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第75話 問題多発③

「起きますか?」 「…流石と…このままじゃ…な。」 榊原は、康太と額を合わせて…見つめ合った 「僕達は…喧嘩しても…正して生きていきましょう」 「ん。オレはお前がいればそれだけで、生きていける…」 「僕もですよ…」 優しくキスして…抱き合い… 浴室へ向かう 何時ものように、体を洗い、中も外も綺麗にして、康太を磨いてから榊原も体を洗い…湯に浸かった 浴室から出ると…何時ものように、康太の支度をして服を着せてから、自分の支度をする そして、康太をリビングに行かせ、掃除と洗濯に精を出す、毎日の日常を送る リビングのソファーに座っていると、一生が顔を出した 「よぉ!仲直りはしたかよ?」 一生が心配して聞く 康太は笑って「おう!バッチしな!喧嘩の後はエッチだろ?してもらったかんな!」とノロケた 「一生…」 「あんだよ?」 「少し…力を使いすぎた…」 「え…?どう言う事だよ?」 「力を使えば…オレの体が…悲鳴を上げる… 今夜辺り…血を吐くらしい…。 だから、前もって言っとく…」 「旦那は知ってんのかよ!」 「さっき言った…粘膜が薄くなってんだよ… 毒は抜いてるが…粘膜の再生は…これからだ…。」 「康太…」 「血を吐いても、死にゃぁしねぇ! 卒業式は必ず出る…オレはまだ死なねぇ!」 「当たり前だ!死なれて堪るかよ!」 「式が終わったら…少し…休みてぇな…」 「休め!って言うか休みやがれ!」 「でもな…やる事は山積してる…休んでる間に…飛鳥井は…潰れる…」 「康太…」 「乱世だぜ、一生! 乱世の世に…油断は禁物だ…。 討たれるか…勝ち誇るか… どっちかにしかならねぇなら、オレは笑って死んでやる!」 「俺の命は…お前にやる! 俺等を動かせ! 俺等は、お前の頭脳であり手足だろ?」 康太は……一生に抱き着いた 「今世の体は…本当に…言うことをきかねぇ…。 まぁ…飛鳥井で…転生し続け…40まで生きた事はねぇけどな…。 今回は…20前に…命の危機に脅かされるとはな…本当に…口惜しい…」 「今世は……源右衛門位は…生きろ…! ジジィになるまで愛し合ってろ!」 「生きてる限りは愛し合う…だがな…源右衛門までは、無理だ…。 翔達が成人式を越えたら…オレは38だ! それまではな…生きねぇとな…」 「それ以上…生きろ…」 「生きてぇな…ジジィになっても…伊織は男前だろうな…」 「面食いなお前の男だからな、ジジィになっても男前だろ?」 「見てぇな…ジジィになっても、伊織は…抱いてくれるかなぁ…」 「抱いてくれるだろ?だから、長生きしろ! 俺達も…お前の側にいるからよぉ!」 「ん…。」 康太が一生の肩に顔を埋めると…榊原が寝室から顔を出した 「どうしました?康太…? 体調が悪いのですか?」 榊原が心配して…康太に問いかける 康太は一生の肩から顔を上げ… 「違う…懐いてんだよ!」と笑った 「さぁ、キッチンに行き、何か食べますよ 康太は…お粥とかにしますか?」 「………嫌だ!沢庵が食いてぇし、ご飯じゃねぇと…沢庵は食った気がしねぇ…」 榊原は、一生を見て苦笑した… 榊原が康太をキッチンに連れて行くと、瑛太が神野と小鳥遊と笙とで朝食を取っていた 康太を腕に抱き現れた榊原に、瑛太は 「やはり、痴話喧嘩でしたね」と笑った 榊原は、康太を椅子に座らせると、康太のご飯に水を入れ…電子レンジでチン…とした 柔らかいご飯を作る榊原に…瑛太は…眉を顰めた 「康太の体調は…良くないんですか?」 「胃の粘膜に毒素が浸透していました… 解毒をしている今……その粘膜が…薄くなっていて…吐血しやすくなってるんです… 昨夜…神野の所と濱田の所と兵藤の所で…康太は…力を使った…ので、弱まった粘膜に…刺激は…厳禁なので…柔らかくしました」 瑛太は…心配そうな顔を康太に向けた 「康太…辛いなら…病院に行きますか?」 「無理だ!今日の予定はもう目の前にいる! 隼人の役者生命のかかった大一番だ! 投げ出して、寝てられっかよ!」 「だけど!康太!」 「オレのやる事に口を挟むな!」 