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春2

この手で顔を覆うようにして煙草を吸う笹川君の仕草も好きなんだ。 手のひら越しにこちらを見つめる笹川君の目に、何故かドキドキしてしまうことがあった。それが笹川君を大切に思う気持ちだったなんて、その時は気づきもしなかったけれど……。 「笹川君、ごめん……っ」 頬から伝わる笹川君の体温を感じていると、胸がギュッと絞られる感覚がし、堪え切れなくなって嗚咽が漏れた。 「き、君は……ほんとは女の子が好き、なのに、僕なんかに付き合わせて……。僕は君を、幸せにできない、から……っ、僕は、もう……」 視界の端ではアイドルの女の子たちが弾んだ笑い声を上げている。 笹川君は小さく息を吐くと、今度は両手で僕の頬を挟んだ。 「……俺、正直言って、かなり辛いっす」 「!」 心臓が酷い音を立てて軋んだ。 やっぱり、笹川君は無理をしていたんだ……。 溢れた涙が頬を伝っていく。 笹川君から、僕は離れるべきなんだ。 けれど、笹川君のこの温かい手のひらが僕の頬から去っていくことを想像するだけで、裂かれるような痛みが胸に走った。 「東海林課長」 笹川君は俯く僕の顔を上げさせた。 「俺、こんなに課長のこと好きなのに、全然信じてもらえてなくて、辛いです」 「え……」 「どうしたら伝わるんすか? 俺、課長と一緒にいると、こんなにも幸せなのに」 笹川君は僕の瞳を見つめたまま、苦しげに眉を顰めた。 「それに、急にどうしてそんなこと言い出すんですか、俺が女の子が好きだとか……」 溜息混じりに言いながら、指先で僕の頬の涙を拭う。 「……だ、だって、君が、テレビで、女の子のアイドルを、見てたから……」 嗚咽に肩を揺らしながらなんとかそう伝えると、笹川君は驚いたようにテレビ画面に目をやったあと、いきなり噴き出した。

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