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赤いしおりといちご飴

焼きそばパンを食い終わった俺はお楽しみのタコを口に入れる。 「今日のマトの情報は?」 とっくに食べ終えて小説を読んでいたアサに御構い無しで話しかける。 「今回はお前の方がよう知っとるやろ」 こっちを見ずに数ページめくるアサ。 たぶん頭に入ってへんわ、いっつも同じ本やもん。 「自分も仕事せな気持ち悪い言うてたやん……はよ」 ムッチャムッチャと弾力があるタコを噛みながら言う俺にため息を吐いたアサ。 薔薇色のしおりがついたページを開き、そのしおりを人差し指と中指で挟んで俺の方に向ける。 「ため息ばっか吐いてたら、幸せ逃げんで?」 心配して言うて取ろうとしたら、遠くに離された。 「なんや、ボケ……」 ジッと見つめてくるアサの口角が左に大きく上がる。 その顔は闇の執行人……基、リボルバーのブレーンのスイッチが入ったことを示していた。 今度は俺がため息を吐いて、和柄のポーチからいちごが描かれたパッケージのアメちゃんを取り出し、アサの目の前に放る。 「今、薔薇色の人生やからええわ」 右の口角も上げ、綺麗な微笑みを向けて俺の小さな手にしおりを優しく置いたアサに急に変な気持ちを抱く。 俺、もしアサと恋人やったら……意外と女役な気がすんねん。 そんなん考えもせんと、アサはカシャカシャと包みを剥がし、三角のピンク色を口に放り込むのが見えたから急いでしおりを解体する。  ーーコロン、コロン マト……簡単に言うとターゲットは法で裁けない犯罪者。 証拠不十分や身内が警察上層部または政治家などの理由で捕まえられない奴らを主に狙っとる。 ーーコロン、コロン 今回は父が政治家だったのと裁く法律制度そのものがなかったために、捕まらなかった悪い奴。 ーーコロン、コロン そして、俺が一番殺したかった奴。なぜなら ーーガリッ、ガリガリガリ 俺の兄を殺した首謀者やから。 「お前、噛むの早ない?」 「食べんの飽きんねん」 「じゃあもう食うなや」 くだらないやり取りをしてまた笑い合う俺とアサ。 でも、いつも思ってんねんでアサ……巻き込んでごめんなって。

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