだ。お前ば水曜に飛ぶ。 オレは土曜に飛ぶ。」 「解った!よし!食おうぜ!」 「おう!食うとするか。聡一郎、頼んどいたヤツ、タブレットに落としてくれ。」 康太はガツガツ食いながら、聡一郎に頼んだ 「解りました。」 聡一郎は、物凄い早さでキーボードを操作して、康太の望み通りの仕事をする。 康太はタブレットを見て…… PCを聡一郎から渡して貰い、キーボードを叩いた 「聡一郎、家に帰ったら、ここの部分もプリントアウトしといて!」 「解りました。」 康太はPCを聡一郎に、タブレットを榊原に渡すとジュースを啜った 「伊織、東青に電話してくれ…」 「何と?」 「これから、家に来るように」 「解りました。」 榊原は、席を立ち上がると、外へ電話に行った そして、電話から戻ると「来てくれます。」と告げた 「ありがとう。伊織、プリン、食いてぇ」 「解りました。待ってなさい。」 榊原は、注文に行った 「さてと、一生、何時もの大盛、頼みに行け!」 「了解。」 一生は、大盛ウインナーとポテトの盛り合わせを注文に行った 何時もの大盛が来ると、清四郎と真矢と笙の目の前で…まるで野生児の様にガッつく姿に…言葉をなくした… 笙は、苦笑した 「凄い…食欲だ…」思わず笙は呟いた 榊原は兄に「食べれる時に食べとかないと、康太が動く時、食事を抜かなきゃいけないなんて、しょっちゅうですからね、食べれる時は凄いんです」と説明した 「食べれる時に食べとかないと…って……」 想像が着かなかった… 「康太が動けば、事態も動く。 彼は勝機と共に動くので、ボヤボヤしてられないんですよ。 一瞬が命取りになりますからね。」 「伊織、帰らねぇと東青が来る」 「解りました! 本気だして食べるので少し待ちなさい!」 康太の言葉に、皆が本気を出して食べ、食事を終えた そして、席を立ち上がり、清四郎が支払いに行った 一生達は「えっ!何で!」と思わず聞いた 榊原は「今日は父さんが奢ってくれます!」た応えた 一生達は支払いを終えた清四郎に「御馳走になりました。」と頭を下げた 飛鳥井の家に着くと………その後に天宮が到着した 車から降りる天宮に康太は 「東青、悪かったな。 最近のオレはお前を酷使して…悪いと思う……。」 「いいえ。貴方の仕事は遣り甲斐が有ります。 総てが形に残る仕事は弁護士冥利に尽きます。」 「今回も…厄介な話になる。家に入るぞ。」 康太はそう言い、家に向かう 家の前に来ると、慎一が鍵を開けた 康太が家の中に入ると、慎一も入りキッチンへと進む 客にお茶を淹れる為だ。 康太達は応接間に入って行った 康太は何時もの席に座ると、足を組んだ 「聡一郎、東青に、さっきのをプリントアウトして見せてやってくれ」 「解りました」 聡一郎はノートPCをプリンターに繋ぎ、コピーをした コピーしたモノを天宮に見せると…天宮は唖然とした 「九条笙…って…」 「伊織の兄だ。そこにいる」 天宮は笙を見た 笙は、天宮を見ると、軽く頭を下げた 「後、3時間ちょいで、事務所の社長が来る」 「………私に…3時間で、やれと?」 「…………そう言う事に…なるかな…」 「…解りましたよ!遣りますよ! 本当に私の主は人使いの荒いお方だ!」 天宮はボヤいた 慎一は天宮の前にお茶を置いて 「それが、飛鳥井康太…ですので…ご容赦を。」と頭を下げた 天宮は「解っています。ですが、言いたくなりました。 我が主の横暴さは、愚痴でも言わないと…」 としみじみ呟いた 慎一も「……解ります。ですが、やはり、それが主ですので…諦めています」と告げた 天宮は、苦笑した 「ならば、私も本領発揮致します。」 天宮は燃えて…自信に満ちていた 「九条笙さん、私の側に来なさい! 貴方には幾つか聞かねばならぬ事が有ります!」 