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第66話 卒業式制作
あー喉がガラガラだ…と、カラオケ屋から出た康太がボヤいた
榊原が「もう……朝じゃないですか」と嘆いた
一生や慎一、聡一郎は、カラオケに来れば夜通し…なのは予想が着いていた
兵藤は…こんなに疲れたけど…スッキリしたのは、始めてだった
康太は…力哉を呼んだ
暫くすると力哉が迎えに来てくれ、飛鳥井の家へと帰っていった
力哉の車は10人乗りだが…何だか狭かった
飛鳥井の家へ着くと、全員、家の中に入っていった
「腹減った…」
康太がボヤくと、兵藤は、嘘ぉ…あんなに食ったのに…もう腹減ってるのかよ…と思った
キッチンに駆け込み、ご飯をねだる
悠太は席を立つと、兵藤へと席を譲った
兵藤は「最近、お邪魔ばかりして…すみません…」と謝ると玲香は笑い飛ばし
「毎日でも食べに来れば良いではないか!」と兵藤に言った
流石とそれは………出来る筈はなかった
「貴史!飯食ったら着替えに行くかんな!
お前も着替えて来い!
今日は卒業式の絵図を書かねぇとな!頑張んべ!
あっ!力哉、若旦那にトナミへは卒業式が終わった後に、正式に行くれと伝えといてくれ。」
「解りました。
朝一番で連絡を入れておきます。」
「落ち着かねぇのに着手出来ねぇかんな!
謝っておいてくれ。頼むな。」
「解ってます。では、僕は出社します」
力哉が出社すると、飛鳥井の家族も会社へと向かった
兵藤は、食事を終えると、家へ一旦帰って行った
康太達は、各々、着替えに向かった
康太は榊原と共に着替えに向かった
「伊織…ごめんな」
「何で?謝る様な事をしましたか?」
「夜通し…歌っちまった…」
「気にしなくて良いですよ…。
たまには……ね。
毎晩は…困りますが…たまには良いですよ。
許してあげますから…僕のお願いを聞いて下さい」
こう言う言い方をする時の榊原は………要注意だった
「………お願い……って?」
榊原は康太を抱き寄せ…耳元で囁いた
「白衣をネットで注文したので、お医者さんごっこしても、良いですか?」
…………冗談でなく…真剣に想うのが…
榊原伊織だった
「………したいのか?」
榊原は、うんうん!と楽しそうに頷いた
尻尾が有ったら…尻尾振りまくりだろう
「伊織がしたいなら……良いぞ…。
オレはナースか?」
「康太は…患者さんなので、パジャマを来て下さいね♪」
「……良いぞ…好きにしろ…。
だが…今晩は…寝かせてくれ…頼む」
「良いですよ!
白衣が届くのは明日ですから、明日の夜は…楽しみです」
榊原は、嬉しそうに下着やYシャツを新しいのに変えて、着替えをした
歯を磨き、着替えたら、学校へと登校する
一階に降りると、皆、康太と榊原を、待っていた
兵藤の家に迎えに行って、登校する
何時もと同じ朝の光景だった
兵藤は家の前で立っていた
康太は…兵藤の背中におぶさると、兵藤は重いと叫んだ
「軟弱だな…!
それじゃ三木にしごかれまくるしかねぇな!」
「俺はお坊っちゃまなんだよ!」
「世の中の求めているのは、庶民の生活が解るか、そうでないか、だ!
他人事みたいな顔してると、お前の親父の様に、次の選挙では落ちる事になんだぞ!」
「えっ!親父…落選?」
「戦略を変えねぇとキツいぞ…。
でも、オレは動く気はねぇかんな!
お前が親父に言うか…お前が戦略を練れ」
「貴史、人の動きを追え。
人が何を求めているか知れ!
人の想いは動きを変える力になる
人の動きを知って、求めているのを敏感に察知しろ!戦略はそこから立つ!
