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その言葉を聞いた瞬間、俺は目を瞑り、天を仰いで呆れた声を出した。 「何なんすか、その原理」 顔を戻し、課長の手を強引に引いて、俯けられた顔を覗き込んだ。 「その原理からいうと、あんたは自分を好きにならないような人が好きなんだろ? だったらイワオさんは課長のことを好きじゃないってことも、やっぱりわかってるんだよな?」 遠慮のない俺の言葉に課長が辛そうに下唇を噛んだ。 「ってか、今の言葉でよーくわかりましたよ。課長の一連の行動は自尊心の低さからきてるんですよね?」 過去の出来事から自身を厭い、その価値を不当に低く見積もっている東海林課長。そんな自分を好きになるような人物は自身と同様に価値がないと見做してしまうのだろう。 「そもそもあんたは自分の価値を低く見過ぎなんだよ!」 「そんなこと……ないっ」 東海林課長は悲痛に顔を歪ませ、呻くような小さな声を出した。 「僕はずっとひとりで、誰にも相手にされなかった。みんな、僕のことを気持ち悪いって……。家族にも見放されて……」 「だから、唯一受け入れてくれたイワオさんに執着してるんすか! それは愛なんかじゃない! あんたはイワオさんに依存してるだけだ!」 課長はハッと目を見開き、俺の顔を見上げる。その唇が小さな音を立てて雨で湿った空気を呑み込んだ。 「あんたがいつまでもイワオさんとのこんな関係を続けてるから、自分の価値がもっともっと下がっていくんじゃないっすか! 本当の恋愛はあんたとイワオさんみたいな関係じゃないんすよ?」 俺は一気に自分の考えを吐き出すと、東海林課長の身体を腕の中に引き込み、抱き締めた。驚いた課長の左手から傘が離れ、パタンと床に倒れる。 「俺だったら東海林課長のこと、もっと大事にする!」

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