天宮が言うと、笙は、天宮の横に座った 康太は何も言わず、その光景を見ていた ほくそ笑みながら…… 天宮と笙が仕事している間、康太は微動だとしなかった 笙は……天宮から聞かされる事実に…驚愕して…目眩を覚える程だった… 清四郎と真矢は…それを静かに見守った 康太が動くなら…任せておけば大丈夫だから… 天宮は、PCを駆使して、仕事を始めた 康太は神野に電話を入れた 「今、来れるか?来れるなら来てくれ!」と。 神野は…行きます。と、告げた 電話を切ると、康太の電話が…直ぐ様鳴った 電話に出ると、須賀直人だった 笙の一件で…気になって、電話をくれたのだ 笙は、どうせ、神野の事務所に入れるだろうと予測して、電話を入れた 須賀の事務所と、神野の事務所は、色々と提携していたから…… 「須賀…オレは笙を何とかしてやりてぇ 今回…離婚が有って…自殺未遂した笙に、追い討ちをかけたように…事務所の遣い込み…なんて有ってな 名義は…笙の名義で…かなりの借金があんだよ。 そんなん許せるかよ…。 社長はバレてねぇと思ってるがな、笙が自殺未遂した事により、オレが調べあげてしまった…。 今夜、引導を、渡してやる…。」 須賀は康太の言葉に…唖然となり…飛鳥井に行きます…と、告げた 康太は須賀との電話を切ると 「役者は揃ったな。勝機は手中にある。」 と呟いた 「伊織、着替えて来るか! この礼服は堅苦しすぎる。 清四郎さんは、着物に着替えてらっしゃい 真矢さんも着物に。 笙さんは軽めのスーツに。 力哉、連れてって着替えさせて来い。 お前も帰ったら着替えろ。」 康太は力哉の頬を撫でながら話すと、力哉は嬉しそうに笑った 「解りました。 お送りして、着替えさせて来ます。」 「頼むな。昨夜の記者会見もそつなく手配したり、忙しかったろ? 済まねぇな。酷使させる。」 「構いませんよ。 僕は君の為にいるんですから! 君の為に動けないなら意味がない!」 康太は力哉を優しく抱き締め「頼むな」と言葉をかけた 力哉は康太を抱き締め「解りました」と立ち上がった 「清四郎さん、真矢さん、笙さん、着替えに行きますよ」 力哉に促され、三人は立ち上がった そして、着替えへと向かった 午後7時に、笙の事務所の社長がやって来た 須賀は相賀を伴い飛鳥井にやって来た 神野も小鳥遊と共に加わり、弁護士の天宮も揃って…準備万端となっていた 笙の事務所の社長は、その状況に…言葉もなかった そして、目の前には…一条隼人の時に… 記者会見に出ていた…飛鳥井康太が…いたとしたら…… 状況は…劣勢なのは目に見えて解った そんな社長の目の前に、天宮が…遣い込みの…書類を出されたら… その場にいるだけで…もう…堪えられない状況となった 事務所の社長は、全面的に…康太の言い分を飲むから…許してくれ…と、土下座した 天宮は事務所の資産を凍結して、破産をします!と告げた 九条笙の借金は、須賀と相賀が、神野の事務所が肩代わりすると、名乗り出てくれた その代わり、事務所のタレントを貰うと言う条件を着けた。 相賀と、須賀の、事務所に合うタレントを康太が見て、振り分けてくれるなら、借金の肩代わりをしても良い…と。 飛鳥井康太の人を見る目は、百発百中、間違わない その康太が事務所に合うタレントを選んでくれるのなら、払った借金以上の利益はもたらしてくれる核心が有るからだ! 康太は、その場でタレントを全員呼べ!と、告げた 「今、振り分けるから、持って帰れ! でないと、この社長は狡いから、他の事務所に売り飛ばすぜ!」 言われ…社長は青褪めた… 榊原に「今すぐタレンの顔写真入りの名簿を寄越しなさい!」と、迫った 天宮は「タレントも事務所の資産ですので、売り飛ばしたり、他と契約したら、その時点で横領で告発出来ます。」