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俺は午後から松岡工場の品質管理課に出勤した。本社に顔を出していた午前中は有給扱いだ。
白衣を着て実験室の自分の席に着くと、東海林課長が強張った顔で俺に向かって歩いてきた。
「あ、午前中はお休みいただいて、すみま……」
言いかけた俺の腕を突然掴み、東海林課長は廊下へと俺を連れ出す。
「な、なんすか? 課長!?」
戸惑う俺に返事もしないで、腕を掴んだまま廊下を歩き続ける。
なんなんだ?
ま、まさか、俺が人事部の特命係の人間だとバレたのか!?
東海林課長に引きずられながら背中に冷や汗をかく。
そして課長は誰もいないことを確認した喫煙室の中に俺を押し込んだ。
「か、課長! ちょっと待ってください! お、俺……」
「笹川君、君の携帯はオーユーだったよね?」
俺の声を遮り、東海林課長は切羽詰まった表情で俺を見上げて訊ねる。
「は、はい……?」
「ぼ、僕のはモコモだから。今、オ―ユーは通信障害が起こったりしてないか?」
「え?」
俺は慌てて胸ポケットからスマホを取り出した。
「いや? 特に何もないみたいですが……」
俺の答えを聞くと途端に課長の顔が青ざめた。
「ということは、拒否……されてるのか? なんで? なんでなんだ? 何もした覚えはないのにっ」
みるみる課長の瞳が潤みだし、眉が歪められていく。
「ちょ、どうしたんすか! こんなとこで泣かないでくださいよ!」
俺は焦って辺りを見回した。幸い廊下には誰も来る気配はない。
「イ、イワオさんに送ったメールが届かずに戻ってくるんだ。もしかしてイワオさんの使ってるオーユーが通信障害ならって思ったんだけど……。や、やっぱり、僕のメールを拒否してるんだ……。ああ、なんで!」
課長は今にも零れそうに涙を溜め、洟を啜り上げた。
「さ、笹川君、なんでだと思う? 僕、何か気に障ることでもしたのかな?」
肩を戦慄かせ、涙ながらに何故か俺を問い詰める東海林課長に、ぐいっとハンカチを差し出す。
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