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第77話 修学館 桜林学園 卒業証書 授与式
その夜…康太の枕元に…紫雲龍騎が現れた
「龍騎…お前まで出てくんなよ…」
康太は榊原の胸に顔を埋め…寝ていた
『朝になれば…お前の卒業式ではないか
その様な…弱った体では…行かせたくはないのです…
弥勒院高徳が崑崙山へ行き
仙界に渡り…薬草を手に入れた…
その薬草を厳正が煎じて薬にした
卒業式の後に…取りに行くが良い…
だがその前に…お前に飲ませてやろう…』
康太はベッドから起き上がると、全裸のまま…紫雲の前に立った
紫雲は…康太の全裸を…眩しく見詰め…そっと抱き締めた
『こんなに痩せて…口を開けて上を向くがよい』
康太は言われた通りに…口を開けて上を向いた
すると…口の中に…滴が零れ落ち…康太の喉へと…入った
康太は滴が落ちるまで…口を開けていた
そして、滴が…なくなったら…口を閉じて笑った
「ありがとな…龍騎…」
『お前が…今世は長生きしてくれれば…それで良い…!
お前と共に…それだけが…我の願いです…』
「…………この命…救われて繋がれる……
オレの明日は…愛する者によって紡がれている…」
『お前を…この世で一番…愛している…
その命の焔…消してなるものか…』
紫雲は…康太の唇に…自分の唇を重ねた
そして……康太の体を抱き締めて…消えた
紫雲が消えて…ベッドに入ると…暖かな腕が…康太を抱き締めた
「紫雲ですか?」
「あぁ。今日は卒業式だからな、弱った体ではなんだろう…と、弥勒院高徳が崑崙山 へ行き
仙界へ渡り手に入れた薬草を厳正が煎じたのを飲ましてくれた…」
「そうですか。
原始の力は…始まりの力…
その力…万物を治癒する…と言われている薬草を取りに逝ったのですか‥
崑崙山へ行き…仙界へ渡り…手に入れた薬草なら…現代の医学より…凄い力を秘めてます
君を亡くさなくても良いのなら…僕は感謝します…」
「伊織…心配ばかりかけるな…」
「君といられるなら…それで良いです…」
康太は榊原に抱き着いた
「今日は卒業式ですね!」
榊原が、しみじみと言葉にした
「おう!泣いても笑っても…今日が…高校生活最後だ!
オレは高校生活に悔いはねぇ…
総ての力を注ぎ込んで…歩いた道に…悔いなどねぇ!」
「僕も…高校生活に悔いはないです!
こんなに全速力で…時を過ごすした事はない位…必死に走り続けました…」
「お前に嫌われたまま…卒業するんじゃねぇのが…オレの最大の…収穫だった…」
榊原は康太を抱き締めた…
「僕も…今世も君を見つけれて良かった…
君を未来永劫…愛しますと言ったのに…
愛せなかったら…偽りになってしまうじゃないですか…。
本当に…良かった…」
「でも…先は長いぜ…人の世は高々百歳にも届かない寿命だが、まだ半分も来ちゃいねぇかんな」
「君と生きてけば…そんなのあっと言う間でしょ?
なんせ…僕の愛する人は…修羅の道を突き進む…
歩みを止める事なく…突き進む…飛鳥井康太ですからね
僕は…君と共に…生きていきます!」
「共に…この命が尽きるまで…」
「共に…この命が尽きた後も…」
榊原は康太に優しく接吻をした
「僕達は…これからも果てしのない時を過ごす…君と共に…」
「お前と…共にな…」
康太と…榊原は、抱きあったまま…時を過ごした
時間が来るまで…静かに抱き合い…
過ごした
朝…クリーニングに出した制服に袖を通した
榊原にネクタイを絞めて貰って、身なりを整える
榊原も康太にネクタイを絞めて貰い…身なりを整えた
「伊織…」
「写真を撮りたいのですか?