議員は市民の代表だ!
想いを託し国政に送る
その人の想いとかけ離れた存在だと取られたら…人は離れるぞ!
兵藤昭一郎は、必死さがねぇ…
生まれつきの、お坊っちゃまだ。
兵藤丈一郎の血を引くのに…勿体ない…。」
まさに康太の言う通りだった
昭一郎の妻の美緒…兵藤貴史の母親は…その部分を常にグチる…
「オレは動けねぇぜ!貴史
オレが…お前の親父の果てを見たならば…
オレはお前の果ては見えなくなる…
飛鳥井の為にある眼だ…
飛鳥井の果てに兵藤貴史を組み込ませた…
それを違える事となる…」
「俺が三木の所へ行かされたのは…
そんな意図があるのか?」
「三木繁雄は、常に国民の側でいたいと、曲げねぇ!曲げねぇから敵も多い。
だがな貴史、幾ら国会に敵がいようともな、三木は国民を見方に着けてる
国民の先頭で闘う…泥臭さに…人は想いを懸ける。そんな政治家になれ」
兵藤は、何も言わず、康太の言葉を黙って聞いていた
「親父の事は良い。
それよりも、眠くねぇか?」
「朝まで犯りまくりよりマシだぜ…。
朝まで…気絶しても起こされて犯られまくった朝は…太陽が黄色かった」
「………一生!助けろ!
康太の下ネタ何とかしろよ!」
一生は「…貴史…それ、下ネタ、ちゃうから!康太と伊織の実体験だから…」と、付け加えてやると、兵藤は
「聞かせるなぁ!聞きたくねぇ!」と叫んだ
康太は、兵藤に、べーっとして、走り出した
兵藤は、康太の後を追った
突っつき有って…じゃれ合い走って行く様を見て……
一生は、刹那すぎるやん…とごちた
桜林の校門には…沢山の生徒が…
康太達の登校を待っていた…
康太達は取り敢えず、3年A組へと向かった
「さてと、貴史、卒業式の進行メンバーは、誰にするよ?」
A組の生徒は…大体揃っていて…他のクラスも…どう言う訳か…3年が登校していた
「各クラス代表を出すか?
でも、使えねぇ奴は…要らねぇからな…」
兵藤は思案した
「今日が25だろ?
卒業式は3月4日の月曜だせ!
後、1週間。
動けるのは、月曜から金曜…もしくは土曜の5日から、6日だ!」
「1週間か…軌道に乗れば…ギリギリか?」
「と、言う事で、ジャジャーン、絵図を書いて来たぜ!これに肉付けして、色を入れて、完成させる。」
康太は慎一に手を出すと、慎一は鞄の中から書類を出して渡した
「卒業式のピアノ伴奏、伊織がやっから!
体育館の、あのグランドピアノをフル活用しょうぜ!」
「えっ!弾けるのかよ!」
思わず…聞いてしまう…
「伊織は母親から絶対音感の教育を受けてる
プロにならねぇのが不思議な位に…上手いぜ」
康太が絶賛すると、榊原が
「康太、プロは無理ですよ!
プロになる人間は、こんな怪我をしたら…致命傷ですよ
ピアノを続けるなら…常に…指を庇い…生
活せねばなりません」傷を見せた
しかも感情表現が…榊原はなく…
幾ら貴方は上手くても…感情が全く…見受けられません…と、言われ…レッスンを勝手に止めた
感情移入する部分で…その感情が…解らなかった…
って言うか…感情らしかものが…全く皆無だった…
母親からは…ロボット…とまで言われた…
榊原の苦い…過去であった…
「卒業式に流して欲しい曲をアンケートで集計して決める!と、言う事で、ジャジャーン!
慎一に頼んで作ってきて貰ったぜ」
全員、康太の出した紙に…目をやった
「これを、今からコピって3年の奴に書かせる!
そして、統計を取って…曲目を決める!
