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第58話 真実

康太と一生が車に乗り込むと三木は、物凄いスピードで走った 掴まってないと…振り落とされる… 康太は必死で…踏ん張り…掴まった 「悪い…急いでたんで、走った」 連れてこられたのは三木の事務所でなく…ヒルトンホテル…だった ホテルの一室に通されてから…三木は口を開いた 「こんな場所に連れてきて悪かったな 事務所に…盗聴器が仕掛けてあった…信用ならねぇからな…」 三木が謂うと康太はやはり‥と呟いた 「元々はトナミに盗聴器が有ったんだよ! で、オレが三木を使うと言ったからな、マークされてんだよ!」 「誰かの横槍があって渡航が許可されねぇ…どうしたら良いんだよ…」 「どうやっても中国には行かさないって事か‥‥ まぁ仕方ねぇ!どの道、繁雄はスケープゴートだ。 護衛を着けて守ってもらうか、1週間位隠れてろよ」 「え!なんだよ!それは!!」 三木は驚いた顔で康太を見た 「トナミで聞いているのを承知して謂ったんだよ」 「お前の果てが狂ったりしねぇか?」 どうするんだよ!康太」 「どうもしなくて良い! 元々は目眩ましの為に着いた嘘だ 榊原の家族を巻き込むかよ!」 三木はソファーに座り…頭を抱えた 「解るように説明してくれ…」 「トナミの社長室には盗聴器が仕掛けてあったんだよ! それでオレは一応前に決めていた話をした 今頃…若旦那は盗聴器を外してると思う それに、若旦那は一人で先に、中国なんて行かせねぇ。 今、中国に行ってるのは暁慶だ! トロイの木馬をやったのは…… 日本じゃねぇ。 中国で、だ。 今頃…王家は…半分位になってんじゃねぇか? 闇に紛れて…荷物の中から出た死神が…魂を狩りに行った。」 「そう言う事は早く言いやがれ!」 「早く言うと、向こうを欺けねぇだろ?」 「で、どうするんだよ?」 「だから話は着いてるんだよ 待ってれば暁慶が総て手中に納めて来る筈だ オレらは日本でチョロチョロ動くフリをしただけだ」 「くそっ!やられたな!」 「だから、言ったろ? 貴史は役に立つって!」 「貴史が動いていたのかよ?」 「誰にも目をつけられずに動けるのは貴史しかいなかった 元々、ポシャる話を、わざわざ役者を揃えてする必要が在った 悪かったな三木、この埋め合わせはしてやるからな!」 三木は脱力して、仰け反った 「済まなかった…繁雄」 「良いさ。 って事は…一生も行かねぇのかよ?」 「お前が行けねぇのに出せるかよ…。 一人で敵地に送り出す様な、危ない橋を渡らせるかよ!」 「康太…」 「言える事もあれば、今回の様にお前まで欺く事もある! それもこれも、敵に悟られねぇ為だ オレは敵を騙す為ならば‥‥とことん身内も騙すかんな」 「俺はお前の駒だから好きに使ってかまわないさ!お前の為に在る存在だからな!」 三木は笑って康太を許した 「繁雄、オレには絶対に譲れねぇことがあんだよ! オレにはお前達や伊織の命の保証が最優先だ。」 「解ってるさ、お前がオレを軽んじたりはしねぇって解ってる」 康太は一生に目をやり 「一生…悪かったな」 「俺は良いさ、でも旦那は心配してるぞ! ちゃんと説明しとけよ!」 「そこなんだよな…」 「……伊織は引かねぇぞ!」 「頑固だかんなアイツは‥‥」 「それでもな説明しとけよ!」 一生は頑固な榊原の性格を鑑みて、説明しないと大暴れすると察した 三木も「そうだぞ!康太!トナミで中国に逝くって話をしたなら、ポシャったら何故だど心配するに決まってる!」と康太に謂った 「繁雄、説明しといて」 「嫌です!」 康太は三木に「ケチ!」と言い、べーっとした 三木は「なっ!一生!何とかしろよ!」と怒った 一生は困った顔で康太を見た 「今回は飛鳥井も無関係ではいらねぇからな‥‥最後の賭けがどう出るか…待つしかねぇか…。 だからな、まだ話せねぇわな」 康太はボヤき、立ち上がると 「ならな、三木、またな!」