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秋5
***
「くしゅっ」
僕は小さなくしゃみをしながら、目を覚ました。すると、隣に眠っていた笹川君が目元を擦りながら、布団を肩に掛けてくれる。
「っっくしゅ!」
しかし、今度は盛大なくしゃみが漏れてしまうと、笹川君がガバリと身体を起こした。
「優さん!? 大丈夫っすか?」
目を瞬かせながら、僕の顔を覗き込む。
「ん……、大丈夫だよ? っくしゅ」
僕も起き上がろうとするが、笹川君に肩を押されてベッドに戻されてしまう。
「ああ、くそっ、俺が昨日キッチンで無理させたから……」
笹川君は頭を抱えて、自己嫌悪に陥っている。
「そんなことないよ」
「そんなこと、あります!」
眉根を寄せた笹川君が僕の額に大きな手を当てる。
「ほら、少し、熱くないっすか?」
そう言われると、少しだけ身体が怠い気がする。
「でも、大したことないよ。それより……」
言いながら起き上がろうとした僕の身体は、再び笹川君に押し戻されてしまった。
「優さんの大丈夫は信用なりませんからね! 明日から月曜で仕事ですし、今日はゆっくり寝て過ごしましょう?」
「それはダメだ!」
僕は笹川君の腕を振り切って、今度こそ身体を起こす。
「ちょ、どうしたんすか! 酷くなったらどうするんすか!」
厳しい声で叱りつける笹川君に僕はしゅんと項垂れた。
「……だって、今日は笹川君をエリジウムに連れて行こうと思っていたんだ」
「エリジウム? それって、優さんがいつもスーツ買うお店っすか? それなら今日じゃなくてもいいじゃないっすか?」
「いや、オーダーメイドだから、君がいないと採寸できないし……」
「え、俺の?」
笹川君がキョトンとした顔つきになった。
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