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7‐10
「笹川君」
課長は優しい眼差しで俺を見上げると、両手で俺の頬を挟み込んだ。
「……僕は、自分が嫌いだった。でも変われそうなんだ。少しずつ、だが……。笹川君、君のおかげだ、すべて」
「……いえ、それは違いますよ」
俺は涙を堪えると、課長の瞳を見つめ返した。
「課長自身が、変わろうとしたからですよ」
「笹川、君……」
俺の言葉に、課長は驚いたように僅かに目を見開いたが、すぐにふっと微笑んだ。そして俺の顔を引き寄せる。俺たちはもう一度、唇を重ね合わせた。
……俺と課長の間であの名前が呼ばれることは、もう二度と、ないだろう。
俺は手のひらで課長の胸や腹に触れながら、首筋、そして浮き出た鎖骨へと唇を這わせた。
「ん……っ」
胸元まで下りていくと、まっ白な中にそこだけ薄く色付いた粒を見つけ、迷わず口に含んだ。
「あっ……」
課長が甘く喘いだ。舌先で転がすと口中で硬さを増す。
「んんっ」
俺はもう片方も指で摘まんで、優しく捻った。
「うん……っ、あん……」
課長が身を捩って感じ入り始める。その様子に俺は夢中になって課長の乳首を弄った。俺の体内にも熱が生まれていく。
「あ、あっ、笹川、君……っ」
爪で弾くように何度も刺激を与えてやると課長は交差した腕で顔を覆い隠し、上ずった声で俺の名を呼んだ。
「顔、見せてください、課長」
手を伸ばして腕を掴み、隠された顔を覗き込んだ。
「い、いやだ……、恥ずかしい……だろ」
浅い呼吸を繰り返し、弱々しく視線を逸らす課長の瞳は潤んでいて、頬は火照っていた。
「ああ、課長、すげーエロい……」
課長の綺麗な顔に浮かぶ官能的な表情に堪らなくなり、俺は汗ばんできたスウェットを脱ぎ捨てた。
「……っ、笹川君、君は何かスポーツを、してたのか?」
すると俺の身体を見上げた課長が驚いた声で訊ねてくる。
「え、はい、学生時代はバレー部で主将してました。でも今は全然運動してないんで、だいぶ筋肉落ちてるんすけど」
自分の胸回りを触りながら答えると、課長がおずおずと指先を伸ばしてくる。
「触っても、いいか?」
「ん? どうぞ」
俺は脇に両腕を垂らした。
「君の身体は、その……、すごく、かっこいいな……」
溜息のような声音で言いながら、課長は指先で俺の胸から腹にかけてをゆっくりとなぞった。
「……っ」
触れるか触れないかの微かな刺激が余計に俺の中の熱を煽る。
「課長、その触り方、反則です」
俺は課長の手首を掴むとベッドに縫いつけた。
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