それで、ピアノと曲目は決定だ。
司会進行はオレがやる!
ピアノの横でオレが司会進行する。
貴史は答辞を読め!」
「嫌だ!答辞は、おめぇと読むと決めてんだ!
俺は…生徒会に入ると決めた時に…おめぇを切り捨てた…
切り捨てて…俺は進んだ…
だがな…それだけが…オレの学園生活の心残りだった…。
なのにおめぇは…想い出と…この先をくれた
そんな、おめぇと読まないでどうするよ!」
「貴史…司会をやるから…それは辞退したい…。
オレ等四悪童が目立ったら、いかんでしょ?」
「何を言う。今更だ。
答辞は、おめぇと俺が読む。
送辞は葛西茂樹と飛鳥井悠太に読ませとけ!」
「貴史…」
「コピらねぇと生徒が帰っちまうぜ!」
「貴史!コピーだ!」
ほら、行くぞ!と、兵藤は立ち上がった
康太は廊下に出ると…全速力で走った
「許せ!伊織!緊急だ!」
そう言い康太は走った
その後を…一生達が…走って後を追う…
許したいが…
「許してやりたいですが、それは僕の性分には合いません!
廊下は走るんじゃ有りません!」
榊原は叫んだ!
やはり……ルールを…守る…鬼なのは…相変わらずだった
やはり康太は怒られて…兵藤の背中に…
こなきジジィをやって…職員室へと向かった
職員室のドアを開ける兵藤の姿は…壮絶だった
思わず…教師が…うっ!と身構える程に……
副校長が…なっ…何なんですか?と怯えて聞く
兵藤がギロッと睨むと…副校長は黙って…奥へと消えた
「貴史、ガンたれてる暇はねぇぞ!」
康太が紙を持ってコピー機の前に駆け寄る
「ほれ、貴史、3年の分、予備も入れて170枚コピー取れよ」
機械に用紙をセットする
「康太、百枚越すと、そっちじゃねぇ。
こっちの高速印刷の方のでコピる。貸せ」
兵藤は、機械にセットした用紙を取ると、高速印刷の機械に用紙をセットした
そして、設定ボタンを操作して…印刷が始まる
物凄い速度で…印刷が始まり…そして、終わった
「すげぇな貴史!」
「ほれ、これを持って配るぞ!
帰りは…歩いて行けよ!
階段をお前を背負ってはキツいぞ!」
「オレはお前の政治家としての足腰を鍛えてやってるのによぉ!」
「嘘を着け!嘘をよぉ!」
兵藤が笑って康太の首に腕をかけ…うりうりする
教師は…信じられない…感情で…一杯だった…
冗談さえも言いなさそうな…男が…笑っていたのだから…
コピー用紙を兵藤と榊原と康太に分けた
兵藤は「俺は、C組にわざわざ行ってアンケートを書かせてやる!
一生着いて来い!」と言いC組に行った
何で俺やねん…一生はボヤいたが…兵藤は知らん顔だった
「C組は、オレやんかぁ!
クソっ!やられた!」
怒る康太に榊原は「君の好きな方を選んで良いですよ」と優しく告げた
「ならオレはB組で良いや…」
「僕はA組に行ってアンケートを取ってきます。
隼人、来なさい」
と指名され隼人は、楽しそうに尻尾を振って榊原と共に…A組へと行った
康太はB組のクラスのドアを開けた
突然の康太の訪問に…クラスは大歓迎だった
「これから、アンケートを、書いてもらう!
卒業式の時に流して欲しい曲と、歌いたい曲だ!書いたら持って来てくれ!」
康太は聡一郎と慎一に用紙を渡すと、二人が配りに行った
康太は教壇の前に立って…それを受け取る準備をした
康太の横には…聡一郎と慎一が並んでいた
東真がアンケートをさっさと書いて、康太へと持ってくる
「康太、元気そうで…良かった」
「東真、頑張ってるみてぇだな。
無理するなよ。」
「康太、俺…綺麗と話し合った…。
種《 真也 》とも話をした。
それで、総て納出来た。
俺が来たら話してやってくれと…頼んでくれてたんだな…ありがとう。」
「気にすんな。
お前はオレの顧問弁護士になんだろ?
