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「ど、どうして課長が、ここに!?」 全身に汗が噴き出す感覚とともに目を見開く。 「君のあとを追って僕も本社に来たんだ。僕の解雇の理由を知りたかったし、君の突然の異動も納得できなかったし。……でも、よくわかったよ」 ただまっすぐに俺を見た東海林課長の瞳には何の色も見えなかった。 「東海林君、聞いてしまったのならしょうがない」 郷渡部長が溜息混じりに告げる。 「笹川君は人事部の特命係として二ヶ月間、君を間近で査定していたんだ。君にも言い分はあるかもしれんが、ここにこうして笹川君の詳細な報告書もある。読んでみるか?」 部長は俺の作った最終報告書を東海林課長に見せようとする。 「いえ、結構です。自分が一番よくわかってますので」 課長は抑揚のない声でそう答えた。 「ご迷惑をおかけし、大変申し訳ありませんでした」 そして深々と頭を下げたあと、俺たちに背を向け、部屋を出て行こうとする。 「ま、待ってください、東海林課長っ!」 俺は焦って東海林課長の肩を掴んで引き留めた。しかし課長はこちらを見ようとはせず、前を向いたまま、俺にだけ聞こえる低い声で呟いた。 「仕事のため、だったんだね」 「え……?」 「……僕を好きだって言ってくれたのも、みんな、仕事のためだったんだね」 ズキリと音を立てて心臓が痛みを訴える。 「ち、違っ…!」 俺の答えを遮るように、課長は肩に載せられていた俺の手を振り払った。 「すまない、ひとりにしてくれないか」 俺を置いて歩き出した課長の横顔には、初めて見る何もかもを拒絶した冷たい表情が張り付いていた。 その時、俺は痛感した。 東海林課長が泣いて俺に頼ってくれることは、もうないのだと――。

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