康太は怒鳴った… 瑛太は康太を抱き締め 「口は挟みません! だけど、弟の体調位…心配してもいけないのですか!」 「動きを止めたら…総てが終わる… 明日の飛鳥井へ…続く道が途絶える… オレが飛鳥井にいる存在理由が…無くなれば…オレは人として生きるのを終える…」 康太の言葉に…瑛太は康太を抱き締めて泣いた 「無理をさせたい訳ではない……」 「解ってるよ…瑛兄…。 そんなん解ってるってば…瑛兄…! でもな…明日へと繋げねぇとならねぇんだよ! 休んでいたら…道は途絶える…それは出来ねぇ…絶対にだ!」 康太は言い切った… 瑛太は…瞳を閉じ…言うのを止めた… その変わり…話題を変えた 「……月曜日の卒業式には…家族で行きます… 月曜日は飛鳥井は臨時休業…です!」 「良いのかよ?」 「良いんです!」 瑛太は笑って康太を離した 「康太、仲直りしましたか?」 「おう!仲直りの後のエッチもしてもらったぜ!」 やっぱ仲直りの後は…エッチだろ?…と迫ったのだろう… 「良かったですね…」 「伊織は中々…手を出さねぇからな脅して…してもらったぜ!」 ………それは……どんな反応をしたら良いんだか… 「エッチは、体に毒とは主治医の飛鳥井義恭は、言わなかったしな…。 力は使うな…とは、言われたけどな、エッチは好きなだけしろ!って言われたかんな!」 瑛太は…榊原を見た 「ええ…先生に…一生達もいるのに…聞いていました…。 『先生、伊織とのエッチはしても良いのかよ?』って……。 僕は…恥ずかしくて…いたたまれませんでした…」 それで、主治医は『好きなだけしろ!』…と言った訳だ… 瑛太は榊原を労り…抱き締めて… 「伊織…良く堪えてくれましたね…。 君の愛した康太です……離さないでやって下さい」と言葉をかけた 「義兄さん…」 「君達が、仲良くしてると、兄は本当に安心出来ます…。 主治医に太鼓判を押してもらったなら…エッチはしても大丈夫なんで、康太を愛してあげて下さい」 「はい…なんか……エッチを頑張れとか…種馬の気分です…」 榊原がボヤくと…全員大爆笑となった 朝食を終えると…康太は一生と聡一郎と、何やら…話をしていた 少し…離れた所で…絶対に人を寄せ付けない…雰囲気を出していたから、誰も…近寄りもしなかった この三人が…集まると…何かが動く… 榊原は、邪魔する事なく…康太を見ていた 康太は、会話にケリが着くと…榊原の横に座った そして慎一を呼ぶ 呼ばれた慎一は康太の横に来て、床に屈んだ 康太は慎一の耳元で…指示を出すと、慎一は立ち上がり指示の通りに動いた 一生が瞳で…康太に合図をすると、康太は頷いた 「伊織、部屋からオレのPC持って来て」 頼まれ、榊原は立ち上がり、応接間を後にした 榊原がPC持って来ると、一生と聡一郎は消えていた 慎一も忙しそうに動いていた 康太は微動だにせず、目を閉じていた… 「伊織…」 「何ですか?」 「少し…抱き締めて…」 言われ…榊原は康太を膝の上に乗せて…抱き締めていた 瑛太と神野は…口を出さずに…その様を見ていた 慎一がやって来た時には、その手にCD-Rを持っていた 「康太、支度をします!」 慎一が言うと、康太は榊原の膝から降りた 慎一が70型テレビの電源を入れ、康太の持ってきたPCと直結させた 大画面に…一条隼人の…映像が映し出された… 神野と小鳥遊は…驚き…画面に釘付けになった 隼人が…奈々子と幸せそうに過ごす映像が映し出されていた 愛する彼女を守る…隼人は…いじらしい位に必死で…男だった 素の…一条隼人がそこにいた 奈々子が亡くなり…哀しみにくれる隼人が… 画面の中で…泣き崩れていた 絶望の果てに…雪に…埋もれ…ボロボロになっていた隼人 発見した時…隼人は…雪の中で…幸せそうに… 微笑んでいた… そして… 助けられ…泣き崩れて… 我が子を抱く姿…があった そして…我が子を…手離し…生きていく覚悟を決めた…隼人の…顔が映し出されていた 映像は…一時間の…ドキュメントに作られていた 命の期限のある恋人との…愛の真実…とタイトルを銘打って…あった 「神野、これを流せ! その後に…記者会見をする…。 だけど…オレの体は…今回は持ちそうもねぇからな…記者会見は卒業式の後だ! 少し…調整させてくれ…」 「はい。大丈夫ですか?」 