とヤケクソに告げた 「ちゃんと話し合えよ!」 「べーっ!」 「このぉ!一生ちゃんと面倒見とけよ!」 一生は「解ってるよ!じゃぁな!」と答えた 康太は三木に手を出すと 「帰りのタクシー代出しやがれ! オレは現金は持ってねぇんだよ!」 と文句を言った 三木は懐から財布を取り出すと、康太に1万円札を渡した 康太はその1万円を、ポケットに入れ 片手をあげて、部屋を出て行った ホテルを出て、タクシー乗り場に行こうとすると、黒塗りのベンツがホテルの前に停まっていた 康太は知らん顔して素通りしようとすると、慌てて榊原が、飛び出して来た 「康太…何処へ行く気ですか!」 康太を抱き締め…ベンツの後部座席のドアを開けると…康太の体を押し込めた 一生は、苦笑して…助手席に乗り込んだ 榊原は、康太を離さなかった 「康太…怒ってるの?」 「一生!てめぇGPS入れたままにしたろ?」 「旦那がオンにしといて…と、頼むからな…」 「オレは三木に1万円も踏んだくっちまったじゃねぇかよ!どうすんだよ!」 「………返しに行くのは面倒でっしゃろ?」 「一生、お前返してこいよ!」 「嫌だよ!康太が返してこいよ!」 「……面倒だ!伊織、やる!」 康太はポケットの1万円を榊原に渡した 「康太…僕にどうしろ…と?」 榊原は、思わず呟いた… 「貰っとけ。」 「康太…」 瑛太は…苦笑しながら…車を走らせた 榊原は、1万円をポケットにしまうと、康太に何があったのか話して下さい!と、迫った 「この時期に中国に来て欲しくない筋から、横槍が入り渡航の中止が出された こうなった以上、清四郎さん達と中国へ行こうにも渡航が許可されねぇ…。 三木も渡航が許可されねぇらしいからな。 それを伝える為にホテルまで来たんだよ! なんせ三木の事務所にも盗聴器が在ったらしいかんな 信用ならないとホテルまで来たんだよ」 康太は一気にさらっと勢いよく言った 「何かさらっと凄い事言ってませんか??」 「まぁ謂えと謂われたから謂っただけだ」 「君の果てが‥‥狂ってしまいましたか?」 「大丈夫だ、伊織 オレの果ては寸分違わず其処に在るかんな!」 「どうしても逝かなきゃ狂うなら、僕が何としてでも逝かせてあげます! 君の為に出来る事は総てやってあげます!」 榊原の覚悟を垣間見た 一生は「旦那ならやりそうで怖いやんか」と言い呟いた 「康太の為ならば空だって飛んで見せますとも!」 あぁ‥‥‥飛べるだろうな‥‥お前なら‥‥ 一生はもう何も言わないぞ!と黙った 瑛太は「康太…その横槍ってのがなくなったら…清四郎さん達を連れて逝ってあげなさい 凄く楽しみにして‥‥皆に言い触らしてましたよ」と、清四郎の想いを口にした… 「え…そんなに楽しそうに皆に言ってたのかよ?」 「ええ。我が子と妻と嫁と逝く楽しい旅行なんですよ! 是非とも飛鳥井のご家族も一緒に行きましょう!と誘われたばかりです」 「瑛兄!どうするのよ?」 「君が清四郎さん達を誘ったんでしょ?」 ………瑛太は榊原の家族の味方だった… 榊原は「康太…父には僕から言っておきましょうか?」と妻の想いを案じる 清四郎に泣かれる… それは、べそべそと泣かれるだろう‥‥ 瑛太は「伊織、榊原の家族と飛鳥井の家族とで旅行に逝く予定を立てとかねばなりませんよ」と、清四郎の悲しみの軽減を考えていた 「……………はい。考えておきます」 瑛太は康太に「めっ!」と怒った 康太のスマホがけたたましく鳴り響いた 着信の相手は…兵藤からだった 電話に出ると兵藤は 『政治情勢の悪化…が凄えらしぞ! 内乱にクーデターに暴動が勃発中だ』 「なら当分は空港は閉鎖か?」 『しかねぇわな』 「助かった貴史」 兵藤は『俺に出来る事ならな、やってやるさ』笑って電話を切った 総ては、横槍の入らぬ明日を築く為‥ 強固な明日を手に入れる為 李 暁慶 明日を手中に納めて帰って来い‥‥ 康太は飛鳥井の家に着くと、瑛太の車から下りて榊原に 「弥勒の所へ乗せて逝ってくれ」と頼んだ 榊原はキーを取り出すと「解りました、乗せて逝きます!」