良いですよ
僕も後で康太を撮りますから…」
高校生活…最後の制服姿だから…残しておきたい…
一頻り…榊原の写真を撮ると、榊原も康太の写真を撮った
そして、一階に降りて、キッチンへと向かうと…そこは一生達も支度を済ませて座っていた
一生が康太に声をかける
「よぉ康太、体調はどうよ?
今朝は…旦那の写真を撮りまくりだろ?
遠慮してやったから沢山撮ったか?」
「おう!沢山撮ったぜ!
これが本当の最後だからな!
残しておかねぇ訳ねぇじゃん!」
康太は嬉しそうにニカッと笑った
瑛太が「体調は?」と尋ねる
「今朝方…龍騎が現れた…。
厳正が作った薬草の滴を…飲ませてくれた
だから、少し良いかな?」
「そうですか…」
無理はしないで…と言っても…無理をするのが康太…だった
小言を言いたいが…卒業式の朝にする事じゃないので…やめた
「康太、伊織、一生、聡一郎、隼人、慎一
本当に卒業おめでとう!
兄は…嬉しくて…たまりません…」
瑛太は…涙を拭った
父も母も…京香も源右衛門も…正装をしていた
京香が「夕方まで…託児所に子供は預ける…
お前の晴れの日だからな…家族全員で祝う…
私も…嬉しいぞ…康太。
お前達の卒業式を見れるのは…本当に嬉しい」と涙を拭った
「京香…」
「康太、伊織、一生、聡一郎、隼人、慎一
卒業おめでとう御座います!
お前達を…この飛鳥井から送り出せる事が、とても嬉しく想います」
京香は、深々と頭を下げた
「今夜は…榊原の家族を招いてパーティーを開きます…。」
「京香…お腹も目立つ様になったのに…無理するな」
「無理ではない。
私は飛鳥井瑛太の妻として…当然の事をするのだ…
私は…瑛太を愛している…この世の中で…一番愛してるのは…お前だ…康太
そして瑛太も…この世で一番お前を愛している…
お前を必死に愛する…瑛太は愛しい…
お前のくれた幸せだ……そうだろ?康太」
「そうだな…お前が幸せなら…オレはそれで良い…。」
康太は笑って…瑛太を見た
瑛太と京香は、仲良く寄り添っていた
父も母も…仲良く寄り添い…康太達を見守っていた
学園に行く前に、兵藤の所へ迎えに行く
学園生活……最後の登校となる
兵藤は外に出ていて待っていた
「よぉ!体調はどうよ?」
「悪くはねぇよ!卒業だな!」
「あぁ、卒業だ!
だが、俺とおめぇとは切れねぇ腐れ縁…
この先も続きがある!」
「切れねぇから腐れ縁だな!
この先も…オレはおめぇを第一線に立たしてやる!覚悟しやがれ!」
「望む所だ!
おめぇとはこの先も、息が途絶える瞬間まで…走り続けるさ…
おめぇがハゲたら、植毛してやるからな!」
「クソッ一言余分だわ!」
康太は兵藤を追い掛けて走った
兵藤の背中に上る康太を…笑って…背負う姿に…やはり一生は……
刹那いやん……と呟いた
学園の校門には…中等部、高等部の生徒が…
最後に一目見ようと詰めかけていた…
【さよならは言わねぇぞー…バカヤロー…】
と声がかかる
「言わなくて良いぞ!