ならば、オレは自分の為に動いた様なもんだ!気にすんな。」
康太は笑って会話を終えた
そして、次々にアンケートを受け取り、アンケートを持ってきた生徒はこぞって、康太と話をして…
握手を求めた……康太はそれらを聞いてやった
飛鳥井康太はB組ではアイドル並みの人気を誇っていた
アンケートを全部集め終わると
「協力ありがとな!」
と片手をあげて、康太はB組を後にした
そして、A組へと入って行くと、兵藤は戻っていた
「んとによぉ!遅せぇぞ!」
「オレはサービスが、良いんだよ!」
康太は笑って、アンケート用紙を…1つに纏めた
「集計を…遣るぜ…気が遠くなりそうだな」
康太が呟くと…A組の生徒が、アンケート用紙を取り上げ、黒板に書き出した
黒板を半分に割って、聞きたい曲、歌いたい曲、とタイトルを書いて、集計をしてくれるみたいだ
A組の前期執行部役員 楡崎明良が先頭に立ち、集計を取っていた
楡崎は「集計はします。
手伝える事もする!
自分達の卒業式をするんなら、当たり前でしょ!」
と言い、何人かで手分けして、集計をしてくれた
皆で手分けをして集計をすると、早く終わった
楡崎は、アンケートの裏に、集計で出た曲名を書いた
「さてと、集計も取れたし
昼からはこの曲をどこで入れるか決めて、プログラムを作るとするか!」
「だな!なら、一度、伊織に弾かせてみて、時間を取るか?」
兵藤が言うと、康太は
「なら、楽譜を手に入れねぇとな…」とごちた
すると、聡一郎が「少し待てば用意出来ます!」とPCを取り出し…キーボードを叩きまくった
「あっ!でも、プリンターが有りません!
康太、どうしましょう?」
「貴史、この学校のプリンターって、PC読み込めた?」
「出来るだろ?…??また行くのかよ!」
「昼をこれから取れば良いやん!
そしたら、どっち道下に行くんだし、手間にはならんだろ?
んでもって、職員室でコピったら体育館に行くべ!で、どうだ?」
「良いな!よし!飯食いにいこう!」
キリが着いて、康太は席を立つと
全員が立ち上がり、ゾロゾロと廊下へ出て食堂へと向かう
康太は廊下に出ると、榊原に
「オレ、アジフライ定食で良いかんな!」と注文を頼んだ
「何で伊織に言うんだよ?」
兵藤が、康太に聞くと榊原が
「康太は現金を、持ち歩かないんですよ…」と話した
「あぁ…財布が嫌いなんだっけ?」
「お金を無造作にポケットに入れるから…落とすんですよ…。」
榊原に言われて…康太は膨れた
榊原は苦笑して…康太を促した
食堂を占拠して…全員で昼食を食べる
命令した訳じゃないのに、自主的に…人が集まり…増えていく
食堂にいた奴も…加わり…増えて行った
職員室のドアを開けると…再び…教師は驚いて…逃げた
聡一郎は、コピー機とPCを繋ぎ…
楽譜を印刷すると、それを持って体育館へと向かった
体育館に在るピアノは中々触れない…逸材だった
聡一郎は、康太に
「あのグランドピアノ、幾らするか知ってますか?」
と問い掛けた
「ベーゼンドルファー・グランドピアノModel.185 (販売価格 10,500,000円)だろ?」
「流石!よくご存じですね。
凄いんですよ、あのピアノは。」
聡一郎がグランドピアノを絶賛する中…榊原は思案していた
「あの、ピアノは僕が弾くのは良いですが、退場する時は誰が弾きますか?」
榊原が言うと、兵藤が
「それもそうだな。」と呟いた
すると後ろから、現生徒会長、藤森が現れた
「僕が伴奏します。
それで、貴殿方をお送りします」と頭を下げた
兵藤は、ニャッと笑い
「藤森、頼むな!」と頼んだ
「会長…貴方に…感情があるとは…想いもしませんでした…。
貴方の下で仕えて2年になりますが…貴方に…感情があるとは…想いもしませんでした。
えらく人間臭くなられて…
最後に…そんな貴方を見せ付けられたら…叶わないって…思いました」
「何言ってんだよ!俺は人間だぜ!