と言い自分の車のロックを解除した そして助手席のドアを開けると康太を乗せて、榊原は運転席に乗り込むと車を走らせた 弥勒の家に着くと…弥勒は外に出ていた 康太は榊原と共に車から下りた 弥勒は「中国情勢か?康太」と問い掛けた 「あぁ、貴史から空港閉鎖の連絡を受けた」 弥勒は「まぁ立ち話もなんだ、道場へ入るがよい!」と言い 道場の中へ入って行った 康太と榊原が座布団の上に座ると弥勒は話し出した 「空港を牛耳っていたのな、王家だった それを李家が奪取すべく動いたと謂う事だろ?」とさらっと言った 「暁慶は…見事…王家を討ったのか…」 「そう謂う事になるだろうな 暁慶が王家を、ほぼ壊滅させた 空港を閉鎖したままなのは、壊滅した王家と、今更…お前が話す必要はない、と言う事だろ? 暁慶は月曜には日本に堂々と帰って、戸浪との会食に姿を現し…今後の話をするだろう 暁慶を中国に下ろしたのはお前だ! お前の力がないと…暁慶は……闇に葬られていた…。 後、お前が九曜の力を使えばこそ!勝機を招いた だから、混乱した中国に来るな!と、言う事だ! 今後も暁慶は、お前の影となり動く… お前に命をくれてやる…と、言ってたからな、多分…わざわざ中国に来るな…と言う事だ」 弥勒は康太に…状況を…話してやった そして、しみじみと呟いた 「しかし…お前が…滅びの九曜と知り合いだとは…」 「オレの切り札だ! しかも…九曜は滅んじゃいねぇぜ! 血は絶えちゃいねぇ…」 「あの力…世界を欲しいままに動かせる…王家と同等…嫌‥‥それ以上の力だ。」 「元は1つの同じ呪術…。 九曜は大陸へ流れ、王家は本土に留まった。それだけだ!」 「九曜…あれ程の人間が…」 「あれ程の力だから…裏へと消えた アイツの欲しいのは権力でも名声でもねぇ! 普通の生活だ!」 「しかし…お前が……隠し持ってるとはな…」 「オレは適材適所人を配置するのが努め 九曜は、この先…ひっそりと生きるが定め… 忘れろ…」 「何処で…知り合ったんだ…?」 「学校に…いたぜ。 九曜最後の生き残り…九曜海路は、総てを捨てて、普通に生きる道を選んだ 九曜の名を捨て、婿養子に入り…神楽と…名を変えた… 事実上の……九曜一族の終焉だ 神楽四季…は、九曜海路の息子だ そして……神楽四季は…海路の心配を…的中させ…産まれてしまった子供だ 父より強い力持ちでこの世に出た…。 四季の行く末を…安否した海路が源右衛門に託した 海路は……息を引き取った後にも…源右衛門に頼みに来た…程…危惧していた」 榊原は、理事長の姿を思い浮かべ…絶句した 「神楽四季は…この先…子は残さない…。 神楽四季の後継者は飛鳥井音弥が養子に入り継ぐ。 音弥が神楽の子孫を…産み…神楽を繋げる… 九曜の血は…そこで、途絶える… 一応な…。」 「………一応?何故?一応?」 「九曜海路は、九曜石と言う己の能力を閉じ込めし石を造って…持たせし子供がいるからな…。 神楽に婿養子に行く前の…子供だ…。」 「…誰だ?それは?」 「それはナイショ…って事で…。」 「…康太…教えてくれないと…」 「教えないと?」 「泣くからな!」 弥勒は……康太に脅しを入れた 弥勒に泣かれるのは…むさ苦しく…困る… 「仕方ねぇなぁ…。 九曜海路の子供は今は亡き、神野譲二…神野の父親だ…。 一条隼人の事務所の社長、神野晟雅の父親だ」 「あんな近くに…九曜の血を引く人間がいたとは…」 弥勒は…思わず呟いた 「神野譲二は…父親譲りの力持ち故に…事務所を大きく出来た…。 人を見る目は確かで、思い通りに事を運べる力が有ったから…。 