さよならじゃねぇかんな!」
と康太は返した
そして、片手をあげて…康太は風を切って歩く
その後に…兵藤や榊原…四悪童に慎一…
伝説を築き上げた…生徒が…そこにいた
それを見ようと…
朝から…かなりの生徒が出迎えていた
教室の廊下に出て会場へ入る為に整列をする
『修学館 桜林学園の卒業式を始めます
在校生は…体育館に入って下さい』
式の合図が…学園中に響き渡る
在校生が体育館に入ったら…卒業生が入場して…卒業証書授与式が始まる
三年生は…在校生に、胸に…コサージュを着けて貰い…廊下に整列していた
榊原は、振り返り…康太を見詰めていた
康太は…ずっと前にいる…榊原を見詰めていた
A組の進藤が…教師として最後の仕事をする
結局…槇原は…進藤に着いて学園を辞める事はなかった
その代わり…一緒に生活を始め…進藤を支えていくと…槇原が報告してくれた
弥勒厳正の戸籍に入れられた東矢は…卒業したら、紫雲龍騎のいる山に籠る
修行を積んで…何時か…康太へと還る…
天宮東真も……他の大学に進学し
近い将来…弁護士になり…康太へと還る…
康太は…胸を張った…
隣の…一生が、康太の体調を心配して見ていた
康太は…笑って…ニカッと親指を立てた
愛しい…学園の日々は…
辛い日も…あった
楽しい日々もあり…
校舎で…泣いた…日もあった
叫んで……泣き叫んだ時も…
それ等総てが…輝いた想い出になり…
胸の中で…輝いていた
兵藤が…振り返り…康太を見ていた
康太は…拳を握ると…自分の胸を叩いた
兵藤は、頷いて…前を見据えた
康太は…一生や聡一郎…隼人に慎一を見た
涙を堪えた…顔をして…
最後の時を…共に過ごす…
『卒業生、入場』
マイクが…入場を告げる
卒業生は、体育館に入って行くと…
在校生から…盛大な拍手で迎えられた
胸を張って…卒業生が入場して来る
悠太は…それを、体育館の隅で見ていた
葛西が「お前は…康太さんを愛してるんだな…。」とボソッと呟いた
「世界で一番愛してるのは…康兄だ…
でも俺の恋人は…四宮聡一郎…唯一人だ…」
葛西は、驚愕した瞳で…悠太を見た
「聡一郎…さん?
嘘…知ってるのか聡一郎さんは…お前が康太さんを愛してるのを…?」
「知っている…知っていて…俺を愛してくれている…」
「………そうか…。」
「康兄が手に入るなら…悪魔に魂を売っても良い…
だが、あの人は…昔も…今も…愛するのは…あの……鬼一人……」
「そんな想いを抱いているのは…お前だけじゃない…。
飛鳥井康太…あの人に想いを馳せている人間は…皆…そう思っている…」
葛西と、悠太の前を…康太達…卒業生が入って行く…
皆…奇跡の様な…存在の…卒業生を見送っていた
『卒業証書授与式 』
理事長の神楽四季が…壇上の上に立ち…
国旗に一礼して、校旗に一礼し演台の前に立った
演台の上に…卒業生の卒業証書を設置する
現 生徒会長の藤森が伴奏のピアノを弾く
『3年A組、起立!』
担任の進藤が生徒の名前を呼び上げる
理事長は、一人一人…丁寧に送る言葉をかけた
A組の生徒が壇上へと、上がって行く
榊原の番になるのを…康太は…見ていた
『榊原 伊織 』
榊原の名前を呼び上げると、榊原が理事長の前に立った
『卒業、おめでとう。
君は鬼の威名を持つ…
厳しい執行部の部長でしたね!