生きる電子頭脳…じゃねぇんだからよぉ!」
「威名を知っておいででしたか…」
「知ってるよ。
血も涙もねぇロボット…とまで言われたからな。
そこの執行部の鬼も…人間臭くなっただろ?」
兵藤が言うと……榊原は嫌な顔をした…
「貴史…僕は鬼ではありません…。
鬼だとか…大魔人だとか…言われましたが!
鬼ではないです!失礼な!
僕の何処が鬼や大魔人なんですか!」
しれっと言うと…一斉に非難の目を向けられた
全員……無自覚かよ!恐ろしやぁ~と心で呟いた
口に出したら怖いから…
「遊んでる暇はねぇんだよ!
伊織、テキパキとピアノを弾きやがれ!」
榊原は肩を竦め…ピアノの椅子に腰掛けた
ポロン…と鳴らして音を確かめる
「調律が行き届いてますね。
では始めます
タイムを計って下さいね!」
と榊原が言うと、兵藤が時計のストップウォッチを作動させた
榊原の奏でる…曲が流れると…皆感嘆とした
楽譜を一生が捲ってやり…榊原は、ピアノを弾き続けた
兵藤は、選ばれた曲のタイムを計って、分数を書き込んだ
そして楽譜を見ながら
「伊織、この三曲は藤森に弾かせる、お前はこれまで弾いて変われ。」
と指示を出した
自分のノルマまでを弾くと、榊原は椅子を藤森に明け渡した
そして、藤森も三曲、ピアノを弾いた
兵藤は、それらのタイムを計り、書き込んだ
「分数は、解った。
曲も聞いて解った。
どの曲を、何処で使うか、プログラムと練り合わせて、決める!
それを明日やる!
明後日は来賓のスピーチと、来賓の練り合わせと、父兄席は何処へやるかを、決める
スピーチに何分…とか入れねぇとな…それか来賓のスピーチは省くか…。それも明日話し合うか…。」
兵藤は思案して…唸った
「来賓の話なんか聞いたって、卒業生も在校生も感動なんてしねぇぜ!
オレ等の卒業式を作って良いと学長は言わなかったか?
だから、そんなのは、度外視だよ!
そんな話に割く時間なんてねぇ!」
康太は…卒業式の長々しい話が嫌いだった
偉ぶって、将来に大変な事が有っても乗り越えて行けよ!
それて自分の様に偉い大人になれよ…なんて、言う奴が大嫌いだった!
兵藤は「なら来賓は無しだな!
オレもあんな綺麗事の話は勘弁だ!
大人の仮面だけ被った奴の話は…止めとこう!なら明日はプログラムの色付けだな
曲を何処に入れるか決めて、プログラムを完成させる。
まずは、それをやってからだな?」と、康太に問う
「だな。来賓の言葉は、入り口に入る所にスピーチを書いて貰って貼る
んで見てもらえば良いんでないかい?」
「よし!そうしょうぜ!
まずはプログラムに色ずけ作業だな。」
「後、オレさ、こんなに生徒がいるんなら、学園を卒業色一色に染めてぇんだ!
『 さよなら 』の色はブルーだからよぉ
ブルーの紙で…リボンを作り
学園のあっちこっちに貼る…
校門のアーチもそのリボンで作りてぇ…。」
「でも、そんな予算はねぇぞ!