と助言した 「ならば、借金を肩代わりする事務所の許可なく、自由には出来ねぇ事となるのか!」 「そうですね。 資産は総て凍結しました。 タレントも事務所の資産に換算してありますのて、勝手にすれば、詐欺罪で即告訴の準備は出来てます」 天宮はそう言うとプリントアウトした、タレントの名簿を康太に渡した 「これが全員か?」 「ですね。今、この事務所にいるのは総勢20名のタレントです」 康太は名簿を見て、思案した 「債権は放棄した方が良いかもな…。 使えるタレントはいねぇ… これじゃぁ、笙に負債ばかり押し付ける事になるわ…。」 康太が呟くと…清四郎は、笙に、かけられた借金は幾らなのか聞いた 「3億。」 「3億!!またこれは……」 清四郎は、言葉を無くした 天宮は「資産を凍結しても1億も回収は出来ませんよ?どうしますか?」と康太に聞いた 「須賀、相賀、使えるタレントは一人もいねぇ。笙は破産させる。」 天宮は「解りました…。 手続きを取ります。」と告げた 笙は項垂れた 清四郎は「待って下さい!ならば、私が払います! 分割払いになりますが、私が払います!」と訴えた 康太は清四郎に「3億支払われるか?」と問い掛けた 清四郎は「親なれば己が借金を背負ったとしても子は助けるモノです!」と一歩も引く気はなく宣言した 真矢も「私も‥‥我が子の為なれば‥‥笙の借金は背負う覚悟です!」と覚悟を決めた瞳でそう言った 榊原は家族の頑固さは伊織で身にしみてる康太は、仕方なく…立ち上がると、慎一に 「中島遥斗と、喜多島愛翔を呼んで来てくれ」と、告げた 「解りました。今連れに行きます」 慎一は立ち上がり、力哉から車の鍵を渡してもらった 「須賀、相賀、そこの事務所には使える奴はいねぇが…… オレが今渡す奴を育てて見ねぇか? 1億に値する金の卵だぜ! 墜ちるまで墜ちた二人をオレは拾った そして、今、人間として再教育中だ。 顔だけなら凄く良いぜ! しかも使える頭も有るからな、化けるとすげぇぜ! 隼人も笙も、うかうかしてたら食われるぜ!」 榊原は、康太に「あの二人を…拾われたのですか…?」と尋ねた 「拾ったぜ。 オレは適材適所配置するためにいる。 捨てて良い人間なんていねぇってオレは言わなかったか? アイツ等以外は適当に他の学校に転校して適当に生きてんよ! でも、あの二人は適当に生きるのを拒み墜ちた。 落とすだけ堕ちさせて、何もかも無くした所でオレは拾って、人間として生きる生き方を…学ばせた。 今、一生の牧場に置いてある。少し待て」 暫くすると、慎一が中島遥斗と喜多島愛翔を連れて帰ってきた 応接間に入って来た二人に…榊原は、唖然となった 顔付きが…投げ槍で自暴自棄になっていた頃と変わり… 生き生きとして、変わっていたから… 須賀と相賀は、二人を見ると目を輝かせた 二人はそれ程の人材だった 「相賀、仲島遥斗《はると》だ。 柘植恭二に育てさせろ。 帰ってくるだろトナミから柘植は。 そしたら、育てさせろ。 コイツはハーフと言う容姿もさながら、持ち前の頭の良さも在る。 須賀、喜多島愛翔《まなと》だ。 お前の所で育てろ。 コイツは頭の回転は凄い。 お前が育てて、成長させろ お前の所の看板役者の西條要の後釜になれると、保証してやれる逸材だ これで、手を打つってくれねぇか?」 須賀は「芸名とか貴方が着けてくれますか?そしたら、肩代わりを致します。」と申し出た 「良いぜ!コイツの果てを見て決めてやる」 相賀も「私の方も芸名は、貴方が着けて下さい。 そうしたら、肩代わりは致します。 柘植が育てる…私の夢が叶いますな…。 木瀬は飛鳥井で図面を引き…名を上げている 篁は…そろそろ出始めましたね 苦悩を知った人間の顔になりましたね 私はこの子を柘植に渡して育てさせます 先日、柘植に逢いました。 