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第5話
高揚感が得られるなんで、誰が言ったのか。
僕の、その後の世界は最悪だった。
壁からドス黒い花がニョキっと映えてて、部屋中を埋めたり
ビショ濡れになった鼠が足元を走ったり
自分の身体はふわふわ揺れて
船酔いした時のように吐き気すら覚える。
「コ、コーイチ…気分悪…」
「大丈夫、そろそろ気分良くなるさ」
そう呟くコーイチの目も少し微睡んでいる。
何か僕には見えないモノを観ているのだろう。
徐々に部屋が明るくなってきて眩しくて堪らない。
不意に頬を撫でられた様な気がして僕は驚きの余り、悲鳴を上げる。
コーイチの手が、僕の口を塞いだ。
「カラオケの個室で幾ら防音になってても、悲鳴はヤベエよ」
「う…あ」
身体が熱い。
コーイチの触れた顔が、熱い。
気がつくとコーイチの手に炎が見える。
青い炎は僕をあっという間に包み込んだ。
その炎の中から、熟れた果物が落ちてくる。
ジュクジュクと溶けてゆく。
僕の耳元で囁く様に聞こえるその音が酷く淫乱な音に聞こえた。
果物からしたたり落ちるゼリーが淫らに見えて僕は思わず生唾を吞み込む。
「…!」
下腹部に嫌な違和感があってまさかとは思ったけど。
何処でそんな気分になったのか気がつくと僕は勃起していた。
幻覚どころじゃないと、僕は慌てて隠そうとした。
だけど。コーイチは隠そうとした僕の手を制した。
相変わらず、微睡んだ目をしている。
「知ってるか?男同士のセックスってすげえイイらしいぜ」
「…な、何言ってんだ!」
「クスリでキメた上にやっちまったらどうなんだろうな」
ニヤリと笑うコーイチの口元から蛇の様な二股になった舌がチロリと覗く。
その舌が酷く真っ赤だ。まるで血液の様に。
コーイチがゆっくり僕の方へ寄ってきて、ズボンの上から僕のソレを
大きな手で弄ってきた。
「や、やめろよ…!」
「こんなとこじゃ、全部は出来ねえからここだけな」
チャックを下げて下着に手を入れてあっとゆう間に、直接触れてくる。
「うあっ!」
コーイチの顔がすぐそばにある。くっきりした二重の目に、泣き黒子 。
普通にして入ればそこそこモテるだろうに。なんでこんなとこで、男同士でこんなことしてるのだろう。
人に触れられたのが初めてだからなのか薬のせいなのか自分で触るより何十倍も気持ちよくて思わず声が漏れる。
「あッ…やめ、ろって…!やっ…」
「気持ちいいだろ」
蛇のような舌が、僕の首筋を舐めていく。
ザラリとした感触に驚く。
コーイチの手が上下に扱くたびに息が上がる。
先端を爪で弾かれて背中に電気が走る。
「うっ、あっ、アッ…もう、駄目…」
「イキたい?」
僕はもう抗えなかった。
兎に角もう辛くて堪らない。
早く解放したい。
「頼むからッ、も、う…」
コーイチは満足そうな顔を見せて笑う。
「良いぜ、たっぷりイキな」
ギュッと強く扱かれてさらに僕は苦しくなる。
「アアッ、あ…!イクッ…!!」
僕は思い切りソレを解放する。
コーイチは手についてしまったそれを高揚した顔でゆっくりと舐めた。
美味しそうに。
「濃いな、ちゃんと抜いてんのかよ」
僕は荒くなった息を整えながら、コーイチを睨んだ。
「で、良かった?」
耳元で囁かれ顔が熱くなる。
そんな様子を見てコーイチは満足げに笑う。
壁から花が生えている。
赤とも黒ともつかない花。
あれは彼岸花だろうか。
幻覚はまだまだ続いていた。
僕の身体の疼きも。
それから数回、僕は彼の手と口でイカされた。
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