宣言祭のチョコだって自腹じゃねぇかよ!」
「そこなんだよな…オレの小遣いは…もうねぇらしいからな。
ゲーム買ったのが痛かった…。」
康太が悲しげに呟くと…藤森が
「持ち寄れば良いんじゃないんでしょうか?
有志だけで青いリボンや色紙を短冊に切ってリボンにすれば良いんです!
それを校内の至る所に、好き勝手に貼って貰えば、どうですか?」と提案を出した
「アーチは、後期生徒会と執行部が作ります。予算も少しだして作ります。」
藤森が言うと康太は、物凄く嬉しそうな顔で笑った
その場に居合わせた皆が…見惚れる位の…笑顔だった
「ならオレは伊織にリボンを買わせて、作るか。
でもなぁ…伊織は…ケチだからなぁ…」
榊原は、悲しげに呟く康太を抱き寄せ
「買ってあげますよ。
ゲーム以外はね!」
少し意地悪に言った
康太は頬を膨らませ…睨んだ…
可哀想になり、一生が
「俺が買ってやるから機嫌を直せ!なっ!」
と榊原の腕から…康太を引き剥がした
「なら、作れるな!
オレさぁ入学の時、崇城霞達の生徒会と執行部に入学の色のリボンで入学式を遣って貰っだろ?
だから、卒業式は卒業の色のリボンで卒業してぇって思ってたんだ。」
康太が言うと…皆、入学式の時に…想いを馳せた…
康太も入学式の時に想いを馳せる…
あの時の…康太は…榊原に嫌われていた…
意味嫌われる存在
それが……飛鳥井康太…だった
何時も…見詰める瞳は冷たく…侮蔑されていた
側に…いると…溜め息をつかれた…
入学式の日
そのリボンの鮮やかなピンクにみとれて上を向いて歩いていると…ぶつかった
前を見ると…誰かの胸に…抱き止められていた
上を見ると…榊原だった
榊原は皮肉に笑って
『朝から落ち着きのない…君も今日から高校生ですか…。
高校入学おめでとう!進級出来て良かったですね。
高校では、馬鹿げた騒ぎは控えて貰いたいものですね…』と嫌味を言い…通り過ぎて行った
康太は涙が溢れそうで…上を見た
あの日の救いが…あのピンクのリボンだった
涙が溢れそうで…見上げた…空に…
ピンクのリボンが…在った
思わず見とれた…程に…綺麗で…
涙で歪んだ
康太は…思い出し…思わず…涙を溢れさせた
榊原は涙が溢れる前に…康太の頭を掴み…
抱き寄せた
小さな肩が…微かに震える…
榊原は「今日はこれで、終わりましょう。
良いですか?
貴史?康太は使い物にはなりませんよ!」と兵藤に言うと、兵藤も
「仕方ねぇな。
今日はこれで、解散!
