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「だって、イワオさんは色々忙しい合間に時間を作って僕に連絡してくれてるんだ。断わるだなんて……。それに、断ったら今度はいつ会えるかわからないし」 「はあ? だからって課長だけが自分の立場を犠牲にしてまで、どうして合わせなきゃいけないんすか。向こうにも課長の仕事をきちんと理解してもらって、時間ができたときに課長から連絡すれば済む話じゃないっすか」 「で、でも僕から連絡してイワオさんが会ってくれた試しはないんだ。それに一度、僕が海外出張でイワオさんの呼び出しに応じられなかったことがあったんだが、その後イワオさんからの連絡が三ヶ月不通になって……。その三ヶ月を思い出すと、ぼ、僕はもう……」 東海林課長の顔がみるみる蒼白になり、瞳にはまた涙が溜まっていく。 「ちょ、わかりましたから、泣かないでくださいよ!」 俺は慌てて再度ティッシュを引き抜き、東海林課長に押し付けた。 はあ……。 これって、ほんとに恋人、……なのか? いや、どう考えてもおかしい。 東海林課長とイワオさん? の関係を聞けば聞くほど、モヤモヤとした気持ちになった。 俺は腕を組みながらサイドボードに寄りかかる。 これってセフレどころの話じゃないだろ。 都合のいいときに呼び出されて、しかも二、三十分の逢瀬。 この人、これが何を意味してんのか、わかってんのか? 「そ、それに、何より、僕がイワオさんに会いたいから……」 だからどうしてそこでまた顔を赤らめる! 「とりあえず、今後仕事に支障をきたさないようにだけ気をつけてくれれば、俺は課長のプライベートにはまったく関心ありませんから」 「そ、そうだよな、ごめん、笹川君……」 これだけ釘を刺しておけば大丈夫だろう。 俺は項垂れた東海林課長を見下ろしながら、缶ビールを飲み干した。 しかし、その翌日にも事件は起こった。

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