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第59話 宴
飛鳥井の家に着くと、榊原は康太の手を取り
「もうじき、皆が来ますよ?」と謂った
「伊織…腹減った…」
「我慢出来ますか?」
今宵は康太の遅れに遅れた誕生日のお祝いをする予定だった
「…………する。」
榊原は康太の着替えの為に、寝室へと連れて行った
ハーフパンツとモコモコのパーカーを着せて、榊原も普段着と着替えた
榊原は、康太を抱き締めたままベッドに座ると…開けたばかりのピアスに接吻した
緑色の…綺麗な光が放つ石が綺麗だった
「伊織…みんな来る…」
「解ってますよ。
君を手にしたら離したくなくなってしまったんです
君は危ない事ばかりしますからね‥‥」
「…伊織…それでも遣らねぇといけねぇ時もある…」
「解ってますよ。
君は飛鳥井の真贋、僕は一度でも君の動きを止めた事がありますか?」
康太は榊原の首に腕を回した
そして耳元に「ねぇよ!お前の愛がオレを動かしてくれてんだ!
愛してる伊織…お前だけしか愛せねぇ」と囁いた
榊原は康太の唇に…息も付かない…接吻をした
そして、唇を離すと、笑って康太を抱き上げた
応接間に行くと一生も着替えて、ソファーに座っていた
康太に隼人が抱き着いた…
慎一も…抱き着いて…
聡一郎は、康太の膝に顔を埋めた
「あんだよ?何かあんのかよ?」
慎一が「康太が…今回は一生だけ連れてったから………
隼人も聡一郎も…ショックで…落ち込んでたんですよ?
俺も…何で…留守番だったんです…
俺の主は貴方だけだ!なのに…」と言い…泣いた
どいつも!こいつも!
「一生を、連れてったのは、アイツに中国へ渡って貰う予定だったからだ!
でもポシャった。
オレは何処へも行かねぇよ……。
泣くな…もうじき客も来るし、オレに珈琲でも入れてきてくれ」
慎一は立ち上がると「ホットミルクでも持ってきます」と告げた
「珈琲だってばよぉ!」
康太は文句を謂った
「伊織に飲まれてしまいますよ?」
的確に謂う慎一に康太は折れるしかなかった
「それは嫌だもんよー…」
「なら、ミルクで我慢なさい。」
康太は頷いた
慎一が淹れてくれたミルクを飲み終わる頃、蒼太と矢野がやって来た
矢野は走って来ると康太に抱き着いた
「遅くなりましたが、誕生日おめでとう。
君に誕生日プレゼントだよ!
あーっ!何で…それ……翡翠だよね……?」
矢野は泣きそうな顔をして康太を見た
蒼太は、矢野の側に行くと
「康太…宙夢は伊織の血で作ったピアスを作って来たんですよ…。
伊織には康太の血で出来たピアスを…お揃いで着けるように…作って来たんですよ…」
「オレの血?何時取ったんだよ?」
「眠り姫の様に寝てる時に伊織に言ったら、許してくれました」
宙夢は……萎れて…くしゅん…としていた
榊原が「反対側があるでしょ?それか並んで入れればOKですからね。」と慰めた
矢野は康太を見詰め…「入れてくれる?」と聞いた
康太は「入れるしかねぇだろ?伊織、入れてくれ。」と頼んだ
矢野は嬉しそうに笑った
康太は矢野の頬にキスして「幸せか?」と聞いた
「幸せですよ。
でもね、案外…蒼太は使えない男なのが解りました」と矢野は笑った
蒼太が「宙夢ぅ~」名を呼ぶのを無視して、矢野は楽しそうに笑っていた
榊原は、康太の翡翠のピアスの上を消毒し…ピアッサーで穴を開けてから…榊原の血で作ったピアスを入れた
「っ…今日二度目かよ…」
ボヤくと…榊原が開けたばかりのピアスに接吻した
「痛てぇよ!伊織!」
「僕にも入れて。」
康太の唇にキスして榊原が囁く
そして手には…ピアッサーが握らされていた
仕方なく消毒してから、康太と同じ場所に…穴を開け、康太の血で出来たピアスを入れた
「これで、君と僕は離れませんよ」
誰が見てても…誰が居ても…お構いなしで…榊原は……康太に接吻した
呆れて…一生が引き剥がすと…榊原は笑っていた
「んとに、性格悪いな伊織は…」
一生がボヤくのもお構いなしで
「失礼な!宙夢!ありがとう! 康太とお揃いです!康太の血で出来てるなんて、幸せ過ぎです…」
と、矢野を抱き締めバシバシと叩いた
蒼太は…それを見て苦笑した
恵太と栗田が…やって来て…康太に、榊原とお揃いのカフスボタンをプレゼントした
榊原のカフスは康太の誕生石で、康太のカフスは榊原の誕生石で出来た特注品だった
「恵兄…栗田…ありがとな。」
「君に贈るんだから…
吟味しまくりました。
蒼太に電話したら、宙夢を紹介してくれ、手伝ってもらいました。」
「恵兄も近くに越してくるか?
