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7‐2
ピリッとした痛みが胸に走り、俺は下唇を噛んだ。
そうだ。関係ない。
課長にとって俺はただの部下だ。
いや、それ以下のただの密告者だ。
「課長、本当に、すみませんでした。俺のせいで……」
俺は深々と頭を下げた。
「笹川君……」
課長は小さく息を吐きながら俺の肩に手を置いた。
「頭を上げてくれ。もういいんだよ。君は君の仕事をしたまでだ。それに僕が仕事をないがしろにしたのは事実だから」
「いえ、課長は仕事のできる人です。品質管理課のみんなからも信頼されてます。他の部署の人だって……」
俺は頭を下げたまま話し続けた。肩に課長の手のひらから伝わる熱を感じ、喉の奥にひりひりとした塊が込み上げてくる。
「もういいんだよ、笹川君。それに僕はもう課長じゃないよ」
「いえ、よくありません! 課長のスキルは他から特出し……」
「もういいから、笹川君っ!」
俺の言葉を遮り、課長のピシャリとした大きな声が通路に響いた。
「もう、いいんだよ……」
続いて、諦観を含んだ声が頭上から降り注ぐ。俺は顔を伏せたまま、左肩に置かれた課長の手に自分の右手を重ね合わせた。
「東海林課長、俺、あんたが……、俺が特命係だったことで、また自尊心を傷つけてやしないか、心配なんです」
喉の奥の熱い塊を無理やり嚥下する。しかしそれは、呑み込んでも呑み込んでも、次から次へと込み上げてくる。
「課長のことを好きだって言ったあの言葉は、本心なんです。そりゃ、最初は仕事だからあんたに近づいた。でも、世話の焼ける課長のことが、いつも一生懸命な課長のことが、俺の前でだけ泣いてくれる課長のことが……、いつの間にか、好きになってた。もう俺の気持ちなんか、信じてもらえないかもしれませんが……」
そこまで言って顔を上げた。俺の顔を見た東海林課長がハッと息を呑んだのがわかった。
「これだけは、信じてください」
頬に涙が伝っていることに自分でも気づいていた。
人前で泣いたことなんて初めてだった。だけど恥ずかしいという気持ちよりも、課長に想いを伝えることで俺は必死だった。
「東海林課長、あんたは愛される価値のある人間だ」
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