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「課長は俺の『もの』なんかじゃありません」
俺の言葉に、課長の瞳が打ちひしがれたように眇められた。
「課長は、俺の」
吐息がかかるほど、顔を近づける。
「大切な、恋人です」
瞬間、目の前の瞳が綻んだのを見届け、俺はそっと唇を重ね合わせた。
初めて触れる課長の唇は、想像よりもずっとずっと柔らかだった。
触れるだけのキスをし、微かに唇を離す。
「煙草の、匂い……」
その間隙から課長がポツリと呟いた。
「あ、苦手っすか? だったら俺、禁煙……」
「いや、違うんだ。君のこの煙草の匂いを嗅ぐと、僕は何故だかとても安心するんだ……。いつから、かな……」
上目遣いで秘密を告白するように囁いた東海林課長を、俺は堪らなくなってギュッと抱き締めた。
「課長……っ」
「心臓が、壊れそうだよ……、笹川君……」
「俺もです」
ぴったりと合わさった胸の間からどちらのものかわからない、速い鼓動音が体内に響いてくる。
俺は課長の顎を掴み上げると、逆の手で後頭部を押さえ、今度は深く口付けた。
「ん……」
課長が小さく息を漏らす。
歯列をなぞったあと、口内に舌を差し入れた。すると課長も懸命に自分の舌先を伸ばし、俺に触れようとしてくる。
くそっ……、いじらしくて可愛すぎる……!
俺は課長の舌を食んだまま、その身体をゆっくりとベッドに押し倒した。そしてキスを続けながらパジャマのボタンをひとつずつ外していく。
「ん……、ふ」
微かに震える唇の端から課長の吐息と唾液が零れ落ちる。
全て外し終えて前をはだけると、現れた課長の上半身に俺は目を奪われた。
肌理の細かい白い肌に無駄な肉のない腹部。匂い立つような滑らかさは上品でいて、けれど艶やかな色気も感じる。
「課長の身体、雪より白くて、すごく、綺麗だ……」
柄にもない言葉を吐いた途端、鼻の奥がツンと痛くなった。
目の前の景色が、課長の身体が、滲み始める。
「笹川君……?」
そんな俺の異変に気づいたのか、課長が心配そうな声を出した。
「あれ……? 俺、す、すみません……」
喉の奥に熱い塊が込み上げてきて、拳で目元を拭った。
「……だって、俺、悔しいんです。こんなにも真っ白で、綺麗で、ひた向きで、可愛い課長が、ずっとずっと……、囚われていたなんて……」
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