蒼兄の隣の部屋が空いてたな…越してくるか?買ってやるぞ!」
「康太…今のマンションだって君が買ってくれたんだよ?」
「大丈夫だ!
資産は運用してこそ価値がある
あの部屋は、賃貸で出せば良い。
親と兄弟は近くに住んだ方が良いぜ!」
康太は榊原に抱き着き…嬉しそうに…言うと
榊原に「無理強いはダメですよ…」とたしなめられた
「恵兄が決めれば良いんだけど…言ってみたかっただけじゃん」
康太は唇を尖らせた
その唇に榊原は、キスして「考えといて下さいね」と恵太に言った
恵太は困った顔を栗田に見せると…栗田が…
「俺を虐めて楽しんでます?」と康太に聞いた
「まさか…虐めるなら、くれてやるかよ!」
康太は笑った
笑って榊原の膝の上に乗って、擦り擦りしていた
榊原は笑って康太を抱き締める…何時もの風景がそこに在った
一生が「おめぇらは暑苦しいんだよ!」とボヤくと慎一と聡一郎に殴られた
「康太贔屓が…増えてるやん…」
殴られた頭をさすさすしてると、康太が一生の頭を抱き締め…旋毛にキスを落とした
応接間が笑い声で包まれると、玲香と清隆、源右衛門と、瑛太、京香が現れて何時もの席に座った
そして、清四郎、真矢、笙、神野と小鳥遊が加わり、乾杯がされた
料理を並べ、酒を酌み交わし、親子が…兄弟が…同じ時間を共有する…
玲香は、我が子を見ていた…
恋人や妻を得て…巣立った子供が…こうして集まり同じ時間を過ごす
そして……康太の友がいて…仲間がいて…
繋がって行く……
『人は縁《 えん 》を結わえて縁《 えにし 》を結ぶんだよ』
と、言う康太の言葉が…今更ながらに…思い出された…
デリバリを頼み…お寿司を頼み、楽しい時間は流れて行った。
「伊織…暑い…こんな服…嫌だもんよー」
康太は我が儘言って、モコモコのパーカーを脱ぎ捨てた
「てめぇ、直ぐに脱ぐの止めろ!」
一生が噛み付くと
「なら、一生の服で良いや、貸せ!」と、康太は一生の服を脱がしにかかった
「止めろ!バカ!触んな!」
一生は、抵抗し…榊原は、一生から康太を剥がし、ソファーに座らせた
「半袖のTシャツを、持ってくるので大人しくしてなさい!」
康太は頷いた
榊原は、モコモコなパーカーを持っていくと、康太は惜しげもなく裸を晒していた
キスマークの散らばった体に…乳首とヘソのピアスは、目立った
榊原が、康太のTシャツを持ってくると、康太に着せた
榊原は、立ち上がると…一例をした
「康太の誕生日を、こんなに盛大にやって戴いて有り難う御座います。
康太ですが、何とか、上へ上がる事が決まりました。4月からは大学生です。」
と、皆に報告した
蒼太と恵太は…良かった…と、胸を撫で下ろした
康太は「蒼兄、恵兄、見てみろよ。
母ちゃんや父ちゃん、じぃちゃんのあの幸せそうな顔を…。
家族が揃ってんだぜ!側に居てやれよ!」と、蒼太と恵太に話した
栗田は…神野と酒を飲んでいた
神野は瑛太と桜林時代の友だと…言った
そこへ瑛太も乱入して、蒼太を引き摺って、酒を飲み始めた
栗田は…すっかり、飛鳥井の毒気に遣られて…瑛太とも打ち解けて話をしていた
笙は、小鳥遊や力哉に掴まり…飲まされた
矢野は飲めないから、隼人や聡一郎達と談笑して…
康太は……やはり、食い物で…瑛太とバトルを繰り広げ…
榊原と、瑛太の口喧嘩に発展していった…
瑛太が駄々っ子なのがビックリな…恵太は…徐々に馴れ…そのうち気にならなくなった
そして栗田に「飛鳥井の側に来たい!両親や兄弟のいる場所に来たい!」と泣いた
我慢してたのだ…
もう……戻れないと…我慢して…耐えていた
栗田は…恵太を抱き締めた…
哀しませる気は無いのだが…敷居が高いのだ…
「恵兄、やっぱし、近くに越して来いよ
飛鳥井の扉は開かれてる…昔とは違う
飛鳥井は、変わる…時代遅れな…しきたりは無くさねぇとな…。
でも、飛鳥井の家には住まわす事は出来ねぇ…。
一人を許せば…皆を許さねばならなくなり、収集が出来ねぇ様な事態は許されねぇんだ!
