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冬6
僕がそう伝えると、笹川君がふと何か思い出したかのように顔を上げる。
「そうだ、優さん、今度の盆は俺ん家に一緒に帰省してくれませんか?」
「え……、そんな……」
僕は不安に瞳を揺らした。
「でも……君のご両親は……、その、僕が男だと……」
笹川君に肩身の狭い思いは絶対にさせたくはない。
それに、盆も正月も僕が笹川君を独り占めしていいわけがないんだ。
「いや、やっぱり君だけで帰ったがいい。僕のことは大丈夫だから」
僕は首を横に振って微笑んだが、笹川君は一歩も引く様子もなく、僕の両肩を掴んだ。
「俺、この前親に電話で話したんです。会わせたい人がいるって。そしてそれは男性だって」
「え……っ」
僕は自分の顔が強張るのがわかった。
「もちろん、戸惑いはあるみたいです。でも連れておいでって言われました。優さんとふたりで過ごした正月はすげー楽しかったし幸せだったけど、あの時俺、家族にも優さんのことを紹介できたらもっと幸せだろうなって思ったんです。それと……」
笹川君は少し言い辛そうに、眉根を寄せた。
「いつか、優さんの実家にも挨拶に行かせてもらいたいんです」
「……っ」
僕は父と母の顔を思い出し、胸の奥に鋭い痛みが走るのを感じた。
男性の恋人を連れてくるなど、あの両親が許すはずもない。
僕は瞳を伏せ、胸の前のコートを無意識に握り締めた。
「優さんが辛いのはわかってます。でもどうしても、お会いしたいんです」
笹川君はそう言って、僕の拳を両手で覆った。
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