「それと…神野、蒼太は…隼人の…仕事を疎かにしてるだろ?」 「………………いいえ…。 そんなんでは…有りません…」 神野は庇った… 「庇うな! ビジネスは遊びじゃねぇんだ! 同情や情けで…回るもんじゃねぇだろ?」 「はい……ですか、隼人も今は…仕事をセーブしてますから…」 「なら、忙しくなったら、どうする気だよ? 何の為の専属なんだ? それって専属って言うのかよ!」 神野は押し黙った… 「しかも…蒼太は詐欺の片棒を担いでる… 大量生産で…矢野宙夢のジュエリーが手に入る… 一条隼人の…着けてるアクセサリーが手に入る…との、謳い文句で…大量発注してるアクセサリーは、粗悪品の100円位で買える品物を何万も値段をつけて売っている… 購入者はその粗悪品に騙されたと知ると、訴訟に発展する そしたら…業者は逃げて…蒼太が捕まる手筈が既に整っている 取り締まりのトップに蒼太の名がある以上は……責任問題になれば逃げられねぇだろう しかも蒼太は…一生懸命…そっちに力を入れて…隼人のアクセサリーは疎かにしてる 飛鳥井初の犯罪者を出さねばならねぇ… 飛鳥井の名折れだ… 討ってやろうかと想った 母ちゃんや父ちゃんが‥…可哀想過ぎる‥‥」 瑛太は…想わず…額を覆い事態の深刻さを受け止めた そして吐き出す様に 「…飛鳥井の名は…汚れさせは出来ぬ… お前が…守った…飛鳥井を汚してたまるものですか!」と決意を述べた 「総てにおいて人生経験の無さは否めねぇ 何をやるにもツメが甘いんだよ! たいした戦略もなく動くから…こうなるんだよ! 本当に……使えねぇ男だ…蒼太は…」 蒼太の莫迦さ加減に瑛太は 「…康太…宙夢が…憐れで…なりません…」と共にいる者を気遣い口にした 「舵取りが出来てねぇんだよ…宙夢は… 蒼太を甘やかすだけで、舵は取れねぇ…」 「手は…打たねば…なりませんか…」 「おう!だから、オレは一生と聡一郎を、動かしてる!」 瑛太は…蒼太に引導を渡す為に、あの二人を動かしているのだと…やっと知った 「その前に隼人だ! 神野、その映像を流せ! お前達二人は…これを見てどう想った?」 康太に聞かれ神野は 「…私は…隼人の…側で見てきましたが… あそこまで…隼人の…真髄は見ていませんでした…。 奈々子を、本当に愛して…亡くした悲しみが…伝わって来ました」と語った 小鳥遊も「…隼人は…覚悟を決めていました…。 良く…この様な映像が撮れましたね…」と想いを述べた 「この映像を撮ったのはオレじゃねぇ… そこにいる…緑川慎一、その男だ… 隼人の…誰よりも側で…隼人を支えたのは、同じ愛する人を永遠に亡くした…慎一しかいねぇからな…酷な願いを聞いて貰った そして慎一は、その想いに応えてくれた…」 康太が言うと…神野と小鳥遊は、慎一に頭を下げた 愛する人を永遠に亡くした…想いがあるからこそ…撮れた映像なのだ… 撮る方も…その想いが解らなければ…撮れない映像だったのだ… 神野は、CD-Rを手にすると 「枠は押さえてあるので流して見ます! そして、記者会見は、貴方の都合の良い時間に開くと謂う事でそれで良いですか?」 「あぁ、それで良い! マスコミには…その映像が総てだと言え! そして、マスコミに流す前に東都日報の今枝浩二に連絡を取ってくれ! オレは体調が悪い…今夜は出れねぇ…からな お前が連絡を取ってくれ」 「解りました。 東都日報の今枝浩二さんですね! 解りました」 神野が言うと慎一が、神野に今枝の名刺を渡した 「それでは、行ってきます! 隼人はどうさせますか?」 「連れて歩け、それなりの服を着せて、今枝に逢わせろ… 本当なら…オレがそれをしてぇけどな…力を使えねぇ…動けば使う… 今夜は大人しくしてる、明日は卒業式だかんな」 「解りました。隼人、行くぞ! 康太…貴方は指示だけ出して…動かなくても構いませんよ…! 策士がいるだけで…その道は歪む事なく進むんですからね!では、行ってきます!」 神野と小鳥遊は隼人を連れ…康太に頭を下げて…出ていった 康太は……深く息を着いた… 「やっと1つ…片付いた…。 今夜…神野は…隼人を連れて…良い結果を報告してくれる… 後は…超難題が…残ってるかんな… 夜まで…寝るか…」 と、康太は思案する 「慎一」 「はい!」 