皆、気を付けて帰れよ!」と号令を出した
榊原は康太を抱き上げると、一生に
「鞄を持って帰って下さい。
僕は康太と歩いて帰ります!では、失礼!」と頼み…体育館を出た
校門を潜ると…榊原は康太を下ろした
「思い出したんですね…あの日…僕が君を傷つけた…日を…」
「気にするな…お前が悪い訳じゃねぇ…」
「あの日…僕も上を見上げて…綺麗だなって歩いていたんですよ。
そしたら、腕の中に君が降って来て……焦ったんですよ…」
「え…?」
「歩きながら話をしましょうか?」
康太は頷いた
「僕にとって…飛鳥井康太…は初恋なんです
でも…君は…穢れてなくて…綺麗で…
近寄ると…君を穢しそうで…僕は離れたんです…それしか、その時の僕には…思い付かなかった
君と離れて…君と接触を断っても…君を見てしまうんです…
君が黒塗りのベンツの男の所へ駆け寄るのを見た時は……
君を犯してしまえば良かった…と後悔した…
あの日…高等部への入学式の時…僕もピンクのリボンに見とれてました
そんな時に…君が降って来たので…慌てたんです…
君の臭いを嗅げば…理性なんて…風前の灯火…
嫌味を言って…逃げるしかなかった…
勇気が…無かったんですよ…僕は…
だから、君が…寮に入る時が…最後のチャンスでした…。
君が入寮してからは…君のご存知の通りです
余裕もなく…君を抱き潰し…立てるようになったら、両親に挨拶に行った‥‥
あれが…僕の最後のチャンスでした…。
あれを逃せば…僕は君を……手に出来ないと…想いました」
榊原の苦しい胸のうちを聞かされれば…
当時の…辛い想い出も…大切な想い出に変わる…
「伊織…」
想いは募っても…離れていた時間が…在った
「何ですか?」
「オレは…お前と…恋人同士になれて良かった…。」
「僕も…君を、恋人に出来て良かったです」
康太は…嬉しそうに笑って…
「早く帰って、夕飯を食って寝たい…
じゃねぇと…明日は…お前の願望が出来ねぇぞ…。
オレは眠いと…性欲は皆無になるかんな」
「それは困ります。
僕は君の瞳が大好きなんですからね。」
榊原は康太に手を差し出した
康太は………躊躇して…手を…出せなかった
流石と……外で手は…繋げなかった…
「僕は隠す気はないですが、公然に公表する気も有りません…行きますか?飛鳥井の家へ」
康太と榊原は……並んで…飛鳥井の家へと、帰って行った
それを、かなり後ろから見守っていた一生や聡一郎、隼人は……
ずっと側で…両方を見て来たから…
康太の気持ちも…榊原の気持ちも解って…見守るしか出来なかった
慎一が「側に行かないのですか?」と、聞いても…三人は…側へは行かなかった
一生は、慎一に
「康太は…5年の片想いの末に…伊織と両想いになった…。
伊織は執行部の部長として……俺等、四悪童を取り締まる側で…目の敵にされてたんだよ…康太は…。
目を合わせたら…睨まれ…冷たくあしらわれた
それしか伊織は…自分を保てなかったからな…
康太が好きで…愛していても…伊織にとったら…
康太は…天使のように穢れてなくて…伊織は…逃げるしかなかった
その癖伊織は…康太に似てたら寝る節操なしだった
二人は…思い合ってても…近寄る事なく…過ごした時が在った…
そんな二人が…やっと恋人同士になったのは…高2の夏休み前だ……。
まだ…恋人同士になって一年ちょい…しか経ってねぇんだよ…。
康太の心には…その当時の悲しみが…消えてねぇ…。
乗り越えるしかねぇんだよ
それには俺達に…出る幕はねぇんだ!」
と、事情を話した
慎一は…言葉もなく…恋人達を…見送るしか出来なかった
翌朝、キッチンに降りてきた康太は、元気だった
昨夜は、早く寝た
榊原に抱き締められ…一杯…話をした
話をして…知らないうちに眠っていた
離れたくなくて…榊原に、抱き着いて寝た
愛している
誰よりも…愛している
もう…こんなに愛せる人は現れない…
互いの温もりに…安心して眠った
この温もりさえあれば…生きて行ける…
目醒めた…朝…
誰よりも優しいキスで起こされた
至福の時が…そこに在った
時間の許す限り…抱き合って…起きた
もう何時もの康太だった
食事を終え、兵藤の所へ迎えに行き
卒業式のプログラムに色付けする
曲を何処で使うか決め、話し合い…
時間がかかった
でも全員…妥協はしたくなくて…話し合いは白熱した
日も暮れ…遅くなるまで話を詰め…帰宅する
飛鳥井家へ帰る、帰る道…榊原は超ご機嫌だった
何たって…『 お医者さんごっこ』が待っていたから…
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