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春7

「ああ……っ、あん、あんっ! い……いいっ」 腰の打ち付けられる音が卑猥に響く。いつもより明らかにリズムが激しい。 その一回一回の動きは笹川君の想いを僕の身体に刻み込むかのようだった。 「優さん……っ、すげぇ、締まる……っ」 「ああ、んっ、笹川……君……っ! 激しいっ」 涙まじりの声で喘ぐと、繋がったまま身体を反転させられた。 「すんません、俺、優さんのこと好き過ぎて、壊しちゃいそうです……」 眉根を寄せ、切なげな声で囁くと、笹川君は貪るように唇を合わせてきた。肉厚な舌が僕の口内を隅々まで舐め上げていく。まるで僕の存在を確かめるかのようで、胸が締め付けられた。僕は堪らなくなって、唇の隙間から声を漏らした。 「ん……っ、壊して……! 笹川……君っ」 「……っ! 優さん……っ!」 笹川君は広い胸の中に僕の身体を抱き締めると、再び腰を動かし始めた。 「ああ、ん、あっああ、」 激しく揺さぶられ、嬌声が零れる。最奥まで笹川君の滾るような熱で埋められる。 僕も自身の熱を擦り上げた。 「優さん……っ、優さんっ、優さん!」 笹川君が張り詰めた声で何度も何度も僕の名を呼ぶ。こんなに余裕のない笹川君を見るのは初めてだった。 その声が、表情が、僕に限界を連れてくる。 「笹川君っ、も、ダメ、出る……っ、あ……んんっ!」 僕の手の内で熱が弾けた。 「優さん、俺も、イく……っ」 同時に体内に勢いよく白濁が注がれる。 「ん……っ! 優、さん……っ」 笹川君はゆっくりと腰を動かし、最後の一滴まで僕の中に出し切ると、肩で荒い息を吐きながらも、肘で身体を起こした。 「酷くして……、すみませんでした。だけど」 言いながら、つっと顔を上げる。 「もう、『僕なんか』って言葉、二度と使わないでください」 そう言った笹川君の瞳にはとても傷ついた色が見えた。 「……笹川、君……」 笹川君の瞳をこんなふうにしたのは、僕、なんだ……。 胸の奥が焼かれるような後悔が押し寄せた。 女性だとか、男性だとか、それは言い訳に過ぎない。 目の前の笹川君の想いを、そして、僕の笹川君への想いを自分で無下にしようとしていたんだ。 僕はまた、僕自身に負けようとしていた……。 「笹川君」 手を伸ばして、笹川君の汗ばんだ髪を梳いた。 「僕はもう、迷ったり躊躇ったりしない」 僕を見下ろす笹川君の瞳を真っ直ぐに見上げる。 「君を愛している。ずっとずっと」 「……っ」 笹川君は目を瞠ったまま声を詰まらせると、僕の肩口に顔を埋(うず)めてきた。 「俺を幸せにできるのは優さんだけっすから」 少しだけ震える声でそう言った笹川君の背中を、僕は頷きながらゆっくりと撫でた。 その夜僕たちは、お互いを抱き締めるようにして、眠った。 ***春 終わり

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