私より貴方が気にかけて来て下さってると、聞きました 私が潰した人間を貴方は、見事に再生して育て上げて下さいました。 本当に有り難う御座いました。」 と康太に頭を下げた 中島遥斗は康太に頭をさげると 「貴方に拾ってもらえて…ホッとしてます。 貴方の役に立てるのなら、何処へ行っても頑張って仕事をします!」 と、礼儀正しく頭を下げた 喜多島愛翔も康太に頭を下げると 「何時か貴方に、すげぇじゃん!お前!って言って貰える役者になります。 貴方が見ていてくれるなら、血ヘドを吐いたって頑張る だから、見ていて…」 康太は立ち上がると喜多島と中島の胸を叩いた 「オレが送り出すお前達が、誰よりも劣る筈がねぇ! お前達は生まれ変わった 前を見て道を誤るなよ!オレはずっと見ていて、道を誤れば正しに行ってやる。 だから、振り返るな、前を見て歩いて行け! お前達はオレの切り札だ! 須賀、相賀、大切にしてやってくれ。」 須賀と相賀は、深々と頭を下げ 「解りました!」と、約束した 「相賀、須賀、本当に有り難う。 お前達が、気にかけて来てくれたから、拗れる事なく話し合いは着いた。 本当に有り難う。今後の事は、弁護士の天宮が、事務的な手続きは一切やってくれる 須賀、相賀、天宮の方に肩代わりのお金は、支払って下さい。 天宮はそれを受けて、資産を凍結して現金にして、3等分に肩代わりのお金を分けます。 端数はオレが出します。 榊原笙と、言う役者を生かして下さって、本当に有り難う御座いました。 神野、お前は笙を今後使え。 お二人が帰られた後に契約をする!良いな?」 神野は「はい。」と返事をした 「相賀、須賀、仲島と喜多島は、親から勘当され家もねぇ! 言いなりにならねぇ子供は要らねぇらしい 住む所は用意してやってくれ。」 「解りました。 総てはこちらで用意します。 で、この子の契約の立会人は誰が?」 須賀は康太に聞いた 「オレが、この二人の親だ! コイツらの親は、反抗して手の着けられない子供は要らねぇと言い捨てた。 オレが拾って育てて人間として再生した。 だから、親からも所有権は取り上げた。 実質上の後見人は飛鳥井康太に在る。」 「そうですか。 でしたら、正式な契約書を作成しますので、契約の席には立ち会って下さいね!」 「良いぜ!遥斗と愛翔がオレから巣立つんだからな。 立ち会わないでどうするよ? そして、そいつ等を教育したのは、緑川一生と慎一の兄弟だ。 立ち会わせるが良いか?」 「構いません。お願いします。 後日、連絡を入れるのでお願いします」 「良いけど、来週末は中国だぜ。 それより早くか遅くにしてくれ。」 康太は苦笑した 「お仕事で?」須賀は聞いた 「嫌、オレの伴侶の親と旅行にだ!」 絶対に違う!と思うが口には出さないでおいた 相賀は「では、天宮さん、正式な金額が出たら連絡を下さい。 契約金と言う名目でお金を出します。 良いですか?」と確認を取った 須賀も「私も契約金と言う形を取らせて下さい。 正式な金額が解りましたら支払いします。」と申し出た 天宮は、二人に携帯の直通番号が明記した名刺を渡した 「正式に資産を凍結して事務手続きを取ります。 来週の頭には連絡を取らさせて戴きます その時に書類を渡せます。」 天宮が言うと、康太は「本当に有り難う御座いました」と深々と頭を下げた そして、慌てて笙も立ち上がり頭を下げた 康太が頭を下げている理由は自分にあるのだから… 須賀と相賀は立ち上がると、康太に深々と頭を下げた そして、中島と喜多島を連れて行った

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