昔…熾烈な遺産相続で揉め……殺し合いになった…。
それ以降…飛鳥井を出る者は…切り捨てて行かねばならくなった
何処かで線引きをしねぇとな…いけねぇんだ
家には入れねぇが…側には置いてやる
住む場所も用意してやる
それが……オレの愛だ!側に来い!
そして、遊びに来れば良い。
そこまでは…オレは取り上げる気はねぇ!
蒼太と恵太にとって、飛鳥井清隆と玲香は、親ではないのか?
親に会いに来るのに…敷居は度外視しろ」
康太はそう言い笑った
「恵兄、近くに越していても…遊びに来ねぇ奴も要るんだぜ!
飛鳥井の家を泣きながら見上げる癖によぉ、家には来ねぇ奴が、此処にいんだよ!」
康太は蒼太を掴んで言うと、蒼太は、情けない顔をした
「康太…」
「蒼太と恵太は、兄弟の癖に、あまり話した事がねぇんだよ!
そして、悠太は兄弟の…誰とも接触しねぇ存在だった。
瑛兄なんか、オレを溺愛しすぎて兄弟と過ごす時間を…なくしたからな、この機会に話せ。
意外な何かが見えてくんぜ!
恵太は…蒼太と宙夢と近い。
気が合う筈だぜ
栗田は神野や瑛太と気が合う筈だ
そして、何より、京香は、お前の味方にしとけ!
京香を知れば、オレの意図が見えてくる
京香はオレのモノなら総てを愛す
京香!来い!」
康太が言うと、京香は康太のソファーの前に座った
康太を見上げる顔が可愛かった
遠くから見ると…ツンと気高く美人で近寄りがたかった
「京香、恵太と栗田だ!
恵太は知ってんだろ?」
「話した事は一度も無いのだ…
私は嫌われてるからな…」
「違げぇよ!お前が近寄り難い美人だと思ってんだよ?」
康太は京香の顎を上げると…頬を撫でた
「だから、笑ってろと言ったろ?」
「簡単には笑えないのだ…」
「オレがキスしてやっから笑え」
「だったら、笑う」
康太は京香に軽くチュッとキスすると、蒼太と矢野…恵太と栗田は固まった
京香は、艶やかに笑った
「恵太、栗田、会社で私を見ても逃げるな!
たまには話しかけてくれ!」
栗田は「副社長婦人に気安くは…話し掛けられませんよ…」と、困って…言った
恵太は「義姉さん…貴女とは家にいた時から…話した事は無かったですね」としみじみと言葉にした
康太は「恵太、京香と呼び捨てて良いぜ!」と言ってやった
「京香は、親はいねぇんだ。
姉妹も嫁いで簡単には会いに行けねぇ。
飛鳥井の家族が京香の家族なんだ。
オレが京香に用意した、家族だ!
大切にしてやっくれ」
恵太は「京香は…康太しか口聞かないから…話ずらかった…」とボヤいた
「恵兄…何もかも無くした京香を拾ったのは…オレだからな…。
雛が産まれた時のモノを親と認証するように…京香はオレが絶対だった…。
でもな、京香は変わったぜ
オレの総てを京香は愛せる様になった
飛鳥井の、オレの家族や伴侶や仲間を受け入れて…1つの家族にしてくれた
飛鳥井の女だよ、京香は。」
康太がそう言うと…京香は泣いた
ボロボロ涙を流し…泣いた
「泣くな…京香。
お前の家族だろ?