君達の残した軌跡は…後に続きます…
本当に卒業おめでとう』
と、神楽に言葉を貰い…榊原は深々と頭を下げた
そして、卒業証書を手渡して貰い…壇上を後にする…
榊原の次の番号は…清家静流
『清家静流 』
と、呼ばれ…清家が理事長の前に立った
『優しい顔に、厳しい性格の…君が…生徒会を支えた…と言っても過言ではなかった
その経験が…生きる時が…必ずあります
卒業おめでとうございます』
清家は、深々と頭を下げた
そして、卒業証書を受け取り…壇上を後にした
A組の生徒の中盤に…兵藤の名が呼ばれた
『兵藤 貴史 』
兵藤は、胸を張り「はい!」と答え壇上の理事長の前に立った
『桜林学園で伝説を確立した…生徒会長として、君の存在は…長く語り継がれるでしょう…。
電子頭脳と謂われた君が…人間味溢れる…生徒会長になり、伝説を築き上げた
君達の…伝説は…桜林に長く語られるでしょう…。
卒業おめでとう…。』
兵藤は深々と頭を下げた
そして、卒業証書を受け取り…壇上を後にした
3年B組の生徒が…担任に名を読み上げられ
壇上へと、上る
B組の生徒が…終わると
次はC組だった
『3年C組の生徒 起立!』
と呼ばれると、C組の生徒は起立した
B組の後部に…
出席番号一番の飛鳥井康太が立つ
C組の生徒の名が…担任の槇原の声で呼び上げられる
『飛鳥井 康太』
と呼び上げられると康太は
「はい! 」と大きな声で返事をして
理事長の前に立った
『飛鳥井康太…君は本当に…学園の生徒達の起爆剤でした!
君と共に卒業出来る卒業生は幸せです
君の姿を…目の当たりに出来た在校生は…幸せでした…。
奇跡の世代と呼ばれし生徒を送り出せて…私は…理事長冥利に着きます…。
別れは言いません…また、逢いましょう!飛鳥井康太!』
神楽四季は…泣いていた…
卒業証書を渡す手が…震えていた
康太は深々と頭を下げると、卒業証書を受け取り…壇上を後にした
『一条 隼人 』
呼ばれて…理事長の前に立った
『君は…学園に来た時は…空っぽの…何も持たない人形の様だと…想いました…
ですが、今の君は…苦悩を知り、幸せを知り…喜びを知り…一人前の…男の顔をするようになりましたね…
君が…過ごした日々は…君の中で…何時までも輝き続けるでしょう!
卒業おめでとう…今後の活躍も陰ながら応援させてください』
隼人は…深々と頭を下げ、卒業証書を受け取り壇上を後にした
泣きじゃくり…康太に肩を抱かれ…席へと戻る…
『四宮 聡一郎 』
聡一郎も理事長の前に立った
『手のつけられない…悪童のまま卒業されなかった事を本当に嬉しく想います…
飛鳥井康太の後ろに控え…彼を支える…存在として…生き生きして笑っている姿を見れて…本当に…良かった…
卒業おめでとう…』
聡一郎は深々と頭を下げ、卒業証書を受け取り壇上を後にした
C組の後半に…緑川一生、慎一が呼ばれる
『緑川 一生 』
「はい!」
一生は、胸を張り大声で返事をして…
理事長の前に立った
『緑川一生…君には手を焼かされました…
だが、君は…飛鳥井康太の懐刀として…
彼を支え…奇跡の生徒の一員にまでなった
決して康太の前には出ず…彼を支える姿は…
際立って…変わった君の姿が…忘れられません。
この先も…君達は…飛鳥井康太を支え生きていくのでしょうね…。
だから、さよならは言いません!
また!逢いましょう!』
一生は、深々と頭を下げ、卒業証書を受け取り壇上を後にした
一生は泣いていた…
『緑川 慎一 』
慎一は「はい!」と姿勢を正し…理事長の前に立った
『君は…本当に短い期間しか学園にはいられませんでしたね!
でも、君の姿が…昔から在るかの様に、学園に馴染み…その存在感を見せ付けましたね
君にも…さよならは言いません!
また逢いましょう!』
と、言葉を送られ…慎一は深々と頭を下げた
そして、卒業証書を渡して貰い…壇上を後にした
『これで、卒業式第一部、卒業証書授与式を終わります。
卒業式は、午後1時から開始します
五分前には…体育館に集合して下さい!』
アナウンスが流れ…卒業証書授与式は終わった…
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