「寝室の鍵はかけない! 何かあったら起こしに来い」 「解りました!」 康太は立ち上がり…自室へと帰ろうとする その時…瑛太が康太を抱き締めた 「病院へ行きますか?」 「……瑛兄、心配するな…」 「心配しない訳にはいきません!」 「夜…と、言うより…夕方には…蒼太が宙夢とやって来る…。 それまでは、ゆっくりしてぇだけだ!」 「本当に…君は…少しお節介過ぎますよ…」 「瑛兄の弟だからな…仕方がねぇ…」 「私は…そんなにお節介ではないですよ?」 「…そうか?なら、母ちゃんだな!」 「…母も…父も…源右衛門も…自室に籠って出ません…。 康太が動く時…邪魔をせぬ為です…」 「ならば、蒼太の事は…絶対に耳に入れるな!悲しませてぇ…訳じゃねぇ…」 「解ってます…。 伊織…康太を頼みます!」 瑛太は…康太を榊原に渡した 榊原は康太を渡してもい…瑛太に頭を下げ…自室へと戻っていった 寝室のベッドに…康太を寝かせた 榊原は、何かあったら動ける為に、服は脱がず康太の横に座っていた 「伊織、オレのPCを見てみろよ…」 康太に言われ、榊原は枕元のテーブルに置いたPCを取り見てみた すると…そこには、詐欺紛いの…ジュエリーサイトが…開けてあった 良く見てみると…巧妙な手口で若い子を騙す手口を見付け…眉を顰めた 謳い文句は…一条隼人のアクセサリー…だった 本人使用…とか 同じデザイン…とかあった 「康太…隼人のアクセサリー1つにしても…事務所を通さずに売るのは御法度でしょう?」 「一条隼人の…総ての権利は事務所にある。 その事務所の…許可なくすれば…著作権の侵害だ! その上…粗悪品を…本人使用限定…とか ありもしない事を…載せてる 見れば…見る程…頭痛がするだろ? ったく、使えねぇわ…バカだわ単純だわ… どうしょうもねぇな…あの男は…」 「一生と聡一郎に、何をさせてるの?」 「このままだと、逮捕は間違いなく飛鳥井蒼太…本人の罪にされる 飛鳥井から犯罪者は出せねぇ…出しちゃならねぇ! それが定め…出るならば… 闇に葬り去る…しかねぇ… けど、今は出来ねぇだろ? ならば…手が回らぬ様に…細工させ…知らぬ存ぜぬを通させる…! 手筈が整ったら警察に動かす… 警察が…蒼太の所へ行っても…証拠がなくば、シラを通させる だがな今回は穏便には済ます訳にはいかねぇんだ! 飛鳥井の名を地に貶めたも同然の…蒼太の処分をしねぇとならねぇんだ! 甘く泳がせてやる訳にはいかねぇんだよ 一生と聡一郎と兵藤貴史、美緒親子も…蒼太の所へ行かせてる…。 オレは…疲れた…少し寝る」 榊原は、康太の髪を掻き上げ…額にキスした 「眠りなさい…僕がずっといますから…」 康太は、静かに瞳を閉じた… 榊原は、康太の横で…自分のPCを出し、休んでいる脚本の仕事をしていた 仕事は再開していないが…何時か…悲願の…仕事が出来るなら…したいから… 我が父…榊 清四郎を主役に…時代劇を作りたい…! 隼人も兄の笙も起用して…創る… 誰にも見てもらえる時代劇を作りたいのだ… 時間があると書き綴り…したためている 勿論…飛鳥井の仕事もする 妖しげな…通販も見る… そして最後には…康太のフォトを見る… その中には…中学からの…康太の姿も…あった 中学の時も、高等部の時も…執行部の部室から…康太を撮り続けた写真だった 執行部の部室から…望遠レンズで撮った…笑っている康太の姿だった 清家は…この時から…榊原が誰を撮っているか知っていた 懐かしく…その写真を見るのが…榊原の日課だった… 榊原は画面の康太を……指でなぞった まさか…天真爛漫なこの笑顔の下に… 飛鳥井の過酷な日々が隠されていたとは…想いもしなかった なんの悩みもない…単純な…純真無垢な存在 康太の姿からは…想像すら出来なかった… 血を吐き…倒れて…死にかけて… それでも…立ち上がって…歩みを止めない… 傷付き…苦しみ…泣いても…行かねばならぬ… 修羅の道を…康太はひたすら歩み続ける… 榊原は……康太…と呟き…顔を手で覆った その手からは…滴が…流れて… PCの画面に…零れて…落ちた

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