お前の欲しかった家族をオレがくれてやったろ?」
「康太…」
康太の膝に顔を埋める京香は…昔…一緒に住んでいた頃と違った
「顔を上げろ。
そして、話をしろ。
お前の家族だろ?お前がもてなせ。」
京香は顔を上げるとニカッと笑って親指を立てた
「康太、我は日々努力して、日々己の足であるいておる!
もう昔の我ではない!
と謂う事で、栗田と恵太、今後は気兼ねなく声を掛けるのじゃ!よいな!」
近寄りがたい雰囲気はどこぞへやら‥‥
京香は人懐っこい雰囲気を醸し出し頼りがいのある飛鳥井の女になっていた
恵太と栗田はそんな京香と蟠りもなく、けっこう話が弾んでいた
蒼太と矢野も、それに加わり…それは1つの家族の姿になっていた
ソファーに座っていると…ヒョイと体が持ち上げられ、仰け反り見ると、瑛太だった
「京香ばかり構って狡い!」
「瑛兄、我が儘言うな…」
「京香にはあげません!」
瑛太が言うと、京香は、ずるいのだ!と瑛太!と反論した
「瑛太はケチなのだ!」と京香が愚痴る
そして、ちゃっかりお酒を飲んでる源右衛門を見付けると…説教をした
「お爺様、薄いのを飲んでよいとは謂ったが、沢山飲んでよいとは謂ってはおらんぞ!」
蛇に睨まれた蛙宜しく源右衛門は
「薮蛇だわい!」とボヤいた
恵太は「京香って愉快な奴なんだな…」と改めて知った事を口にした
康太は「瑛兄と京香は…オレを一番愛してるんだよ…。
この世で一番……オレを愛してる夫婦なんだよ…。
総てのベクトルがオレへと向いている…。
困った夫婦なんだよ!」と瑛太に言った
恵太と栗田は…京香のあの康太の言うことしか聞かない姿を見てたら…納得出来た
榊原は、立ち上がると、康太を奪回して、膝の上に乗せて…康太を取られないようにした
瑛太は榊原に「ケチ!」と投げ掛けた
「義兄さん…康太は僕のモノです!」
応戦して…喧嘩する姿は…大人げなかった…
笙は、榊原の膝から康太を奪うと…餌付けした
「康太、あんなんは放っといて、食べなさい。」
「あっ!そうだ!
神野に隼人のCMの映像を見せねぇとな!
慎一、用意してくれ!
笙、座って見ててくれ!
近いうちにお前と隼人のCMも撮るかんな」
康太は榊原の横に座ると、皆も、ちゃんとソファーに座った
慎一と一生が、サンルームのカーテンを閉めて、照明を落とした
薄暗い部屋に、映像のセットをすると、カーテンをスクリーンにして、映像が写し出された
隼人が森の様な観葉植物の中から…裸の赤ん坊を腕に抱き出てくるシーンから、始まった
そして、隼人は父親の顔をして…ソファーに座って、その子を優しく撫でた
優しい空間が…そこに在った…
そして最後に隼人が優しく笑いかけた
何気ない…空間の一部を切り取った様な作品だが…
優しさに溢れ…愛があった…
玲香は「隼人の腕の子は流生か?」と問い掛けた
「そう。月曜日に、若旦那に持ってってやるんだ!」
と、康太は優しい顔をして…笑った
清四郎は「優しいCMですね。」と言うと
神野は「康太の造るCMは、常に優しい映像ですよ。
彼の造る世界は優しさに満ち溢れ…見るものを癒す。」
と絶賛した
康太は笙に「笙のも近いうちに撮ろうな。仕事しねぇと、神野んとこの借金が増える一方だからな」と笑った
笙は「隼人のCMを見ると、僕も康太に撮って貰いたいと想う。」と想いを語った
「撮ってやんよ。」
康太がそう言うと清四郎も
「私も撮って欲しいです!
笙ばかり狡い…」と言い
真矢も「私も撮って欲しいわ…。」と乗り気で言って来た
「榊原一家でCM撮りますか?
神野、家族のCMの話を取ってらっしゃい」
「家族のCM…ですか?