神野は、そんな力はねぇよ! アイツは心の底から父親に恐怖を抱いてる… アイツが…男に走るのは…父親の血を残さない為……もある 無意識に…神野は血の定めをかぎ分けている そして…神野譲二は、九曜の力を秘めた石を渡したのは…神野ではなく…一条隼人に、だった 一緒に過ごせぬ我が子を守る御守りにしようと渡した 九曜石を手にする者は…願いの分だけ…その命を削っていると…知らねぇ…と、自分の寿命を縮めている様なもんだ だから、神野譲二は若くして…亡くなった 隼人は…石の存在は…知らなかった… だけど、知らずに手にすれば…逃れられない定めを受ける… オレは、隼人の総てを背負う代わりに…石を手離させた……。 そして、九曜石は……黄泉に行った時に…閻魔にくれてやった。床の間に飾ると喜んでたな。」 弥勒は…「マジかよ…」とボヤいた 榊原は…どうして命を懸けて隼人を…あんなにも守るのかを…やっと納得出来た… 「隼人の力は…オレが封印した。 隼人は…神楽四季と同等…嫌…それ以上の力を秘めていた…。 その男の子供だ…生まれし命は力を継ぐ。 隼人の子供に琴音を転生させたのは…受け継ぐ血を分散するため…。 九曜の血をまともに受けて生まれし子供の力に匹敵するのは…飛鳥井瑛太の血を分けし子供の琴音だ。 琴音は…女として生まれたが…力持ちだった 九曜の器に琴音の魂を入れたのは…力を分散させ…曲がらない為だ…。 短く生きた琴音の魂を憐れにも思った…瑛兄の子供だからな! だから、琴音を転生させた。 御厨もそうだが…九曜も…何処かで密かに…受け継がれ…拡散する…血と言うモノは…簡単には切れねぇと言う訳だ…。」 「それが……総てなのか?」 弥勒は問い質した 「そうだ!今回は…神楽四季に頼んで…力を使ってもらい…妖術をかけた暁慶を、荷物に紛れさせ…中国に送った…。 何たって妖術は得意分野の王家だ…… 弥勒や龍騎の妖術なんて見破られてしまう 飛鳥井源右衛門の施した封印をオレは解いて…力を使わせた 神楽四季は、知っていた…。 封印を掛けられた力の事も…父親が九曜一族の最後の人間だったと言う事も…。 そして、総て終わった後、オレは新しく封印をかけた。 神楽四季の力が今後出る事の無い様に…オレが封印をかけた。」 「知っていたのか…? ……その気になれば… 世界が手に入るのにな……」 「海路は…家族が欲しかったんだよ 力より…抱き締めてくれる家族が欲しかった そして、四季は…亡くした恋人が…側に居てくれれば…それで良かったんだよ… 力なんて…無くても…それさえ手にはいれば…幸せなんだよ」 「康太と同じか?」 「そうだ!オレは伊織さえいれば…何も要らねぇからな!」 弥勒は笑って 「俺もお前が幸せに笑っているならば…何も要らない…」 「弥勒…」 「九曜一族は終焉を迎えた。 それに変わりはねぇって事で!」 「そうだ。九曜は跡形もなく消えた… 嫌、九曜海路が消した この世界だって好き勝手に出来る力を要らぬと…捨て去って…往生した後は…黄泉に渡った……変わり者だ。 黄泉から魔界へ渡って、九曜神と呼ばれし神になる 皮肉だな…捨てて来たのに…その神になるとは…」 「九曜神であられるか…… なんともまぁ…皮肉だのぉ」 弥勒は笑った 「今回も助かった。ありがとな弥勒。」 弥勒は何も言わずに笑った 榊原は立ち上がると、康太を弥勒に渡した 弥勒は康太を抱き締めると… 「俺もお前を中国に行かせたくはなかった…」 「弥勒もかよ…」 「お前は無鉄砲だからな、危ないと解っていても…行く…」 「仕方ねぇよ!それがオレだからよぉ!」 「そうだが…敢えて戦地に送り出したい奴はいねぇだろ…?」 「解ってるよ、弥勒! 帰ったらオレの遅れに遅れた誕生日がある。」 「ならば、俺も、遅れた誕生日のプレゼントを遣ろう!」 弥勒は康太の耳に…ブチッと穴を開けると、ポケットから取り出したピアスを康太に嵌めた 「っ…痛てぇ!」 「これは……お前の身に何かあれば身代わりになる…… 聖地の翡翠で作りし石で出来たピアスだ! 何かの役に立つであろうて」 弥勒は康太を榊原へと返すと、手をふって、道場を出ていった 康太と榊原は弥勒の道場を出て飛鳥井の家へと還って逝った

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