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第2話
さて、この話をするには何処まで遡 ろうかと考えて先ずは、自分の話からすることとしよう。
僕は柏木瑞希。大学2年。
一年間休学していたから、本来なら3年だ。
就活をボチボチ始めている友人達を尻目に僕はまだ呑気にしている。
とは言え、僕は就職する気はサラサラない。
集団の中で生活するなんて真っ平御免。
今の生活ですら吐き気がする。
一年休学していた理由はこの僕の性格。
否、性格ではなく、病気か。
昔からとある精神疾患に罹っていた僕は昨年の夏、悪化した事により通学がままならなくなっていた。
何をするにも身体が動かない。
元々趣味など無かったけれど、辛うじて続けていた釣りも出掛けるのが億劫になり、今や竿が何処にあるのかさえ覚えていない。
一人暮らしの僕は外出をしなくなり、人と全く話をしなくなっていった。
ヒトは話をしなくなると脳が退化するのか物を考えることすら出来ない。
集中力も記憶力も無くなっていく。
こんな状況で通学など出来るわけもなく欠席が目立つようになる。
数少ない友人が心配して家を訪ねてきた頃には、酷い売り様。
結局、入院して休学を余儀なくされたのだ。
退院後も向精神薬などの薬を処方されて何種類かを服用している。
今やパッケージのフィルムを見て、何の薬か判断が出来るほどに僕の身体は薬漬けだ。
授業もかったるくて仕方ない。
特に今日は午後から雨の予報だ。
きっと気圧が低くなってるのだろう。
こんな日は特に調子が悪い。
ずっと耳鳴りが止まらない。
講座を聞きながら大欠伸が出た。
周りに人が座っていないこの場所が、僕の特等席だ。
それなのに、アイツが声を掛けてきた。
「隣、いいか?」
突然話しかけられて、思わずその男をゆっくりと見上げた。
真っ黒な短髪のソイツはわざわざ僕の隣に座る。
他の場所だって空いてるのに。
「…」
隣に座られると落ち着かない。
いわゆるパーソナルスペースが広い僕にとって隣の席でも不安になるのだ。
僕は無意識に爪を噛んでいた。
午後からの気圧とソイツの所為 ですこぶる調子が悪い。
気のせいかくらくらする。
頭を抱えていると、隣に座ったソイツがシャーペンで机をコンコンと叩いてきた。
僕が気怠そうに奴を見ると「大丈夫か?」と小声で聞いてくる。
「…少し気分悪いけど、治るからほっといて」
僕はそう答えて鞄の中から錠剤を取りだす。
ブルーのフィルム。
抗うつ剤だ。
ペットボトルのキャップを開けて、錠剤を口に入れ水で流し込む。
頭痛薬や胃薬の様に即効性は期待出来ないから、あとは効き始めるまでふて寝するしかない。
僕は机に顔を埋め、寝ようとしたがふと視線が気になった。
隣の奴が僕をジッと見ていたのだ。
「…何?薬飲むの、そんなに珍しい?」
「あ、いや、…あのさ」
僕の脳はもうヒトと話すことを拒んでいて奴を睨みつけていた。
それなのに、奴は話しかけてくる。
「あんた、柏木くんだよね?相談というかお願いがあるんだけど」
ああ、もう面倒くさい。
早く話を止めてくれ。
「クスリ、分けてくんない?」
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