清四郎さんも真矢さんも事務所違いますよ?」
と、小鳥遊が…一番の問題を…口にした
「清四郎さんも真矢さんも、事務所に聞いてきてOKなら、仕事を探して来ます!」
と、神野は打開策を提示した
清四郎と真矢は、かなり乗り気で、OKなら必ず伊織も入れて撮ってくださいよ!と、念を押した
榊原は、嫌な顔をして…どうせそんなに簡単にはいかないから…
まぁ良いですが…と想って何も言わなかった
………後で後悔するとも知らずに…
夜も更け…楽しい時間と言うのは過ぎるのが早く…
康太は日付の変わる前に、慎一を急かして何かを取りに行かせた
そして、慎一が戻ると、康太は立ち上がり、サンルームの窓ガラスを背にして立った
康太の後に、榊原、一生、聡一郎、隼人、慎一、悠太、力哉、そして、瑛太に京香、源右衛門もが並んだ
「飛鳥井清隆、玲香、此処へ来て。」
康太が呼ぶと、二人は康太の前に立った
榊原が代表して
「お二人は飛鳥井の為に生きて来られた
日々、飛鳥井の為だけに、生きて来られた
ですが、飛鳥井も新しい命を授かり…変わって行きます。
ですから、清隆、玲香夫妻には日頃の感謝を込めて、温泉旅行をプレゼントします!
先程、我が家族、清四郎、真矢からも、蒼太と宙夢と、恵太と栗田からもカンパを戴きました。
家族全員からのプレゼントです!
飛鳥井の想いです!
受け取り旅行に行ってきなさい!
これが、旅券です!」
榊原は、清隆と玲香にそれを渡した
「父ちゃん、母ちゃん、家族や仲間からの想いだ!
これをやりたくて、伊織に無理言って誕生日パーティーを開いてもらった
家族全員、そして家族も同然の人間が集まった時に…
オレは貴方達に感謝の言葉を言いたかった行ってきて楽しんでくれ。
春休みに入れば、オレも伊織もフルに会社に行ける。
オレの仲間も力哉も力を貸してくれる!
行って来いよ!新婚に戻ってな。」
玲香は清隆に抱き着いて…泣いていた
気丈な…母親の泣く姿を…瑛太も蒼太も恵太も…悠太も知らなかった…
弱々しく泣く姿は…日頃の…その面影はなく…儚かった
清隆も……泣いていた
寡黙で…常に笑顔の姿の…裏に…苦悩が垣間見れる…そんな涙だった
瑛太も蒼太も恵太も悠太も…親の本当の姿は
…見ていなかったと…言うのか…?
瑛太は…母を抱き締めた
蒼太も父と母を抱き締めた
恵太も…両親に抱き着いた
悠太も…その上に重なり…抱き締めた
玲香は、顔を上げると
「ありがとう…」と言葉にした
清隆も康太に「ありがとう…」と言葉にした
康太は清四郎の側に行くと
「清四郎さんの誕生日にも旅行をプレゼントしますよ」と言った
「康太、私は…君達といられるなら…それで良い…。
君と出会っていればこその想いなんだよ?君が私にくれた…家族であり…想いなんだか…」
清四郎は…康太を抱き締め…泣いた
康太はよしよし…と清四郎の背中を撫でた
真矢はそれを見て「大きな子供……」と笑った
康太が…清四郎の心の師匠なのだ…
清四郎を変えたのは康太なのだ…康太を得て
…榊原の家も変わった
その康太への想いを形にしたのが…出産と言う……集大成だった
この先も…康太と生きていくと言う……証だった
真矢も康太を抱き締め…泣いた
「真矢さんも泣きますか」
と康太は真矢の背中も撫でた
優しい時間が流れ……その夜は…名残惜しくも…お開きになった
恵太と栗田は、客間に泊まり、清四郎の家族は、榊原が、送り、
神野と小鳥遊と蒼太と矢野は、一生が、送っていった
客間へと行く栗田に康太は耳を貸せと言うと、栗田は康太の横に腰を折って
耳を近付けた
「手始めに…飛鳥井の客間で恵太を抱け!
そしたら、ハードルが縮まるぞ!」
「康太…本気で言ってますか?」
「伊織が、そう言ってた。
オレを飛鳥井の家で抱いた時に…ハードルがすげぇ低くなったって。まぁ頑張れ!」
康太は、栗田の肩を叩き…通り過ぎていった
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